「好きだっ!!!」(え……?)私の目の前で、結城君が……私じゃない人に告白していた。(そ……そんな……な、なんでーっ!?)ララさん、ルンさん、古手川さん、御門先生。結城君がみんなを連れて私のところにやってきた。「ごめん、西連寺。オレ、やっぱりおっぱいの大きい女の子が好きなんだ」「えーっ!?」ララさんのおっぱい……おっきい。ルンさんのおっぱい……おっきい。古手川さんのおっぱい……おっきい。御門先生のおっぱい……すっごく、おっきい。「そ、そんな……そんな……」「じゃな、西連寺」「ま、待って! 結城君! 待ってーっ!!」ガバッ!ベッドの布団を跳ね上げて目を覚ます。ここは……どうやら私の部屋みたいだ。(ゆ、夢……だったの……?)「おはよう、春菜くん」「お姉ちゃん……」なぜか、お姉ちゃんがベッドの脇に立って私を見下ろしていた。「どうしたの? 結城君にフラれる夢でも見た?」グサアアアッ!!「ど、どうして……」「あはは。だってぇ、『結城君、待ってぇ!』だもん」「えぇっ!?」どうやら、そんな恥ずかしい寝言を口走ってしまっていたらしい。ほんっとに。お姉ちゃんにはいつも恥ずかしいとこばっかり見られちゃう。「ふう……夢なら、良かったんだけどな……」「え? もしかして、本当にフラレちゃったの?」「……」さっき見た夢。少なくとも、その初めの部分は本当のことだ。結城君が、私じゃない人に告白した。でも……(あんなに必死で、私の事助けてくれたのに……)それにあの時、『西連寺。話があるんだけど』結城君は、確かそう言った。なぜか急に水着が取れちゃったので逃げ出しちゃったけど。(もしかして、私に言うつもりだったんじゃ……)楽観的過ぎかもしれないけど……。「うーん、なーんだか暗いなあ、春菜くん。ま、朝ごはん作っておいてあげたから、食べなさい」「はーい」お姉ちゃんに促されて、着替えて顔を洗ってから食卓に着いた。「……」食事中も考えているのは結城君の告白のことばかり。「まあね。男と女なんて、フッてフラれて経験を積んで成長していく物だから。あんまり気にしなさんなって」まるで何でもない事みたいにお姉ちゃんが言った。「お姉ちゃん。今年に入って、何人男の子フッたの?」「んー? 良く覚えてないけど、15人くらいかなぁ」「はぁ……」こんな人の言うことなんて参考になるはずがない。お姉ちゃんももっと恋愛に真剣になればいいのに。まったく。「じゃ、私はそろそろ行くから。食器は片付けておいてね」「はーい。行ってらっしゃい」お姉ちゃんが出かけて行った。私は朝食を終えると、洗剤を付けて食器を洗っていつもの場所にしまおうとする。ふと、食器棚のガラスに自分の姿が映っているのに気が付いた。「ふう……」私の胸。日本人らしく、ささやかで慎ましい。今までそれで普通だと思ってたんだけど……。「はあ……」最近、周りのみんなを見てると、すごく劣等感を感じてしまう。前に結城君が、『女の子は中身が大切だよ』って言ってくれて、すごく救われた気分になってたんだけど、今度の告白でまた……。「ふう……学校行こ……」なんだか浮かない気分のまま、とにかく学校に行くことにした。教室に着いたけど、まだ結城君の姿は無い。そろそろ始業時間なのに、どうしたんだろう。そういえば、なんだか校門の方が騒がしい。ふと窓から校庭を覗き込むと、「何やってるのっ!! ハレンチなっ!!」古手川さんの叱り声が聞こえて来た。(な、何が起こってるの?)古手川さんがいつものように校長先生を叱っている。そして、ララさんの横には結城君……じゃない? 女の子?(あの人って……あっ!?)その女の子は結城君に良く似ていた。「あ、あの、夕崎、梨子です。リト君がいない間、よろしくお願いします」女の子はそう言った。(あの人って……まさか……)確か以前……結城君がララさんの発明で女の子になった、と聞いた時に会った女の子だ……と思う。あの時は一瞬しか見なかったので良く覚えてないけど……。でもあの、結城君に良く似た雰囲気は、なんとなく覚えている。(やっぱり、結城君なのかな……)そして、なんだか一騒動あった後、1時間目の授業が終わって休み時間。とりあえず、『夕崎梨子』さんに話し掛けてみることにした。「はじめまして、夕崎さん。学級委員長の春菜です」「あ、は、はじめまして、さ、西連寺、さん。よ、よろしく」どうやら、間違いないみたいだ。私は『春菜』としか言わなかったのに、夕崎さんは『西連寺』と私の名字を言った。(やっぱり結城君なんだ……)そう思って見てみると、女の子になってるけど、仕草や表情が結城君そのものだ。(でも、なんで女の子になってるんだろう……)3時間目の授業が終わって、里紗と未央が夕崎さんを連れて……っていうか、両手を羽交い締めにして、私の所に連れて来た。(また、この二人は……)「ねー、春菜ぁ。