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十一月最後の日曜の午後
久しぶりに一人で彩南町の商店街へとやってきた唯
街の景色は、すでに秋が終わり、すっかり冬の景色に変わっていた
ウインドウショッピングを楽しんでいた唯の元にも、冬の風がやってくる
しっかりと首に巻いてあるはずのマフラーの隙間から忍びこんできた木枯らしに、肩を震わせた
「うう…すっかり寒くなったわね」
「今日の午後は暖かくなります」という天気予報を信じて手袋を着けてこなかった唯の
白い手は、白を通りこして真っ白になってしまっていた
テレビの向こうの予報士に顔をムッとさせると、唯は両手を擦り合せながら、はぁ、と息を吹きかける
これ以上寒くなる前に今日はもう帰ろう、と歩きかけた唯の足がふいに止まった
唯の前方に人だかりができていたのだ
唯は眉を顰めた
「何かしら?」
新しく買ったブーツを石畳に鳴らしながら近付いて、輪の外からひょい、と覗きこむと、
サンタの格好をしたケーキ屋の従業員が子供達に風船を配っていた
風船は、トナカイに星に雪だるまといった、クリスマスをモチーフにしたものばかり
「…そっか、もう、そんな季節なんだ」
よく耳をすませば、街の雑踏にまぎれて聞こえてくる、定番のクリスマスソング
目をキョロキョロさせると、クリスマスケーキの予約タペストリーに、クリスマスプレゼ
ントのセールの張り紙
毎日のドタバタで、すっかりクリスマスの存在を忘れてしまっていた唯は、そんな自分に
苦笑を浮かべると、少しの間、サンタと子供達のやり取りに見入ってしまった
サンタに風船をプレゼントされた小さな子供たちが「サンタさん、ありがとー」「クリスマ
ス、いい子にしてるから、ゼッタイゼッタイおウチにきてね」と、キャッキャと騒いでいる
「クリスマスか…」
頭の中に自然と浮かぶのは、大切な人達の顔
「…………よし!」
唯は小さく気合いを入れると、冷たさで真っ白になった手をキュッと握りしめた
頭の中でどんどん溢れる妄想に顔が緩みそうになるのを、なんとか我慢しながら向かった
先は、ケーキ屋の向かい側にある本屋だった


「でもプレゼントって何を贈ればいいの…?」
本屋の中を一回りした唯は、「クリスマス特集」と題したコーナーの前で悩んでいた
手に取った本は、「我が子に贈る、とっておきのクリスマスプレゼント」
パラパラと捲ってみるものの、イマイチピンとこない
自分の時はどうだったのか、唯は少し記憶を巡らせてみる

真っ暗な部屋の中にクリスマスソングが流れていて
ロウソクの炎がケーキの上で揺れていて
プレゼントの箱を手に喜んでいる小さい自分
プレゼントは毎年、ドールハウスだったり、絵本だったり、お人形だったり、etc.…

「う〜ん…」
誰かの、それもとっても大切な人へ贈るプレゼントとなると、いろいろと考えてしまう
考えて、悩んで、考え過ぎてしまう
「ん〜…」
唯の顔色は中々、晴れない 
「……こんな時、結城くんがいてくれたらな…」
隣にいつもいる、だけど今日はいない相手に一瞬、寂しさを募らせる唯だったが
ガンバって、ガンバって、なんとかデートの誘いを言えたのに、丁重にお断りされてしま
った時の事が頭の中で甦り、唯は頬を膨らませた
「…まったく! どこで何してるんだか?!」
ブツブツと呟きながら唯の指が一冊の児童書を選ぶ
唯はページを捲りながら頭の中を高速回転させた
…………
………
……

「…よし」
唯は本をパタンと閉じた
そして、歩き出す
頭の中に描くのは、セリーヌのプレゼント
そしてもう一つの大切なプレゼント
セリーヌと同じぐらい大切で、だけど意味が少し違っていて
「ふ…ふん! セリーヌちゃんのついでに作ってあげるだけなんだからっ!」
精一杯の強がりを口にすると、唯は目的の場所へとやってきた
「えっと、どれがいいのかしら?」
本棚を埋め尽くす本、一冊一冊に、唯の真剣な目が向けられる
しばらく悩んでいた唯は、一冊の本を手に取った
本の表紙には『初めての編み物』と書いてある
「わ、私だって編み物ぐらいできるんだから!」
と、自分を鼓舞すると、唯は足早にレジに向かった


