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「まいったなぁ……」

ベッドの中でリトはため息をついた
一体自分はこんな日に何をしているのだろう
こんなにいい天気なのに、特別な日なのに
せっかくあの子が楽しみにしていたというのに

タンタンタンっと軽快に階段を駆け上る音が聞こえる
少し間違えばただの騒音になってしまうそれも、彼女にかかればまるでタップダンスのようだ

「リト、替えのタオル持ってきたよっ」

ドアを開けると同時に明るい声が弾け飛ぶ
その透き通るような声は体調の悪い今のリトが聞いても頭に響くということは無く、心地よいものだ
彼女——ララ・サタリン・デビルークを見ていると、さっきまでの沈んだ気分もいくらか晴れてしまう
「ララ……美柑は?」
「友達とお買い物だって。夜には戻るってさ」
「そっか」

あいつなりに気を遣ってくれたのだろう
家から出られない自分を、せめて2人きりにしてあげようと
そんな心遣いが嬉しくもあり、少々気恥ずかしくもある

「さ、タオル替えないと」
「ああ。サンキュ……っへ」
「へ?」

リトの頭に乗せられたタオルを新しいものに替えようとララが手を伸ばす
だがそこでふとリトの表情が固まり、それに合わせてララの動きも止まる
そして……

「ふぇっくしょいっ!」
「わっ」

ひときわ大きなくしゃみが部屋の中に響き渡る
前方に飛び散った多量の唾液
それを間一髪かわすと、ララは心配そうにリトの顔を覗き込んだ

「だ、大丈夫?リト」
「ああ、大丈夫大丈……ぶぇっくしゅんっ!」
「きゃっ」

二発目
今度は至近距離だったため避けきれず、布団だけでなくいくらかララの服にかかってしまう

「す、すまん……」
「いーよ気にしなくて。それより鼻水……」

申し訳なさそうに頭を下げるリトの鼻からは、だらしなく粘液が垂れ下がっている
ララはそばにあったティッシュを一枚取ると、手際よくそれを拭き取った

「……これでよしっと♪」
「あ、ありがと……」

小さい子がお母さんに世話をしてもらっているような気分になり、恥ずかしさから目を逸らす
そんな様子を見てクスッと笑ララ

「笑うなよ」
「だってリト、可愛いんだもん」

そう言ってまたニコニコ笑顔になるララに、お前のほうが数百倍可愛いと言ってやりたくなる
だがそれより先に、ララに悪いことをしたという思いも込み上げる

「ごめんな、ララ。せっかくクリスマスだってのに、こんな……」
「リトのせいじゃないよ。元はと言えば私がリトの布団を全部取っちゃったから……」

ララの言葉を聞きながら頭を掻く
そう、今日は12月24日——クリスマス・イヴだ
そんな日になぜ恋人同士の二人が家にこもっているかというと、原因は昨晩にさかのぼる

夜中に目を覚ましたリトが用を足して戻ってくると、掛け布団はすでにララが独占
地球人より数倍力のあるララから奪い返すことなどできるはずもなく、仕方なく毛布にくるまってリビングのソファで寝ていたのだが
いつの間にか床に転げ落ち、そのまま朝まで眠っていたらしい
思えば昨夜は今年一番の冷え込みだった
そんな中で掛け布団もなしに床で寝ていたのでは、風邪をひかないほうが無理というものだ

「だから今日は一生懸命看病するね。はやく良くなって、また今度遊びに行こっ」
「……そうだな。はやく治さないとな」

ねっ、と微笑むララに、リトも出来る限りの優しさを込めて微笑み返す
風邪をひいていても、ちょっとくらい体調が悪くても、ララとこうして穏やかな時間を過ごせることにたまらない幸せを感じて——

ぐぅ〜

いるところに、間抜けな音が水をさす
発生源は案の定リトの腹だ

「……リトのおなかの虫は元気だね〜」
「わ、悪い……」

赤くなるリトを茶化すように、ララが悪戯っぽく笑う
すると嬉しそうにリトの腹に耳をあてた

「もうすぐ生まれるかな〜?なーんてね♪」
「妊婦じゃないんだから」

苦笑するリトを尻目にララは立ち上がると、扉のほうに向かった

「どこ行くんだ?」
「ふふ♪おなか空いてるみたいだから、ちょっとはやいけど夕ご飯にしようと思って」
「飯か……そうだな」
「美柑に教わっておかゆ作ってみたの。結構うまく出来たと思うんだけど、普通のご飯とどっちがいい?」

少々自信ありげにララが訊ねる
リトの答えは決まっていた
「ララが作ってくれたんだから、食べたいな。おかゆ」
「……うん♪ちょっと待っててねっ」

ぱあっと明るくなるララ
本当に感情表現の豊かな子だと、リトは思う
同時にそれをたまらなく愛しいとも思う
楽しいことを楽しいと言い、嬉しいことを全力で喜び、悲しいことや辛いことに時には涙する、何事にも素直でまっすぐなララ
彼女はいつもありのままを受け入れる清さを持っている
その魅力にどうしてもっとはやく気付かなかったのかと、少しだけ後悔することもある
知っても知っても知り足りないほどだ
もっとはやくに気付いていれば、今よりもっとララを深く知ることが出来ていたかもしれないのに……
そんな宛のない想いを抱きながら、彼女の運んでくる自信作を待った