リコりんの胸、すっごいんだよ! あんたも触ってみなよ!」「えっ!?」「うー! うー!」夕崎さん、顔を真っ赤にして涙ポロポロ流して、頭をブンブン振ってイヤがってる。「止めなさいよ二人とも、こんなにイヤがってるじゃない」二人をたしなめようとしたんだけど……「ま、それはこの胸を見てから言ってもらいましょうか」二人が夕崎さんのおっぱいを片方ずつ持ち上げて……って、えっ!?(本当に、おっきい……)どうして……? 夕崎さんって結城君……男の子なんじゃないの!?思わず、私の手が夕崎さんのおっぱいに伸びていた。「ひゃっ!!」あああ……こ、この感触は……。「ウフフ……相変わらず感度いいねえ、リコりん♪」ま、まさか……。「ん? どうしたの春菜」私は夕崎さんに当てた手の形をそのままにして、自分の胸に当ててみた。……。……。……。はぁっ……。「だ、大丈夫、春菜。そんな落ち込んだ顔して……」(私……男の子にまで、おっぱいで、負けちゃった……)そして放課後。夕崎さんはどうやら古手川さんのお家に遊びに行く事になったらしい。「はあ……」私はまたため息をついた。今日で、もう何度目だろう。「どうしたの、春菜。元気ないねー」「ララさん……」振り返ると私の目に飛び込んでくる、ララさんの豊満なおっぱい。「ふう……」私はまた落ち込んで、ため息をついてしまう。「春菜、もうリトから聞いた?」「え? 聞いたって……何を?」「あ……まだなんだ。でも、私からは言えないし……」「?」一体、なんの話をしてるんだろう。でも、せっかくララさんとお話出来たんだから……。「ララさん。今日、お家に遊びに行ってもいいかな……?」「んー? いいよ!」「じゃ、一回お家に帰って着替えてから行くね」「うんっ。待ってるよー!」そしていったん家に帰った後、ララさんの家……といっても、結城君の家なんだけど、とにかく遊びにやってきた。「んー、じゃ、リトの部屋に行って、リトのゲームでも借りよーか。リトにはなかなか勝てないんだけど、いっぱい練習したから。負けないよー!」「あははは……」(やっぱり、いつも結城君と一緒に遊んでるんだよね……)またなんだか、イヤな気持ちがわき上がって来る。「あれ? どうしたの、春菜。つまんない?」「そうじゃないんだけど……」ふとララさんの方を見る。普段着に着替えたララさんの……どうしても胸が気になってしまう。ぷるん、ぷるんと弾力があって、きっと男の子だったら、目が離せなくなっちゃうんだろうなあ……。「あれ? どうかした? 春菜。悩みがあったら、なんでも言ってみて。友達だよね」「ララさん……」ララさんの優しい笑顔を向けられて、私はつい……口に出してしまった。「胸が……」「え?」「ど、どうしたら、ララさんみたいに、胸が大きくなるのかな……」「胸? ああ!」ララさんは、ポンッと手を叩いた。「春菜、胸を大きくしたいの? じゃ、私の発明品で胸を大きくしてみる?」「えっ!?」そ、そんな簡単に!?「じゃあ、ちょっと部屋に戻って作りに行って来るね!」「ちょ、ちょっと! ララさんっ」私の声も聞かずに、ララさんは部屋に発明品を作りに行った。(い、いきなり、そんな簡単に、出来ちゃうの!?)私の長年の悩みが、あっという間に解決しちゃう。そんな事があっていいんだろうか……?いつもながら、ララさんにはびっくりさせられる。ドキドキしながらララさんを待っていると……。「ハルナー! 来てるんだって?」「えっ」ナナちゃんが部屋に入って来た。ナナちゃんは私を見ると、えっへんとおおいばりの様子で胸を張った。「ハルナの言った通りだったな! 女は胸じゃなくて、中身だって!」「ええっ!?」それは、結城君が言ってくれた……私にとっての救いの言葉だった。今となっては空しい響きしかないのだけど……。「あたし全然胸無いけど、リトの奴、あたしの事好きだってよ!!」「えっ!?」そう言えば。あの結城君の告白のとき、あの場にはナナちゃんもいたじゃないか。てっきり私は古手川さんやルンさんの方ばかり気にしていたけど、もしかして……(結城君、ナナちゃんに告白したの……?)「いやー! やっぱり、あたしのこの女っぽさに参っちまったのかなー!」「そ、そうかもね」(ゆ、結城君って、そんな趣味があるのかなあ……?)「どーしよっかなー。やっぱ、デートとかしちゃうのかな、あたし達!」この、自信満々のナナちゃんの様子を見てると、なんだか胸の事で悩んでた自分がバカらしくなってくる。「地球だとさ、こういう時って全部男のオゴリなんだろ?よーし、リトにいっぱいアイスとか、オモチャとかオゴらせるぜ!」(ふふ……。ナナちゃん、こんなに喜んじゃって。可愛いな……)「で、春菜は告白されたのか?」「えっ!?」突然自分に話を振られて、ちょっと戸惑ってしまった。「姉上から聞いたけど、リトの奴……」「ナナ!!」