リトと唯　第一話　結城家にようこそ！　後編（修正バージョン）の編集 - to-love-ru-eroparo @ ウィキ

リトと唯　第一話　結城家にようこそ！　後編（修正バージョン）の編集ワープロモード(改行はシフト＋エンター)

<div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「結城…くん…？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ドアをそっと開けて中を覗き見ると、部屋の中はしーんと静まりかえっていた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…いない…の？　どこにいったのかしら…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">腰に手を当てながら、唯は部屋の中を見回した</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">開けっぱなしの窓から入ってきた夜風が、唯の髪を揺らす</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「もう！　開けっぱなしなんて不用心な！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">と、口調をキツクさせる唯に、夏の匂いに混じって、部屋の匂いが風にのって届く</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ドキンと、胸が高鳴った</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトの部屋の来るのはこれで二回目</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">最初とくらべてもはっきりとわかる。さっきから胸のあたりがそわそわしっぱなしだ</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「―――…前に来た時はそんなに意識してなかったけど…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯は躊躇いがちに部屋の中へと入っていった</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">胸に手を置くと、トクン、トクンと心地いいリズムを奏でているのがわかる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯の頬に少しずつポッと熱が灯っていく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「結城くんの部屋…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">呟きながら、唯の足がまた一歩、部屋の中へと進む</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">胸の奥に染み込んでくるのは、あったかくてやさしくて、そして、いつの間にか大好きになっていたリトの匂い</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「結城くん…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトの部屋で、リトの名前を呟き、リトに想いを馳せる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">なのに当の本人は、どこかにいってしまっている</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">胸の真ん中、大事なところにぽっかりと、ドーナツみたいな穴が開いている様な感覚を唯は覚えた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「もぅ、ホントにどこにいったのかしら！　…………私をおいて…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯の口から小さな溜め息がこぼれる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">最近、自分がよく溜め息を吐くことに唯はまだ気づけないでいた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">胸のあたりで腕を組み、ムスッとした視線を部屋の中に向ける</div><p> </p><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">部屋の中は、食べかけのお菓子の袋だったり、飲み終わったコップだったり</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">投げ出されたゲームのコントローラーに、脱ぎ捨てられた服だったり――――</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯は腰に手を当てながら、さっきとは違う溜め息を吐く</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そして、口に小さな笑みを浮かべた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「まったく…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">一言そう言うと、お菓子の袋をまとめ、ゲームを片付けて、服をきちんと畳んで</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ベッドのシーツや布団をキレイに整えて、そして――――</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ココで結城くん、寝てるのね」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ソっと、シーツの上を手で撫でると、リトに触れている様な気がして</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">もう一度。もう一度。何度も手で撫でる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ちょ…ちょっとだけなら…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">部屋の入口をチラッと確認して、ドキドキとうるさい胸の音を聞きながら、足をベッドに乗せる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ギシっと軋むベッドの上で、唯は女の子座りをしながら、落ちつか無げにそわそわと視線を彷徨わせる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そして躊躇いがちに、ゆっくりと体をベッドに沈めていく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">夜の風に当ったひんやりと冷たいシーツの感触を左頬に味わいながら、小さく深呼吸</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯はモゾモゾと手を伸ばした</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">手に掴んだのは枕。それをギュッと胸に抱き寄せる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「結城くんの枕…毎日つかって…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">目を閉じると、リトの顔が浮かんできて、胸のあたりが熱くなっていく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトの匂いが沁み込んだ枕に少しずつ唯の匂いと体温が混じっていく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">頭の中から「何やってるのよッ！？」と声が聞こえてくるが、体と心が無視を決め込む</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「結城くんの匂い…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">真夏の太陽をいっぱい浴びたような匂い</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">気がつけばいつもそばにあって</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そして、いつからか一人占めしたいって思うようになって</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">雨の日に想いが重なり、前よりもっと近くに、ずっとそばにいる様になったのに</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「―――そばに…そばにいるのに…、何なのよ…、もう…！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯は枕を抱っこしながら身体を丸めて縮こまった</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">好きな人の部屋にいるのに、なんだか胸の中がすーすーする</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ベッドの上にいるのに、ちっとも温かくならない</div><p> </p><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">枕に顔をうずめながら、唯の頭の中にお風呂場で言われた言葉がふと蘇る</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">『リトとどーなのかなァ…って』</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">枕を握る手に力がこもる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">期待と好奇と、そして心配が入り混じっていたララの声</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">枕を抱き締める腕にさらにギュッと力がこもる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…放っておいてよ。