夜、自室に戻った唯は、早速、買ってきた本を広げてみた
「えっと…これがこーなって…」
床に転がるいくつもの毛糸に、木製の棒針
家庭科の授業ぐらいでしか使った事がないモノ達に囲まれて、唯の手がギコチなく動く
「それから…次は…ってあれ? なんで!?」
本に載ってあるお手本と自分の編んでいるモノのあまりの違いに、思わず唯は絶句した
慌てて本と手元とを何度も見比べる
「だって、時計周りの反対って書いて……うぅ…」
いつも強気な唯にしては珍しい弱気な声
自分のあまりの不器用っぷりに、歪に歪む裏目だけのマフラーを思わず床に投げ出そうと
して、唯は慌てて制止をかける
「だ、ダメよ! ダメ! しっかりしなさい! これは大切なモノなのよ!」
頭の中に浮かぶ二人に「ごめんなさい」と謝りながら、唯はまた黙々と棒針を動かしていく
「次は表目ね。右手の針に糸をかけて……あぁ!? また間違った…うう」
カチコチ、カチコチ、時計の針の音だけが鳴る部屋の中に、何度、唯の悲鳴が響いた事か
何度も間違えて、編み直して、不器用な自分への苛立ちを口にする唯
けれども唯の手は止まらない
一編み、一編みに想いを込めて棒針を動かしていく
「…針を抜いて……出来た! これであとは色を変えて…」
クリスマスまであと数週間
この日から、唯の寝不足な毎日が始まる事になる

————そしてクリスマス、当日

「まうー!」
いつもとは違う家の中の様子にセリーヌは、朝からワクワクしっぱなしだった
見慣れたリビングの天井や床には、ガーランドやいろんな色のクリスマスボールが飾られている
キラキラと輝くクリスマスボールにセリーヌが手を伸ばしかけた時、キッチンの方から声が響いてきた
「まう?」
セリーヌはクリスマスボールを手にキョトン、と首を傾げた
朝からクリスマスのケーキ作りや料理の仕込みと
今や結城家のキッチンは、ちょっとした戦場になっていたのだ

「美柑ちゃん、イチゴってあと何個必要?」
「ああ、えっと…ケーキの上にのせるだから……10個かな」
昼過ぎから結城家にやって来た唯は、早速ネコ柄のエプロンに身を包むと、テキパキと手
を動かしていく
唯にいろいろと指示を飛ばすと、美柑はリビングの方を振り返る
「リトー! ちょっとこっち来て手伝ってよ!」
キッチンの主の声がいつもより大きく響く
それだけ今日という日に気合いが入っている証拠なのだが
朝早くから美柑に起こされたリトは、キッチンに入ってくるなり、小さく欠伸を噛み殺した
「リビングの飾りつけ終わった?」
「ああ。あとはツリーだけなんだけど…。なんかモモとナナが『私たちがやります!』って
言ったっきりなんだよな」
「ふ〜ん」
そう言えば昨日から部屋に籠ったきり、中々、姿を見せなくなった二人の顔を思い浮かべ、
美柑は小さく眉を寄せた
「ま、料理が出来たら、下りて来るんじゃない? それよりリト、買い物行って来てくれ
る? いろいろ足りなくなっちゃって」
気合いを入れ過ぎてしまい、予定より料理のレパートリーが増えてしまったのだ
美柑は両手を合わせると可愛らしく「お願い」をした
リトは快く「いいぜ」と頷くと、美柑から買い出しメモを受け取った
「何かあったらケータイに連絡してくれな。ララも来る?」
「うん。行く行く!」
リトと同じくリビングの飾り付け担当のララは、ひょっこり顔を覗かせると、元気に返事を返す
「気をつけてね。結城くん」
「ああ。唯もガンバレよ。楽しみにしてるからさ」
「ええ」
なるべく唯と美柑の邪魔をしないように、リトはそれだけ言うと足早にキッチンから出た
「じゃ、行くか!」
「ほーい」
リトは上着を羽織るとララと一緒に玄関を出た

「ん〜…どれどれ」
手慣れた手付きでオーブンから天板を取り出す美柑
天板の上には、ふわふわのスポンジケーキが乗ってある
美柑は「よいしょ」とケーキクーラーの上に天板を乗せると、新しいクッキングシートを
スポンジケーキの上にかぶせた
「あとは冷めれば完成っと。唯さん、そっちはどう?」
「ええ、こんな感じでどうかしら?」
まな板の上に並べられているのは、唯らしい、キレイに切り揃えられたフルーツたち
「じゃあ、このスポンジが冷たくなったら、さっき作ったココアクリームを塗ってほしい
んだ。で、それがおわったら、今度はそのフルーツを上に適当に散らして…」
わかりやすくテキパキと教えてくれるのはうれしいのだけど、初めてのケーキ作りに唯の
顔から不安と心配は消えない
メモを取りながら難しい顔をする唯に、美柑はニッコリと笑いかける
「だいじょーぶだって! すっごく上手にできてるよ。唯さん、筋がいいから!」
「そっ、そんな事…!?」
と、全否定の唯だったが、美柑は知っている
唯がどれだけ一生懸命なのかを

