あの夏の日のプールでの告白から、リトはララ・唯・里紗と結ばれ、ついに最愛の春菜とも愛を育むことが出来た。そんな幸せ絶頂の日の翌日――「……」唯は、この世の怒りを全て溜め込んだような剣呑な顔で窓際の席に座っていた。(結城くんのバカ……結城くんのバカ……!)唯の頭の中は、自分との初めての愛の交わりを果たしたその日に里紗と浮気した、にっくきリトの顔で埋め尽くされていた。そこにリトがやってきた。「おはよう、唯」にこやかに唯に笑いかけるリト。しかし唯は全く反応しようとせず、ただ窓の外を眺めるだけだった。「唯?」疑問に思ったリトがもう一度声をかけると、険しい表情のままゆっくりと唯が振り返り、おどろおどろしい声を吐き出した。「うそつき……」「え?」何のことか分からない、と言った風にキョトンとした表情を浮かべるリト。その飄々とした態度に神経を逆撫でされ、唯の激情に火が点いた。「結城くんの、うそつき! 浮気者! すけべ! 変態!」 「おいおい……」なだめようとするリトの手を振り払って機関銃のようにまくし立てる。「私、信じてたのにっ! この、大うそつきっ!!」一しきり言い放った唯は肩で息をしていた。「はぁ、はぁ、はぁ……」唯は鞄の中から裁縫箱を取り出した。フタを開くと、中には針がびっしり突き刺さった針山があった。「結城くん、あなた約束したの覚えてる……?」「?」「ウソついたら針千本飲むって、言ったわよね……」ビッ!唯がリトの目の前に、ハリネズミのような針山を差し出した。「さあ! 約束したでしょ! 飲んでよ! この、大うそつき!!」顔を真っ赤にして喚き立てる唯。「……」その様子をリトは冷静にじっと眺めて、針を一本針山から抜き取った。「え……」呆然とそれを見つめる唯。「これでいいのかい?」リトは口を大きく開けると、ポイッと針を喉奥に放り込み、手の平を広げて見せた。手の平には、何も持っていない。「えっ……!? ま、まさか……本当に……」途端に唯の顔が青ざめていく。そして──「うっ!」リトが突然、胸を押さえて苦しみ始めた。「ちょ、ちょっと、結城くん! ほ、本当に飲むなんて!」慌てふためいてリトに縋り付く唯。「ごほっ……ごほっ……」リトは苦しそうに咳き込み始めた。「だ、ダメ! 結城くん! すぐに吐き出して!」「ダメだ」「な、何言って……」「唯の怒りが収まらない限り、オレはこれを飲まなきゃいけないんだ」そう言って、もう一度針山に手を伸ばす。「分かったから! もう、怒ってないから! 止めて、結城くん!」必死でリトの手を押さえる唯。「そっか。じゃ、止めた」リトが急ににこやかな笑みを浮かべて、何事も無かったように唯を見つめた。「えっ……?」呆気に取られる唯。「大丈夫だぜ。ほら」くるりと手の平を裏返すリト。「あっ……!!」リトが喉に投げ入れたと思われた針は、人差し指と中指の間に挟まれて、手の後ろ側に隠されていたのだった。「……!」唯がぷるぷる体を震わせて、涙を流し始めた。「もう……結城くんの……バカっ!!」怒鳴りつけて泣きじゃくる唯をリトはそっと胸に抱き寄せ、愛しげに手の平で唯の頭をゆっくりと撫でる。「ごめんな、唯……」「うっ……うっ……結城くんの……バカ……」「オレの話、聞いてくれるか?」「……」無言で、コクリと頷く唯。「あの時さ、オレたち川原で抱きあったろ」リトが唯にだけ聞こえる声で、耳元に囁きかける。「あの時な、籾岡、泣いてたんだ」(え……?)一瞬、唯はリトの言葉の意味が分からなかった。なぜ、里紗が泣いているのか。里紗は、ふざけて唯をからかったのではなかったのか?考え込む唯の耳元に、さらにリトが囁きかけてくる。「オレって、ダメな奴だよな」「え……」「女の子が泣いてるのを見ると、すぐに優しくしたくなっちまう」「……」「ごめんな、唯」リトは涙に濡れた唯の瞳をじっと見つめた。(あ……)トクン。その澄んだ瞳に見つめられて、唯の胸が高鳴り始めた。「これからはオレ、絶対唯が悲しむようなことはしないよ」「……!」カァ……リトにじっと見つめられて、唯は胸の高鳴りを抑えきれずに目を反らした。「ど、どうせ……また、ウソついてるんでしょ……」「確かめて見るかい?」「え……」「オレの唇が、ウソをつけるかどうか」「……!」リトは唯のアゴに手を当てると、クイッと自分の方に傾けた。「あ……だめ……結城く……ん!」リトは唯の顔を引き寄せ、強引に唇を奪った。「うひょー、やるじゃない! あいつ!」リトと唯の痴話喧嘩を遠目に眺めていた里紗があっけらかんと声を出した。「ねー、リコりん♪」里紗が振り向くと、そこにはふぅ……と胸を撫で下ろすリコの姿があった。(やれやれ……)事態を収拾出来る自信が無かったリトは、ララに頼んで全ての事情を伝え、モシャクラゲの変身したイケメンリトに唯の相手を頼んだのだった。「お! 唯ってば、トロトロになっちゃって……。うわ、あいつ、キス上手そう……」放心状態で椅子にへたり込んだ唯を見た里紗が、興味深そうに舌なめずりをした。「私も、ダーリンにしてもらっちゃおっかな! じゃね、リコりん♪」「お、おい! ちょっと……」そう言ってリトの元に歩み寄る里紗。そして、ブチュッ!あっという間にリトの唇に吸い付いた。「う、ううぅ……」リコは複雑な表情で、自分の恋人達が自分の体を持つ別人にキスする様を見せ付けられていた。「あー里紗、ずるいー! 私もするー!」そこにララまでが近付いていき、里紗と交代でブチュッとキスし始めた。「う、うわああぁ……」だんだん顔が青ざめていくリコ。(こ、これが、寝取られって奴なのか……トホホ……)自らの意気地のなさが招いた事態とは言え、少し落ち込んでしまうリコ。そんなリコの元に、事情を知っている春菜がやってきた。「え、えっと……結城くん、すごいね……」冷や汗を掻きながら、次々と女子にキスするリトを観察する春菜。「全く……調子に乗りやがって……」「全くだ!!」急に、春菜の反対側から猿山が現れた。「さ、猿山くん……」途端に女の子言葉にチェンジするリコ。「リトの奴……あんなに女の子をとっかえひっかえしやがって! なんてウラヤマシイ!! くぅーっ!!」猿山が拳を握り締めて涙を流し、その次の瞬間、「だからさ、オレたちもしようぜ!」そう言ってにこやかな微笑みを浮かべ、リコの両肩に手を着いて顔を近付ける。「え……えっと……あの……その……」椅子に座った状態で肩を両手で押さえ込まれたリコは、逃げ出す事も出来ない。(う、うわああぁ……)以前、うっかり雰囲気に流されて猿山にキスしてしまったリコ。その時からすっかりリコのことを恋人と思い込んでしまっている猿山は、グッと肩を強く掴んで躊躇なくリコに迫ってきた。(は、春菜ちゃん……助けて……!)リコは助けを求めるように春菜の方に振り返るが、春菜は冷や汗を掻いたまま申し訳なさそうに首を振るだけだった。「リコちゃん、こっち向いて」頬に手を当てられ、無理やり猿山の方を振り向かされるリコ。目の前では興奮に赤く染まり、唇を突き出してキスを迫る猿山の暑苦しい顔があった。(ひ、ひいいいぃ!!)そしてとうとう逃げ切れずに、ぶちゅううううっ!!リコは猿山にどろり濃厚ディープキスをされてしまった。にちゃ……ぬちゃ……猿山の獰猛な舌の動きに口中を蹂躙されつつ、リコは考えていた。(あぁ……こんなことなら、素直に唯に怒られときゃ良かった……)どよーん……恋人ばかりか、自分の男のプライドまでも奪われてしまったリコは、午前中の間何もやる気が起きず、机に突っ伏したままどんよりしていた。そして3時間目が終わった休み時間。「さ、リコりん。おトイレ行きましょっ♪」満面に笑みを浮かべて、里紗が声を掛けて来た。「ううぅ……」リコは苦々しい顔をして椅子から立ち上がり、しぶしぶ里紗に着いて歩き出した。丁度その頃。猿山は人気の少ない体育館の男子トイレで、携帯電話の画像を見つめて必死でペニスをしごき上げていた。「うっ……うっ……リコちゃんっ!!」ドピュッ!「はぁ……はぁ……はぁ……リコちゃん……」リコとのキスで興奮していた猿山は、リコの寝顔を見ていて溢れるリビドーを抑えられなくなり、写真に撮ったリコの姿を見て自慰行為に耽っていたのだった。「ふぅ……。よし、決めた!」グッと拳を握って、猿山は決意を固めた。「オレ、今日リコちゃんとヤる!!」遊園地でのデートの時も、今日も、リコの反応はそう悪い物ではなかった。きっと、熱意を込めて頼めば分かってくれるに違いない。「うおーっ! やるぜーっ!」そして、猿山が精液で濡れたペニスを拭き、ズボンを穿いて廊下に出ようとした時──「うっふっふ……到着ー」(え……)廊下の向こうから里紗とリコが連れ立って歩いて来た。(うわ!? な、なんでこんなとこに!?)まずい場面に出くわしたような気がして、猿山は男子トイレの入り口に身を隠して様子を伺った。里紗とリコは隣の女子トイレに入り、2人一緒に一番奥の個室に入った。(2人で一緒の部屋に入った……?)その様子をこっそり見ていた猿山は、辺りを伺って誰もいない事を確認してから、足音を立てないように女子トイレに忍び込み、里紗とリコが入った個室のドアに耳を当ててじっと耳をすませた。個室の中ではリコが便座に座り、里紗がその前に立ってリコの姿を見下ろしていた。「うっふっふー。リコりん、2人っきりだね」「ふぅ……」リコはまた、疲れた顔でため息を吐いてしまう。「あら? どうしたの、リコりん」「なんか、ちょっと疲れて……」「えー? せっかく彼氏からキスしてもらえたのにー?」「お、お前、見てたのかっ!?」(か、『彼氏』!? そ、そっか、やっぱオレ達そう見えるのか!)猿山はドアの外で一人満足気にほくそ笑んでいた。「か、彼氏、なんかじゃねーよ!」「えー? そうなのー?」(うわぁ……リコちゃん、否定しないでくれー!)一気にがっかりしてしまう猿山。「ふーん。やっぱりリコりん、女の子の方が好きなんだー」「そ……そりゃ、そうだろ!」(えぇっ!? り、リコちゃんってそっちの趣味が!?た、確かに、ちょっと男の子っぽいって思ってたけど……)リコの衝撃の告白に猿山は愕然としてしまう。「じゃ、リコりんのお望み通り。女の子同士の味、教えてア・ゲ・ル♪」里紗は舌なめずりをして顔をぐいっとリコの前に寄せた。「な!? お、おいっ! そ、そういう意味じゃ……」「うっふっふー。遠慮しなくていいのよ、リコりん。おっぱいもまた、ずいぶん成長したみたいだしぃ。うふふ……」もにゅ、むにゅ、ぷにゅ……ノーブラのリコの制服の上から乳房を揉み解す里紗。「あっ!? おいっ! こらっ! 止めろっ! あんっ……」「あーら、こんなに大きくなったのにまだブラも付けないのぉ? リコりん、やっぱり私に揉まれたくて、わざとしてるんでしょう? うふふ……」「あんっ! や、止め……ああっ……ん……んぁ……」里紗に乳房を揉まれるうちに、だんだんリコの声が甘ったるく甲高くなってゆく。(も……籾岡のやつ、何やってやがる……!?)猿山は興奮に息を荒げながら、必死で扉に耳を押し付けていた。が、その時。『あ』個室の中から間の抜けた声が聞こえてきた。リコは元のリトの姿に戻っていた。「あーあ、なんでここで元に戻っちゃうかなー。いいとこだったのにー」「し、仕方ねーだろ! そのために来たんだから!」リトがトイレに来たのは、『ころころダンジョくん』の効果が切れるため、もう一度女の子に変身し直すためなのだった。「えー!? 私とリコりんが、女の子同士の禁断の愛を育むためじゃなかったのー?」「ち、違うっ!」「ふーん。あんなに気持ち良さそうにしてたのにー?」「う……」リトは恥ずかしげに、少し顔を赤らめた。(な、なんだ!? この声……リト!?)里紗とリコしかいないはずの個室から聞こえて来たのは、確かにリトの声のように思えた。(ど、どういうことだ!?)猿山は必死で扉に貼り付けた耳をそばだてた。「ま、いーか。じゃ、約束通り、ダーリンにフェラして上げるね」「お、おい!」里紗は顔をリトの股間に近づけ、スカートの中に手を入れてペニスを取り出した。「ま、まずいって……こ、ここ、学校だし、女子トイレだし……」「学校だから、いーんじゃない? うふふ……」「えっ……」パクッ!「うっ!」里紗がリトのペニスを咥え込んだ。そして唇を窄ませ、ゆっくりとしたストロークでリトのペニスを擦り上げる。じゅる……じゅる……「う……うぅ……」リトの顔が快楽で歪む。ぺちょ……ペニスから唇を離した里紗が、上目遣いでリトに問いかけてくる。「ね、ダーリン。女と男、どっちが気持ちいい?」「ど、どっちって……そんなの、比べられねーよ」「だってぇ。女と男の快感、両方知ってる奴なんて、滅多にいないんだしー」「お、オレは、男だっ!」「ふーん……」(どういうことだ!? ま、まさか……)猿山は青ざめて、じっと扉の向こうの会話に聞き入っていた。ちゅ……「あっ……」ぺろ……ちゅぱ……里紗はリトのペニスの竿に唇を押し付け、舌で啜りながらペニスを上下に舐め擦った。「あ……あ……あぁ……あっ……」目を閉じて腰を震わせ、快楽に身悶えるリト。その様子を見た里紗が、クスリと笑みを浮かべた。「ほんっと、ダーリンもリコりんも、受身なんだから……。イジメたくなっちゃうじゃない? うふふ……」里紗はリトの腰の上に跨り、パンティをズリ下ろした。「り、里紗……」「でも、こればっかりは、リコりんじゃ出来ないもんね」ぺト。「うっ!」里紗の秘所にリトのペニスの先端が当たり、ズ、ズ、ズ……「う、ううっ……」「あ、はん……」リトのペニスが里紗の膣に挿入されていく。「ふぅ……入っちゃったね」「う、うぅ……」里紗は一つため息をつき、艶かしい声でリトを促した。「ねぇ、証拠を見せて……。あんたが男だってことの……」「う……くそっ!」リトは里紗の胴に手を当てて少し持ち上げ、ズッ!