ドアの所にララさんが立っていた。「ダメだよ! 人の事をポンポン話したりしたら。そういうのは、自分で言わないとダメなんだからね!」「そうなのか……。ごめんな、ハルナ」「え……いや、私は、別に……」(さっき、何を言いかけたの、ナナちゃん……)「で、春菜。準備が出来たから、お庭まで来てくれる?」「へ? お庭?」「じゃーん! 『ぱいぱいロケットくん』!」「おー、すげー!」「あ、あの、これ……」庭に設置された、でっかいロケット。(こんなので、胸がおっきくなったりするの……?)「この中にはねー、女の子のホルモンバランスを調整するガスが入ってるの!で、これに当たった女の子は、リトの理想のおっぱいになれるんだよ!」「結城君の、理想の……」ゴクリ。思わず唾を飲み込んでしまう。「さ! じゃ、やってみよー!」「ちょ、ちょっと待って!」私は慌ててララさんを制止した。「え? どーしたの、春菜」「やっぱり、こういうのって……ちょっとズルい気がしちゃって……」「えー?」「結城君、前に言ってたし。女の子は、外見じゃなくて、中身だって。こういうので無理矢理おっぱい大きくして男の子に好きになってもらっても、なんか、ちょっと違うような気がして……」「春菜……」ララさんが私のことをじっと見つめて来る。「ふーん、ハルナがそう言うんなら……あたしが使おうかなっ」「えっ!? ナナちゃんがっ!?」びっくりして、頭の後ろで手を組んでいるナナちゃんの方を見る。「あたしって、いっつも胸のせいでモモからバカにされてるし! これで見返してやるんだっ」「だ、ダメーっ」私は必死でナナちゃんを止めた。「な、なんでだよっ」「なんでって……とにかくっ! 絶対ダメなのっ」(ナナちゃんまで私より胸がおっきくなったら……私、もう立ち直れなくなっちゃうっ!!)「いーじゃんか! ハルナは使わないんだろー!?」「ダメったらダメなのっ!」「えーと、結局どーするのかなー」ララさんが呆れ顔でこっちを見ている。と、その時。「ただいまー」ビクンッ!!その声に反応して身体が硬直する。「ゆ、結城君っ!?」私の声に気が付いて、結城君がこっちに振り向いた。「え……さ、西連寺!?」結城君がこっちに歩いて来る。「き、来ちゃだめぇっ!!」(わ、私がおっぱいをおっきくしようとしてたなんて……絶対見せられないっ!!)私は慌てて後ずさって、ララさんの発明品を隠そうとする。カチッ!「あっ!? 春菜! それ踏んじゃだめっ!」「えっ!?」ゴゴゴ……真後ろのロケットに点火したようだ。「きゃあっ!?」私は慌ててロケットから身を交わす。ドシュッ!!勢い良く発射されたロケットは……「ん? のわーっ!?」ボシューッ!!その場に立っていた結城君を直撃した。「あーっ!! またリトに当たっちゃった!!」もうもうと立ちこめる煙が風に流されて行く。そこに現れたのは……「またかよ……」憮然とした顔で立ちすくむ、今朝教室で会った夕崎梨子さんだった。私は結城君の家の居間に戻って、女の子になっちゃった結城君と向かい合って座っていた。「やっぱり、結城君だったんだね」「あ、バレてたんだ」あははっ、と二人で笑い合う。「まったくララの奴、人の身体をおもちゃにしやがって……」「でも結城君の女の子姿、すっごく可愛いよ」「はは……。喜んでいいものやら……」「おっぱいも、おっきいし……」「えっ……!?」結城君こと夕崎梨子さんが、困ったような顔をして自分の胸を押さえている。そんな私達の様子を見て、ララさんが……「せっかくだから、二人でお風呂に入ったら?」「「ええっ!?」」「リト、さっきのでだいぶ汚れちゃったし、今は女の子同士だし!」「そ、そうだけど……」「さーさー! そうと決まったら、お風呂場へゴー!」「うわっ」「きゃっ」ララさんが私達二人をお風呂場に押し込んだ。私は女の子になった結城君の身体に石けんを付けて、背中をタオルで擦っていた。「ほんとに、完全に女の子になってるんだね……」「う、うん……」「女の子の時は、リコちゃんって呼んでいいかな? 猿山君みたいに」「え? い、いいけど……」「うふふ。リコちゃんっ」「な、なんか、恥ずかしいな……」「リコちゃんも私のこと、春菜って呼んでいいよ」「え!? ほ、本当に?」「うん。女の子同士だもんね」リコちゃん、なんだかちょっと戸惑ってるみたい。「じゃ、えーっと、は、春菜ちゃん……」「はい」「うわぁ……」リコちゃんのほっぺたがちょっと赤くなった。うふふ、なんか可愛いな……。「女の子になって、どんな気分?」「えっ!?」リコちゃん、ビックリしてまた真っ赤になっちゃった。「ど、どんなって言われても……何がなんだか分からなくて……猿山とか校長には追いかけられるし……それに籾岡の奴……ああっ! もう、最悪……」リコちゃん、頭を抱えてうつむいちゃった。「じゃあ、猿山君に告白されて、どんな気持ち?」