「美柑ちゃん、お願いがあるの」
ある日、突然、唯にお願いされた事。それは料理を教えてほしい、というものだった
「暇なときでいいから。お願い!」

両手を合わせて、ずっと年下の美柑にペコ、と頭を下げる唯
そんな必死な姿を裏付けるように、唯はみるみると腕を上げていった
最初は大きさを揃える事どころか、ちゃんと切る事もできなかった包丁捌きは、今や時々、
美柑の目を瞠るものまでになっていた
そして今日も
ギコチなかったクリーム作りは、もうすっかり一人前の手付きに
ケーキの焼き加減、甘さの調整等、美柑があまり口を挟まなくてもいいレベルにまで成長している
ケーキ作りをする唯の目付きは、いつだって真っすぐで、真剣で
「うん。そうだよね。当たり前だよね」と美柑は、心の中で唯に話しかけた
そう、だって今日は、恋する女の子なら誰だってガンバル、特別な日なのだから
「私だって!」と美柑はこっそりと心の中で言ってみる
が、「違う! 違う! なんでそーなるのっ!?」と慌てて修正
そんな一人ツッコミをしていた美柑の目がふいに陰る。視線の先にはエプロンに身を包む、
いつもよりずっと魅力的な唯の姿

もし…もし、リトと唯さんがケッコンしたら、私は、こんな風にガンバらなくても
いいのかな…? 今日みたいにずっとガンバッたりなんかしないで———

一生懸命な唯の横顔にふとそんな事を考えてしまう美柑
手がまったく動いてないボーっとしている美柑に、唯はパレットナイフをガラスボールの上に置いた
「どうしたの? もしかして私、何か間違ったとか…」
「ん…ん〜ん、そーじゃないよ…!」
少しだけ寂しさを覚えたことを悟られまいと、美柑は子供特有のあどけない笑みを浮かべて見せた
「よかった。何か失敗したんじゃないかって思って……それにしても、美柑ちゃんってや
っぱりすごいわね」
「え? 何が?」
「今日の事」
テーブルの上に所狭しと置かれている、具材や調味料、調理器具等々
それらを見渡しながら唯は、エプロンの腰に手を当てると小さく溜め息をついた
「私だとこうはいかないもの。きっと大失敗に終わっちゃうわ」
「そんな事ないよ! だって、私は小さいころからずっとやってきたからで…だから…」
「やっぱりすごい。美柑ちゃん」
と、唯はクスっと笑った
それはリトが見ればとろけるような笑顔
「……私、今よりゼッタイに上手くなるわ! そしたら来年のクリスマスは、もっとすご
い事したいなって思ってるのよ」
「来年?」
「ええ。美柑ちゃんと二人ですごいケーキを作って、結城くん達を驚かすの」
「私と…二人で…」
唯の初めて見せる、あどけない子供っぽい笑顔
「それって……じゃ…じゃあ、これからも私と一緒に作ってくれるの? 唯さん」
「それはもちろん! と言うか私の方からお願いしたいぐらいで……その…これからもよ
ろしくお願いね、美柑ちゃん」
「……ッ」
一瞬、感じた寂しさ
それがキレイに胸の中から消えている事に、美柑は屈託ない、いつもの笑顔を浮かべた
「うん。こちらこそ! これからもよろしくね! 唯さん!」


セットしたタイマーのベルと、玄関のドアを開ける音が同時に鳴った
早速、帰ってきたリトに飛びつくセリーヌに続いて、エプロン姿の唯と美柑が遅れてリトとララを出迎える
「おかえりなさい。結城くん」
「おかえりーリト」
「ただいま」
外はかなり寒いのか、フル装備で出かけたはずのリトの顔は、白を通りこして赤くなっていた
「じゃーん!」
リトの隣でケロっとした顔のララは、両手いっぱいの紙袋を高々と掲げる
「見て見て! いっぱい買ってきちゃった!」
「いっぱいって…あなたね」
呆れ顔の唯の前にララは、「ほいっ」と、いかにも重そうな紙袋をドスンと降ろした
玄関マットの上にコロン、と転がるリンゴに続いて、袋の入り口にお菓子の箱が覗く
それも一つや二つではない
「って、これ全部お菓子なの!?」
目をパチクリさせる美柑に、リトは苦笑交じりに頬を掻いた
「クリスマスだし、今日ぐらいいいんじゃねーかと思ってさ。ちょっと多目に買って来たんだ」
半分以上はララのおねだりだけどな、と心の中で付け加えるリト
美柑は「ま、いつもの事だしね」と苦笑すると、紙袋の中から欲しかった食材を取り分けていった
「まったく、勝手なことして」
「ま、まァ、大目に見てやろーぜ、唯。ララだって盛り上げるために買って来たんだからさ」
「…ふん」
と、嫉妬混じりのジト目を必要以上にリトに送りつけると、唯は美柑と一緒にキッチンに戻っていった
「な、なんか唯のヤツ、怒ってる…? なんで?」
冷や汗が浮かぶ頬を指で掻きながら、この後に待っているであろうご機嫌取りに小さく
溜め息を吐くリトの足元で、ガサゴト、と物音
「なんだ?」
見ると、いつの間にかリトの腕の中から下に下りていたセリーヌとララが、お菓子選びに
夢中になっていた
「おお! コレおいしそーだね! 開けてみよーっと!」
「まうっ♪」
「やめなさい!」
「あー!?」
「まうー!?」
「これは後で!」
手を伸ばしてくる二人からクッキーを遠ざけながら、リトは何気なく唯がいるキッチンに
視線を送った
「……なんとか渡すタイミング作らねーとな」
リトの視線は再び尚も諦める様子を見せないララとセリーヌの二人に、気持ちはクローゼ
ットの中に大切にしまってある、あるモノに向かった

