春菜は深呼吸を四回は繰り返した。一度深呼吸して、意を決したかと思いきや、再び深く息を吸い込んだ。そうして吐き出し、今度こそと思った瞬間、また深呼吸。それを四回繰り返し、自分を律してリトを正面から見つめた。ここで目を逸らすな。ここでピントのぼけた言い回しに逃げるな。ララに対しては抜け駆けになるかもしれないが、どの道恋のライバルとはそういうものだ。同着で一位になる事など、普通は出来ない。ならばどちらかが抜け駆けになる。であれば、それが自分である事に、罪悪感を持つ必要はない。そう自分に言い聞かせて、深呼吸の後更に一分は経過してから、とうとう春菜はリトに自分の気持ちを伝えた。「わ、私……結城君になら、良いよ……」70点。モモは心の中で、春菜の告白を採点した。ここで「結城君になら良い」ではなく「結城君が良い」とでも言っていればウブな彼女には満点をあげてやっても良かったのだが。「西連寺……」マイナス30点。結城リト、惜しい男。0点にすら及ばない。こういう場面でこそ「春菜ちゃん」あるいは「春菜」と呼んでやれば良いのに。満点を取れなかった二人を、罰として少し焦らせてやろうと、モモは姦計を巡らせた。「お二人とも、早く終わらせて下さいね? お二人が終わらせないと次が進まないですし、 何より他の人達が勘ぐって様子を見に来るかもしれませんしね」「えっ!? そ、そんな事言われたって……」「第一ここ、音や声は外に聞こえるんでしょう? そんなの……」春菜は、言った後で、思わず口を噤んだ。『音や声は外に聞こえるんでしょう?』という彼女の声そのもが、既に外に聞こえている。一体中ではどういう指示や会話が交わされているのかと、猿山達が気にしてしまったのが、壁ごしにでも表情から容易に読み取れた。「なら声は抑えれば良いじゃないですか。 簡単な事です。音も気をつけて下さいね?」軽々しく言ってくれる……。なるほど、ナナが止めようとするわけだ。恐らくモモの独断専行である事を、今更リトは疑わなかった。
「リトさん。単に指の数を増やすだけじゃ、芸が無いですよ。 指だけでも、もっといろいろな動き方があるでしょう?」リトに発破をかけたモモの声を聞いた時、春菜は、余計な事を……と焦る反面、良く進言してくれたと、感謝する気持ちも同居した。アドバイスを受けたリトは二本の指をそれぞれ別々に動かし始めた。中で指が曲がったり、伸びたり、軽く内壁を引っ掻いたり、回転したり。それが、二本の指でそれぞれ別々に動いているとなれば、快感もひとしおだ。「あっ……! い、今のぉっ……一番、気持ち良ひところにぃ……」Gスポットに偶然指が触れた時には、思わず口元に手を当ててしまったが、それでも漏れる声を完全に抑えるには至らなかった。どちらかと言えばただ単に声がくぐもっただけで、音量は変わらない。まぁ外部の者に聞きとられにくかっただろう点だけ見れば、正解なのだが。「可愛いよ、春菜ちゃん。いつも可愛いけど、今はそれ以上に」飾り気の無い素直な感想を思わず口にしたリトだったが、それは図らずもプレイボーイのごとくに甘ったるい褒め言葉であった。「もうナカはグショグショだな。指がズブ濡れだ」馬鹿正直な性格ゆえの率直な感想か、それとも言葉責めのつもりか。どっちにしろ春菜にとっては良い意味で恥辱を煽られる言葉だ。「リトさん。優しく中を弄ってあげるのも良いけど、 もうそろそろ激しくしてあげても良い頃なんじゃないかしら?」またしても余計な……もとい、嬉しいタイミングでのモモの援護射撃だ。「激しく? それって、どうやったら良いのかな」「その言葉通りの意味ですよ。リトさんだって自分でする時、 ゆっくりシゴいてるだけじゃ、いつもまでもイケないでしょう?」ギクッという音が心臓から辺りに鳴り響いたように錯覚する程リトは慌てた。もっともこんな場面なのだから、男のオナニーについて今更春菜が拒否感を示す事は無かった。ただ心の中で(やっぱり結城君もそういう事するんだ……)と妙に感心したのみだ。自分をオカズにしてくれた事もあったのかな、と勝手に想像する事で、春菜の膣は締め付けを更に強くした。「……わかった。じゃあちょっとペース上げるぜ。 痛かったり、辛かったら言ってくれよな、春菜ちゃん」