そんな事…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">誰もいない部屋に向かってそう呟く</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯は頭の中のララの声を閉めだすかの様に、目を瞑った</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「―――手川？　…古手川！　古手川、起きろって！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…んっ…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">頭の中で鳴り響くリトの声に唯は、薄く目を開いた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">重い瞼の奥に飛び込んでくる眩しい光に一瞬、顔をしかめる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">少しすると、ぼんやりと白みがかった視界によく見知った顔が映り込む</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「起きた？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「結…城くん？　何…？　何なの？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「お前、寝てたんだぞ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「えっ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯は目をパチパチさせながら、霞がかかった頭の中を整理していく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「寝て…た？　え、どういう…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そんな事オレが訊きたいって！　ホントびっくりしたぜ。部屋に戻ったら、古手川がベッドで寝てるんだからな」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「え…あっ、そ、それは…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「布団もかぶってねーし…。フロ上がりなのに風邪引いたらどーすんだよ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ううっ…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">珍しいリトからのお説教に唯は何も言い返すことができず、ベッドの上で小さくなる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（なんて事！？　私、あのまま寝ちゃったんだわ。ハレンチなっ！）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">なんて心の中で自分を戒めるも、すっかりリトのベッドがお気に入りになったのか</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">冷たくなった体を温めようと、すぐそばに転がった枕を手に、ソレをギュッと胸に抱き締める</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトの視線もあって、顔が熱くなって仕方がないのだが</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">どうやってもベッドから中々、起き上がれない</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">枕を手放すことができない</div><p> </p><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">“だって…だって…、結城くんが毎日、寝てるベッドなんだもん…”</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">枕の間から少しだけ見えるリトの顔と、そして、リトの匂い</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">頭の中が甘くとろけていくのを感じながら、唯は抱っこしていた枕から恥ずかしそうに顔を出した</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…それよりどこ行ってたのよ？　ずっといなかったでしょ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ああ。外にいってたんだ！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「外？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そ。セリーヌの水やり」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「それって庭にある植物のこと？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そうだよ。遅くなっちまったからセリーヌのヤツ、ムチャクチャお腹すかしててさ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯は何も応えず、ゴロンとリトに背中を向けた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「って何だよ！？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「古手川？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…………妹さんがおフロどうぞ、ですって！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「フロならさっき入ってきたけど？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……ッッ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯は枕を抱き締める腕に力を入れながら、ほっぺをムッと膨らませた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">さっきまであった甘い感触なんて、どこか彼方に消え失せてしまっている</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（何よ！　何なのよ！？　どういうつもりなわけ？）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">今日は夕食をご馳走されに結城家に来たわけなのだが</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">その夕食以降、リトとまともな会話をほとんどしていないという事実に</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯は枕に顔をうずめながら、頬を膨らませた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（結城くんがあの植物を大事にしてるってわかるし、とってもいい事だって思うけど、けど―――）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">頭を掻きながら途方にくれた様子のリトを背中に感じながら、唯のほっぺはますます膨らむ</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「あのさ、古手川」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「オレのベッド使ってもいいけど、ちゃんとしないと体冷えるぞ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……どうぞお構いなく！」</div><p> </p><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">はぁ、と小さな溜め息を吐く音が聞こえた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">背後でリトの動く気配</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">少しずつ遠ざかっていく足音に、ざわざわと気持ちが焦りだす</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">”また、どこかにいっちゃうわよ？”と心の中で自分の声が聞こえる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯は自分の中のキモチを押さえつける様に、枕に顔を押し付けた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（ふ、ふん！　