その後、結城家の中は、一層の慌ただしさを見せた
キッチンの中は、すでに美柑と唯が牛耳る戦場と化している
摘み食いをしそうとしたララとセリーヌに唯の声が飛ぶ
「ちょっとダメよララさん! セリーヌちゃんも! めっ!」

一方、飾りつけが終わり、クリスマス一色に染まるリビングでは、リトが後片付けに追われていた
掃除機をかけ、テーブルの上をキレイに拭き、ゴミを一つにまとめていると、ひょっこり
とモモが顔を覗かせにやってきた
「リトさん、お疲れ様です」
「モモ! 中々、下りてこないから心配してたんだぜ!」
「すみません。いろいろ忙しくって」
「もうじき始まるからナナにも下りてくるように言ってくれよ。あ、そーいや、ツリーは
どーなったんだ?」
「ふふふ、秘密です。楽しみにしててくださいね」
と、ニッコリ笑顔を残し、モモは再び自室へと帰って行ってしまった
「ま、まァ…だいじょうぶ、だよな…?」
モモの妖しい笑顔に一抹の不安を覚えてしまうリトであった

そして、全ての準備は整い
いよいよ結城家のクリスマスが始まる————

真っ暗な部屋の中に、いくつものロウソクの炎が浮かびがる
「それじゃあ、セリーヌちゃん」
「まうっ!」
唯に抱っこされながらセリーヌは、ケーキの上のロウソクに顔を近づける
ゆらゆらと揺れ動く炎たちが、セリーヌのキラキラお目目をますます輝かせる
セリーヌは目いっぱい息を吸い込んだ。そしてロウソクに向かって吸いこんだ息を吹きかける
「ふーーっ!!」
ロウソクの炎がみんな消えると、クラッカーが一斉に鳴りだし、みんなの声が唱和した
「「「「メリークリスマス!!!」」」」
リビングに灯りが灯ると、テーブルの上のモッツァレラチーズのサンドイッチや、ロース
トビーフにお馴染みのローストチキン、キッシュにホタテのソテー入りのサラダ、温かい
スープ等々に、みんなの歓声が上がる
唯と美柑は、顔を見合わせて頷き合うと、キッチンに入って行った