「あはっ!」里紗の膣をペニスで突き上げた。じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ……「ん! ん! んん……」何度もその動作を繰り返し、里紗の膣壁をペニスで擦り上げる。「ど、どうだ……はぁっ……はぁっ……」「う……く……あっ……ま……まだまだ、ね……ん!」「く、くそっ……!」「あ……」リトは里紗の体を床に下ろし、里紗に扉に手を着かせてバックで挿入し始めた。パン! パン! パン!「う! う! うおっ!」「あ……あ……んんっ……ダーリン……んっ……」個室の中にリトの腰と里紗の尻肉がぶつかり合う音が響き渡る。「……」猿山は無言で扉から離れ、音もなく女子トイレから出て行った。「やばい……そろそろ、出るっ……」「はぁ……きょ……今日は、外に……」「う……うぅっ!」ズボッ!リトが里紗の膣からペニスを引き抜いた。「う、うおおっ!」リトが自分のペニスを手で擦り、里紗の腰に向かって射精しようとした瞬間、くるりと向き直った里紗がすかさずリトのペニスを手で押さえ、射精を手で受け止めた。ドピュ、ドピュ、ドピュ……「ふぅ……セーフ。あんた、私の制服汚すつもりだったの?」「す、すまん……」申し訳なさそうにポリポリ頭を掻くリト。「じゃ、この責任は、リコりんに取ってもらおうかな」「え……?」里紗は棚の上に置いておいた『ころころダンジョくん』を手に取り、リトに向けて撃った。ビビビ……「うっ!?」再びリトは女の子のリコに変身した。「さーて、リコりん。これ、お口で綺麗にしてくれる?」「い!?」里紗が精液がベットリ付いた手の平をリコの前に差し出した。「そ、そんなの……」「あらあ? 私の手をこんなに汚しといて、何もしてくれないのぉ?」「うぅ……」里紗は手の平の精液を人差し指ですくい、「えい」ちゅぷ。「んー!?」そのままリコの唇に突き入れて、指でリコの暖かい粘膜の感触を味わいながらリコの舌と唇に精液をなすり付けた。「んふふ……なんだか、リコりんにフェラしてもらってるみたい……」「んんん……」苦々しい表情で眉を顰めるリコ。「じゃ、手のひらも綺麗にしてね」里紗は手の平をリコの口の前に持ってきた。「う、ううぅ……」リコは恐る恐る震える舌を里紗の手の平に近付け、ペロリ、ペロリと男の自分が出した精液を舐め始めた。「うふふ……リコりん、精液の味、気に入った?」「うー……」ペロ、ペロ……恨めしそうに里紗を上目遣いで見つめながら、リコは手の平の精液を舐め取った。「はい。綺麗になったよ。お利口さん」里紗は綺麗になった手で、リコの頭を優しく撫でた。「はぁ……」リコは一つため息を吐いた。「ったく……。お前、オレのことなんだと思ってるんだ」「んー? えっと、リコりんは私のカノジョでぇ、ダーリンは私のカレシ。そんで、2人とも私のオモチャ、かな?」「はぁ……」悪びれもせずに言い放つ里紗の様子に、またリコはため息を吐いた。「じゃ、帰ろうか」「うん……」そう言って2人が手を洗って女子トイレを出ると、そこには猿山が立っていた。「さ、猿山……くん!?」驚いて猿山に声をかけるリコ。しかし、猿山はじっとリコの姿を見て無言で立ち竦んでいた。「ど、どうしたの、猿山くん」慌ててリコが声をかけると、猿山はボソリと寂しそうにつぶやいた。「リコちゃん……」(はっ!?)そこでリコは気が付いた。(ま、まさか……気付かれた!?)しかし、猿山は急にニッコリと笑って声を掛けて来た。「いやー、偶然だね、リコちゃん。どうしたの、こんなとこで」「え!? え、えっと……」「もしかして、籾岡と女の子同士でエッチしてたとか?」「えっ!?」その言葉を聞いて、里紗がニヤリと猿山に不敵な笑みを返した。「んっふっふー。バレちゃ仕方ないねえ。猿山、私とあんた、ライバルよん?」「バーカ。お前なんか相手になるか。オレとリコちゃんは、もう固い愛の絆で結ばれてるんだぜ!」「ほっほー? 言ってくれるじゃない? ね、リコりんは私のよねー」「お、おい、こらっ」じゃれ付こうとする里紗を必死で留めるリコ。「おい、もう休み時間終わってるぜ。はやく帰らないと、また古手川がうるさいだろ」猿山はそう言って踵を返して歩き出した。それに着いて里紗と並んで歩きながら、リコは考えていた。(女の子同士で……ってことは、気が付いて無いのか? 猿山の奴……)猿山はただひたすら、無言で歩き続けていた。その日の昼食時間。てっきり猿山に昼食に誘われるかと思っていたリコだったが、「ごめん、リコちゃん! オレ、今日ちょっと用事があって」猿山はそんなことを言って、走ってどこかに行ってしまった。(猿山……?)ちょっと不審に思ったリコだったが、「どうしたの、リコさん。猿山くんと一緒にお弁当食べないの?」丁度そこに唯がやってきた。「う、うん……。なにか、用事があるんだって」「そうなの。じゃ、一緒に食べようか」「うん」結局、リコは唯と一緒に屋上で昼食をとることになった。「わー、これ美味しいね! リコさんが作ったの?」「え、えっと、これは妹が……」「へー、妹さんが。料理上手いのね」「う、うん……」(なんか、前も同じような会話をしたような……)そして2人の弁当箱が空になった頃、唯が小声で言った。「えっと……リコさん。ちょっとだけ、聞いてくれるかな」「う、うん……」唯は一瞬間をおいて、頬をほんのりとピンクに染めてゆっくりと語り始めた。「私ね……おととい……。結城くんと……エッチ、しちゃった……」(や、やっぱり、その話か……)リコはもちろん誰よりも良くそのことを知ってはいたが、改めて女の子同士の会話として聞かされると、少しとまどいを覚えてしまった。「そ、そうなんだ……。ど、どうだった……?」「……」唯は自分の中の想いを溜め込むようにゆっくりと間を取り、囁くような小さな声でつぶやいた。「すっごく……良かった……」唯の頬の赤みがさらに増し、艶やかな長い黒髪の間ではもう顔全部が赤く染まり切っていた。コクリ。思わずリコは喉を鳴らしてツバを飲み込んでしまう。一度大きく息を吸った唯が、ふぅ……と長いため息を吐いた。「私……エッチなんて、自分がやってみるまで、ハレンチなこととばっかり思ってたんだけど……まさか、あんなに素敵なことだったなんて……」唯はそっと自分のお腹に手を当てて、うっとりした表情で目を閉じた。「結城くんが私の中に入ってきて……一つになって……熱くって……ドクンドクン言ってて……あぁ、これが結城くんなんだな、って……私ちょっと感動しちゃって……」唯は慈しむような手つきで自分の体をそっと抱き締めた。「結城くん、とっても優しい手付きで私の体を抱き締めてくれて……私、すっごく安心しちゃって……嬉しくって……」瞳を閉じて陶酔し切った表情で、はぁ……と熱いため息を吐き出す唯。「じっと私の目を見つめて……私のこと、『唯』って呼んでくれて……『好きだよ』って……」もう唯の顔どころか首や手までも真っ赤に染まり切り、周りの空気まで熱くなってしまったようだ。(古手川……そんなに良かったのか……)ふぅ。もう一度ため息をついた唯がほんのりピンクに染まった顔を上げ、明るい表情でリコに微笑みかけた。「リコさん。私、結城くんのこと好きになって、本当に良かったと思う」「うん……」「それなのに……」「え?」急に唯を取り巻く空気の温度が変わっていく。「その日のうちに、他の女の人と、エッチしちゃうなんて……!」メラ、メラ、メラ……(ひ、ひええええ!)唯の内に秘められた怒りの炎がリコにまで伝わってくるようだ。慌ててリコが言い訳を始める。「え、えと……き、きっと、な、なんか、事情があったんだよ! そ、そう!」「そうなのよね……」「え……?」ふぅ。唯は軽くため息をついてから言った。「私、結城くんのことも、籾岡さんのことも、まだ良く分かってないみたいだから。もうちょっと、2人のお話を聞いてから考えてみることにしたの」「そ、そう……」リコはほっと胸を撫で下ろした。唯はリコにニッコリと微笑みかけながら言った。「だからリコさんも、猿山くんのこと大事にして上げてね」「え……」「猿山くん、きっとリコさんのこと、本気で大好きだと思うから」「あ、あはは……」苦笑いしながら、リコは少し猿山のことを考えていた。(あいつ用事って、本当なのか?)いつもなら用事をほっておいても自分の所に駆けて来るはずの猿山が急に自分から離れて行ってしまったような気がして、リコは少しだけ、不安な気持ちになっていた。その頃、猿山は──「……」誰もいない暗い体育倉庫の片隅に膝を抱えてしゃがみ込み、じっと携帯電話の画面を眺め続けていた。放課後になった。(あれ……)てっきり、自分を誘いに来るかと思っていた猿山があっさり部屋を出て行こうとするのを見て、リコは思わず声を掛けてしまっていた。「猿山くん」声を掛けられた猿山は、ゆっくりとリコの方に振り向いた。「なに、リコちゃん」「え……えっと、良かったら、一緒に帰らない?」いつもの猿山なら、自分に声を掛けられたら大喜びで誘いに乗るはず。そう思っていたリコだったが、「……」猿山は俯いたまま、返事をしようとしなかった。(あれ……?)「ご、ごめんなさい! 忙しかったら、別に……」慌てて誤魔化そうとするリコの言葉を遮って、猿山が薄い笑みを浮かべて答えた。「そうだね。帰ろうか」2人並んでとぼとぼと歩き続ける猿山とリコ。今ひとつ会話も弾まず、なんとなく憂鬱な気分になってしまう。会話を盛り上げようと、リコが出来るだけ明るい声で話しかける。「え、えっと、さ、猿山くん、こ、この間のワールドカップ凄かったね」猿山が気落ちした口調でつぶやいた。「リコちゃん、サッカーとか好きなんだ」「え……あ、じ、実は、そうなんだ」「男の子みたいだね」「えっ……!?」ドキン。リコの胸が、大きく鼓動を打った。(やっぱり、バレてる……?)猿山が笑みを浮かべて言った。「リコちゃんってやっぱり、男の子みたいな女の子だよね」「え……そ、そうなの! 良く言われるの!」アハハ……2人で軽く笑い合う。そしてまた、沈黙が訪れた。「そう言えばさ」急に猿山が話しかけてきた。「知ってる? リトの奴って、中学の頃サッカーやってたんだよね」「え……あ、う、うん。し、知ってるよ」「サッカーやってる時のあいつ、結構かっこよくてさー。意外に女の子にモテてたんだぜ」「えっ……」突然の猿山の意外な台詞に動揺してしまうリコ。「そ、それ……ほんと?」「ああ。あいつが試合やってる時さー。グランドの端っこから女の子がこっそり応援してたりな」「ええっ!?」リコは慌てて猿山に向かって問い正し始めた。「そ、それって……まさか……」リコの胸がドキドキと高鳴り始めた。「お前の好きな奴」「は、春菜ちゃん?」「ああ」「うっひょー!! やったー!!」万歳して雄叫びを上げるリコ。そして、次の瞬間。「あ……」リコは、自分のしでかした事に気付いてしまった。「あ、えっと、その……」しどろもどろになって慌てて言い訳を始めようとしたが、猿山は、「良かったな、リト」そう言ってリコに寂しげに笑いかけ、手を振って言葉もなく立ち去って行った。「猿山……」カァ……カァ……無関心なカラスの鳴き声が響き渡る夕空の下。リコはただ、呆然とその場に立ちすくんでいた。バサッ。自室に着いた猿山は鞄を部屋の隅に放り投げ、ベッドに横たわって天井を見つめた。ただ呆然と、時間だけが経っていった。「……」いつしか日が暮れ、天井の染みの形が分からなくなる頃──「ちくしょう……」猿山は一言、ボソリとつぶやいた。頬には熱い涙の筋が出来ていた。グイッ。涙を拭い、ポケットに手を差し込む。取り出した携帯電話を開くと、以前デートした時に撮った写真が映し出された。幸せの絶頂で満面に笑みを浮かべた猿山、冷や汗を垂らしてどことなくぎこちない笑顔を浮かべたリコ。もう二度と帰って来ない、思い出の日の光景。「くそっ……」携帯電話の画像フォルダを開いてリコの写真を選択する。『削除しますか? はい/いいえ』冷たいメッセージが画面に表示される。「くっ……」『はい』の上にカーソルが立ち止まり、決定ボタンの上で指が震える。しかし――「う……うあぁ……!」猿山には、そのボタンを押すことは出来なかった。携帯電話をベッドに放り投げ、両手の拳でベッドシーツを殴りつける。「ちきしょー、なんで……なんでこんなに可愛いんだよ!!」猿山は肘を折って体を屈め、ただひたすら涙と鼻水でベッドシーツを汚し続けた。それからまた、30分が経った。「……」いつしか泣き止んでいた猿山は、強い決意の篭もった目で前を見据え、携帯電話を手に取ってボタンを押した。耳に当てた携帯電話から明るい声が聞こえてくる。『はい! なにー、猿山?』電話の相手はララだった。「ララちゃん。オレ、頼みがあるんだけど、聞いてくれるかな」『うん、いーよー。なになにー?』「実は……」「……」帰宅して間もなく男に戻ったリトは、ソファに座ってボーッとテレビを眺め続けていた。『ブルーメタリア見参! さー、覚悟しなさい!』テレビからルンの声が聞こえて来た。(こいつも、結構大変なんだよな……)しかし、少なくとも自分と違って、体と心の性が一致しないことはない。その意味では多少マシだとも言えた。そんなリトの所に美柑がやってきた。「どうしたの、リト。なんか暗いけど」リトの横に腰掛ける美柑。「いや……猿山が失恋しちまってさ」「へ? 確か猿山さんって、女のあんたが好きだとか言ってなかったっけ?」カンの鋭い美柑は、リトの遠まわしな一言だけで状況を理解してしまった。「もしかして、バレちゃったの?」「ああ」「そっか……。まあでも、いつかはこうなる運命だったんだし、仕方ないんじゃない?」「まあ、そうなんだけどな……」リトの脳裏に、女としてデートした時に見た、幸せいっぱいの猿山の笑顔が思い浮かんだ。