今さら結城くんがどこに行こうが関係……ないじゃない！）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">背中に聞こえるゴソゴソする物音に、瞳がゆらゆらと揺れ動く</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（そ、そうよ…！　おフロも入ったって言ったし、私はもう…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">胸の中でいろんな葛藤を繰り広げながら、枕を抱き締める腕に力がこもる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（……私は…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">天秤のようにゆらゆらと揺れる心</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…んっ…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">枕を力いっぱい抱き締めると、ついに唯は、目を閉じて全ての事をシャットダウンした</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">真っ暗な世界だというのに、いろんなモノがはっきりと感じられる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">背後から聞こえる物音だったり</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">胸の鼓動だったり</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">自分の気持ちだったり</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">真っ暗な世界の中で、唯はリトに呼びかけた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">心の声で何度も何度も、「結城くん、結城くん…」と何かを確かめるように</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">少しすると、ふいに体を包む温かい感触に唯はハッとなって目を開けた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…何？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ご、ゴメン！　また寝たんだと思ってさ、布団掛けたんだけど…。起しちまったよな…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">もぞもぞとベッドの上に体を起こす唯に何を思ったのか、リトは慌てて口を動かす</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「い、いや、ほら、寝るんなら布団かけねーと湯冷めちまうだろ？　風邪引いたら大変だしさ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯はリトの話を聞きながら、体を覆うタオルケットの上を手で撫でた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">柔らかいふわっとした生地の手触りに混じって、なんだか優しい温かい感触が手の平から伝わる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……風邪とか…心配してくれるんだ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「なッ！？　当たり前だろ！　何言ってんだよ！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">少し真剣味を帯びたいつもの顔に唯は、軽く布団を握りしめる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…ねェ、結城くん」</div><p> </p><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ん？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「もし…もしよ？　もし、私がこの前みたいに風邪を引いたら、どうする？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「どうするって…そりゃ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">頭をポリポリ掻きながらリトは一瞬、言葉を探した</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そして、少し戸惑いながら、応えていく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…見舞いに行くけど？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「すぐに？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「え…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「すぐに来てくれるの？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「すぐってゆーか…古手川が風邪引いたってわかったらすぐに行くけど？　その…治るまでずっと一緒にいるっつーか…古手川のことスゲー大切だしさ……って何だよ、コレ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯は「ふ～ん」とだけ返すと、バフっと枕に顔を埋めた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「お、おい！？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……ッ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">枕の中で唯は下唇を噛み締めた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（う…ううっ…どうしよ。あんな事言われちゃった…！）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">うれしい言葉に、カアァァっと首まで赤くなった顔なんてリトに見せられるはずはない</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">よくわかっていないリトの声を聞きながら、唯はさらに枕に顔を押し付ける</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「古手川？　ホントにどしたんだよ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「い、いいの！　放っておいてっ！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ってそんなこと言われてもな…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトはほっぺを指で掻きながら眉を寄せると、小さく溜め息を吐いた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「よく…わかんねーけど…。オレ、ココにいるからさ。その、大丈夫になったら声かけてくれ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「え！？　ココにいてくれる…の？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「当たり前だろ？　古手川、なんか変だし。心配だし」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">首にかけていたタオルでお風呂上りの頭をゴシゴシ拭きながらリトはそう応えた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">枕の中で唯は、こっそりとまた頬を熱くさせる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そして、おずおずと枕から顔を離すと、枕の間からそっとリトの顔を窺った</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……っ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">大雑把な拭きかたのせいでクシャクシャになった髪を、手櫛で簡単に整えていくリト</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">その横顔をジッと見つめている内、自然と体がぽぉっと熱くなっていく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">優しいだけじゃなくて、いつもドキドキをくれる言葉や顔</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ただ、そばに、近くにいるだけで、こんなにも顔が熱くなって、仕方がなくて</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯はまた枕にバフっと顔をうずめた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">枕に自分の匂いを付けながら、真っ暗になった世界の中で、唯は心の中で呟く</div><p> </p><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（結城くんの匂い…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（結城くんがずっと私の中にいる…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（いつも考えてる。