少しして、二人は大きなトレイを手に戻って来た
トレイの上には、二人が昼過ぎから頑張って作った、ブッシュ・ド・ノエルに、イチゴの
タルト、ビスキュイにマカロンetc.が乗ってある
甘い匂いに包まれるリビングにまた大きな歓声があがると、早速、美柑は手慣れた手付き
でケーキを切り分けていく
「コレって唯が作ったのか?」
「え、ええ。そうよ」
リトの皿に盛られたココアパウダーたっぷりのブッシュ・ド・ノエルに、唯の心拍数が早鐘を打つ
ブッシュ・ド・ノエルは美柑の監修があったとはいえ、唯がほぼ一から作ったケーキだ
自分の皿にあるケーキの存在も忘れて唯の目は、フォークで切り取った一欠片を口に入れ
ようとするリトから離れない
リトはワクワクしながらケーキを口にいれると、モグモグモグモグ、とたっぷり時間を
かけてケーキを味わう
唯の白い喉が緊張で小さく音を立てる 
「……ん?」
「な、何よ…。お、おいしくなかったら別にムリして…」
「す…スゲーうまいじゃん!」
「え…」
思わず余計な一言を言いかけた唯の口をリトの満面の笑顔が封じる
リトはどんどんケーキを口にしていった
「うん…うまい。ホントにうまいぜ! 唯」
「そ…そう…なの?」
皿の上のブッシュ・ド・ノエルは、あっという間になくなってしまった
リトは早速、お代りをお願いする
再び皿の上に盛られたのは、フルーツとココアクリームたっぷり、そしてお菓子の家付きだ
「いっただきま〜す!」
口の中に入れたリトの顔が幸せいっぱいに緩む
「うん。うん。やっぱうまいよ、唯の作ったケーキ」
「……っ」
「毎日食べたいぐらいだぜ! また作ってくれよな!」
「…まっ、まったく大げさなんだから……そ、そこまで言うなら、べっ、別に考えてあげても…」
赤くなった顔をふぃ、と逸らす唯の胸にセリーヌが「まうー」と抱きつく
「セリーヌちゃん!? どうしたの?」
「まう♪」
顔を上げたセリーヌの口周りは、ココアクリームですっかり汚れてしまっていた
唯はテーブルの上のティッシュで手早く拭いていく
「もう、こんなに汚して」
「まう〜♪」
とってもうれしそうなセリーヌは、唯のほっぺにすりすりと顔を寄せる
「セリーヌちゃん?」
「セリーヌも、唯のケーキ食っておいしかったんだよ」
「そ、そうなの?」
「まうっ!」
にぱっと笑うセリーヌの屈託ない笑顔に、唯はホッと安堵の溜め息をつく
そしてセリーヌの頬にそっと唇を当てた
「セリーヌちゃんに喜んでもらって、私、すごくうれしいわ」
「まう♪」
(なんかオレの時と態度が違うよな…)
フォークを口に咥えて、深い溜め息を吐くリト
みんなお腹が空いていたせいで、テーブルの上の料理たちは、みるみると姿を消していく
と、突然、イチゴのタルトを頬張ったまま、ララが立ちあがった
「じゃー、そろそろプレゼント交換しようよ! まずは唯から!」
「ちょ…!? なんで私から!?」
心の準備がまったく出来ていなかった唯は、あわあわと慌てながら、ソファーに置いて
いたピンクのリボンとネコのシールで可愛くラッピングされた真っ白な箱をリトに差し出した
「え、オレに?」
「う、うん」
一同の「おおー」という声に二人の顔が真紅に染まる
「あ、開けてもいい?」
「……っ」
恥ずかしさでもはや声すら出ない唯は、コクコクと首を振って返事を返す
リトの手が丁寧にラッピングされた紙包みをはがし、蓋を開ける 
「お!」
「まう?」
リトとセリーヌは箱の中を覗いた
箱の中には、毛糸で編まれたもこもこのモノが入っていた
リトは早速、取りだして広げてみる
「これって…」
「え、えっと……あなたとセリーヌちゃんのなんだけど」
リトには真っ白なマフラー
セリーヌには赤い手袋とセーター
「これ、唯が編んだのか?」
「ええ…まぁ…そうだけど」
俯き気味にポソポソと小声で話す唯
ケーキの感想を聞く時よりも、なんだかずっと緊張してしまう
セリーヌは唯から貰う初めてのプレゼントを手に、大喜びで何度も飛び跳ねた
そして、もう待ちきれないと言った顔をしながら、美柑に「着たいまうー!」と駆け寄った
「セリーヌちゃん、外で遊ぶのが好きだから、冬でも元気に遊べるようにって思ったの。
ど、どう…かな?」
「まう♪!」
セリーヌは着せてもらったセーターと手袋をみんなに披露する様に、その場でクルっとタ
ーンを決めた
「まうー♪」
拍手喝采に包まれるリビング。やっと堅くなっていた唯の顔が少しだけ綻ぶ
それでもまだまだ恥ずかしさと不安と緊張でいっぱいの唯
リトを見つめる目は今にも、泣き出しそうなほどだ
「ゆ…結城くん…」
「ああ。じゃ、早速」
リトはすでにうれしさでいっぱいに緩みきった顔で、マフラーを首に巻いた
はたしてリトが巻いたマフラーの付け心地は————
リトはマフラーの端を手になんだか、言い難そうな顔を浮かべた
「……な、なァ」
「……」
「えと……これってもしかしなくても…」
「…うっ」
「ちょ…ちょっと長く…ないか?」
「ううっ…」
リトの巻いたマフラーは、長かった
あまりにも長過ぎて、もう一人ぐらい巻けるんじゃないか、と思うほどに
唯は顔を苦くさせたまま、何も言い返せなかった

言えない
最初は悪戦苦闘を繰り広げたマフラー編みも、慣れてくるにつれ、楽しくて、そして妄想が
止まらなくなって
リトの喜ぶ顔を想像しながら編むと、どんどん編めちゃって、止まらなくなってしまったなんて
とてもじゃないけど、言えない

