――リトならまだ寝てるよ、昨日遅くまでララさんのこと探し回ってたみたいだから――リトはいっつも優しくて…たまに怒るけど、私のこと考えてくれてるんだって知ったから…どんなに振り向いてくれなくても、がんばれたよ
――…しっかしなんだな…たまにはこうして二人で寄り道するのもさ、その…楽しいもんだな――わかってる…気遣ってくれたんだよね?でも嬉しかった…リトが楽しいって言ってくれて今度はホントに、心からリトに「楽しい」って言ってもらいたかったなァ…
――ララほんと頭いいんだな!!マジすげーよ!――いつもドジばっかりしちゃう私でも、リトのためにできることがあったんだねリトに誉められるとなんだか幸せな気分で…うーん、うまく言えないけど嬉しかった♪私の発明の知識だって、少しは役に立ったでしょ?
――おかえり!ララ――リトや春菜……みんなが私のこと覚えててビックリしたよでもホントは嬉しかったんだぁ……♪だって記憶なんて消したくなかったもん……リトに私のこと忘れてほしくなんてなかった…大好きだもん記憶を消す瞬間、リト私のこと止めようとしてくれたん…だよね?ありがと…♪
ぜんぶ大切な思い出…これだけじゃないよ!一緒に水族館行ったことも、リンカイガッコでキモダメシしたことも、文化祭がんばったことも、ちょっぴりケンカしたことも…オキワナ星で迷子になったりみんなでスキヤキしたり…リトと一緒にいた時間、全部が楽しかったよ!わたし、は……
「…っ、りとぉ……グスっ…!」
涙が…止まらないよ……こんなの私らしくないよね…わかってる、泣いてたって何も変わらないって……ペケが心配そうに見てる……ごめん、ね……私が造ったのにいつも心配ばっかりかけて……ダメなお姫様で……でもっ……でも、こういう時くらい泣いても許してくれる…?
だって私……嫌われちゃったんだよ?リトに……
――ララが来なきゃ――
私、知らないうちにずっとリトに迷惑かけてたんだね……大好きなのに……うまく、いかないね………どんなにリトに怒られても振り向いてもらえなくても、私がリトのこと好きなら大丈夫、って思ってた…ずっとずっとがんばれるって、そう思ってた……だから……好きな人に嫌われることがこんなに辛いなんて知らなかったなァ……どうしたらいいかわかんなくなっちゃって…逃げちゃった…リトの顔見るのが怖くて…また帰りみたいな冷たい目で見られたらどうしよう、って…そしたら私、きっとリトの前で泣いちゃうもん…リトの前ではずっと笑顔でいたいのに、こんな気持ちじゃ…笑えないよ…!大好きなのに今すぐ会いたいのに………笑えなくなったら、私にできることは…もう――
『……本当に、良いのですか?ララ様…』「…………うん………今度はちゃんと……考えて決めたから……」『…わかりました…では…「あっ、ちょっと待って!!」『ハイ?』「これが最後だから……最後にリトのこと考えさせて……」『……はい』
ごめんねリト…
ありがとうリト…
大好き…リト…
さよなら…リト…
「いたか!?美柑」「うぅん…こっちは……そっちも?」
力無くリトが首を左右に振るあれから数時間――辺りはすっかり日が暮れ、街灯の明かりだけを頼りにいなくなったララを二人手分けして探すが、まったく見つかる気配はない「どこ行ったんだよ…ララのやつ…」「…もしかして、リトに嫌われたと思ってはやまったんじゃ…」「ばかっ!あいつが…ララがそんなことするもんかよ!あいつはいつも笑ってて……わらっ…て…」「……ごめん」
めぼしい場所は全て探した二人だったが、ララの姿はどこにもない学校にも、公園にも、もちろん春菜の家にも…辺りはさらに暗くなりこれ以上は危険と判断した美柑が、尚も探そうとするリトをなんとか説得し家へと帰ることにした誰もいない家の電気をつけるララがいなくなった家はどこか物悲しく、いつもより広く見えた
「…オレのせいだ…!オレがあんなこと言ったから…っ!」「よしなって…」
自分を責めようとするリトを美柑がたしなめるやり切れない表情のリトは、何をするでもなく自分の部屋へと戻っていった
部屋の明かりをつける朝出かけた時から何も変わっていない、自分の部屋その壁際にあるクローゼットの扉をゆっくりと開けてみる中に広がるのは、人一人が生活するにはあまりにも広い部屋リトはその中に足を踏み入れてみる
「あいつ…こんなとこにいつも一人で、寂しくなかったのかな…」
あの時――以前ララが家を飛び出した時と同じように足を進め、ある場所で歩みを止める不器用な字で「たからものいれ」と書かれたカゴその中にある人形を拾い上げる
――ありがとーリト!!これ私の宝物にするね――
ララと出会って間もない頃、美柑も一緒に行ったゲームセンターで取った人形リトにしてみれば一種の本能から取ってやっただけなのだが、その時のララの笑顔は今でもよく覚えていた
「…嬉しそうに、笑ってたよな…」
人形をもったまま研究室をあとにしたリト散々探し回って疲れた身体をベッドに投げ出すその腕にはララの“宝物”がしっかりと抱きしめられていた
「ララ…ごめんな……もうあんなこと言わないから…お前を悲しませたりしないから…だから、帰って来てくれ……!」
ララに一言、「ごめん」と言いたいそして許されるならば、自分の気持ちを伝えたかったそんなリトの願いは叶うことなく、意識は闇の中へと消えていく
……なんだ…?ここオレの部屋…じゃない…真っ白で何も見えない…いったいここは……
――リト――
!?…ララか!?どこだ、ララ!ずっと探してたんだぞ!はやく出てきてくれよ!
――ごめんねリト――
な…なに謝ってんだよ、謝るのはオレの方だ!ごめんなララ…あんなひどいこと言って、傷ついた…よな…?でもオレ、ホントはそんなこと全然思ってないからさ…あれは…その、ついイライラして当たっちまっただけだ…本当はお前がいると…楽しい
――ありがとうリト――
へ?あぁ、礼言うのもオレの方だって!いつもそばにいてくれて…サンキューな////ララがいてくれるだけで嬉しいんだ…だから、これからもずっと…
――大好き…リト…――
んなっ……そっ…そういうこといきなり言うなよなっ!////……でも、嬉しいよあんなこと言ったのに…それでもオレのこと好きって言ってくれるんだな…ララの笑顔からたくさん伝わったよ、ララの気持ち…だから…その、えと…んと…おっ……オレも、ララが……////
――さよなら…リト…――
………………え?ま…待てよ、なんだよさよならって……!?どういうことだよララっ!オレはさよならなんてしたくないぞ!!オレは…オレはララがっ!ララの……ことが……
………!?なん……だ………急に、眠く……まぶたが……重い……!意識が……待って、ら…ラ………
行くな…!行かないで……!!
そばに……………
………き……だから――――
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