「えーっ!?」リコちゃんがびっくりして、目がまん丸になっちゃってる。「あ、あいつの事は言わないでー!!」頭をブンブン振り回してイヤがるリコちゃん。なんか、ほんっとにイヤそうな顔してる……。「あはは……。でも、告白された女の子の気持ちが少し分かったんじゃないかな」「うー……」眉をしかめてるリコちゃんを見て、私はクスッと笑ってしまう。「これからもいっぱい女の子の気持ちが勉強出来るよね。せっかく女の子になったんだし」「えー!? もうやだよー!」今日はびっくりしてばっかりのリコちゃん。うふふ、本当にリコちゃん、可愛いなあ……。「そ、それで、ちょっと聞いていいかな……」「え?」私は背中から手を回して、リコちゃんのおっぱいを手でスッと包み込んだ。「ひゃっ!? は、春菜ちゃん!?」手のひらから伝わって来る、たっぷり量感のあるリコちゃんのおっぱいの感触。どう見ても……私のよりふた回りは大きい……。「こ、これが、結城君の理想のおっぱいなの……?」「え、えーっ!?」リコちゃんがびっくり仰天しちゃった。「だ、だって、ララさんが、そう言って……」「ララの奴……」リコちゃんがハーッとため息をついた。「今のオレの理想は、真っ平らな男の胸にもどりたいよ……」「あははっ。でも、すっごく似合ってて可愛いよ。ちょっと、うらやましいくらい。結城君って、女の子の才能あるんじゃないかな」「や、やめてよー、春菜ちゃん……」(ほんとに、うらやましい……)リコちゃんは男の子なのにこんなにおっぱいがおっきくて、私は女の子なのにおっぱいがちっちゃいなんて……。(やっぱりさっき、おっぱいおっきくしてもらうんだったかな……)私はちょっとだけ、さっき断っちゃったことを後悔していた。「あ、あの……」一呼吸置いてから、思い切って聞いてみた。「わ、私って、もっとおっぱいおっきい方が、可愛い、かな……」「えっ!?」また、リコちゃんはびっくりしたみたいな声を出した。リコちゃんは私の方に振り向いて、「春菜ちゃんは、そのままが一番だよ」キッパリと言い切った。「え……」今度は私がびっくりしちゃう。「ほ、ほんとに……?」「うん」(で、でも……)「結城君って、おっぱいがおっきな女の子が好きなんじゃ……?」「えっ!? な、なんで……」私は、昨日の結城君の告白を思い出していた。「だって昨日……古手川さんと、ルンちゃんと、御門先生に、告白してた……よね?」「あ……」リコちゃんが頭を抱えてしまう。「あ、あれは……間違いなんだ」「間違い?」「本当はオレ、別の人に告白しようと思ってたんだ」「え……」「本当はオレ……」一瞬、空気が静まり返った気がした。リコちゃんの顔が、ほんのりと赤くなって行く。私はまた、昨日の結城君の台詞を思い出していた。『西連寺、話があるんだけど』(やっぱり……そうだったの……?)ドキン、ドキン、ドキン……。胸の鼓動で、私の視界が微かに揺れている。そして、リコちゃんの唇から出て来た言葉は……「いや……間違い、だったんだ」「え……?」リコちゃんは、一瞬考え込んでからゆっくりと続けた。「オレ、さっき古手川に会った」「あ……」そう言えば、さっきリコちゃん、古手川さんと一緒に帰ってた……。「それであいつの様子を見てて、気が付いたんだ。オレにとっては間違いだったんだけど、古手川にとっては間違いでもなんでもなかったんだな、って」「え……?」「だから……少なくとも、オレのしでかした事に、オレ自身がけじめを付けるまで……本当のこと言うの、待ってて欲しいんだ」「……」「ごめん、春菜ちゃん」私はすまなさそうに頭を下げたリコちゃんのことをじっと見つめていた。そして、リコちゃんの顔にそっと手を当てて、私の方に向けた。「結城君って、優しいんだね……」「えっ……」「じゃ、背中流すから。後ろ向いて」「う、うん……」(優し過ぎるよ、結城君……)私は、リコちゃんの背中にお湯をかけながら、少しだけお湯を掬い取って自分の頬に落ちた滴を洗い流した。「ね、リコちゃん。一緒に入らない?」「う、うん……」二人で並んでバスタブの中に浸かる。「うふふ……こうしてると、本当に女の子友達みたいだね」「あはは……」「それで、古手川さんとどんなお話したの?」「え……」リコちゃん、ちょっと黙り込んだ後、「あんまり詳しくは話せないんだけど」一言断ってから、淡々と語り出した。「古手川、オレに告白されてすごく悩んでた」「そう……よね」「オレ正直、古手川があんなに悩むだなんて思ってなかったよ。恋愛事なんて全然興味ないんじゃないかと思ってた」「そうかな」「え?」リコちゃんが顔を上げて私の目を見た。「古手川さん、いつも怒ってる事が多いから周りの人から疎まれてる部分もあるけど、本当はすごく繊細で優しい心を持ってる人だと思う」「そう……かな」「うん」私はニッコリと笑ってリコちゃんに告げる。