結城くんのこと…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（私、本当にどうしたのかしら…。ちょっと前まで、こんな事考えられなかったのに…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">誰かを好きになって</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">好きになった人と想いを通わせて</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">その人の家でご馳走なって、お風呂にも入って</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そして、ベッドの上で枕に隠れながら、横顔を見つめるなんて</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（結城くん…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">本当はスキって言いたい</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">大スキって伝えたい</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">たくさんたくさん想いを込めて。だけど――――</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（そんな事言えないわよ―――…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">近くて遠い“距離”</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">すぐ近くに、すぐそばにいるのに</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">とっても遠くに思えるその“距離”</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「――――…結城くん、こっちに来て…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">だから、勇気をかき集めて言えたのはそれだけだった</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">小さな、小さな、本当に消えちゃいそうな声だけれど</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトは手を止めると、唯に顔を向けてくれた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯はリトの返事を聞く前に、また、枕で顔を隠してしまう</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">タオルで拭く音が聞こえなくなった部屋の真ん中では、リトがキョトンとしながらこっちを見ているのだろう</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（…何か言いなさいよね！）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">おずおずと枕から顔を上げた唯をいつもの顔が待っていた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">まだ完全に拭き切っていない髪の先から水滴がポトっと床に落ちていく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「何だよ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…その…」</div><p> </p><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">何か言おうとするも言葉がうまく出てこない</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">胸の中にある気持ちをどう言葉に変えればいいのかわからない</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">口の中でいろんな言葉が合わさって、もごもごと意味のない言葉を作っていく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「古手川？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトに何も返事を返せないまま、唯はふいっと顔を逸らしてしまう</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「別になんでも……ない」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「何だよソレは…ったく、じゃあオレ、下いって何か飲み物取ってくるけど、古手川は何かいる？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……結城くんと同じのでいいわ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ん～…じゃー、オレンジジュースでいいよな？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ええ…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">珍しく歯切れの悪い唯にリトは小首を傾げる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">怪訝な顔を浮かべたまま、まだ完全に乾き切っていない髪をタオルで拭きながら、唯に背中を向けた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">その足がふいに止まる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「―――え！？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……いかないで…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">小さな小さな声がリトの耳を捉え、ベッドから伸びたかすかに震える白い手が、リトの服の裾を掴み、足を止めさせる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ベッドの上で真っ赤に染まった顔のまま唯は、精一杯の声で、もう一度呟く</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……どこにもいかないで…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">耳に届く前に消えてしまいそうな儚い声</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">目をまん丸にさせながらリトは後ろを振り返った</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">首まで真っ赤になって、目に涙をいっぱい浮かべて泣きそうになったまま、唯はリトの服を離さない</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……ッッ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「古手…川？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……ッ！？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">上擦った驚きの声を上げるリトに、唯はハッとなって慌てて手を離した</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ちっ、違うの！　こ、これはそういんじゃなくてっ！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「えと…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「だ、だからその……えと…ほ、ほら、そんな急いで取りにいくことないってゆーか…やっぱりジュースなんていらないってゆーか…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">言い終わった瞬間、唯はハッとなった</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（何言って…！？）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">本当は、リトと一緒にいたいのに</div><p> </p><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">どこにも行ってほしくなくて</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">二人っきりでいたいと思っているのに</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">なのに――――</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（私のバカ…っ！）