落ち込む唯に美柑は、手を差し伸べる
「ま、まあ、長いマフラーだと、いろんな巻き方できるからいいと思うよ。うん」
なんだか苦しいフォローでも美柑はへこたれない
「それに、セリーヌのセーターと手袋すっごく温かそうだよ。セリーヌも大喜びしてるじゃん」
「まうー♪」
セリーヌは再びターンを決めると、うれしそうに唯に抱きついた
「セリーヌちゃん……う、うれしい?」
「まう!」
「うん。よかった。…結城くんは…?」
「えと…」
まだ若干の戸惑いがあるリトの脇腹に美柑の肘が入る
「ってぇ!? あ…ちょっと長いけど、けどスゲーうれしいぜ! 大事にするよ! ずっとな!」
最後の「ずっと」の部分に特別なニュアンスを込めて言ったリト
その気持ちが通じたのか、唯の顔にようやく晴れ間が差してくる
リトはホッと安堵の溜め息をつくと、美柑に目配せした
「うん。じゃあ、今度は私たちの番かな」
「お、次は美柑とリトか」
ターキーを頬張るナナの期待に満ちた目に、少しドキドキしながら、美柑はキッチンから
チェック柄の紙袋を取ってくる
「はい。私とリトから、みんなにだよ!」
美柑とリトが取りだしたのは、いろんな柄や形のティーセットだった
「ほら、リト」
「あ、ああ」
美柑に責付かれてリトが一歩前に出る
「えと、唯。クリスマスプレゼント」
「え、私に?」
リトが唯に手渡したのは、両手に乗る程度の箱だった
箱の表面には、二匹のネコがじゃれ合っている絵が描かれている
「開けても…」
「ああ」
ドキドキしながら箱の蓋を開けた唯の目が大きくなる
「コレって…」
「どうかな? その使ってくれるかな…」
照れくさくて顔が真っ赤なリトと箱の中身を唯の目が何往復もする

真っ白いティーカップの取っ手はネコの尻尾
カップの外回りには、二匹のカップルのネコの様子が、物語の様にして描かれている
ソーサーにもカップと同じ二匹のネコが顔を寄せ合っている絵がある

「か、カワイイ…」
思わず呟いた唯の一言にリトの固くなっていた顔が緩む
「ほら、唯ってネコ好きだから、唯にぴったりだなって思って」
「じゃあ、これって結城くんが私のために選んで…」
そうわかると、不思議なことにティーカップがさっきよりもほんのりと温かくなったような気がした
まるでいつも温かくさせてくれるリトの笑顔みたいに
「ありがと…!」
「ああ」
二人だけの世界を作り出してしまうリトと唯に美柑は、「やれやれ」と苦笑を浮かべると、
みんなにティーセットを渡していく
「じゃ、みんなにも配るからね」

ララには、恋の天使「キューピット」が可愛く描かれた純白のものを
ナナには、デフォルトされたいろんな種類の動物が描かれたものを
モモには、バラの花に金の模様が施されたちょっと豪華な感じのものを
セリーヌには、真っ黄色のヒマワリが描かれたものを

実はティーカップをプレゼントしよう、と言ったのは美柑だった
美柑曰く「ウチの中に、みんなの"専用"の食器があるってなんかイイと思うんだ」
美柑が人一倍、みんなの事を大事に想っている事は、リトにもわかっていた
美柑がどれだけ"家族"と過ごす時間を大切にしているのかも
誰よりもガンバリ屋で、そして寂しがり屋な美柑の一番の宝物だから
リトは、快く頷くと、休みの日に美柑と一緒に選びに出かけたのだった

「おおー! 私のカップだァ♪」
と、初めての専用カップに声を弾けさせるララの横でナナは、プレゼントされたばかりの
カップをクルクル回す
「へー。チキューってまだあたしが知らないヤツらがいるんだな。お、このツノ生えたヤツは、
サイって言うんだろ?」
セリーヌは早くもジュースを淹れてもらって「うま、うま」とおいそうに口にしている
「ありがとうございます。美柑さん」
モモはカップを手に美柑に笑顔を送った
「いいって。そんな畏まらなくたって…」
「でも残念ですね…。これで、もう間違えてリトさんのコップを使えなくなってしまいま
した。好きだったんですけどね、リトさんのコップ」
「なっ!? ちょっとそれどーゆー事っ!? モモさん!」
美柑の表情が一変。いろんな意味にも取れるモモの発言に、思わず声を大きくさせてしまう
「モモさん、いったい、どーゆーつもりよ?!」
「さァ、私は、特に」
「特にって、もうっ!」
モモに詰め寄る美柑の横顔は、少しだけ怒っていて、それでいてとっても楽しそうで、うれしそうで
二人きりのクリスマスの時には、見られなかった顔だった
美柑のすぐ近くでは、唯のカップを「見せて、見せて」とお願いするララの姿
また賑やかさが増したリビングの光景にリトは笑みを浮かべた
「よかったな。美柑」

「じゃあ」
「今度はアタシたちの番だな」
ナナとモモは、ちょっと得意気な顔で頷き合う
モモはどこにしまってあったのか、大胆に開けた服の胸元に手を入れると、デダイヤル
を取りだした
「それではお庭を見てください。ナナ?」
「オッケー!」
庭に通じる大きな窓のカーテンを開けると————そこには何もなく。ただ夜の闇が
広がっているだけだった
「えと…何もないけど?」
「これからでよ。リトさん。ふふ」
妖しげな微笑みを浮かべながらモモのキレイな指がデダイヤルを操作する
操作はすぐに終わり。そして転送ゲートが庭の真ん中に現われる
「なんだっ!?」

