朝、眠い目を擦りながら階段を降りてくると、唯は、あるモノの前で立ち止まった「おはよう」と天使も見惚れてしまいそうなとびきりの笑顔で挨拶をした相手は、水槽の中の金魚だ夏祭りの時のリトからのプレゼントあれから少し経つというのに、唯は、大切に大切に育てていた水槽を買い、金魚の本を見ながら、慣れない事にも必死にやってきたそれもこれも"リトからの"プレゼントだから「ちょっと待っててね」学校の誰も聞いたことのない、弾む様な声でそう話しかけると、唯は、金魚の朝食の準備に取り掛かる「…さあ、朝ゴハンよ。リ…」と"秘密の名前"を口にしかけた時、唯の背中にいつもの眠たそうな声がかかる「…なんだよ。朝から金魚の世話かよ。ご熱心なこって!」「ひゃッ!!?」と情けない声を出しながら振り返った唯が見たものは、上半身裸の遊「お、お兄ちゃん!! もぅ、驚かさないでよねッ!」「あぁー? 知らねーよ! 金魚なんかに熱心になってるおまえが悪いんじゃねーか」「な、なんかとは何よ! なんかとは!? このコはね…」「あーあー、わかった! わかった!! "ゆうきくん"からのプレゼントなんだろ? 何回言ってんだよおまえは。いい加減聞きあきたって…」げんなりしつつも、しっかりと口元をニヤニヤさせる遊に、唯の肩がぷるぷると震える「つーかンな事より、さっさとガキでもつくってソイツとケッコンでもしろよな」「な…!?」「アイツかなり奥手ってヤツなんだろ? オレには理解できねーけど。まーおまえが、もっと積極的にでもなればすぐできんじゃねーか? 何のためのでかいムネだと…うッ!?」ここにきて遊は、自分が少し言い過ぎた事に気付く。が、時すでに遅し耳まで紅潮させた唯がギリギリと睨みつけていた「…ヤバ…」「ハ! ハレンチだわ!! お兄ちゃんのバカーーッ!!!」大声でそうどなりながら階段を駆け上がっていくその後ろ姿に、遊はなんとも言えない表情を浮かべた「…なんつーか。あの様子だと、まだまだ先になりそうだな…。」階段下からドアが勢いよく閉められる音を聞きながら遊は、苦笑を浮かべた部屋に入って来た勢いそのままにベッドに寝転がると、唯はムッと頬を膨らませた「…ホント、何考えてるのよッ!! お兄ちゃんはッ!!」枕に顔をうずめながら足をバタバタさせる事、およそ十数秒唯の足がピタっと止まる「…結婚…か…」本当のところ、実はさっきから遊に言われた言葉が、頭の中をぐるぐると回り続けていたいろいろと多感な女の子である唯にとって『ケッコン』とか『子ども』などと言った事は、まさに心をくすぐるには十分すぎる言葉で────唯は枕から顔を上げると、机の上に視線を向けた窓から入ってくる朝の涼しい風がカーテンを揺らし、机の上のノートをパラパラと捲るそして、そのノートの隣には、いつもそこにある写真立ての中の一枚の写真笑顔のリトと恥ずかしそうに明後日の方を見ている自分との、二人っきりの写真朝日を浴びてニカっと笑っているリトに、唯はクスっと笑みをこぼすそして、写真の中のリトに向かって小さく呟く
「何だよ。やっぱオレの思った通りじゃねーか」「ち…違っ…」「何が違うワケ?」「そ、それはその……、と、とにかく! 私と結城くんは、そんなやましいコトをするために会うんじゃないんだからッ!!」「へ~」ポケットに手を突っ込んだまま歩み寄ってくる遊に、唯は視線を逸らしたまま、ぼそぼそと口を動かす「今日はその…会って、それからいろんな話しをしながら、これからの予定とか立てて……。それでどこか買い物とか…ケーキとかその…」「ふ~ん」遊は唯の前まで来ると、ポケットから手を出し、唯の頭にポンっと手を置いた「ん…何よ?」「ま、ナニするにしても、いっぱい甘えてこいよ!」「あ、甘え…」「な!」「…う、うん」大きな手の下で、白い頬をリンゴの様に赤くさせながら、唯はコクンと小さく頷く遊はきちんとセットされたその長くてキレイな髪を乱さない様に、やさしく撫でていく「…くすぐったいんだけど?」「わりぃ。ま、気をつけていってこいよ!」遊は唯の頭を軽くポンっと叩きながらそう言った「うん。いってきます」それから少し時間が経ち。リトの部屋――――ポチポチとゲームのコントローラーを動かしながら、テレビ画面に迫る敵の一体を撃ち殺していると、部屋のドアがコンコンとノックされる「はい?」テレビ画面からドアに顔を向ける途中、時計の針を確認すると時刻は昼の一時すぎ約束の時間よりも"一時間も早い"到着に、リトの口元に笑みがこぼれるそして、ガチャリと遠慮がちにドアを開けて入って来たその姿に、笑みが深くなる「こんにちは。