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">心の中で自分に文句を言い、そして、恐る恐るリトの様子を窺う</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">まだ戸惑っている様子のリトと目が合うと、唯は慌てて顔ごと逸らした</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">？マークいっぱいの視線を感じながら唯は、下唇をキュッと噛み締める</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（どーして私って、いつもいつも、余計なことばかり言っちゃうのよ…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">相変わらず進むことも、真っ直ぐに見つめることも出来ない、自分の中のホントのキモチ</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">くやしさよりも、情けなさで、唯は知らず知らずの内に俯き、肩を震えさせる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（こんなのイヤ…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯はベッドの上で膝を抱え、膝小僧に顔を埋めた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">真っ暗な世界にリトの困った顔が浮かぶ。溜め息を吐いている横顔が過る</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（結城くんの…あんな顔が…見たいわけじゃない…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">膝を抱きかかえる腕にギュッと力が入る</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（結城くんにして欲しいこととか、一緒にしたい事とか、たくさんあるはずなのに…何やってるのよ私は…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">あんな事が言いたいわけじゃない</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">あんな顔を見たいわけじゃない</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（結城くん…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯は丸めた膝からおずおずと少しだけ顔を上げ、リトの顔を窺う</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">でもやっぱり、目が合いそうになってしまうと、ふいっと目を逸らしてしまう</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そして、深い溜め息</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（…バカ。私の…バカ）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">胸の中でいろんなキモチが膨らんで、ごちゃ混ぜになって</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯は、自分の目頭が熱くなっていくのを覚えた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ベッドの上でいつもよりずっと小さくなっている唯の姿にリトは、少し困ったように頬を掻いたあと、遠慮気味に口を開いた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「あのさ……隣…座ってもいいかな？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトの言葉に唯の小柄な肩がピクンと震える</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そして、膝を丸めたままの姿勢で唯は、ボソッと呟く</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……あ、あなたのベッドじゃない。好きにしなさいよ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">冷たく返してしまった事に唯の胸の中にチクリと痛みが生まれる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトは頭を掻きながらベッドに腰を下ろした</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ベッドに二人分の体重が乗り、ギシギシと音を立てる</div><p> </p><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトは前を見ながら、意識だけを唯に向けた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「その…ジュース、いる？　喉渇いてるなら今から下いくけど？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……いらない」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そっか」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトは短い返事を返すと、唯の背中に薄い布団をかけた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ほら、ちゃんとしないと風邪引くだろ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「さっきも言ったけど、お前が風邪引いたりとかイヤだからさ。美柑もララも、みんな心配するし。つかオレが一番すると思うけどな…！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">照れくさそうにリトは笑いながらそう言った</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">肩にかかる布団の上から、リトの手の体温が少しずつ唯の肩に降り積もっていく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">顔がカァァっとヤケドしそうなほど熱くなっていくのが自分でもわかる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">思わずリトの手を握りそうになる手を、唯はシーツの上でギュッと握りしめて、止めた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">シーツの上で顔と同じぐらい手が赤くなっていく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…あなたはちょっと心配しすぎよ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">肩から落ちそうになる布団を整えながら、唯は手を握り代わりに、口元に淡い笑みを浮かべた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そして、布団の端を持つとリトの背中にそっとかける</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「それに！　私ばかりじゃなくて、あなたも、でしょ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…だな」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">くすぐったさを覚えるその声に、リトは小さな返事を返す</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そして、二人は顔を見合せると恥ずかしそうに、クスっと小さな笑みを浮かべた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">部屋の中に涼しい夜風が駆け抜け、そして、また静寂が二人を包んでいく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">けれど、今度は今までとは少し違う静けさ</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">窮屈じゃない、どこかこそばゆい感じにさせる無言が続く</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">チクタクチクタク、時計の針の音を聞きながら</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">やがて、唯はぽつりと口を開いた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…ねェ、何か話したらどうなの？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「何かって？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「さっきから黙ったままじゃない！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「い、いや、なんかこーゆーのもいいかな、とか思ってさ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「私だってキライじゃないけど…けど…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「けど？