(仕方、ないよな……)浮かない気分のまま、またリトは小さくため息を吐いた。その時。ピンポーン。玄関チャイムの音が鳴り響いた。「あれ? 誰か来たみたい」「あ、いい。オレが出るから」リトはソファから立ち上がり玄関へと向かった。「猿山……」そこにいたのは、少し視線を下げて真剣な表情をした猿山だった。「よう、リト」猿山はどことなく陰のある笑みを浮かべてつぶやいた。「さ、猿山……」どう受け答えしていいか分からず、うろたえてしまうリト。猿山が急にふーっと大きなため息をついた。「はぁ……。まさか、こんな冴えない野郎がリコちゃんだったなんてなぁ」「う、うるせぇな! し、仕方ねーだろ……」リトはちょっと頬を赤らめて言い返した後、申し訳なさげに少し俯き、小さくつぶやいた。「わ、悪かったよ……」猿山はそんなリトの顔を見て、ニヤリと見下すような笑みを浮かべた。「なあ、リト。お前、本当に悪かった思ってるのか?」「お……思ってるさ」「じゃあな、次の日曜日、オレにリコちゃんとデートさせろ」「はぁ?」驚いて顔を上げるリト。「場所は……そうだな。前、あんまりデート出来なかった遊園地にでもするか」「ちょ、ちょっと……お前、分かってるんだろ? リコちゃんは……」「リト!!」猿山は急に声を張り上げて、肩を震わせ始めた。「オレ、リコちゃんのこと、諦めようとしたんだ……。でも、ダメだった……」震える手で携帯電話を取り出し、リコと猿山の写真をリトに見せる。「どうしても、どうしても消せないんだ……オレには……」「猿山……」猿山は真剣な眼差しでリトを見つめた。「だから……最後に一回だけ、女の子としてオレとデートして欲しいんだ」ザッ。いきなり玄関で土下座を始める猿山。「お、おいっ」「頼む、リト! 一生のお願いだ! この通り!」「そ、そんなこと言われても……」リトが困り果てた表情で振り返ると、そこに立っていた美柑が優しげな表情でゆっくりと頷いた。リトはもう一度猿山の方に振り返って言った。「わ……分かったよ……」その瞬間、ガバッと猿山が立ち上がり、満面に笑みを浮かべた。「本当か? マジ? マジ? やったー!じゃあオレ、リコちゃんに無茶苦茶可愛い服買ってくるから! それ着て来いよ!」「あ、ああ……」「じゃ、またな! 次の日曜だぜ! 忘れるなよ!!」バンッ!猿山は勢い良くドアを閉め、結城家を後にした。「ふぅ……」ようやく元気を取り戻した猿山を見て安堵のため息を吐くリトの肩を、美柑がポンポンと叩いた。「じゃ、頑張ってね。お・ね・え・ちゃん」「はぁ?」振り返ると、美柑がニヤニヤした笑顔でリトの困った顔を見つめていた。◇ ◇ ◇ ◇ ◇土曜日の夜になった。『明日、朝9時だからな! 忘れんなよ!』「わ、分かってるって……」リトは猿山と携帯電話で会話していた。足元には、猿山からもらった衣類の入った袋が置かれている。『絶対、それ着て来いよ! 絶対だぞ』「分かった、分かった」『でさ、もう一つ頼みがあるんだけどな』「なんだよ」『明日はさ……。リコちゃんに、ずっと女の子言葉で喋って欲しいんだ』「え……でも、お前……」猿山は、リトが男だと知っているはずなのに。それでも?リトは少し疑問に思ってしまった。『お願いだから……』猿山の想いがこもった願いの言葉に、リトは仕方なく折れてしまった。「わ、分かったよ」『よし! じゃ、また明日な!』プチ。「ふぅ……」携帯電話のスイッチを切り、リトは一つため息を吐いた。「ね、リト!」そこにララがやって来た。「明日、猿山とデートするんだよね」「あぁ……」「えっとね、これ。猿山から頼まれたんだけど」ララはそう言って、リトに首輪のようなものを渡した。「なんだ、これ」「いいから、着けて見て!」促されるままリトが首輪をはめると、ブン……「あっ……」リトの体が女の子のリコに変身していた。「これ着けてる間、ずっと女の子でいられるんだよ! だから、急に戻っちゃったりする心配もないし!」「そ、そっか……」「じゃ、リコ! 明日はゆっくりデート頑張ってね! お休みー」「あ、あぁ……おやすみ」ララはリコを置いて自分の部屋に戻った。「ふぅ……」また一つ、リコはため息をついた。何気なく部屋の鏡の前に立ってみると、男物の服を着ている女の子の自分の姿が映し出されていた。「あ……」あまり自分の女の子姿をじっくり見たことのなかったリコは、じっと鏡に見入ってしまう。(オレ、こんなに胸、大きいんだ……)鏡に映ったリコの乳房は、唯と比べてもそう変わらない大きさを持っていた。なんとなく、指先で胸に触れてみる。ふよん。(や、柔らかい……)指に伝わる心地良い感触が楽しくて、思わず何度も揉み解してしまう。むに、むに。(……)リコのほっぺたが、ほんのりとピンク色に染まっていた。(き、着替えようかな……)リコは上着のシャツのすそに手をかけ、ゆっくりと脱いだ。「ん……ぷは……。あ……」目の前の鏡に、自分と同い年のボーイッシュな茶髪の少女が映っていた。滑らかな白い肌、細くくびれた腰、ふくよかで柔らかそうな胸。(これが……オレ……?)リコには、それがとても自分の姿だとは思えなかった。(……)さっきよりも少しだけ、頬が赤く染まる。慌てて胸を両手で覆い隠そうとするが、豊満なリコの乳房は小ぶりな手の平からこぼれてしまう。ふと視線を落とすと、袋の中に猿山からもらったブラジャーが目に入った。(着けて、見ようかな……)トクン、トクン。胸を高鳴らせながらしゃがみ込み、ブラジャーを手に取る。(どうやって、着けるんだろ……)ブラ紐に腕を通し、カップを胸に当てて、後ろ手でホックを止めようとするが、(うっ……止められない!?)慣れないためホックの止め位置が分からず、悪戦苦闘してしまう。「くっ……くっ……」と、その時。ドアの方から美柑の声がかかった。「お手伝いしましょうか。お姉ちゃん」「み、美柑……」「ほら。こうやって、寄せて上げるの」「わ……わっ! こ、こら。そんなとこ、触るなっ……ひゃっ!?」「えへへぇ。リコお姉ちゃん、感じやすいんだぁ」むにむにっ。どさくさ紛れて美柑はリコの乳房を揉み解した。「あ……や、やめ……ひゃんっ!?」「ほら、出来たよ」パンッとリコの背中を叩く美柑。「うわ……」鏡を見たリコは、自分の姿に感嘆の声を上げた。猿山の選んだピンク色のフリルの付いた可愛らしいブラを付けた、上半身裸の女の子の自分の姿。うまく乳房の肉を収められたカップの間には、くっきりと柔らかそうな谷間ができている。世界的デザイナーの林檎の娘である美柑の着付けの技術は確かなものだった。「でも、さすが猿山さんだね。ブラ、ぴったりだったよ」「まあ、あいつオレの胸ばっかり見てたもんなぁ」「あはは。愛されてるんだねぇ。リコお姉ちゃん」「よ、よせよ……」ふぅ。またため息をつくリコ。「でも、あんたどうすんの?」「え……なにを?」「猿山さんとエッチすんの?」「えっ!? い、いきなり、何言ってんだよ!?」「だって、わざわざ下着まで買ってくるんだもん。期待されてるんじゃない?」「う……」思わず顔が少し赤くなってしまうリコ。美柑は少し肩をすくめた。「あーあ、こんな調子じゃ危ないねえ。狼には気を付けなよ、お姉ちゃん」「ったく……そ、そんなわけねーって……」美柑はニヤリと笑って袋を指差した。「まだパンティもあるじゃない。着けてあげよっか?」「い!? いいよ! そ、それくらい自分で穿けるから!」「あ、そう。じゃ、お休みなさーい」そう言って軽く手を振り、美柑は部屋を出て行った。「ふぅ……」もう一度袋の中を見る。そこにはブラジャーとお揃いの、可愛らしい赤いリボンをあしらったピンクのパンティが入っていた。(これも、着けるのか……)リコのほっぺたの色が、パンティと同じピンク色に染まっていた。ジーッ。ジッパーを下げ、Gパンとトランクスを脱ぐ。(あ……!)剥き出しになった自分の秘所を見て、顔を赤くしてそそくさとパンティを穿いた。ピト……(あ……なんか、気持ちいい……)男の下着とは根本的に違う、秘所を心地良く包み込んで保護する滑らかで肌触りの良い女性用の下着。胸はブラジャーに緩やかに締め付けられて、守られているような暖かい安心感が広がっていく。こんな細い布で隠せるのか? と疑ってしまう小さなピンク色のパンティはすべすべした柔らかな感触で秘所を優しく覆い、剥き出しになった太ももとお尻がなんだかスースーして心許ない気がしてしまう。(これが、女の子の下着なんだ……)リコは体中で、女の子になった自分の体を感じ取っていた。再び鏡を見ると、目の前にすっかり女の子になりきった、可愛らしいピンクの下着を着けた自分の姿が映っている。(うわ……)リコは体をひねったり、振り向いたりして自分の体を隅々まで観察した。どこを見てもしみ一つ無い、なめらかな白い肌。豊満で量感のある、まるでグラビアアイドルのような艶かしい乳房。自分が男のままならきっと息を飲んだであろう、両手で包めてしまいそうな細い腰のくびれ。そんな自分の姿に、リコは頭がポーッと上気していくのを感じた。以前、猿山から言われた言葉を思い出した。『リコちゃんは世界で一番可愛い女の子だよっ!』リコは、今ならその言葉が理解できる気がした。(オレ……こんなに、可愛かったんだ……)もう一度、乳房の下側に手を当てて乳房を持ち上げてみる。もにゅ。手の平に伝わるたっぷりとした柔らかな重みが、自分の性別をいやおう無く伝えてくる。(オレ……女なんだな……)リコはごく自然に、そのことを自覚してしまっていた。もう一度猿山の袋に目をやると、少し扇情的なふんわりとした着心地の良い女性用のネグリジェが入っていた。それを取り出して身に着ける。「へぇ……」鏡で見ると、乳房の分だけ胸が突き出した、妖精のような自分の姿が映っている。なんとなく嬉しくなったリコが踊るようにくるりと回ってみると、柔らかいネグリジェのすそがフワリと舞い上がる。鏡に顔を近づけて、ニッコリ笑ってみる。「うふっ。猿山くんっ」が、次の瞬間我にかえってしまい──(お、オレ……何やってんだ……!?)カアァ……顔を真っ赤にしてしまうリコ。(じゃ、寝ようかな……)そう思って、ネグリジェを脱ごうとしたが……思い直して、そのままベッドに入った。(今日は、このままで……)脳裏に浮かぶ猿山の顔。(あいつ、オレの格好見て、どんな顔するかな……)リコは乳房を暖かく締め付けるブラジャーに手を当て、その中でとくん、とくんと高鳴るささやかな胸の鼓動を感じ取っていた。「ん、んー」目を覚まして軽く伸びをする。「ふぅ」軽くため息をついて鏡を見る。そこには、可愛らしいネグリジェに身を包んだ女の子姿の自分が映っていた。(そっか、オレ……)何気なく、自分の胸に手を当ててみる。むに、むに。(……)確かな女体の感触に、リコは仄かに頬を赤らめてしまう。(シャワーでも浴びようかな……)ザアァ……「ん……」頭からかけられたお湯が、起伏のあるリコの白い肌に沿って伝わり落ちてゆく。キュ。ハンドルをひねってシャワーを止め、ぷるぷると頭を振る。ぷるん。2つのはちきれそうな胸の膨らみが柔らかく弾んだ。(あ……)何気ない一挙手一投足に自分の女を感じてしまう。(猿山……)今日は一日、猿山と女の子としてデートをする。リコはもう一度それを確認して、少しだけ胸を高鳴らせた。カラカラ……「おはよう、お姉ちゃん」リコが浴室から出ると、そこにはニヤニヤ笑みを浮かべた美柑が立っていた。「お、おはよう……」お姉ちゃんと呼ばれるのがなんとなく気恥ずかしくて、ちょっと俯いて顔を赤らめるリコ。「じゃ、またブラ着けて上げようか」「あ、いいよ。自分でするから」リコはそう言って、体を拭いてからパンティを穿き、胸にカップを当てて背中に手を回した。「ん……」昨日苦労したおかげで今日はすんなりホックを止められた。次に、昨日美柑に教わったとおり、乳房の肉をカップに収め、ブラ紐をクイクイ引っ張って乳房をブラにフィットさせて谷間を作る。「おー、上手くなったじゃん。また立派な女の子になったね。お・ね・え・ちゃん♪」「よ、よせよ……」美柑にからかわれて、またリコはちょっと顔を赤くしてしまった。「じゃ、こっち来て。お化粧して上げるから」「え……?」午前8時50分。一時間前から遊園地の前に立っていた猿山は、少し不安な表情で腕時計を見つめていた。(リコちゃん……)リトと同一人物だと知ってしまったリコ。自分は、リコを以前と同じ目で見られるだろうか?もし、男としてしか見られなかったら、その時は──「……」猿山はポケットに手を入れ、ララから受け取ったそれの感触を確かめた。その時、道の向こうからリコが歩いて来るのが見えた。「あ、リコちゃ……!」猿山はハッとして息を飲み込んだ。猿山がプレゼントした、女の子らしいフリルの付いたワンピースドレスに身を包んだリコが、女物の靴を履き、手をしおらしく前に組んでしずしずと歩いてくる。(リコちゃん……)近付いてくるにつれ、リコの顔がはっきり見えてくる。ほんのりと薄化粧を施したリコの顔。薄く唇に塗った、艶やかなピンク色のルージュ。目元を際立たせる、薄紫色のアイシャドウ。ボーイッシュなリコの持ち味を損なわずに絶妙の加減に引き立たせる、美柑の巧の技だった。(す、すげえ……)要所要所にリボンをあしらったドレスのフリルの付いた肩口からは細くしなやかなリコの腕が覗き、ゆるやかに開いた胸元には思わず生唾を飲み込んでしまうくっきりとした谷間が出来ていた。呆然とした表情の猿山の前で、リコが立ち止まった。「……」恥ずかしげに少し俯いてしまうリコ。「お、おはよう……猿山、くん……」リコに声をかけられて、猿山はハッと正気を取り戻す。「おはよう、リコちゃん!」満面に笑みを浮かべて挨拶を返す猿山。