……そんな風に考えていたのは、リトが自分で思う以上に、紳士的だったからだろうか?「あらあら? リトさん一人だけ、何かに納得したような爽やかなお顔をしてらっしゃいますね。 ここまでコトが進んだのに、このまま何もせずに終われるんですか?」「え゙……」「だとしたらリトさん、凄い男性ですね。 普通だったらここで我慢出来なくなって、女の子を襲っちゃうと思うんですが…… 無欲というようにも見えませんが、女性に対して過剰に優しいのかしらね? でも本当に春菜さんの事を大切に思うのなら、 最後まできっちり犯してあげるのが、本当の優しさだと思いますけど」ゆっくり振り向くと、春菜が潤んだ眼でリトを見つめていた。既に一回イっているにも関わらず、まだリトを欲しているらしかった。「お願い、結城君……私、指だけじゃ……」「で、でも春菜ちゃん! 指示内容は二人でえっちする事なんだし、 それはもう達成した筈だから、これ以上無理しなくても……」「無理なんか、してない。お願い、結城君のが欲しいの……」先程まで足を開くのにも抵抗があった羞恥心はどこへやら。春菜は足をM字に開いて、蜜の滴るそこを指で拡げた。その奥は赤黒く、暗くてよく見えないが、そこへ挿入する事は、格別の快感とリトには思えた。「リトさん。私は、お二人でヤって下さいって言ったんですよ? 本番無しじゃヤった内には入りませんよ」モモの駄目押しは効果覿面だった。リトは観念した風を装っていたが、内心では春菜と、仮想とは言え本番が出来るという喜びに溢れていた。
じっとりと汗ばんだ肌も、こぼれた精液と愛液で汚れた床も、モモの調整一つで綺麗さっぱり、何事も無かったかのようになった。リトも春菜も元通り服を着て、透明な壁も解除され、外には待ちくたびれた猿山達が大きな欠伸をしながら待っていた。ゲームの進行都合上、時間をおしていたから、余韻に浸っている暇は無かった。「今度またゆっくりと、現実に『しよう』ね」どちらからともなくそう口約束をこっそり交わして、二人はゲームに戻って行った。春菜の希望で、せめてゲームが終わるまでは、中に残った分の精液は消去しないままで。(あ……降りてきた……)重力にまかせて膣内を流れおちるリトの精液の感触はまだ熱く、しばらくはその味を忘れないでいたいと少女は願い続けた。サイコロを振り、マスを移動すると、リトより先に春菜がゴールインした。「西連寺が一着かぁ」「よーし、ドンドンいくよー!」ノリノリなメンバーが次々とサイコロを振り、マス目を移動していく。偶然リトと同じマスにララが止まった時、リトと春菜とモモの間で、一瞬だけ気まずい空気が流れた。「な、なぁモモちゃん……まさかララとも……?」「えっと、これはさすがに……」モモが困って春菜の方を見る。だが意外にも、春菜はにこりと微笑んでいた。「良いわよ、結城君。やっぱり抜け駆けは良くないから。 今度はララさんとクリアしてあげて」「春……さ、西連寺! それ正気で言ってんのか!?」「ほえ? 三人とも何の話してんの?」「そうだぜリト、俺らにもわかるように説明してくれよ」「いや、何となく聞かない方が良い気が……どうせリトの事だし……」「まぁ学校の風紀に関係無ければ私は興味無いけど」当事者以外の全員が事態をよくわかっていないまま、モモと春菜はコクリと頷いた。リトとララのいるマス目だけが透明に壁に包まれ……終了
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