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">少しだけ体を寄せながらそう訊いてくるリトに、唯の頬に赤が灯る</div><p> </p><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…声…聞きたいから…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「声？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そ、その、結城くんの声聞きたくなっちゃって…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「オレの？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">左腕に当たる唯の右腕が、心なしか熱くなるのをリトは感じた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">少し俯き気味の唯の横顔にリトは苦笑を浮かべながら、コクンと頷く</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「わかった。じゃあ―――」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">布団一枚に包まれながら、二人の時間が過ぎていく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">学校起きたこと、家で起こったこと、昨日見たテレビ、最近聴いている歌だったり</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">それは、どこにでもある他愛のない会話</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">けれど、唯にとっては全てが特別な会話</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">迷いながら、悩みながら、時にはムッとなる事も言われたりするけど、一生懸命に話してくれるリトの話はいつも特別だから</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">その横顔も、声も、みんなみんな</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">いつの間にか、唯の顔は普段以上にずっと柔らかくなっていた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">特別なキモチをいっぱい含んだ視線</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">他の誰にもあげないリトだけに贈る、視線</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">うっとりしながら、ときめきながら、キュンキュンと胸を高鳴らせながら</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯は少し、ほんの少しずつ、リトに心を寄せていく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「―――でさ、その時、ララのヤツがさ…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">結城くんが私のそばにいる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">初めてかも……しれない</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">こんなにも長い時間、結城くんの横顔を見るなんて</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトの話に頷きながら、唯はリトの横顔に視線を送り続ける</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">私、やっぱり結城くんがスキなんだ…</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">大…スキなんだ</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">横顔も、笑顔も、困った顔も、慌ててる顔も</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">みんなみんな</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ドキドキとうるさい胸の音</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ヤケドしそうなほど熱い頬</div><p> </p><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトの横顔にハートいっぱいの視線を送りながら</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">一瞬、躊躇った後、唯は想いのままにリトに体をピトっとくっ付けた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「えっ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトの驚いた声で胸の音が二段階も高くなる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">カァァっと沸騰していく顔を俯かせたまま</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">布団の下でもぞもぞと腕を動かすと、唯はリトの腕に自分の腕を絡ませる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">それは、体を寄せるというより、抱き付くといったほうがいいのかもしれない</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そして、一息置いてから唯は、トンっとリトの肩に頭を乗せた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">肩にかかる少し重い感触が、首に伝わり、顔に達した頃、リトの顔が沸騰寸前まで熱くなる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「こ、ここ、古手川ッ！？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「んっ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ビクンと震えるリトの手に唯は自分の手を重ねる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">手の平にリトの驚きを感じながら、唯はリトの手を握りしめる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">無言の唯と、固まるリト</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">肩に伝わる唯のほっぺの体温が、どれだけ唯が沸騰しているのかをリトに教える</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯と同じぐらい顔を熱くさせながら、リトはパニックになる頭を必死に動かした</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">窓から吹き込む夜の風が、カーテンを揺らしながら部屋の中へと入ってきても、二人の火照りは治まることはない</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">手にはしっとりと汗が滲み、喉の奥に唾を呑み込むのにもギクシャクしてしまう</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトはゆっくり、ギコチない動きで、肩にある唯の顔を覗き見る</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「あ、あのさ…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…続き」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「へ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「続き！　早く話して…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「つ、続きって、ンな事いわれても…えと、ん～じゃあ……こ、古手川、どっか行きたいトコとかある？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「行きたい…ところ…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">キレイな眉を寄せながら思案中の唯の髪が背中に流れ、お風呂上りのシャンプーの匂いをリトに届ける</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（こ、これはシャレにならねー…！？）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">腕に当たるやけに柔らかいモノをなるべく考えないようにしながら、火が噴く寸前の顔のまま、唯の言葉を待つ</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">一秒がとっても長くて、短く感じられる不思議な感覚がリトを支配する</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ん～そうね…。