結城くん。…今、よかった?」「って何言ってんだよ? おまえのこと待ってたんだろ?」「…そ、そうよね」その淡々としたいつもの声の中に、うれしさが滲んでいる事実をリトは見逃さなかったそして、唯の額にうっすらと汗が滲んでいる事も約束よりかなり早く来たことといい、どうやら急いで来たようだ「それで結城くんは何して……ってまたゲーム?」あからさまに顔をしかめる唯にリトも苦い顔になる「でもコレ、スゲーおもしろいんだって!」画面を凝視する唯の目はますます鋭さを増していく「おもしろいのかどうかはともかく! 人を撃つようなゲーム、私は関心しないわ!!」腰に手を当てて、説教モードに入りかけている唯にリトは困った様に眉を寄せた「いや…これ人じゃなくてゾンビ…」「そんなの屁理屈よ! どう見たって人を撃ってるじゃないッ!!」「ま、まー確かに…」図星なため、それ以上は口を噤んでしまったリトに、フン、と鼻を鳴らすと唯は、リトの隣に女の子座りで腰を下ろしたすでに腕と腕がくっ付き、左腕に唯のぬくもりが直に伝わってくる(今日もいい匂いがする)控え目なシャンプーの香りに混じった、太陽の匂いをいっぱいに浴びたやわらかい夏の匂いと、唯の肌の匂いリトの顔が自然とほころぶ「何ニヤニヤしてるのよ?」「い、いや、今日も唯のいい匂いがするなって思ってさ」少し照れながら歯を見せて笑うリトに、白いホッペをサクラ色に変えながら唯は俯いた「バカ…」その仕草にますます笑みを深くさせるリトに、唯の頬も赤みを増していく触れ合う肌が唯の火照りをリトに教える
「私…何?」「私…ン…私…」リトから何度となく言ってと言われた言葉唯はまだソレを一度も口にした事がなかった意味はわかる。だけどあまりにもハレンチすぎて口がさけてもその言葉を言えなかっただけど、言わなくてはダメだと思ったなぜなら"一緒"じゃないとダメだから「唯?」「……ン、ンン…」ジッと覗きこむその視線だけで、頭がとろけてどうにかなっちゃいそうになる「…ィ…ぅ」「へ?」「ィ…イきそうなの! だからぁ…だからぁ…」恥ずかしさでギュッと身体にしがみ付く唯に満面の笑みを浮かばせながら、リトは唯の頭にやさしくキスをした「オレも…。じゃあ一緒に、な?」「うん…うん」何度も首を振り続ける唯をギュッと抱き締めると、リトは最奥へと突き入れていく膣内はざわざわと蠢き、唯の脚同様、キュッと締め付けてリトを離さない「唯、もうっ」「う…うん! 私…も…ダメぇーッ!!」ビュルビュルと欲望を吐き出しながら、リトは唯の上で荒い息を吐きながらぐったりと倒れ込んだ「はぁ…はあ…はあ…」荒い気を吐きながら、唯はリトを抱きしめたまま離さないその手は何度もリトの背中や頭を行ったり来たりすぐ横でくすぐったそうに身を捩るその姿さえ、愛おしいリトはもう一度唯の背中に腕を回すと、そのままゴロンと身体を横に寝かせた結合部はまだ繋がったまま、脚は絡み合ったまま、背中に回した腕で身体を密着させながら、キスを交わす何度も、何度も――――「あむ…ん、ん…くぅ…ぅぷは…はぁ」銀の糸を引かせながら顔を離す唯にリトの口から笑みがこぼれる白いシーツの上に広がる長いキレイな黒髪を手で梳きながら、リトはジッと唯の顔を見つめるいつものキツイ目は、さきほどの余韻ですっかりとろけきりその漆黒の瞳の中に映し出される自分の顔にリトはくすぐったさを覚えた唯の瞳の中には自分しか映していない世界でただ一人、自分だけを「さっきから何?」「何が?」「さっきからあなた、ずっとにやけっぱなしじゃない! どうせまたハレンチな事でも考えていたんでしょ?」少しトゲが混じる視線を投げかけてくる唯に、自分の気持ちを胸の中にしまいこみながら、リトは唯の前髪を人差し指で弄る 「…別になんもないよ。それより、この後、どっか行きたいトコとかある? したい事とかさ」「ん~そうね……ゲームとか」イタズラっぽさを濃くしながら笑う唯にリトは、バツが悪そうに顔を歪ませる「だからそれはホントに勘弁してくれって!」心底参っているリトに、唯は声を出して笑った「唯…」「冗談よ! もう許してあげるから安心しなさい!」「ホントかよ…」「ふふ…さぁ~どうかな? 結城くん次第だったりして」どこまで本気なのかわからない唯の表情に眉を顰めつつも、リトは顔を寄せていく
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