まばゆい光の中、一同が見たモノは、大きなモミの木に星屑がいっぱいに散りばめられた
巨大なクリスマスツリーだった
ツリーの一番上には大きな星が乗ってあり、色を変えながら、辺りに星屑を降らしている
そして一体どういう仕組みなのか、サンタやトナカイのイルミネーションが飛び跳ね
動き回り、みんなの前でダンスをし始める

「す…スゴーイ!!」
「キレイ…!」
「まうー!」
みんなの反応にモモは口に手を当てて、満足そうに微笑む
「コレがあるからツリーの用意しなくてもよかったのか!?」
「そういう事です。お気に召しましたか? リトさん」
「ああ。もちろん! サンキューなモモ!」
飾りつけを頼んだ時のモモの何かを企んでいる様な顔に、ほんの少しの不安を覚えていたリト
けれどもそんな不安なんて消し飛ばしてしまうほどの光景が目の前に広がっている
リトは素直な気持ちと共に、笑顔をモモにプレゼントした
モモの白い頬が赤く染まり、年相応の子供らしい笑顔が浮かぶ
赤や青の光で包まれる幻想的な光景に、ツリーを作ったモモを含めみんな見蕩れていた
そんな中、ナナが意気揚々とデダイヤルを取りだす
「まだまだこんなモンじゃないぜ! よっと!」
ナナの指がデダイヤルの上を走り、再び庭に転送ゲートが出現する
ただし、今度は一つだけではなかった
庭に現われた十数個の転送ゲート
その中から現われたのは、地球では見た事もないような動物達だった
「じゃーはじめるぞ!」
ナナの掛け声と共に動物達は一斉に鳴き声を上げ、動き出す

白クマ(の様な)がボールに乗ったり、ペンギン(の様な)が優雅に空中を飛んだり
ライオン(の様な)が火の玉でお手玉したり、まるでサーカスの一団がやってきた様な喧
騒が庭に訪れる

「ナナちゃん、これって…」
「へへーん! すごいだろ? こいつらみんなあたしのペットなんだ」
と、唯に胸を張りながらナナは得意気に笑う
「クリスマスってよくわかんないけど、パーティーならやっぱ賑やかじゃないとな! 
でも、なんかこんなコトやってると、城でやってたパーティー思い出すなァ」
「城…ってナナちゃんの家の?」
「ああ」
ナナは腕を組むと、唯に可愛い八重歯を見せた
「と、言っても、城でやるパーティーとかもっとスゴいんだぞ! 姉上とか大張りきりだしな!」
「で、でしょうね…」
「はは…」
どれぐらい「大張りきり」なのか、怖くて内容を訊けなかった唯とリト
乾いた笑みを浮かべる二人の前でセリーヌとララは、うれしそうに動物たちと一緒に飛び跳ねていた

「ほーい。最後は私からのプレゼントだね」
リビングの真ん中でララが取り出したのは、デダイヤル
ポチポチ、とボタンを押すと、急に外が白みを帯びた
「な、なんだ!?」
一同が外を見ると、どうやったのか、いつの間にか空から雪が舞い降りていた
美柑はポカンと真っ白な空を見上げた
「雪…!? で、でも天気予報じゃ今日は…」
「うん。私が降らせたの。この『こんこんスノーくん』で」
(『こんこんスノーくん』…?)
美柑の脳裏に少し前の、久しぶりにリトと二人でデートした時の事が甦る
(…そっか。じゃあ、やっぱりララさんが…!)
ふっと顔がゆるむ美柑とララの視線が交わる
"あの時はありがとう"と視線を送る美柑に、ララはキョトンとした顔を浮かべた
「ん? 何? 何?」
「いいから、いいから。続けて」
と、一人うれしそうな顔をする美柑
「う〜ん…じゃー、次! やっぱりクリスマスと言ったらコレだよね!」
「何すんだ? 姉上」
デダイヤルを覗きこむナナの前で、ララの指が楽しそうにデダイヤルのボタンを押していく
「ん〜♪ ほいっ!」
いきなりリビングに眩い光が走り、みんなの体が淡い光に包まれる
光は一瞬で収まり、現われたのは————
「なんだっ?」
「ええっ!?」
「な、何よこれは!?」
リビングにいたみんなの衣装がいつの間にか変わっていた