「え、えっと……に、似合ってる、かな……」そう言われた猿山は、ガッとリコの華奢な肩を両手で掴み、「うん! 最っ高に似合ってる! オレ、こんな可愛い女の子、生まれて初めてみた!!」グッとリコに顔を寄せてまくし立てた。「あ……」ドキン。リコの胸が高鳴り、思わず顔を猿山から背けてしまう。「あ、ありがと……」「じゃ、行こう! リコちゃん」猿山はさりげなくリコの肩に手を回した。「あ……」肩に暖かな猿山の手の感触を覚えたリコが、一瞬ピクンと体を震わせる。リコは少し顔を赤く染め、猿山に肩を抱かれたまま歩き出した。最初のアトラクションはお化け屋敷だった。(うぅ……オレ、こういうの、苦手なんだよな……)ビクビクしながら猿山の腕に掴まって歩くリコ。「リコちゃん、こういうのダメ?」「ちょ、ちょっと、ね……」その時、急にリコの首筋にこんにゃくが当てられ、ヒヤリと濡れた感触が走った。「ひゃっ!?」ビクン! 背筋をピンッと伸ばして反応するリコ。そこに、デーン!!怪しげな効果音と共に、天井からグロテスクな逆さまのゾンビの人形が降りてきた。「きゃあっ!」思わず猿山の腕にギュッとしがみついてしまうリコ。むぎゅ。「おおっ!?」猿山の腕にリコの豊満な乳房が押し付けられ、柔らかい感触が伝わってくる。「あ……」リコは顔を赤らめて、慌てて猿山から腕を離した。「ご、ごめんなさい! わ、私……」猿山はニッコリ笑って言った。「いいんだよ、リコちゃん。さ、怖かったらもっとオレに寄って」ぐいっ。「あ……」組んだ腕をさらに猿山と密着させて、そのままリコは猿山と歩いていった。昼食の時間になり、2人は遊園地のレストランにやって来て大盛りスパゲッティを注文した。「あれ? もういいの、リコちゃん」「うん。ちょっとお腹いっぱいになっちゃって……」いつもなら喜んで平らげる所が、体が小さくなってるためかどうにも喉を通らなかった。「じゃ、オレが頂いていい?」そう言って猿山はリコの皿を自分の方に引き寄せ、リコの使っていたフォークでスパゲッティを食べ始めた。(あ……間接キス……?)今さらそれくらいどうという事は無いはずなのに、妙に気になってしまう。「あれ? リコちゃん、どうかした?」「え? べ、別に、何も……」なんだか気恥ずかしくなって頬を赤く染め、少し俯いてしまうリコ。「あ、やっぱりこれ食べたい? はい、あーん」猿山はフォークでウインナーを突き刺し、リコの唇に寄せた。「え……? あ、あーん」はむ。口を開けたリコがウインナーを咥えようとした瞬間、猿山がフォークをスッと引いた。「……?」もう一度リコがウインナーを咥えようとするが、また猿山がフォークで避ける。「猿山くん……?」リコが少ししかめっ面をして睨むと、猿山はニヤリと笑みを浮かべ、「じゃ、食べてもいいよ。はい」そう言って、唇にウインナーの片方の端を咥えてズズイッと顔をリコに寄せた。リコはちょっと冷や汗を垂らして、「調子に、の・る・な」人差し指の先で猿山のウインナーを口の中に押し込んだ。「んぐっ! り、リコひゃん……」ウインナーを丸ごと飲み込みそうになり、慌てる猿山。すると、周りからクスクス笑い声が聞こえてきた。「あ……」(オレたち、カップルと思われてるのかな……)ピンク色のリコの頬は、少しだけ赤みを増して色づいていった。その時、トレイを持ったウェイターが2人のテーブルにやってきた。トレイの上のチョコクリームパフェには、ハート型に折れ曲がった2つの吸い口が付いたカラフルなストローが刺さっている。「お待たせ致しましたー。ラブラブパフェ一人前です。お写真をお撮りになりますか?」「はい!」元気良く答える猿山。「はーい、2人とももう少し寄って下さーい!」猿山とリコはラブラブストローを片方ずつ口に咥え、ほっぺたをくっつけ合ってニッコリと笑った。パシャ。携帯の撮影音が鳴り響く。「はい。良く撮れましたよ!」ウェイターがにこやかに微笑んで猿山に携帯を返した。リコは画面に映った写真を覗き込んでみる。「うわ……」そこに映っていたのは、頬を寄せ合って幸せそうに微笑む、若いカップルの写真だった。「うーん、さすがリコちゃん。可愛いなー」「え……」トクン。猿山の言葉に、リコの胸が少しだけ高鳴った。その後も2人はいくつかのアトラクションをこなしていった。初めは女の子の演技をするのに慣れず、ぎこちなかったリコも、次第に打ち解けて猿山と女の子口調で親しげに話せるようになってきていた。そんな2人が道を歩いていると、道端で見知らぬ男の子が泣いていた。「エーン、エーン……」「あれ、迷子?」リコが男の子に駆け寄って頭を優しげに撫でる。「どうしたの? お母さんとはぐれちゃった?」「グスッ、エーン、おかーさーん!」「キャッ!?」男の子はリコにガバッと抱きつき、リコの胸に頭をうずめて泣きじゃくる。リコは困ったように猿山の顔を見た。「ど、どうしよう?」「案内所にでも連れてくか?」二人は男の子を連れて案内所を訪れ、係員に告げて園内に迷子の放送を流してもらった。『園内にお越しの○○様、お子様が案内所に来ております。いらっしゃいましたら、至急……』男の子は泣くのに疲れたのか、リコの膝枕の上でグッスリと眠っていた。「やれやれ、ガキには困ったもんだな。大丈夫? リコちゃん」「うん、大丈夫」男の子はスヤスヤとリコのスカートの上で眠っていた。リコは、男の子の頭にポンと手を乗せて撫でてやる。「んん……お母さん……」男の子が寝言をつぶやく。(お母さん、か……)優しげな表情でリコは男の子を見つめた。リコの太ももの感触が心地良いのか、男の子は安心しきった顔で眠っていた。(やっぱり、女の子の体ってすごいよな……)リコは細くしなやかな手で、もう一度男の子の頭をそっと優しく撫でた。「お迎えが来たぜ」案内所の入り口を見ると、母親らしい女性がこちらに駆け寄ってきて、子供の名前を呼んだ。名前を呼ばれた男の子がガバッと起き上がって母親に駆け寄る。「おかーさーん!」猿山とリコは抱き合う母子の姿を見ていた。「ふー。良かったね」「ああ」母親が、こっちに向かって挨拶してくる。「本当に、ありがとう御座いました!ほら、お前もお兄ちゃんとお姉ちゃんに挨拶しなさい!」「うん、ありがとー! おにーちゃん、おねーちゃん!」「良いって良いって。じゃな」「じゃーね。ちゃんとお母さんと手を繋いでてね」「じゃーねー!」二人は案内所を後にした。「あーあ、あいつ、リコちゃんに膝枕してもらって、うらやましーな」猿山はリコの方に振り返る。「オレにもしてくんない?」「子供だったらね」あははと笑いながら二人は歩き出した。夕暮れが近付き、2人は最後の締めに観覧車に乗り込んだ。ガタン、ゴトン。無機質な機械音を立てて、ボックスが頂上を目指して上ってゆく。その中で2人は、ほんのりと頬を赤く染めたまま見つめ合っていた。「……」見つめ合っては、時折恥ずかしげに目を反らす。もう一度相手の顔を見ると、さっきよりも少し頬の赤みが増しているのが分かる。トクン、トクン……なぜか、聞こえるはずのない、相手の鼓動の音が聴こえた気がした。しばらく経った頃、猿山が淡々とした口調で声をかけた。「どうだった? 今日」「うん……楽しかった」それはリコの本心だったし、リコにとって意外なことでもあった。てっきり猿山の事だから、中身がリトであるのをいい事に、あの手この手を尽くしてセクハラしてくるに違いない。そう思って身構えていたのに、今日の猿山はまるで別人のように優しかった。(これじゃ……まるで、オレが本物の女の子みたい……)トクン。リコの胸が高鳴った。一日中、女の子の体で、女の子の服を着て、女の子の言葉で、ずっと猿山と過ごした。「そう……良かった」夕日を背にした猿山が、嬉しそうにニッコリと笑う。「あ……」リコはまた、慌てて顔を反らしてしまった。猿山の顔が、眩しくて。自分の気持ちが、分からなくて。(オレ……一体……)ス……ぴくん。暖かい手で頬に触れられ、リコが顔を上げる。猿山は真剣そのものの眼差しでリコを見つめていた。「リコちゃん。お願いがあるんだ」猿山は自分の胸の奥にある、一番熱い想いを喉から吐き出した。「今晩だけ、オレのリコちゃんでいてくれるかな……」「え……」おい猿山、冗談だろ。オレ男だぜ。そんな言葉をかけることすら出来ずに、リコは猿山の顔をじっと見つめていた。(そんなこと……)男である自分が、猿山とそんなことなど、出来るはずがない。そう思っていたはずなのに。リコの女の子の体は、猿山の瞳に魅入られたかのように、声もなく、コクリと小さく猿山に頷きかけていた。(オレ……どうして……)自分で自分のしてしまったことが理解できずに、呆然としてしまうリコ。「リコちゃん……」「猿山くん……」(ああ……オレ……)ちゅ……熱い感触を唇に受けたリコが静かに目を閉じる。2人が男と女でいられる最後の夜の始まりを告げる、優しい口付けの音がボックスの中に染み渡った。◇ ◇ ◇ ◇ ◇「この部屋だね」ガチャリ。猿山が鍵穴に番号が付された鍵を差し込み、扉を開いた。ここは、里紗が良く使うラブホテルの一室。遊園地を出た2人は、猿山の誘いでここまでやってきたのだった。「え、えっと、私、シャワーを……んっ!?」部屋に入った途端、リコが声をかける間もなく猿山はリコの体を引き寄せ、抱き合ってキスを交わした。ちゅぱ……ちゅぱ……「ふ……んん……んっ……」バタン。キスをしながら猿山が後ろ手で扉を閉めた。そしてもう一度、リコの体を両手でグッと抱き締める。「ん……んんんっ……」猿山に強く抱き締められ、仰け反ってしまうリコの体。ちゅーっ! ちゅぱっ……ちゅぷっ……リコの口内の全てを嘗め尽くし、吸い尽くすような、情熱的な猿山のキス。「ん……んふぅ……」初め抵抗していたリコの女の体が、次第にダランと垂れ下がって目がトロリと蕩けていく。ちゅぷ……猿山がリコから唇を離した。「あ……はぁ……」もう既に、リコの体は女の快楽に浸されて熱を帯び始めていた。その艶かしい姿態を見た猿山が息を荒げる。「リコちゃん……」再び猿山が手に力を込める。「ま……待って……」リコは弱々しく震える手で、なんとか猿山のキスを遮った。「べ……ベッドに着いてから……」猿山はリコの言葉にニッコリ笑い、「キャ!?」リコの体をひょい、と抱え上げてお姫様だっこでリコの体を運んだ。「あ……」猿山に抱えられて、驚いた表情で猿山の顔を見上げるリコ。「リコちゃんの体、軽いんだね」「え……」たくましい腕で自分の体を軽々と運ぶ猿山に、リコは男のたくましさを感じてしまっていた。猿山はリコをベッドの端に座らせた。ポッと頬を赤く染め、少し俯いてしまうリコ。「リコちゃん。手、上げてくれる?」リコが言われるままに手を上げて少し腰を浮かせる。猿山がリコのワンピースを腕から抜き取った。「おぉ……」さらけ出されたリコの下着姿を見て、猿山が感嘆の声を上げる。今日一緒にいる間、胸の谷間を見てずっと想像し続けたふくよかなリコの乳房。ブラが弾けてしまいそうなむっちりとした量感は、猿山の想像を遥かに上回っていた。「……」恥ずかしげに顔を赤らめて胸を両手で隠そうとするリコ。猿山はさらに視線を下げていく。砂時計のように細くくびれた官能的な腰、艶やかな白い肌の中央でちょこんとくぼんだへそ。そして、猿山のプレゼントした、リボンで飾り付けた女の子らしいピンク色のパンティ。さらに下を見ると、弾けてしまわないのが不思議なほどにぴちぴちと張り詰めた白く柔らかなリコの太ももが、緊張で少し汗ばんでしまっていた。リコがおずおずと声を出す。「え……えっと、似合ってる、かな……」猿山が拳をグッと握り締めて告げた。「すっげえ、似合ってる! 最高に可愛いよ、リコちゃん!」「あ……」また頬を赤らめて、少し俯いてしまうリコ。「えっと……じゃ、し、下着も脱いでくれる……?」少し興奮した口調でリコに促す猿山。「……!」リコの顔がさらに赤く染まる。「あ、あの……恥ずかしいから、後ろ向いててくれる……?」上目遣いでつぶやくリコ。「うん。でも、靴下は脱がないでね」「……バカ」甘ったるいリコの声を聞いて、ニヤリと笑みを浮かべて猿山が振り返る。パサリ。後ろから微かにリコの着替えの音が伝わってくる。「えっと……もう、いいよ」猿山が再び振り向くと、リコはほんのりと顔を赤らめて、靴下だけを身に着けた格好で、恥ずかしげに乳房と秘所を手で隠してベッドに腰掛けていた。「リコちゃん、手、いい?」「……」リコがゆっくりと手を下ろすと、抑えられていたふくよかな乳房がぽよんと弾む。白い素肌は興奮のためか、ほんのりと赤く上気していた。「……!」猿山はただ呆然とリコの裸体を見つめていた。ボーイッシュな顔にミスマッチしたはち切れそうに豊満な乳房が、少しずつ興奮を増してきたリコの呼吸に合わせてゆるやかに上下している。その頂にあるピンク色の突起はピクリ、ピクリと蠢いて、興奮のために少し形を変えつつある。彫刻のように整ったスレンダーなくびれた腰、華奢で今にも折れてしまいそうに反った背中のライン。猿山に見られるのが恥ずかしいのか、柔らかそうな太ももを落ち着かなげにもじもじと擦り合わせている。もう一度、リコの裸体を上から下まで見渡して、猿山が思わず声を出していた。「リコちゃん、綺麗だ……」「あ……」トクン。リコの胸が高鳴った。「じゃ、オレも脱ぐね」猿山はそう言って、自分も服を脱ぎだした。はぁ……はぁ……ベッドに横たわるリコと、覆いかぶさる猿山。わずか10センチほどの距離を隔てた2人の顔の間に、熱の篭もった吐息が満ちていた。その熱の出所は、赤く染まり切った2人の頬、そして期待と不安に震える2つの柔らかな唇。「リコちゃん、好きだ……」キュン……(あ……)リコの胸が締め付けられ、胸の奥からジンワリとした暖かな感触が広がってゆく。鼓動がトクン、トクンと高鳴り、息遣いがどんどん荒くなってくる。