とりあえず、甘いモノ……が食べたいかな」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「あ、甘いモノ？　えと…それってケーキとかって事？」</div><p> </p><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ええ。そうよ。…ダメ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ダメとかじゃねーけど……そっか、ケーキ屋か――――美柑がたまに買ってきたりするからそこでもいいんなら…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯の顔がパッと輝く</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">何度も首を振りながら、リトにうれしそうな顔を寄せる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「あとね、動物園も行きたいかな」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「動物園？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ええ。あと、水族館とか遊園地…あ、もちろん買い物もよ！　あなたに服とか見てほしいしね。それに―――」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯は本当にうれしそうに楽しそうに、行きたい場所、したい事をリトに話し始めた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">学校はもちろん、今まで一緒にいても見た事がない、初めてかもしれない唯の笑顔に、リトは驚きとうれしさが混じった目を向ける</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「―――あとは…あと…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「古手川ってそんな顔して笑うんだな」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…え？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「そんなうれしそうな古手川見るの初めてかも！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ッ！？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ニッと歯を見せて笑うリトに唯の胸がドキンと音を奏でる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトの言葉よりも、その笑顔の方にやられたなんて言えないまま、唯はぷいっとそっぽを向ける</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「な、何よ！？　私だってうれしい時とか笑ったりするわよ！　喜んだりするんだからっ！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ご、ゴメン！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">慌てて謝るリトに唯はほっぺをムッとさせたまま、視線を彷徨わせ</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そして―――</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…くちっ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「って大丈夫かよ？　湯冷めしたんじゃねーのか？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ん、平気よ。それに、こうしてるとあったかいからね」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">鼻を啜りながら唯はもぞもぞとリトに体を寄せる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">顔はヤケドしそうなほど熱いし、まともにリトの顔だって見られない</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">それでも、ほんの少しだけでも前に進むことが出来た自分に淡い笑みを浮かべつつ</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯はリトの腕にギュッとしがみ付いたまま、チラッと大好きな顔に目を向けた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（…こんな簡単なコト…私、今まで何やってたのよ…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯はリトに抱きつきながら、顔を首筋のところにうずめながら、リトの匂いとぬくもりをいっぱいに感じた</div><p> </p><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そんな唯にリトはくすぐったさを覚えつつ、頬を掻きながら宙に視線を向ける</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「なんか古手川ってネコみたいだよな？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「えっ？　ネコ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ああ。何か今日一日ずっといてそー思ったつーか。こーやってくっ付いてる時とかネコみたいでスゲーかわいいなって！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「か…か…か…かわっ…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトの言葉を反芻している内、唯の頭から見えない湯気が上がっていく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">赤を通り越した真紅色に顔を染めながら、唯はこの日、一番の声を張り上げた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「な、何おかしな事言ってんのよーーッ！！！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「わわっ！？　ゴメン！　つかそんな怒らすつもりで言ったんじゃねーって！！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「うるさいっ！　バカァ！！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">今にも噛み付いてきそうな黒ネコに、リトは青い顔をしながら必死に謝り続ける</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「だ、だから、ホントに悪かったって！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…フン」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">すっかりご機嫌を損ねた唯に、リトはガックシと肩を落とすと、はぁ…と情けない溜め息を吐く</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（…またオレ、やっちまった…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ベッドの上で腕を組みながらそっぽを向いたままの唯に、リトはバツが悪そうに頭を掻いた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">何か言いたげな唯が何度もチラチラと自分の顔を見ているとも知らずに</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">（何よ！？　何よ？　あんなおかしな事っ！　あんな、カワイイ――――だなんて…）</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">顔がぽぉっと火照っていくのを感じながら、唯は自分の胸に手を当てた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">うれしさと驚きで、胸の中はすごいことになっている</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯はもう一度リトに視線を送り、そして――――</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…コホン」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">軽く咳ばらいを一回</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">すぐそばにあった枕を持ち上げ、リトの顔にバフっと押し付けた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「わっ！？　えっ？　な、何だよ！？