「男の子の結城君には分からないかもしれないけど、女の子のリコちゃんなら分かるんじゃないかな」「……」リコちゃんはちょっと考え込んでしまう。「私、リコちゃんが古手川さんのお友達になったのって、すごく良い事だと思う」「え?」「古手川さん、いつもクラスで寂しそうにしてたから」「あ……」私はリコちゃんにニッコリ笑いかけた。「リコちゃん。これからも古手川さんの良いお友達でいてね」「うん……」リコちゃんも少し微笑んでくれた。「でもそれって、オレ、これからも女にならなきゃいけないって事?」「えっ!? あ、そ、そうよね……やっぱり、イヤ?」リコちゃん、ハァッとため息をついてから言った。「校長と猿山と籾岡がいなければ良いんだけどね」「あはは」私は苦笑を浮かべてしまった。その時、リコちゃんがなにげなく微笑みながら言った。「春菜ちゃん、やっぱり優しいね」「え……」優しい。私は、優しい。結城君も、優しい。なぜか急に、私はその言葉が大嫌いになってしまった。私って、なんでこんなに優等生ぶってるんだろう……。それに、結城君もどうしてこんなに、私だけに優しくしてくれないんだろう……。私の中に生まれた、酷く独占欲の強いワガママな考え。しかし、私はそれを否定することが出来なかった。それを否定することは、私の一番大切なものを捨てることを意味するから。沈黙してしまった私に結城君が問いかける。「春菜ちゃん? ど、どうしたの」私はゆっくりと首を振って答える。「ううん、なんでもない」私の葛藤は続いていた。私の幸せと、クラスメイトの古手川さんの幸せ。秤にかければどちらが重いかは分かり切っている。しかしそれを秤にかけるには、私の大切なものをいくつも捨ててしまわなければいけない。優しさ。思いやり。友情。穏やかで、ほのぼのとした日常。それを捨ててもなお、私は幸せになれるのだろうか。「……」口の中に血の味がした。唇を噛んでしまっているみたい。鼻を突き抜けるツンとした匂い。なんだか、吐き出してしまいそう。このままではみんな台無しにしてしまいそうで。私は出口のない迷宮を彷徨うのを止めた。「そろそろ上がりましょうか」リコちゃんの顔をみないようにして私が呟いた。「あ! オレが先に出るから!」リコちゃんがザバッとバスタブの中で立ち上がって、「ふぅーっ」両手を伸ばして思いっきり伸びをして、プルプルと頭を振る。(あ……)その姿を見た私は、ふと中学校の頃の結城君の事を思い出した。サッカー部の部員だった結城君。練習が終わった後、友達と笑い合いながら水場で汗を洗い流して、気持ち良さそうに頭を振って水を飛ばしてた……。(結城……君……)その瞬間。ドクン。私の身体が魂ごと大きく震えた。体中の血がゾクリとざわめく。手足が震え、背筋が脳天を震わせる。呼吸が荒くなり、視界が狭くなる。結城君が、欲しい。欲しくって、欲しくって、はらわたを吐き出してしまいそう……(結城君……)結城君がバスタブから外に出ようとする。その時、「えっ!?」私は後ろから結城君の身体に抱き着いてしまっていた。「は、春菜ちゃ……うわっ」私と結城君はもつれ合って転んでしまう。「いてて……。だ、大丈夫、春菜ちゃ……!」(結城君……)結城君がハッと息を飲む。一体今、私はどんな顔をしてるんだろう。顔が、熱い。頭が、ボーッとしてる。ハァ……。ハァ……。私の唇にかかる結城君の息が熱い。もっとその熱さを感じたくて、その熱さの源を自分の物にしたくて、私は……(結城……君……)「春菜ちゃん」ハッ。私は目の前の結城君の声で我に返った。結城君は、私の頬に手を当てて不思議そうな顔で私を見ていた。「どうしたの、春菜ちゃん」「結城……君……」「涙、出てるよ」「あ……」いつの間にか、私の頬に二つの熱い涙の筋が出来ていた。その涙は、ついに溢れてしまった私の長年の想いの結晶。「好き……」一瞬、結城君が止まってしまう。でも、もう私は、溢れ出した想いを止められない。「好き……好きっ……」「は、春菜……ちゃん……」私は結城君の胸に縋り付いて、想いの洪水を全て吐き出した。「好きっ……好きなの……結城君っ……大好きっ……ずっと……ずっと好きだったっ……私……中学の頃から……ずっと……好きなの……結城君のことが……好きっ……好きなのっ……好きなのっ……好きなのっ……!だから……行かないでっ……古手川さんの所なんか……行かないでっ……私の……結城君でいて……お願い……お願い……お願い……私が一番……結城君のこと好き……もう……離れたくない……結城君……結城君……結城君……結城君……結城君っ……!」多分、私の顔は今までで一番みっともない。真っ赤になって、涙でビショ濡れで、鼻水が一杯出てて……。でも、そんなダメな私を全部結城君に見て欲しくって、優等生じゃない私を全部結城君に知って欲しくって、私は今、世界で一番、ワガママで悪い娘になった。