(オレ……)リコはそっと胸に手を当て、乳房の中から湧き出してくる暖かい感触にじっと感じ入った。猿山にずっと女の子として扱われる内に少しずつ成長して行った、リコの中の女の子としての小さな心。それが猿山の言葉に反応し、まだ形にならない淡い悦びを感じていた。「大好きだ……オレの、リコちゃん……」魂の奥底から湧き出てきた、猿山の熱い言葉がリコの胸に染み渡る。(猿山……)そして、ちゅ……猿山はリコと唇を重ね、しっかりとリコの体を両手で抱き締めた。「んふ……」「んっ……」猿山と重ねた唇から、全てを味わい尽くそうとする舌の動きから、猿山の熱い想いが伝わってくる。ぎゅ……(あ……)クラ……猿山のたくましい男の腕に強く抱き締められて華奢な女体が頭が眩むような安心感に包み込まれ、衝動的に全てを解き放ち、委ねてしまいたくなる。柔らかな乳房に当たる固い胸。ごつごつした手、下腹部に当たる熱く硬い突起の感触。触れるほどに安心を覚え、もっと触れていたくなる。(あぁ……オレ……)猿山の男の体を感じたリコは、今なによりも、自分の『女』を感じてしまっていた。ちゅぷ……猿山の唇が離れた。そのまま声もなく、猿山がリコの秘所に手を当てる。「あ……」ぴくり。僅かにリコの背中が仰け反った。ぐい、ぐい……猿山の無骨な手がリコの秘所を愛撫し始める。「あっ……あっ……」それは上手いとは言い難かったが、リコを愛したい、リコの全ての感触を味わいたい、という切実な気持ちが伝わってくる、丁寧で優しいものだった。スル……「んっ……」細くくびれた脇腹を両手で撫でられて、リコがぴくんと反応する。猿山の手は、そのまま脇腹を滑ってリコの乳房を脇から包む。そして、何よりも大切な宝物を扱うように、優しい手付きでリコの乳房を揉みしだいた。(ああ……オレ、猿山におっぱい、触られてる……)「あっ……あぁ……」リコは目を閉じて少し頭を仰け反らせ、猿山の乳房への愛撫に感じ入っていた。ちゅ……「んっ!」猿山がリコの乳首にキスをする。そのまま唇で啄ばんで、ちゅっと吸い取る。「あっ……あんっ……」敏感な乳首を刺激され、目を閉じて軽く反応するリコ。もう片方の乳首にも愛撫をくわえ、猿山はもう一度リコの顔をじっと見つめた。「リコちゃん、大好きだ……」リコの乳房の谷間に顔をうずめる猿山。「さ、猿山……あっ……」リコの乳房を全て味わい、覚えておきたい──そんな想いを込めて、猿山はリコの乳房に頬を寄せて愛しげに擦り合わせた。猿山の舌が胸の谷間から滑り上がっていく。リコの鎖骨の間を通り、首筋を舐め、ぬるりとした感触を残して仰け反ったあごを撫でていく。「はぁ……猿山……くんっ……」そして、再び……ちゅ……リコと唇を合わせて、リコの口の中の全ての場所に舌を這わせていく。舌を絡め、歯茎を舐め、唇を吸って、リコの五感全てに自分の存在を刻み込んでいく。「ん……んふぅ……」リコの瞳は蕩けて潤み、手は力なくベッドに横たえられている。(あぁ……ダメ……オレ……こんなの……こんなのって……)猿山の愛撫によって徐々にリコの心の壁は蕩け、自らの女体を全て猿山に委ねてしまいたくなっていた。「はぁ……はぁ……はぁ……」猿山は蕩け切ってだらんとベッドに横たわるリコの姿態をじっと見つめていた。瞳を潤ませ、頬は紅潮し、秘所はほどよく濡れそぼっている。いつでも男を受け入れられるようになったリコの女の体。そんなリコに向かって、猿山は最後の確認を促した。「リコちゃん、いいかな……」(え……?)ドキン。リコの胸が大きく脈打った。猿山が、自分の女そのものを求めている。(オ、オレ……)急に、リコは不安になってしまった。男である自分がもし本当の意味で女になってしまったら、一体自分という存在はどうなってしまうのだろう。「……」その答えが分からないリコはすぐに返事することが出来ず、怯えたように微かに震えながら黙り込んでしまった。「そっか……」その様子を見た猿山が寂しげに笑った。「分かったよ、リコちゃん」「え……?」言葉の意味が分からず不安な顔を浮かべるリコに、猿山は淡々と告げた。「ここで終わりにしよう」その言葉が信じられず、リコは一瞬目を見張ったまま呆然としてしまった。「どうして……?」猿山は体を戻し、ベッドサイドに降り立った。「オレたち、どうせ結ばれない運命なんだしさ」ズキリ。リコは胸が鋭く抉られたような気がした。いくら女の体を持っていても、本物の女性でない以上、猿山と本当の意味で結ばれることはない。猿山の言葉はリコの胸の中にある葛藤そのものだった。(猿山……)猿山はそこに置いていたトランクスとズボンを穿き、ポケットからスイッチのような物を取り出した。「オレ、決めてたんだ。今日が終わったら、全てを白紙に戻そうって」「白紙にって……あっ!?」リコが思わず声を上げてしまう。猿山が持っている機械は、ララが悲壮な決意を告白して使った記憶消去マシン。『バイバイメモリーくん』だった。「猿山……!」青くなった顔でリコが声をかけた。そんなリコに、猿山はニッコリ笑って語りかける。「最後に、一つだけ聞いてくれるかな。リコちゃん」一度言葉を切って、淡々と語り続ける。「オレ、なんでリコちゃんに一目惚れしたか、分かったんだ」「え!?」唐突な猿山の台詞にリコが息を飲む。猿山は少し俯いて胸の想いを瞳に宿し、ゆっくりと告げた。「リコちゃんが、リトだったから」「え……!?」あまりにも意外な猿山の言葉にリコは呆然としてしまった。「初めてリコちゃんに会ったとき、オレさ、なんだかすごく懐かしい感じがしたんだ。なんでかなー、って思ってたんだけどさ。これって、やっぱリコちゃんがリトだったから、だったんだよな」「あ……」「それに、リト。オレ、お前のこと結構気に入ってるんだぜ。お前みたいな良い性格の奴、探してもなかなかいねーよ」「そ、そんなこと、ねーよ……」「だからもし、そんな良い性格の……しかも、サイッコーに可愛いリコちゃんみたいな女の子を彼女に出来たら、最高だと思ったんだけどな」猿山は一度目を閉じた。「リコちゃんを諦めるなんて、オレには絶対出来ねーよ」「猿山……」「だからオレ、リコちゃんについての記憶、全部消すことにしたんだ」「え……」猿山は手に持ったスイッチをリコの前に掲げた。「これを押せば、リコちゃんについてのこれまでのオレの記憶は全部消える」「そ、そんな……」「だから、リト。もう、リコちゃんの姿でオレの前に現れないでくれ。そしたらオレ、昔どおりに暮らして行けるから」シン……一瞬、室内を静寂が包み込んだ。震える声でリコがつぶやく。「そ、そんなこと……」「止めるな、リト!」リコの声を遮って猿山が叫んだ。「止めたところで、お前には何も出来ねーだろ……」ズキリ。再び、リコの胸が軋んだ。確かに、今猿山を止めたところで、自分が猿山と結ばれることが無い以上、猿山の痛みを長引かせるだけになる。それならば、猿山の好きにさせればいい──。しかし。(猿山……)親友である猿山の、一世一代の恋心。そして、猿山と女の子として付き合ううちに自分の心の中に芽生え始めていた、まだ形を持たない胎児のような淡い想い。それが掻き消され、失われてしまうことに、リコは耐え難い寂しさを感じていた。(オレ、オレ……)だからと言って、猿山を止める方法も無い。じゃあ、どうすればいい?どうすれば──「……!」唇を噛み締めて震えるリコに、猿山が寂しげな口調で声をかけた。「じゃ、リコちゃん。オレがこれ押したら、オレが目を覚ます前に、ここを出て行って欲しいんだ」「え……」猿山の顔を見る。もう覚悟を決めた、真剣そのものの表情。(そんな……!)その顔を見ることに耐え切れずに、リコは目を瞑って猿山から顔を背けた。リコの脳裏に、女の子として猿山と付き合った日々の映像が流れて行く。初めて商店街で会って、映画館でデートして。校門の前で告白されて、遊園地で初めてのキスをして。いつも自分を見て、嬉しそうに微笑んでいた猿山。初めはとにかく気色悪いとしか思えなかったのに。今では……(オレ……)猿山に『可愛い』と言われるのが嬉しくて。猿山に女の子としてキスされるのが心地良くて。猿山の前で可愛い女の子でいられるのが愉しくて。(オレ……オレ……)さっき感じた、自分の中で芽生え始めた正体の分からない心。今ようやく、リコにはその正体が分かった。胸に手を当てると柔らかい乳房に包まれて微かに震える、それは──(オレの、女の子の、心……)トクン。リコの胸が少し、高鳴った。『可愛いよ』『素敵だよ』『暖かいよ』『幸せだよ』猿山に女の子の自分を誉められるたびにどこかで感じていた、胸がキュンとする悦び。それはもしかしたら、リコの女の子としての心が感じていたものだったのではないか。(ダメ……)それが今。猿山の手によって、消されようとしている。自分の半分が、失われようとしている。(そんなの、ダメ……!)「じゃ、バイバイ。リコちゃん」猿山の指が、スイッチにかかる。「ダメッ!!」ガッ。リコは、猿山の手を掴んで必死で抑えていた。「リコちゃん……?」猿山が呆然とリコの顔を見る。リコは目尻に涙を浮かべ、潤んだ瞳で猿山を見つめていた。「消したりしたら、ダメ……」「え……?」「私の……この想いを、消さないで……」一瞬、沈黙が訪れた。「リコちゃんの、想い……?」聞き返されて、リコはハッとしてしまった。(オレ……一体、なんであんなこと……)リコにはなんでそんな言葉を口走ってしまったのか、自分でも分からなかった。「リコちゃん。もしかして、オレのこと好き……なの?」「え!?」ドキン!リコの胸が大きく脈打った。(まさか……そんな……!?)体はともかく、心は男のままのはず。そんな自分が、男の猿山なんか好きになるはずがない。しかし──トクン、トクン、トクン、トクン……速さを増した鼓動は、落ち着く気配が全くなかった。(ウソ……オレ……そんな……まさか……)もしかすると自分の中には、本当に女の子の心が生まれて来ていて、その『リコ』の心は、猿山のことを好きになってしまったのか……?そんな葛藤に悶えるリコに向かって、猿山がニッコリと微笑みかけた。「答えてくれるかな? リコちゃん」その笑顔を見た瞬間──ドクン。(あ……!)リコの顔が真っ赤に染まり、体が落ち着かなくなって震え始めた。(ウ、ウソ……オレ……本当に……!?)「あ……あ……あ……」リコの震える唇が、声にならない音階を奏でる。それは、リコの心の葛藤をそのまま表したものだった。「リコちゃん……」猿山がグッとリコの震える肩を抱き寄せ、リコの瞳に猿山の顔が大きく映し出される。「……!」少しだけ開いたリコの唇が、音も無く微かに震える。まるで、何かを伝えようとしても、言葉が出て来ないというように。猿山はまたリコを安心させるように優しく微笑み、リコの髪を愛おしげに撫で梳きながら囁いた。「大丈夫だよ、リコちゃん。リコちゃんはね、オレが世界で一番大好きな、世界で一番可愛い女の子だから」(あ……)リコの胸にキュン……と切なくて暖かい感じが広がって行く。それがあんまり、心地良くて、嬉しくて、幸せで。目の前の男の子に、この気持ちを伝えたくって。リコの唇は、ごく自然にその言葉を紡いでいた。「私も……猿山くんのこと、好き……」(はっ!?)一瞬の後、我に帰ったリコは、たった今自分の唇から出た言葉が信じられず、顔を真っ赤に染めてしまった。(オ、オレ、なにを……!?)目の前では、猿山が信じられないような顔をしてぷるぷる震えていた。「ほ、本当に……?」自分が無意識のうちに口にしてしまった言葉。リコにも、それが本当に女の子としての恋心なのかどうか、確信が持てなかった。もしかするとそれは、男同士の友情なのかもしれないし、ただ自分を好きと言ってもらったのが嬉しかっただけなのかもしれない。でもさっき、自分の口をついて出たあの言葉は、決してウソじゃない。それだけは、確かなのだろうと思ったから。リコは少し俯き気味にコクリ、と小さくうなずいた。「やったー! うっひょー!!」猿山がバンザイして歓喜の雄叫びを上げた。その瞬間。「え……?」猿山が持っていたスイッチが手から飛んだ。リコの目に、まるでスローモーションのように鮮明に、回転して飛行するスイッチが映し出された。それはまるで、吸い寄せられるように棚の角に向かって飛んで行く。「だ、ダメッ!」慌ててリコがスイッチに飛びつく。が、それも空しく……スイッチが、ついに棚に接触した。カッ!!「うっ!?」スイッチから目映い光が放たれる。リコの目の前で、猿山の思い出を消去する『バイバイメモリーくん』が発動してしまった。◇ ◇ ◇ ◇ ◇「猿山くん! しっかりして!」光を浴びた途端、糸が切れた操り人形のようにベッドサイドに崩れ落ちた猿山に縋り付いて、リコは必死で揺すり起こそうとしていた。「う……」目を覚ました猿山はキョトンとした表情を浮かべて周りを見渡し、不思議そうな表情でつぶやいた。「ここは……?」慌ててリコが猿山に顔を近付けて尋ねる。「猿山くん! 私のこと、分かる?」しかし、相変わらず猿山は何も分からない、という風にキョトンした表情を浮かべるばかり。「君は……?」その顔を見た瞬間、リコの瞳からどっと涙が溢れ出した。「う……うああぁ……」胸に縋り付いて泣きじゃくるリコの頭を、猿山は優しく撫で続けていた。まるで、悲劇のワンシーンのような光景。ただし、それは、(くく……)親友を襲った不幸を悲しむ健気な少女を見下ろす少年の、(くくく、くくくくく……)歓喜と獣欲に満ちた猥雑な笑顔を見なければ、の話だが。(うおっしゃーーっ!! 計算どおりっ……!!)猿山は自分に縋り付いて泣き続けるリコの頭を撫でながら、ここまでの計画のあまりにも見事な成功ぶりをじっくりと噛み締めていた。猿山の計画はこうだった。