セリーヌは、羽根の生えた天使
女の子達は、ブーツを履いたサンタの衣装
リトは、頭から足の先まで、ただし顔だけは出ている、トナカイの着ぐるみを着ていた

「えへへ、クリスマスと言ったらやっぱりサンタさんだよねー」
「まうー♪」
羽根の効果なのか、セリーヌは光の粉を巻きながらリビングの上を飛んでいた
「へー、これがサンタってヤツのカッコか」
「たまにはこういう格好をするのもいいですね」
初めて着るサンタの衣装にナナは興味津々、モモは大胆に開いた胸の谷間にまんざらでもない顔を浮かべる
「うわっ…なんかみんなすごいってゆーか…」
「ちょ…ちょっと!? 何なのよ! コレはっ!!」
顔を赤くするリトの隣で唯は、スカートの裾を引っぱって下半身をガードさせながら声を大きくさせた

唯のサンタ衣装は、上半身が赤をベースに白いファーが付いたチューブトップ
下半身は、黒のハイニーソックスにブーツ、そして超ミニのスカート
どれぐらいミニかというと、あまりにも短すぎて、タータンチェックのショーツが露わになるほどだった

「ララさん! 今すぐ、元にもどして!!」
「えー。せっかく用意したのに。それに今日は、クリスマスだし」
「そんなの関係ないわよっ!!」
真っ赤になって叫ぶ唯だったが、急に何かを思い出したように、口を噤んだ
そして、すぐ隣にいるリトに鋭い視線を飛ばす
「な、何だよ」
「……ジロジロ見たりしたら許さないからね!」
「み、見ないって!?」
トナカイの格好で言われても説得力がないのか、唯のジト目はさらに深くなる
「じゃーみんな! クリスマス、もっと楽しもーっ!!」
「そんな事より! 服、早く戻してッ!!」
と、トラブルの張本人であるララの元気な声に、唯の悲鳴にも似た声が応え
結城家のクリスマスは、ますます賑わいを増していくのだった


「まう…」
唯の膝の上で大好きなお菓子を食べていたセリーヌだったが、ここにきて睡魔がやってき
たのか、大きな欠伸をした 
「ん、セリーヌちゃん、眠くなったの?」
と、チョコを一口ぱくっ、と食べながら、唯はセリーヌの顔を覗きこんだ
セリーヌは目尻に浮かぶ涙を両手で擦ると、唯にもたれかかる
「時間も時間だしな」
リトは苦笑交じりに、すっかりとろけきった目をするセリーヌの頭をよしよしと撫でた

時刻はすでに10時を廻っている
いつもなら、とっくにおやすみしているセリーヌだったが、今日だけ特別、という事で起きていたのだ
けれど、それももう限界の様子

「じゃ、オレが二階に寝かしにいってくるよ」
「いいの?」
「ああ。唯はチョコでも食ってろって。好きなんだろ? 甘いお菓子」
「むっ…」
隣でイタズラっぽく笑うリトに思わず言葉を詰まらせてしまう唯
テーブルの上に一箱だけ残っていたチョコを開けてから、まったく止まらない
口の中でほのかに香る甘さと苦さが唯の食欲を刺激しっぱなしだ
他にもマカロンやビスキュイ等。テーブルの上の甘いお菓子は、ほぼ唯の独壇場になっていた
「セリーヌ、おいで。そろそろ寝にいこうな?」
「まぅ…」
セリーヌは唯の顔を見つめると、その胸にギュッと抱きついた
ギューっと抱きついて、再び天使の様な顔で見つめる
「まうー」
「うん。おやすみセリーヌちゃん。また明日ね」
「まうっ」
唯に頬ずりするとセリーヌは、リトに抱かれて二階へと上がっていった
リトに抱っこされながら、「おやすみまうー」と、手を振るセリーヌの姿が見えなくなる
まで唯は手を振った
「唯ー!」
「わ、ちょ…ララさん!?」
体中から甘い匂いをさせるララに突然、抱きつかれた唯
セリーヌのいなくなった分を埋め合わせるかの様にララは、唯の膝で頬杖をついてニッコリと笑う
「何よ?」
「ん、唯が寂しそーな顔してたから! どーしたのかなって!」
「…してないわよ。そんな顔」
ララなりの気遣いに胸の中でクスっと笑みを浮かべつつ、唯はぷいっとナナ達のいる外に
視線を向ける
そんな唯にララは、テーブルの上のポッキーの箱から一本を取り出すと、それを口に咥え
て唯に迫ってきた
「唯、ん!」
「なっ!?」
「んー!」
「もう! ハレンチなマネはやめて!」
リビングに響く唯の声に、「何? 何?」と再び家の中に入ってきた美柑達
静かだったリビングは再び、クリスマスの喧騒に包まれる事になる

賑やかな声を子守唄にセリーヌを寝かしつけたリトは、トナカイの着ぐるみを脱ぐため(律
義にずっと着ていたのだ)自分の部屋にやってきた
ファスナーを下ろすと、汗を掻いた素肌に窓から吹き込んだ夜の風が心地いい
「ったく、ララのヤツは」
楽しそうなララの顔に苦笑を浮かべながら、ズボンを穿くと、ふいに背後に足音がした
「結城くん」
声のした方を振り返ると、部屋の入口に唯の姿があった