一体、どれだけの涙を流したんだろう。いつの間にか、私は結城君の胸に縋り付いたまま放心していた。結城君は、そんな私の頭をずっと撫でていてくれた。ゆっくりと顔を上げて、小さな声で結城君に言った。「結城……君……。ごめんなさい……私……」「ありがとう、春菜ちゃん」私の声を遮って結城君がきっぱりと告げた。「オレ、今、最高の気分だよ」結城君がニッコリと笑った。「あ……!」その笑顔で、私の心が救われた。目から光が差し込んで、私の世界が明るくなって行く。「でも、オレやっぱり、古手川のことはきちんとしたいと思ってるんだ」「え……」(そんな……)私の中の光が急に小さくなった気がした。結城君が続ける。「実はオレ、古手川達に間違って告白する前に、ララに告白したんだ。好きだって」「えっ!?」(ララさんにも……!)「そして、もっと好きな人がいるってのもちゃんと言った。つまり、その……」結城君が少し顔を赤くして、私の方を見つめる。(わ、私のこと、なの……?)「そしたらララの奴がさ、言ったんだよ。やったー! って」「え……」「ララと春菜ちゃん、二人ともオレと結婚できる、って。無茶苦茶だろ?」「え、えーっ!?」(そ、そんなことって……)「無茶苦茶なんだけどさ。でも、オレもちょっとだけ今、思っちまったんだ。もしそんなことが本当に出来るなら、オレ……ララも、春菜ちゃんも、それに古手川だって、みんな幸せにできるのかもしれないな、って」「あ……」「あ、ごめん。オレ、なんか偉そうなこと言っちまった」結城君が照れくさそうに頭を掻く。私はなんだか、気が抜けたというか、感動したというか、驚愕したというか、自分の信じていたものが根底から覆されたというか、狐につままれたような印象を受けていた。(そんなのって……許されるの!?)もし。そんなことが許されるのなら、さっきまで私が必死で思い悩んでいた事は一体何だったのか。私はまた、ララさんの心の底知れない大きさに驚いて、自分が恥ずかしくなっていた。ふう、と私はため息をつく。「ララさんって、本当にすごい人だね」「本当。何考えてるのかさっぱり分かんねーよ」ハハハ、と二人で笑い合う。「それで……さ」「え?」「あんまり、女の子同士で抱き合ってると……ちょっと恥ずかしいんだけど……」ハッ、と私は今頃気が付いた。私が抱き着いていたのは、結城君なんだけど、リコちゃんだった。私がさっき頭を埋めて泣いていたのは、リコちゃんのおっぱいの間……。「ご、ご、ごめんなさいっ」慌てて顔を真っ赤にして、私はパッとリコちゃんの身体から飛び退く。そして一瞬二人で見つめ合って、どちらからともなくプッと吹き出して、アハハッと笑い出した。「じゃ、そろそろ出ようか」リコちゃんが私に手を差し出す。「うん」私がリコちゃんの手を取る。私達は、二人仲良く並んでお風呂場を出た。「あ、お姉ちゃん? 今日、お友達の家に泊まるから……え? ち、違うよ!女の子のお友達! も、もう、本当だってば! ……あー、信じてない! ちょ、ちょっと、お姉ちゃん!」一方的に電話を切られた私は、ムッとしてちょっと膨れっ面をしていた。「どうだった?」「まったく……私の言うこと全然聞かないんだから、お姉ちゃんったら!」「あははは……」リコちゃんが私の顔を見て苦笑いをする。「でも、春菜ちゃん、そんな顔もするんだね」「えっ!?」恥ずかしくて赤くなっちゃう。「やだ、私ったら……」「でも、すっごく可愛いよ。春菜ちゃん」「えっ」もう、私の顔は真っ赤っか。「もう、結城君のバカ……」「あはは。じゃ、オレの部屋に来る?」私達は二人で結城君のお部屋にやって来た。部屋を見渡すと、ちっちゃいかごの中にセリーヌちゃんがスヤスヤと眠っている。「あ、セリーヌちゃん。可愛いね」「あはは……寝てる時はいいんだけどね」リコちゃんがそんな事を言っていると、セリーヌちゃんが起き出して眠そうに目を擦っている。そして、リコちゃんを見付けると、「まうーっ!」ガバッ、とリコちゃんに飛びかかって抱き着いた。「あっ!? セリーヌ!?」そして、リコちゃんの着てるTシャツをめくって中に入り込んで、「あっ、ちょ、ちょっとっ……あんっ!?」リコちゃんのおっぱいをチューチュー吸い出した。「あーっ……や、やめっ……セリ……あっ……あんっ……あはんっ……!」セリーヌちゃんにTシャツをめくられて、リコちゃんおっぱい丸出しになっちゃった。顔が真っ赤になって、ペタリとベッドの上にへたりこんじゃって、頭が仰け反っちゃってる。「あ……やめ……あんっ……な……なんで……こんな……あはっ……いやぁっ……!」もうリコちゃん、セリーヌちゃんにベッドの上に押し倒されて手足がピクピクしちゃってる。顔がもう汗だくになっちゃって、ハァ、ハァってエッチな声出しちゃって、なんかすっごく感じちゃってるみたい……。