まず、リコに女性の下着と服を着させ、女性の言葉遣いをさせ、徹底的に女性扱いして、ひたすら女性としての意識を育て上げる。しかしそれでもなお、男の心を持つリコに女性としての最後の一線を踏み越えさせることは困難だろう。そこで考え出したのが、この『バイバイメモリーくん』作戦だった。リコの性格上、不幸な目に会っている友人を放ってはおけないだろう。たとえそのために、自分の男としてのプライドを失うことになったとしても。しかも、既にリコに『猿山が好き』と言わせることに成功しているのである。もう勝利は目前と言えた。(だが、まだだ……ここからが勝負……!リコちゃんに絶対、オレの記憶が消えてないことを気付かせてはダメ……!)もう一度その事を確認して、猿山は不安そうな顔を作ってリコに話し掛けた。「リ……リコ……ちゃん……?」リコはハッとした表情で猿山の顔を見据えた。「さ、猿山くん!? 私のこと、覚えてるの!?」「は、はっきりとは分からないんだけど……」「何か、思い出すことない!?」ズイッと猿山に顔を近付けるリコ。(ううっ……こ、この真剣な眼差し……か、可愛い……キスしてえ……。い、いや、待て……ここは耐えろ、耐えるんだ……)湧き出る衝動をなんとか制し、平静を装って語り続ける猿山。「オレ……何か、すごく欲しい物があった気がするんだ」「欲しい物?」「もしかしたら……君だったのかも、知れない」「え……」猿山はキッと真剣な表情でリコを見つめた。「もし……君がオレのモノになってくれたら、オレ……何かを思い出せそうな気がするんだ」「あ……」リコの顔に動揺と葛藤の入り交じった複雑な表情が浮かんでいる。(よし……いいぞ、この調子……。いや? ここは一旦、敢えて引くべきか……)「ご、ごめん。オレなんかじゃ、無理だよね……」「そんなことないよ!」リコは少し顔を赤らめて、囁くような小さな声でつぶやいた。「だって……私、猿山くんのこと……好き、だったから……」リコの顔が見る見るうちに耳まで真っ赤に染まって行く。(こ、これは……キタキタキターっ!!! ううっ……い、今すぐ押し倒してえ……。い、いや、ダメだ、耐えろ……オレ……!!)体中に漲る衝動を強引に抑え込み、息を荒げながら猿山がつぶやく。「ほ……ほんとに……?」「あ……」リコは顔を真っ赤に染めたままコクンと小さく頷いた。「じゃ、いいかな、リコちゃん……」猿山はそう言って、リコの両肩にそっと手を添えた。リコはベッドの上で、向かい合って座っている猿山の顔を奇妙な感慨を抱いて見つめていた。(オレ……ついに、女として猿山とヤるんだ……)今自分は猿山にとって、一人の女の子に過ぎない。親友の猿山のために、女として尽くしてやりたい。心優しいリトの友情が、リコの女としての意識を高め、覚悟を決めさせたのだった。「触っても……いいかな」猿山の顔がいつになく真剣で、純情そうに少し赤くなっている。(猿山も、緊張してるのかな……)その顔を見てリコはクスリと笑い、小さくコクリとうなずいた。そっと猿山がリコの乳房に触れた。「あ……」女としての自覚を持ったいま、男に乳房に触れられる感覚にリコはさっき以上に感じ入ってしまう。猿山は初めて出会った生物の生態を探るかのように、慎重に、興味深く、丹念に、リコの乳房を優しく揉み解して愛撫する。「ん……んん……あ……」猿山に身を任せ、男の身ではあり得ない乳房を愛撫される感触を胸に受けたリコは、今生まれて初めて、胸が暖まるような慈しむ愛情が生まれるのを感じていた。(これが……母性愛って奴、なのかな……)自分の体で猿山が悦んでいるのが、嬉しい。愛しい男性のために尽くすのに、幸せを感じる。(あぁ……猿山……)リコの胸の中で灯火のように小さな女の子としての幸せが生まれ、じんわりとリコの魂を暖め続けていた。猿山は、陶酔の表情ですっかり身を任せ切っているリコの豊満な乳房を心行くまで揉み続けていた。むにゅ……もにゅ……ぷにゅ……(うおおっ……こ、この手の平から溢れるサイズ……むっちりぷにぷにとした柔らかい弾力……!し、しかも、こ、この気持ち良さそうな健気な表情……! リコちゃんが、オレにおっぱい揉まれてこんなに感じてる……!)「あ……あは……猿山、くん……んっ……」乳房を揉み解す猿山の手の動きに合わせてリコは艶かしく嬌声を上げ、心地良さそうに、ちょっと照れくさそうに顔を赤らめて、透き通るように白い素肌に徐々に汗を浮かべ始める。(よ、よし……乳首、いくぜ……)猿山は恐る恐る、指先で乳首にツンと触れてみた。「あ……!」小さく快楽の吐息を漏らしてピクリと背中を仰け反らせるリコ。(おおおっ……! こ、この敏感な反応! くーっ……!)嬉しくなった猿山がさらにツンツンを繰り返す。ツン。「んっ……」ツン。「あっ……」ツン、ツン、ツツツン。ツン、ツツン。「んっ……んんっ……ああっ……はっ……やんっ……あはっ……」楽器を演奏しているような猿山の両手の指の動きに敏感に反応して、リコの口からリズミカルに官能の吐息が漏れて乳房がぷるんと震え、徐々に乳首が大きさを増して行く。「や……やだ……猿山くん……おっぱいで、遊ばないで……あっ……」はぁ……はぁ……脳みそが蕩けるような甘いリコの吐息の音を聞いて、猿山の興奮がどんどん昂って行く。(く、くーっ……リコちゃんっ! いいっ! 良過ぎるぜっ!)猿山はリコの乳首を指先でつまんできゅ、きゅと軽くひねった。「んっ……あっ……」指の動きに合わせて、気持ち良さげにしなやかな上半身をくねらせるリコ。「んっ……あぁ……さ……猿山くんっ……」はぁ……はぁ……はぁ……目を閉じてほんのりと頬を上気させ、だんだん声のトーンが高く、呼吸が甘く、深くなって行く。(う……うおぉ……こ、この初々しい反応、たまんねえ……!! むしゃぶり付きてぇ……!!)猿山も呼吸を荒げ、興奮しきった表情でリコを見つめていた。(い、いかん……ここはあくまで紳士的に……)唇から垂らしてしまいそうな涎をゴクリと飲み込んで、猿山は優しい口調で告げた。「リコちゃん、おっぱいに顔を埋めても、いいかな……」「え……」期待に満ちた表情でおねだりしてくる猿山の震える声を聞いて、リコは快く了承した。「うん。いいよ」リコはちょっと恥ずかしげな表情で手を体の横に置き、乳房を解放して猿山を待ち受けた。猿山が顔をリコの乳房の谷間に埋める。「あ……」乳房を手で押さえてギュッと頬に寄せ、わがままな子供のように顔を左右に振って頬に柔らかな谷間の感触を刷り込んでいく。(なんだか、可愛いな……)リコは胸が暖まる母親の喜びを感じ、自分の胸の谷間に顔を埋める猿山の頭に手を当て、子供をあやすようにゆっくりと撫でながら、幸せそうにクスリと微笑んだ。「キス、するね……リコちゃん……」「うん……」リコはそっと目を閉じた。女として、愛する男を迎え入れるように。ほんのりと頬をピンクに染めて、期待に顔を微かに震わせて。(うぅ……な、なんて健気でいい娘なんだ、リコちゃん……!)感動で打ち震えながら、猿山はリコに唇を重ねた。ちゅ……「ん……」初めはソフトに触れ合って、互いの唇の暖かさを感じ合う。だんだん深く相手の唇に舌を差し込んで、互いの口の中を味わい尽くすように舌を這わせる。ぴちゃ……ぴちゃ……「ん……ふ……」「ふ……ふん……」(あぁ……リコちゃんのキス……すっげえいい匂いがする……)ちゅ……ちゅぱ……れろ……ちゅぅっ……猿山はリコの体を抱き締め、唇をグッと押し付けて深く舌を差し込み、舌を荒々しく動かしてリコの口内の感触を隅々まで味わい尽くした。唇に吸い付き、舌の上下を舐め、歯ぐきの表裏、頬の内側、唇の回りまで、リコの口の全ての箇所に舌を這わせて暖かな粘膜の感触を脳裏に刻み付けて行く。「んっ……んんっ……んんーっ……ん……」リコの体の力が抜けて瞳がトロリと潤み、抱き締める猿山の手を支点にして背中が弓なりに仰け反って行く。すっかり猿山に身を委ね切って、されるがままになっていくリコ。(あぁ……リコちゃんの背中……リコちゃんのお尻……リコちゃんのおっぱい……リコちゃんの太もも……)手をリコの体のあらゆる場所に滑らせて撫でさすり、リコの体を堪能し尽くす猿山。「ん……んふっ……ん……ふ……」触れるたびにピクリと従順に反応し、鼻から漏れる吐息が甘さを増してゆく。「んっ……」トス……仰け反り切ったリコの背中が静かにベッドに下ろされた。猿山はさらにリコを抱き締める手に力を込め、一層強く唇同士を押し付け合う。ちゅーっ……ちゅぱ……ちゅぱ……「んふっ……ん……んんっ……ふんっ……」猿山に吸い出されたリコの舌は猿山の唇に咥え込まれて啄まれ、唇の隙間では2つの舌が絡み合って互いに上下を入れ替えながら愛撫を繰り返す。リコのふくよかな乳房は猿山の胸に押し付けられて柔らかくひしゃげ、勃起し切った乳首が猿山の乳首に当たって擦れ合っていた。(おぉ……リコちゃんの乳首がオレの乳首に当たってる……!)その快感に味をしめた猿山が胸を前後に揺すってリコの乳首を自分の乳首で擦ってみる。「んっ……んっ……!」敏感な乳首を擦られたリコが女の悦びに顔を蕩けさせて、猿山の口の中に喘ぎ声を漏らす。乳首と唇で繋がり合い、相手の心を伝え合うような心地良い瞬間に、2人は目を閉じてじっくりと心行くまで感じ入っていた。ぷは……ようやく2人の唇が離れた。「はぁ……。はぁ……。はぁ……」女の悦びで蕩け切った表情で瞳を潤ませ、甘い吐息を漏らし続けるリコ。(おぉ……もう、すっかりリコちゃんがオレの女の子に……!)その艶かしい表情を見て感動を覚えた猿山が、興奮しきった声で囁く。「リコちゃんって、本当に最高の女の子だね」「えっ……」「こんなにボーイッシュなのに、すごく感じ易くって、健気で純真で」言いながら再び両手でリコの乳首をこね回す猿山。「あっ……んあぁ……」猿山の指に敏感に反応し、顔を赤くして身を捩らせるリコ。「もっと、リコちゃんの女の子、良く見せて」猿山は体を後ろに下げてリコの股の間に入り、リコの太ももを両手でグイッと押し広げた。「あっ……やっ……」驚いたリコが慌てて手で秘所を隠そうとするが、その細く弱々しい手は軽く猿山に押し退けられてしまう。(うおお……リコちゃんのあそこ……!)まだオナニーすらした事のない、新鮮なピンク色をしたリコの秘裂を凝視する猿山。「リコちゃんのここ、すっごく奇麗だよ」「や……止めて……見ないで……そんなとこ……」恥ずかしげに顔を赤らめ、上半身を悶えさせて抵抗を見せるリコ。猿山がリコの秘所に顔を近付け、はぁ……と熱い息を吐きかける。「んんっ……!」ビクン!リコの背中が少し仰け反って膣内が熱くなり、秘所からトロリと白い液体を分泌し始める。(こ、これは……リコちゃんの……!)さらに興奮した猿山が、息を荒げ切ってリコに言った。「り、リコちゃんのここ、エッチ汁が出てる……」「え!?」カアァ……リコの頬が赤く染まり、思わず手で顔を隠してしまう。猿山は満足げに笑みを浮かべてつぶやいた。「リコちゃんってやっぱり、オレのこと大好きなんだね」「えっ!?」「だから、こんなに感じちゃうんだ」その言葉に、リコの中で動揺が走っていた。(オレ……本当に、猿山のことを……!?)今まで自分に一生懸命言い聞かせ、女としての演技を続けていたつもりだった。それなのに、体はこんなにも従順に猿山の愛撫に反応してしまう。リコの中で女としての快楽と猿山への愛情が入り交じり、区別出来なくなってしまっていた。「言ってみて。オレのこと、好きだって」「あ……」一瞬リコは躊躇したあとコクリとツバを飲み込み、たどたどしく口に出してみた。「私……猿山くんのこと、好き……」その途端。リコの膣奥にジンと痺れるような感触が広がり、(あ……!)トロ、トロ、トロ……リコの膣からさらに愛液が流れ出始めた。「ほら。言った通りだろ? リコちゃんの子宮がね、オレのこと欲しがってるんだ」(お、オレの、子宮……)リコはそっと自分の下腹部に手を当ててみた。その中でジンと疼く、愛する人の子を育むための女の子の一番大切な器官。その存在を自分の体内に感じ、リコはさらに自分が女であることを強く実感していた。「リコちゃん。ここ、気持ち良くして上げるね」猿山はリコの秘所に顔を近付け、唇を押し付けた。ペト。「あっ!」敏感な秘所に猿山の熱い舌の感触を覚え、顔を仰け反らせるリコ。猿山はリコの秘所に貼り付けた舌を、ぐいっ、ぐいっとリコの秘肉をマッサージするように押し付けて愛撫する。「あんっ……あはんっ……」(あぁ……なんか、暖かくなってきた……)熱い口の温度が秘所に伝わって暖められ、その熱が膣の奥にまで染み込んでいく。「リコちゃん、入れるね」猿山は舌をリコの秘裂に差し入れた。「んあっ!?」リコの体がビクンと震えた。(さ、猿山のが、オレの中に入ってる……)生まれて初めての、『中』からジン……と下腹部が暖められるような快感。他人の存在が入り込んで自分を『中』から弄り回される、女だけの受け身の快楽。「あっ……あ……あはぁ……」その攻めを受け入れることに、リコはなんとも言えない居心地の良さを感じてしまっていた。(え……?)不思議なほどに、『攻められる』事にしっくりと体が馴染み、心までもが順応してしまう。(オレ……な、なんで……)リコは自分が男に攻められて感じてしまっていることに戸惑いを覚えていた。高校に入って以来、ララやヤミ、唯や沙姫、様々な美少女達から愛のこもったイジメを受け続けていたリト。それを続けていくうちに、知らず知らずのうちにリトの心は、イジメを『受け入れる』ことに馴れ親しんでしまっていた。それが女の子になった今、男性に攻められる事に悦びを感じる受け身の性癖へと形を変え、猿山に攻められることに身が震えるような快楽を感じてしまうのだった。(う、うそ……オレ……)ズ……「んっ……」猿山の舌を入れられるのが、嬉しい。