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……いいから、ちょっと黙って」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">いつもより静かで、よく通る唯の声に、リトはバタバタしていた両手を止めた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトに枕を押し当てたまま、唯はそっと顔を寄せる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">枕に唇が触れるか、触れないかの距離で一旦停止</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ドキドキとうるさいほどに高鳴る胸の音を聞きながら、唯はすっと目を閉じた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「結城くん…」</div><p> </p><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「何…だよ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「――――スキ……だからね」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ポソっと消える様な声で呟くと、唯は枕越しに唇を寄せた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">窓から気持ちのいい夜の風が唯の長い髪を揺らし、リトにやわらかい香りを届ける</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「え？　何だよ？　古手川？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">枕の向こうからひっきりなしに聞こえるリトの文句に、唯は枕から唇を離すと、ムッと頬を膨らませる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">顔の見えないリトに鋭い眼差しを向けると、もう一度、今度は枕を本気で叩きつけた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ってぇ…いったい何なんだよ！？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…フン」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「あのな…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">鼻を押さえながら若干、目に涙を浮かべるリトに、唯は顔を背けたまま</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">怒っているというより、拗ねたように見える唯に、リトは小さく溜め息を吐く</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「で、さっき何て言ったんだ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「さっきって？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「オレの名前を呼んだあと」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「ッ！？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯の胸の音が一段階高くなる。顔がボッと赤く染まる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「何か言っただろ？　あれ、小さすぎてよく聞こえなかったんだ。だからさ…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「も、もういいの！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「でも、なんか大事なことだったような…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「いいって言ってるでしょ！　恥かしいんだから、何回も言わせないのッ！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「え？　恥ずかしい？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「うう…っっ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">思わぬ墓穴に、唯は顔を真っ赤にさせたまま固まってしまう</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">不思議そうなリトの視線がいつも以上に痛く感じる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「よく…わかんねーけど…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「わ、悪かったわね！　よくわからなくて！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ツンとそっぽを向ける唯にリトは頬を掻いた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「それで大丈夫なのかよ？　その…いろいろ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">急に真剣味を帯びるリトの声に、唯は浮かしかけていた腰をベッドの上に下ろした</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そして、上目遣いぎみの視線を送りながら、ぼそっと呟く</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「……あなた次第よ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「何だよソレ？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">少し赤くなっている鼻の頭を指で撫でながら、リトは苦笑を浮かべた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そんなリトに唯はム～っと視線を送り続ける</div><p> </p><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">何か言いたげな視線を送り続けている内、自然と唯の口が開く</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…そ、その…あなたがちゃんとお願いしてくれたら……もう一回ぐらい言ってあげてもいい…わよ。…一回だけ、だけどね」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「えっ？　何か言った？」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…ッ…ッ」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">赤く膨らんだほっぺをしながら、こっちをじとーっと睨んでくる唯に、リトは顔を青くさせた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「え、えと…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯の視線に晒されているうち、頭の中で警戒音が鳴り響く</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">唯はゆっくりとベッドから腰を浮かした</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「こ、古手川？　ちょ…ちょっと落ちつ…」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「も―――もう！　ゼッタイゼッタイ！　言ってあげないからね！　頼まれたって、お願いされたって言ってあげないんだからっ！！　わかった！？　結城くんっ！！」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">“―――リト、私もう寝るけど、あとのコトは大丈夫なの？”</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">と、言おうとして美柑はやめた</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトの部屋の前</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ドアノブに手をかけようとして、小さく溜め息を一回</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">「…ま、らしいといえばらしいけどね」</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">口の端に意味深な笑みを浮かべると、美柑は自分の部屋に帰っていく</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">部屋の中は、すっかり機嫌を損ねた唯と、ご機嫌取りに必死なリトの姿</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">ペコペコと謝り続けるリトに、ツンとそっぽを向いた唯が態度で応える</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">そんな結城家“らしい”騒動を巻き起こしながら</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;">リトと唯、二人の物語がようやく始まる</div><div style="margin:0mm 0mm 0pt;"> </div>

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リトと唯 第一話 結城家にようこそ！ 後編（修正バージョン）

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