「あん……セリーヌぅ……や……やめてぇ……もう……やっ……あはっ……!」チュポンッ!音を立てて、セリーヌちゃんのお口がリコちゃんのおっぱいから離れた。セリーヌちゃん、美味しそうにペロッと舌なめずりなんかしちゃってる……。「あぁ……はぁ……はぁ……」リコちゃんが顔を真っ赤にして荒い息をついてる。リコちゃんのおっぱい……うわぁ……乳首が立っちゃってる……。「まうーっ!」あっ!?「やんっ!?」セリーヌちゃん、リコちゃんの立っちゃった乳首をちっちゃい手でギュッと掴んで、「まうまうっ♪」「やんっ! あんっ! いぎっ! あーっ! やめ……あはんっ!!」おもちゃみたいにギューギュー引っ張ったりこね回したりして遊んでる。「まうーっ!」あっ!手でリコちゃんの乳首掴んだままもう一個の乳首に吸い付いて、またチューチュー吸い出した……。カプッ!「あっ……いぎいいぃっ!! かっ……噛まないでっ……あっ……いいいいぃっ……!!」リコちゃん、セリーヌちゃんにおっぱい噛まれたみたい。なんかすっごく痛そうに涙ポロポロ流して頭をぶんぶん振り回してる……。「いたっ……いたいっ……やっ……やめ……やめてぇっ……あっ……!」チュポンッ!またセリーヌちゃん、お口をおっぱいから離した。「はあぁ……はあぁ……もぅ……やだぁ……」リコちゃんのお顔、もう真っ赤っか。汗がいっぱい出てて、よだれまでタラっと垂らして、涙もポロポロ流してて、すっごくエッチ……。息は荒くなってるし、手足がダランとなってるし、乳首は両方ピンと立っちゃってるし……。「まうまうっ♪」「あひぃ!?」あっ!セリーヌちゃん、リコちゃんの乳首を両方手で掴んで、また引っ張ってコネコネし始めた。「あはぁんっ……やぁんっ……やめてぇっ……乳首ぃ……感じやすくなってるのにぃっ……はああんっ……あはあんっ……はうぅっ……いぃっ……!」あっ……リコちゃん、さっきよりもっとエッチな声出し始めた……。「はああぁんっ……はっ……春菜ちゃんっ……見てないでっ……止めてぇっ……」え!?ど、どうしようかな……。とりあえず、セリーヌちゃんを観察してみる。「まう、まう♪」すっごく嬉しそうで、楽しそう……。あ、そっか。セリーヌちゃんにとって、リコちゃんって育ててくれたお母さんなんだ。だから、お母さんのおっぱいチューチューできて、すっごく嬉しいんだね……。うふふ、可愛いな……。「な……なんでぇっ……止めてくれないっ……あはっ!?」カプッ!またセリーヌちゃん、リコちゃんのおっぱいに吸い付いた。チューッ、チューッ!「あひゃあぁんっ! いひいぃんっ!」さっきより力いっぱい吸ってるみたい……。リコちゃん、もうたまんないって顔して、おっぱいをセリーヌちゃんのお口の方に突き出して、体を仰け反らせて手足をジタバタさせて、太ももをモジモジ擦り合わせて……。顔は真っ赤っかで、汗と涙がいっぱい出てて、よだれもいっぱい垂らしてて……。「あひゃああぁっ……ひっ……いいいいぃっ……!!」」あっ……手足がピンッとなって……体がブルブルしてきた……。「も……もぅ……もう……ら……らめぇ……いっ……いっ……いいぃっ……いひゃぁんっ!!」ビクンッ!あっ!リコちゃん、体から力が抜けたみたいにクタッとなって、ほっぺたが真っ赤になって、目がトロンってしてて、ハァ、ハァって言ってて、お口からよだれが流れっぱなし……。も、もしかして……。リコちゃん、イッちゃったの?男の子なのに、おっぱいで?赤ちゃんのセリーヌちゃんに、されちゃって?うわぁ……。な、なんか、イケナイものを見ちゃったみたいで、ちょっとドキドキしちゃう……。「ひゃ……ひゃるにゃひゃん……なんれ……」リコちゃん、もうお口が回ってない……って、あっ?「まうーっ!」カプッ!「あひゃうんっ……!」またセリーヌちゃん、リコちゃんのおっぱいに吸い付いちゃった。チュー、チュー!「あひゃあぁんっ……もう……いいはへんに……あひゃっ……あひぃっ……ひいんっ……!」ふぅ……。でも、リコちゃんが男の子なのに私よりおっぱいがおっきいから、セリーヌちゃんがチューチューしたくなるんだよね。仕方ないんじゃないかなぁ……。私をいっぱい悩ませた罰だよ、結城君。「ろうひて……はりゅっ……あはあんっ……いっ……いひっ……いいいぃーっ!」またビクッとしてクタっとなったリコちゃんを見ながら、私はちょっと意地悪なことを考えて、クスッと笑ってしまった。「春菜ちゃん……グスッ……どうして止めてくれないんだよぅ……ひどいよぅ……」「あ、あはは……ご、ごめんなさい、つい見とれちゃって……」「うぅ……春菜ちゃんの意地悪ぅ……ヒック……」セリーヌちゃんに何回もおっぱいでイカされちゃったリコちゃんは、なんだかプライドが傷ついちゃったみたいで、涙を流して鼻をグスッてさせながらイジケてベッドの端で足を抱えて座り込んでる。