ぴちゃ……ぴちゃ……「あ……は……」猿山に体内を舐められるのが、心地良い。ぴちゃ……ぷちゃ……ちゅうっ……「あんっ……あはあっ……」もっと奥まで、もっと深く、女の子として愛されたい。(あぁ……オレ……オレ……)リコの心の変化を示すように、秘裂からはさらに悦びの滴が垂れ落ちてゆく。「あ……あっ……あはぁっ……猿山くん……もっと……」無意識のうちにリコの手が猿山の頭を押さえ、はしたなくMの字に広げた白い太ももをぴくん、ぴくんと震わせて、快楽を貪るように淫靡に濡れそぼる秘所に猿山の唇を押し付けてしまう。(おお! まさか、ここまでとは!)女性のみが持つ、男を受け入れるための性の器。正直な所、ここに触れるのが一番の難関ではないかと危惧していた猿山は、驚く程素直に快楽に溺れるリコの姿を見て、喜びに体を震わせていた。(まあ、そういやリトも受けキャラっぽいしな……)なんとなく納得した猿山は、体をズラしてもう一度リコに覆い被さってから優しい表情で囁いた。「リコちゃん、そろそろ良いかな」(あ……)猿山の言葉が脳に染み込んで行く。猿山が自分の女の体を求めている。自分が猿山の男の器官で、本当の意味で女にされてしまう。男の心を持つ自分にとって、到底受け入れられない屈辱。そのはずだったのに。今リコが感じているのは、少しの不安と、それに遥かに勝る期待感、そして女としての悦びだった。(オレ……)リコが生まれ持っていた、優しい女の子の心の莟。そのほんの小さな莟が、猿山にずっと女の子として扱われるうちに少しずつ育てられ、今ついにリコの心の中で、純真な女の子の心として花開き、実を結んだのだった。トクン、トクン、トクン。リコはそっと、高鳴り続ける胸に手を当て、「うん……」小さく返事をして、微かに頷いた。「おぉ……!」猿山の顔が歓喜に満ちて行く。「でも」リコの顔がさらに紅潮し、顔を見せるのが恥ずかしいのか、僅かに俯いてしまう。「私……初めてなんだから……。優しく、してね……」「うおおおお!! リコちゃん」もはや体中に溢れる歓喜を堪え切れなくなった猿山は、躊躇なくリコの体を両手で抱き締めた。「猿山くん……」猿山はもう一度リコに向き直り、キッと真剣な顔で告げた。「好きだ、リコちゃん」リコの顔がポッと赤く染まる。「オレ、リコちゃんを、世界で一番可愛い女の子にして上げるよ」「あ……」『女の子』の言葉に、育ち始めたリコの女の子心が反応し、胸に悦びが満ちてくる。「じゃ、行くよ」猿山は乱暴にズボンとトランクスを脱ぎ捨て、リコの太ももを両手で押し広げてからペニスをリコの秘所に押し当てた。「ん……」リコの体がぴくりと反応した。(おぉ……これが、リコちゃんのあそこの感触……!)ほどよく濡れそぼり、猿山の欲望の塊を柔らかく包み込んで受け入れようとする秘所の感触に、猿山が感動を覚えて打ち震える。(オレ、猿山に、アレをあそこに入れられちゃうんだ……)さっき舌を入れられたとき感じた、攻められる快感。もし、男のペニスを入れられたら、この体はどれだけの快楽を感じるのだろうか?女として目覚め始めたリコの心と体は、その瞬間を怖れ、そして待ち焦がれていた。「行くよ、リコちゃん」ぐ……「んっ……」リコの体がピクリと仰け反る。秘肉が押し広げられ、ペニスを挿入されていく感触。(あぁ……オレ、猿山に、女にされてる……!)熱く、固く、ドクン、ドクンと脈打つ猿山のペニスが、どんどん自分の奥にまで入り込み、次第に自分と猿山が一つになっていく。喩えようもない至悦の幸福感が下腹部から広がり、リコの女の体を包み込んで行く。ふとリコは、唯と女の子同士で話した事を思い出した。『結城くんが私の中に入ってきて……一つになって……熱くって……ドクンドクン言ってて……あぁ、これが結城くんなんだな、って……私ちょっと感動しちゃって……』(そっか……古手川、こんな感じだったんだ……)リコはもう一度だけ、くすりと微笑んだ。(うおおお……! リ、リコちゃんのあそこ、す、すげえ……!!)熱く、蕩けるようにぬかるんで、ウネウネと蠢いてペニスに絡み付く、男を虜にするために神が作りたもうた、リコの持つ極上の快楽器官への挿入の悦楽。一瞬にして理性が吹き飛び、本能のままに腰を動かしてしまいたくなる。自分の中で荒れ狂う野獣の本性をどうにか抑え、至福の表情で猿山はリコに声をかける。「リコちゃん、好きだ……」リコの頬がほんのりと赤く染まり、幸せそうにつぶやいた。「私も、猿山くんのこと、好き……」(リコちゃん……!)その幸せをリコと分かち合いたくて、猿山が再び声をかける。「オレ、リコちゃんを宇宙で一番幸せな女の子にして上げるね……」ぴくん。微かにリコの体が震え、瞳から涙が零れ始めた。「ありがとう……嬉しい……」その涙は、女になれる悦びなのか、男を失う哀しみなのか。リコにはもう、良く分からなくなってしまっていた。リコは体の奥底から湧き出て来る感情を、そのまま口にする。「猿山くん……私を本当の女の子にして……いっぱい、気持ちよくして下さい……」猿山は興奮に顔を赤く染め、ググっと腰に力を入れてペニスを押し込んで行く。ズ、ズ、ズ……「あ……は……あっ……」リコの狭い膣道が次第に猿山のペニスで押し開かれ、ついに……ぶつ……「あはっ!」何かが引き裂かれるような感触と共にズキリとした痛みが膣奥に突き抜け、リコは瞳の端から涙を零しながら、大きく口を開いて嬌声を上げた。(あぁ……オレ……ついに……!)リコはとうとう猿山のペニスで、本物の女の子になったのだった。「大丈夫、リコちゃん」猿山が心配そうに声を掛ける。「大丈夫だから……もっと、奥まで……」リコの声に促され、猿山はさらに腰の力を込めた。「ん……んっ……!」閉じた瞳から涙を零し、痛みを堪えるリコ。猿山はそんなリコの健気な様子に、胸から衝き上げる途方も無い愛を感じていた。(ううっ……リコちゃん……オレのために、こんなに我慢までしてくれて……!!)「リコちゃんっ!!」ぐっ……!「ああっ……!」ペニスの先端にこつんと何かが当たるような感触があった。(おお……これが、リコちゃんの子宮……!)とうとうリコは、自らの女性自身の最も奥深い部分まで猿山の男性そのものを受け入れたのだった。リコの子宮に猿山の柔らかいペニスの先端が当たっている。(あぁ……猿山の、こんなに奥まで……)リコはそれを自分で確認するように、その部分を手でお腹の上から触ってみた。膣内でドクン、ドクンと脈動を繰り返す、熱く固い男の感触。自分がすっかり愛する男性と一つになった実感を覚えて、リコの女心が悦びに震える。(あ……)リコの胸の奥と子宮がジンと痺れ、膣にまた熱い愛の滴が満ちて来るのを体で感じる。「はぁ……やったね……リコちゃん……!」息を荒げて興奮の絶頂にある猿山の顔を見て、リコはまだ膣に残る痛みを堪えながらにっこりと微笑んだ。「うん……猿山くん……」それに答えるようににっこりと微笑んで、猿山が優しく話し掛ける。「じゃ、約束通り、リコちゃんを一番幸せな女の子にして上げるよ」猿山はグッと腰に力を込め、柔らかなペニスの先端をグイ、グイと子宮に押し付けた。「あっ……!」自分の女性そのものを刺激されたリコが、軽く頭を仰け反らせて喘ぐ。子宮口に密着するペニスで子宮を優しくマッサージされるうちに、リコの体の奥から女性の持つ本能的な欲望が生み出されていた。『猿山くんの、赤ちゃんが欲しい』(え……!?)リコの子宮が疼く。自分が、愛する猿山の子を宿す。そう想像しただけで、子宮が、膣が、乳房が、リコの全ての女性としての器官が悦び、歓喜に震え出す。(そんな……そんな、オレ……)男である自分が、男の猿山の子を産むなんて、絶対に考えられない。それなのに、今のリコの体は、それをこの上ない極上の幸せとして、強く望んでいた。「リコちゃん。オレの子供、欲しくなった?」「えっ……!?」トクン!心の奥底に生まれた本能の欲求を見透かされたリコが反応し、乳房がぷるんと震えた。「産ませて上げるよ」「えっ……」「言ったろ。オレ、リコちゃんを宇宙で一番幸せな女の子にして上げるって」その信じ難い言葉に、リコはさらに信じ難い、途方も無い女性としての悦びを感じていた。(うそ……オレ……そんな……!)自分の感覚が信じられないでいるリコの、高鳴る鼓動に合わせて震える乳房。その頂にある大きさを増したピンク色の突起を猿山は優しく両手の指で摘んでひねり上げた。「はぁんっ……!」子を産み、育むための3つの部分にいちどきに愛を受けたリコが、悦楽で顔を歪ませ、身悶える。「リコちゃん。オレと、子作りしよ」そう言ってリコにニッコリ微笑みかける猿山。(あ……!)目と耳と、乳房と子宮。体中で子を成す悦びを感じ取ったリコは、歓喜の涙を浮かべながら震える唇でつぶやいた。「うん……」リコの中の躊躇は消え失せ、今リコの身体は女としての最高の幸福感で満ち溢れていた。「行くよ、リコちゃん」猿山はペニスの抽送を開始した。パン、パン、パン。「あっ……あっ……あはっ……」膣を擦られる熱い痺れに反応してリコが歓喜の嬌声を上げる。(リコちゃん……)猿山は快楽に顔を赤く染めて歪めるリコの姿態をじっと見つめた。赤らんだリコの顔に、リトの顔が重なる。いつも、グラビア写真を少し見せただけで、真っ赤になってオロオロしていたリト。そんなリトが今、どんなグラビアアイドルよりも艶かしい表情を浮かべ、自分の腕の中で淫靡な喘ぎ声を上げている。「あ……あんっ……あんっ……猿山くんっ……」パン、パン、パン。腰を突き入れる度に量感のある乳房がぷるんと震え、嬌声と共に唇から涎が飛び散る。(残念だったな、リト。お前、こんな可愛い娘とエッチ出来ないなんて)猿山は皮肉めいた笑みを浮かべ、リコの乳首をつまんでキュ、キュッと強くひねり上げた。「はんっ……んんんっ……」リコが目を閉じたまま艶かしく首を振り、快楽に身を悶えさせる。猿山が優しく声を掛ける。「リコちゃん、好きだよ」その声は、蕩け切って白く染まったリコの脳内に甘く優しく広がり、リコの胸と乳首を中から暖めていく。「あっ……わ……私も……好きっ……猿山くん……んっ……」その返事に満足した猿山が、さらに腰の抽送の速度を上げる。パンッ、パンッ、パンッ!「は……あ……んんっ……んあっ……はぁっ……!」快楽を必死に堪えて、小刻みに体をぶるぶる震わせるリコ。腰を動かしながら、猿山がリコに顔を近付けて問いかける。「リコちゃん……女の子になれて、嬉しい?」「は……あっ……う……嬉しい……いっ……」「赤ちゃん、産みたい?」「あん……う……産みたいっ……猿山くんの赤ちゃん、欲しいっ……いぃっ……」「リコちゃんっ……!」感極まった猿山が、さらに想いをリコの体内に流し込むようにペニスで子宮を突き続ける。ズンッ! ズンッ! ズンッ!「ああっ……あはぁっ……ひいいっ……いいっ……!」口を大きく開き、背中を仰け反らせて喘ぐリコ。脳内が快楽物質に浸されたリコが、体から溢れ出る淫らな想いをとめどなく口から吐き出してゆく。「あぁっ……私、猿山くんに……女の子にしてもらえて……嬉しいっ……」「り……リコちゃんっ……」「おちんちん……入れられるの……すっごく、気持ち良くて……」「リコちゃんっ!!」ガバッ。猿山はリコの体を抱き上げて垂直に立て、上下に振ってリコの膣奥にまでペニスを突き立てた。ズンッ! ズンッ!「あっ! ああーっ! ああぁっ! すごいっ! すごいっ! 猿山くんっ!」自分の体重がかかって更に強くペニスで子宮を突き上げられ、リコがあられもない声を上げて喘ぎ続ける。「あぁ……おちんちん、すごい……おちんちん、気持ちいいっ……!あはあっ……女の子になるの、こんなに気持ちいいなんて……はっ……あはんっ……!」リコは猿山の愛を絞り出すように、キュッと膣を締めて猿山のペニスを締め上げた。「く……ああああっ!?」膝の上に乗せた最愛の美少女が、興奮しきった艶かしい表情を浮かべ、熱く蕩け切った膣壁で自分のペニスを圧迫する、魂が抜かれるような恍惚の快楽。胸に当たる柔らかい乳房、足の上に乗っかる張りのある太もも、手の平に吸い付いてくる豊かな尻房、滑らかな肌触り、体中の汗が生み出す甘い芳香、つぶらな瞳、爽やかな髪の匂い。その全てが愛おしくて、全部一つになりたくて、「ぐおおおおおっ!!」「きゃあっ!?」猿山は持てる力の全てを込めてリコを抱き締めながら立ち上がり、腰を大きく上下に振って強くリコの膣奥にまでペニスを突き入れながら必死の叫び声を上げた。「リコちゃんっ……好きだっ!!」「あはあっ……猿山くんっ……好きいっ……!」「ずっと……オレの女の子でいてくれっ……!!」「ああっ……いるっ……私……ずっと猿山くんの女の子に……なるっ……だから……もっと……もっと……!」「う……うおおおっ!!」猿山はリコの体をベッドの上に下ろし、野獣のように激しく膣にペニスを突き込んだ。パンッ!! パンッ!! パンッ!!「り……リコちゃん……オレのおちんちん……いいだろっ……」「あっ!! あっ!! ああぁっ!! おちんちん、すごい……おちんちん、いいっ……」「たまんないだろっ……大好きだろっ……オレの、おちんちん……!」「たまんないっ……好きぃっ……あはぁっ! おちんちん、入れられるの大好きぃっ……いいっ!」その一突き一突きが、リコの女心を育て、官能に浸して行く。「あはあっ……もっと、おちんちん……奥まで突いて……私をもっと……もっと女の子にして……!」「リコちゃんっ!!」ガバッ!パン、パン、パン……猿山はリコの体を両腕で抱き締め、そのまま腰を動かしてペニスを突き込み続ける。「あぁっ……リコちゃん、オレの愛、受け止めてくれっ……! オレの赤ちゃん、産んでくれっ……!!」「あはあっ……来て……来て……猿山くんっ……私に、赤ちゃん……産ませてっ……産ませてぇっ……!」「うおおおおっ!!」ドピュッ!! ドピュッ!!「あっ……!」リコの子宮口に押し当てられた猿山のペニスの先端が、勢い良く子宮内に精液を迸らせ始めた。ドピュッ! ドピュッ! ドピュッ!「あ……ああっ……出てるっ……猿山くんの熱いの、出てるっ……!」愛する人の熱い迸りが胎内に満ち、甘く甲高い声で至悦の絶叫を上げるリコ。そして、ドピュッ!!「あっ!!」最後の一発が猿山のペニスから放たれ、リコは口をいっぱいに広げながら涙を迸らせて嬌声を上げ、全身を痙攣させながら限界まで背中を仰け反らせる。はぁ……リコの体の隅々まで、愛する人と一つになれた女としての最高の幸せが満ち溢れ、恍惚の表情を浮かべたまま熱い吐息を一つ吐いて、リコは気を失った。◇ ◇ ◇ ◇ ◇しばらく時間が経って、リコはようやくベッドの上で目を覚ました。(え……オレ……?)官能の嵐は過ぎ去り、リコはいつも通りの男の意識に戻ってしまっていた。リコの脳裏にさきほどの官能の初体験の記憶が蘇る。(あ……!)ボッ!リコの顔が一瞬で赤く染まっていた。(う……うわああ……お、オレ、猿山と、やっちまったんだ……)今さらながら後悔してしまうリコ。(で、でも……仕方、ないよな……)猿山の記憶を取り戻すため、今だけ女になった。それだけのこと。そう自分に言い聞かせて、リコはなんとか平静を取り戻した。そんなリコの顔を見下ろしていた猿山がつぶやいた。「あ、気が付いた? リコちゃん」「あ……」猿山の顔を見ると、ボッ!(えっ!?)体中から恥ずかしさが込み上げ、慌てて縮こまって胸と秘所を隠し、顔を真っ赤にしてしまう。「あはは。リコちゃんって恥ずかしがり屋さんだね」余裕の笑みを浮かべる猿山が、あっけらかんと言い放った。「でさ、リト。どうだった? 女のエッチ。男のときより良かっただろ?」「え……?」その奇妙な質問に、リコはポカンとしてしまう。(もしかして……!?)「えっと……き、記憶、戻ったの?」猿山はニタリと笑みを浮かべて、何事もなかったようにリコに答えた。「ああ、悪いな。あれ、ウソ」「へ……?」「これさ、ただのフラッシュ装置なんだわ」そう言ってもう一度、手に持った『バイバイメモリーくん』のようなもののスイッチを入れる。ニヤニヤ笑みを浮かべる猿山の顔の横でカッと光が放たれる。しかし……後は、何も起こらなかった。「な、な、な……」だまされた事に気が付いたリコは、文字通り空いた口が塞がらないまま、猿山を呆然と見つめた。そんなリコに、猿山がニッコリと笑いかけた。「あぁ……君とのエッチ、すっごく良かったよ。リコちゃん……」その軽口を聞いたリコの顔が、怒りのあまり真っ赤に染まり──「こ、こ、この……バカッ!!!」甲高い大きな声で、精一杯猿山を怒鳴りつけた。「ちきしょーっ!! だましやがったなーっ!! 返せ! 戻せ! オレの処女ーっ!!」乳房を振り乱して、泣き喚きながら両腕で猿山の胸をポカポカ叩き始めるリコ。「何言ってるんだい? リコちゃん。オレは君に、女の子として最高の想い出を上げたんじゃないか」「オレは、男だーっ!!」「えー? だってさっき、言ってたじゃん。『もっと……私を、女の子にして……』って」「あ……」カアァ……リコの顔が恥ずかしさで真っ赤っかに染まって行く。「あ、あ、あれは……その……だから……」もごもごと口ごもるリコの肩を猿山がポンポン叩いた。「リト。お前さ、絶対女の方が向いてるって」「はぁ!?」「大体お前さ、2年間もララちゃんと一緒に暮らして一発もヤらないなんて、男じゃねーよ」「な、何言ってんだ!?」「それにお前、オレにされてる時、すっげえ感じてただろ」「う……」リコの体に、さきほど刻み込まれたペニスの感触が蘇る。そして、「あっ……!」ふと、猿山のペニスがまだ自分の膣内に入りっぱなしであることに気が付いてしまった。たちまち真っ赤になってしまうリコ。「こ、こらっ! こ、こんなの、はやく抜け!」「え? いいの、リコちゃん」「いいから! はやく!」焦って促すリコに、猿山が優しく微笑みかけた。「うん、分かったよリコちゃん。オレ、抜くね。リコちゃんのここで」「えっ……きゃ!?」猿山はいきなりリコを押し倒し、再びペニスの抽送を始めた。じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ……「あーっ……リコちゃんのあそこで抜くの、すっげえ気持ちいい……」うっとりとした表情で抽送を続ける猿山。「こ、こらーっ! そういう意味じゃ……あっ……あんっ……あはぁっ……!」心がどんなに拒んでも、膣にペニスを突き込まれると、女の快楽に従順に身悶えてしまうリコ。「や……やめろぉ……ああんっ……」猿山はニヤリと笑みを浮かべ、リコの乳首をきゅうっとひねり上げた。「あいいっ!」さらにリコの胎内が痺れ、膣から愛液を分泌してしまう。「こんなの……こんなの……!」男の意識を持ったまま女として犯される屈辱に、リコの顔が泣き顔になってしまう。その瞳を潤ませた健気な表情を見た猿山は、「あぁ……リコちゃん、その……『オレ男なのに、こんなので感じちゃうなんてっ!』って顔、もうサイコー……」「な、なに言ってんだぁっ!?」更に興奮を昂らせ、ペニスの挿入を速めた。パン、パン、パン!「あっ……あっ……あはんっ……」ペニスを突き込まれながら涙目で喘ぎ続けるリコ。(うぅ……なんで、オレがこんな目に……)猿山は哀れなリコの顔を見て、ゆっくりと告げた。「オレ、今日はリコちゃんの望み通り、赤ちゃんが出来るまでずっと中出しして上げるからね」「ひいっ!?」その恐怖感に慌てて猿山の顔を見る。心から満足しきった表情の猿山は、どこからどう見ても本気にしか見えなかった。「や、止めてえぇっ!!」ジタバタと暴れてみても、膣とペニスで体を繋がれてしまっていてはどうにもならない。「あぁ……その声、すっげえ萌える……もっと、泣き叫んで、リコちゃん……あ……もう出そう……」「も、もう、やだあぁっ!!! やめぇっ……あっ……あはあっ……あぁっ!!」ドピュッ! ドピュッ! ドピュッ!喜んでるのか嫌がってるのか分からない表情で泣き喚きながら、なんだかんだでリコは猿山の愛を受け入れ続けるのだった。結局猿山はリコの胎内に抜かずの7連発をぶち込み、満足しきった表情で眠りについた。(ううぅ……猿山の奴……なんつー猿だ……)お腹に手を当てると、猿山にひたすら射精されまくった精液がタプンと音を立てるような気がしてしまう。(ま、まさか……本当に、妊娠したりしないだろうな……)その恐怖でぞっとするリコ。(とりあえず、シャワーでも浴びるか……)リコはシャワールームに行って、シャワーを浴びた。シャワーを秘所に当てて膣内を洗い流そうとすると、中からどんどん猿山の精液が流れ出てくる。(うー……まだ出て来る……とほほ……)男の自分がこんなことをさせられる情けなさに、リコはシュンとうなだれてしまう。そのとき、コンコンと浴室の窓からノックの音がした。窓の外では空中に浮かんだララがにこやかに微笑んでいた。「あ、リコ! 猿山とのエッチ、どうだった?」「うー、思い出したくねえ……」「え? 気持ち良くなかった?」「あ、いや……そういうわけじゃねーけど……」ポッと顔を赤らめてしまうリコ。「そっか! 良かったね、リコ♪」苦笑を浮かべたリコがララに、ずっと疑問だったことを尋ねてみる。「あ、そう言えばララ。この首輪、ちゃんと外れるんだろうな」「うん、もちろんだよ!」首輪が外れない、などという最悪なオチを危惧していたリコは、ホッと安堵のため息を吐いた。「ちゃんと首輪を外しても、赤ちゃんが作れるようになってるから安心して!」「は……?」その聞き捨てならない台詞に、一瞬呆然としてしまうリコ。「今、なんて……?」「だから! その首輪はね、リコの女の子の体の状態を記憶してるから、一回外しても、次にはめた時は元通り! ちゃんと赤ちゃんも育てられるんだよ!」「う、うそーっ!?」驚愕のあまり大声を上げてしまうリコ。「お、お前……な、なんでそんな凝った物を!?」「だってー。猿山に頼まれたんだもん。『リコちゃんと子作りしたいんだけど、なんとかならないかな』って。私、一生懸命考えたんだよ! 猿山、すっごく喜んでたし!」「さ、猿山が……!?」愕然としながらリコは、猿山の策謀にはめられた事に今さらながら気が付いた。猿山はあの日、あの事に気が付いた時から周到な計画を練り、リコを自分の女にするためのあらゆる策を巡らせていたのだった。(で、でも、こんな首輪、着けなけりゃ……)しかしそうすると、生まれて来るはずの生命を絶やしてしまうことになるかもしれない。植物すら丹精こめていたわる心優しいリコには、そんなことは出来るはずもなかった。中学以来の付き合いで、誰よりもよくリトの性格を知っていた猿山は、全てを計算し尽くしていた。(や……やられた……!!)床に手を着いてうなだれるリコの脳裏に、悪魔の笑みを浮かべる猿山の邪悪な顔が浮かんでいた。と、その時。後ろから猿山の声がかかった。「あれ、起きてたんだ、リコちゃん」ビクン!!リコの体が激しく反応した。「さ、さ、猿山くん……」冷や汗をダラダラ流しながら振り向くと、猿山が満面の笑みを浮かべて立っていた。「あ、ララちゃん。ありがとうね。オレがリコちゃんと結ばれたの、君のおかげだよ」「うん! 良かったね、猿山! じゃ、子作り頑張ってねー。ばいばーい♪」「おい! こら! ララーっ!!」リコの叫びも空しく、ララはあっという間に虚空へと飛び去って行った。そして……ひたり。びくんっ!!猿山の手がリコの肩にかかる。「さ、リコちゃん。子作りの続き、始めようか」額からダラダラ汗を流してしまうリコ。「い、い、いやだあああっ!!」「おっと」猿山はいきなり走り出したリコの腕をハシッと捕まえ、おもむろに唇を奪った。「んーっ!? んんん……」ぷはぁ……。清涼飲料水を飲んだような爽やかな笑顔を浮かべ、猿山はリコにオネダリし始めた。「ね、ね、リコちゃん。オレ、パイズリやってみたいんだけど、いーい?」リコはこの世の終わりのような絶望的な顔をして、ガックリと肩を落としながらつぶやいた。「もぅ……好きにして……」◇ ◇ ◇ ◇ ◇その次の日曜日。猿山は映画館の前で口笛を吹きながらリコと待ち合わせしていた。ボーイッシュなミニスカート姿のリコが、顔を赤らめながら猿山の所にやってきた。「こ……こんにちは……」少し俯きながら、恨めしそうな上目遣いで猿山を見つめるリコ。「うーん、今日も良く似合ってるね。リコちゃん」「う、うるさいっ! こ、こんな格好させやがって……」猿山がふとリコの首筋に例の首輪が無いのに気が付いた。「あれ? リコちゃん、首輪、どうしたの」リコは顔を赤らめながら左手を差し出した。薬指には金色の指輪が光っている。「ら、ララが、首輪じゃ邪魔だろうからって、指輪にしてくれたんだ。そ、それで……」リコが右手を差し出して開くと、そこにもう一つの指輪が現れた。「こ、これ、無くしたらいけないから、データのバックアップ用に、お、お前が持ってろって」「リコちゃん……」猿山がリコの手から指輪を受け取り、左手の薬指にはめてから幸せそうな笑みを浮かべた。「ありがとう。オレ、大切にするよ」リコはチラリと猿山の顔を見てポッと顔を赤らめ、また目を反らした。「え、えっと……それ、こうやって手と手を合わせたら、データが……キャッ!?」猿山はいきなりリコの肩を引き寄せ、唇を深く重ねてキスをした。「んっ……」そのままリコの体を両手で抱え上げ、お姫様だっこの体勢に移る。「きゃっ!?」猿山に抱きかかえられたリコが顔を真っ赤にして猿山の腕の中で暴れる。「こ、こらっ!? お、下ろせーっ!!」「リコちゃん。今日は映画は止めにしよう」「えっ?」「このまま一日中エッチしよ」「はぁ!? お、おいっ……んーっ!?」また暴れるリコの唇を強引に唇で塞ぐ。「ぷはぁっ……あ……オレ、もうヤバいかも……」「ひゃ!? お、おい……お前どこに……えっ!?」猿山は近くの路地裏に入り、リコを壁の前に下ろして手を着かせると、ジーッと音を立ててズボンのジッパーを下ろした。「ま、まさか……こんなとこで……おいっ……あんっ!」ミニスカートから覗く純白パンティをずり下ろされたリコは、あっという間にペニスを膣に挿入されて背中を仰け反らせて身悶える。「あぁ……リコちゃん、キスしただけでこんなに濡れちゃって……やっぱり期待してたんだね……」パン、パン、パン!「あっ……あん……やめろっ……この変態猿っ……こんなの……こんなの、オレ……あんっ……!」悪態を着きながらもリコの秘所からはとめどなく愛液が分泌され、あられもない嬌声を上げ始める。猿山は悔し涙を浮かべるリコの顔をクイッと傾けて覗き込みながら言った。「あ……その、『本当は男なのに女の快楽に逆らえず、変態男の言いなりになって悔しいーっ』って表情、もうサイコー……。あぁ……オレ、もっと興奮してきた……」「こ、この……変態ーっ!! あん……あはんっ……あああんっ!」ドピュ! ドピュ! ドピュ!リコがグイッと背中を仰け反らせて絶頂に達し、猿山はあっけなくリコの膣内に中出ししていた。「ううぅ……なんで、オレがこんな奴に……」悔し涙で目をウルウルさせるリコの顔を見て、猿山は再び呼吸を荒げ始める。「あ……その、『変態男に弱点を握られて男の心を持ちながら嫌々女の快楽を仕込まれて行く運命に翻弄される可哀想な女の子』っていう感じの表情、もうたまんねえ……」「い、いい加減にしろーっ!!」パン、パン、パン。路地裏にはいつまでも仲睦まじい2人の愛を育む音が鳴り響いていた。(終)
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