セリーヌちゃんは満足した様子で、またスヤスヤカゴの中で眠ってる。でも……。リコちゃんって、おっぱいおっきいし、可愛いし、感じやすいし……セリーヌちゃんをきちんと育ててるし、優しいし、責任感もあるし……なんだか私よりずっと女っぽくて、すっごくお母さんに向いてるよね……。「ね、リコちゃん」「なんだよぅ……」「猿山君と結婚しない?」「ええっ!?」リコちゃん、びっくりしてこっちに振り返った。「な、な、なに言ってんだよ! 春菜ちゃんっ!?」「だって、そんなにおっぱいおっきいんだもん。リコちゃん、いいお嫁さんになれるよ」「そ、そ、そんなのって……」「だって、結城君とララさんと私と古手川さんが一緒に結婚できるんなら、一緒にリコちゃんと猿山君が結婚しても、いいんじゃないかな」「えーっ!?」リコちゃん、顔が真っ青。「そ、そんなの、絶対無理! 無理ったら無理! だめっ!!」必死で否定するリコちゃん。「うふふ。冗談だよ」「も、もう、春菜ちゃん……。心臓に悪い冗談はやめてよぅ……」でも、こっそり私はその光景を想像してみた。私とララさんと古手川さんが一緒に結城君の子供を産んで、リコちゃんが猿山君の子供を産んで、一緒に子育てしてみんなで遊んで……。(結構、いいかも……)私は目の前で冷や汗をいっぱい流してオロオロしてるリコちゃんを見ながら、ちょっとイケナイ妄想に胸を膨らませていた。「よし。こんなもんかな」リコちゃん、何か古手川さんに手紙を書くって言って、随分悩んでたみたいだけど、ようやく書けたみたい。「なんて書いたの?」「ひ、ヒミツだよっ」リコちゃん恥ずかしがって慌てて手紙を隠した。それを机の中にしまうと、リコちゃんが言った。「じゃ、そろそろ寝ようか。どこで寝る?」私は、ちょっと顔を赤くして小さい声で言った。「り、リコちゃんと一緒に寝てもいいかな……。女の子同士だし……」「え!? い、いいけど……女の子同士だし、ね」私とリコちゃんは二人で顔を見合わせると、二人ともララさんから借りた女の子物のパジャマを着て、電気を消して一緒にベッドに入った。(リコちゃんの、おっぱい……)なんだか、今日は朝からずっとおっぱいのことばっかり考えてた気がする。私はなんだか、リコちゃんのおっぱいがすっごく気になっていた。「ね、リコちゃん」「ん?」「おっぱいを枕にしてもいい?」「えっ!?」リコちゃんの返事を待たずに、私はリコちゃんのおっぱいの間に頭を埋める。「あ、ちょ、ちょっと……」リコちゃんの鼓動の音が聞こえる。すっごく暖かい。結城君の心の暖かさ。リコちゃんのおっぱいの暖かさ。なんだか、すごく安心する……。「春菜、ちゃん……?」私、今日はもう、すっごく疲れちゃったみたい。色々悩んだり、泣いたり、笑ったり……。でも、最後に行き着けたのがここなら……世界で一番安らげるこの場所なら……今日はきっと、私の人生で一番良い日だったんだな。そう思った。次の日、私と結城君は学校に来ていた。古手川さんとのお話が終わって私の所に来た結城君に声をかけてみる。「古手川さんとのお話、どうだった?」「んー。これからまた、こってり搾られそうだな」「そう……。大変だね……」私達がそんな会話をしていると、「はーい♪ 結城ぃ。お・ひ・さ・し・ぶ・り!」里紗が私達のところにやってきた。「うぐっ……籾岡っ……」なんだか結城君が露骨にイヤな顔をして里紗を見る。「あーら、何その顔はぁ。昨日はあんなに可愛かったのにぃ」「こ、こらぁっ!?」慌てて結城君が顔を真っ赤にして里紗の口を塞ごうとする。(あれ? 昨日はって……里紗、気付いてるのかな? リコちゃんが結城君ってこと……)里紗が私に向かってニヤリと笑いかけて来る。「春菜も、またリコりんと会いたいよねー?」「えっ」いきなり振られてちょっととまどっちゃったけど、「うん」ニッコリ笑って私は頷き返す。「は、春菜ちゃんっ!?」結城君がそう言った途端、里紗の目がキラリと光った。「今あんた、『春菜ちゃん』って言ったわね」「え……あ!」結城君が慌てて口を手で隠す。「は、はーん……あんた達、さては……。昨日何があったの? 言いなさいよ」「な、なんでお前に言わなきゃいけないんだよ!」ゆ、結城君……その言い方は、何かあったって言ってるみたいなものだよね……。さらに里紗の目が鋭く光りだす。急に里紗は猿山君の方を向いて、「おーい、猿山。リコりんについて、面白いこと教えてあげようかー」「えっ!? マジッ!?」「こ、こらーっ!!」なんだか、とってもややこしい事になってきたみたい。これからもこんな事がずっと続くのかな……。私はこれから続く私達の未来のことを思って、少しだけクスッと笑ってしまった。(終)
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