「はい、あーん♪」
「……いや、ちょっと待て」

開口一番にツッコミを入れるリト
その目の前には、ほかほかと湯気の立つレンゲがララの手によって運ばれている

「どーしたの?」
「どうって……」
「あ!そっかそっか、そーだよねっ」

何かを閃くララ
漫画やアニメであれば「ピコーン」という効果音と電球のマークで表現されそうだ
するとララは何を思ったのか、レンゲを今度は自分の口許へ運び

「ふーっ、ふーっ」

と、息を吹きかけ始めたのだ

「……何してんの?」

一応聞いてみる

「ふーふーして冷ましてるの♪そのままだと熱くて火傷しちゃうもんね。気付かなくてゴメンね」
「……」

恥ずかしいやらくすぐったいやら
どちらにしても体温が一気に上がったリトは、顔面を布団に埋めて鎮めようとする
どうやらすでにララの中では、自分の手でリトに食べさせることが規定路線となっているらしい
それが嬉しいようでもあり、恥ずかしげもなくやってのけようとするララにしり込みもしてしまう

「あ、あのさ……オレ一人で食べられるし、そこまでしてもらわなくても」
「え?でも地球じゃ病人さんにはこうやって食べさせてあげるんじゃないの?」

ちょくちょくララに間違った地球の知識が備わっているのは何故だろう
おそらく半分以上はあのメガネっ娘と金髪娘のせいなのだろうが、今は関係ない

「あ、遠慮なんてしなくても大丈夫だよ!リトに食べてもらえるの嬉しいもん♪」

いやなにも遠慮してるわけじゃないんだけど、と心の中で呟く
確かに、こんな可愛い女の子にご飯を食べさせてもらえることが嬉しくないはずがない
まさに男の夢と言っても過言ではないだろう
しかしこれはあまりにも、恥ずかしすぎる


「いいからさ、ほら。ララは自分のご飯用意して食べろって」
「私はあとでいいよ。そんなにおなか減ってないもん」

ララもなかなか退こうとはしない
どうあってもリトに食べさせてあげたいらしい

「とにかく、自分で食うからいいって!茶碗とレンゲ貸してくれよ」
「むー……どうしてもダメ?」
「ダメっていうか……照れくさいだろ?気持ちは嬉しいけど」

頬を掻きながらボソッと呟く
あまり大きな声ではないが、ララの耳にも届いたらしい
すると少しだけ、ララが眉をひそませる

「……んー、そっかぁ。迷惑なら仕方ないよね」
「えっ!?ま、別に迷惑なんて一言も……」
「だって、リトは恥ずかしいから困ってるんでしょ?だったら……同じじゃないかなぁ」
「それはっ……」

何も言い返せない
考えもしなかった、ララがそんな風に受け止めることなど
彼女の好意を大した理由もなく断ること
それは、その行為を迷惑だと言っているに他ならないのかもしれない
たとえ本人がそう思っていなかったとしても

「そんな顔しないで。リトが恥ずかしがり屋さんなのは、ちゃんとわかってるから♪……でもね」

明るいはずの笑顔に、ほんの少しだけ陰りが見える
ちょっとだけ寂しそうなララの笑顔

「リトはいつも私のわがままに付き合ってくれるから……たまにはね、甘えてほしいって思うこともあるんだよ」
「ララ……」
「……勝手なこと言ってごめんね。私洗濯物たたんでくるから、食べ終わったらお盆に乗せといてね」

おかゆの入った茶碗をベッドのそばの棚に置き、その場を離れるララ
向けられた背中が、先ほどおかゆを取りに部屋を出た時よりもずいぶんと小さく見える

「ララ」
「え?」

無意識に名前を呼んでいた
ララに離れてほしくないと、素直に甘えたいと思った

「やっぱりさ、食べさせて……くれないか?」
「え……でも」
「考えてみたらさ」

わざと大きめの声を出してみせる
恥ずかしい気持ちを隠すように、そんなこと顔に出てしまうのだからできるはずがないとわかっていても

「今この家にいるのはオレたち2人だけなわけだし……恥ずかしがるのもなんか変かなって」
「リト……」
「それに今日はクリスマスだしな。プレゼント代わりにララに甘えるのも悪くないかも」

冗談めかして笑うリト
つられてララもクスッと笑う

「もー……クリスマスプレゼントはちゃんと用意してあるよ」
「じゃあダメか?」
「ううん、そんなことない。リトがもらってくれるなら、いくらでもあげるよ」

目を細めて喜びを見せるララ
そんな表情を見せられるとこっちまで嬉しくなってしまう
ララの笑顔にはいつも人を幸せにする力がある——そんな気がした

「どうかな?おいしい?」

興味津々といった様子でララが尋ねる
その瞳に、少し驚きの混じった笑顔でリトが応えた

「ああ……やわらかさも丁度いいし、初めて作ったとは思えないよ」
「やった♪」

絶賛するリトの言葉に、ララが子どものように飛び跳ねて喜ぶ
お世辞を言ったわけではないのだが、褒めて良かったと心から思える

「普通に美味いし、何と言ってもララが食べさせてくれるからかな……一層おいしく感じるよ」
「そ、そうかな?えへへ……もっと食べる?」
「うん。食べたい」

やってみるもので、一口、二口と進むうちに恥ずかしさが何とも言えない心地よさへと変わっていく
すっかりリトもララの愛情を受け入れ、自ら積極的にララからの受け渡しを求めていた

「ふー、ふー……はい、あーん」
「ん……モグモグ」

差し出されたおかゆを頬張る瞬間、ララとバチッと目が合う
嬉しさと恥ずかしさと幸福感が混ざり合い弾け、口に入れたおかゆよりもずっと熱いものとなってリトの中を駆け巡る

「好きだよ……」
「えっ?」

気がつくと、自分でも知らないうちにその熱い気持ちを口にしていた
突然の言葉に言われたララはもちろん、言ったリト自身もこれ以上ないほど顔を赤らめている
ほんの少しの沈黙の後、先に口を開いたのはリトだった

「あのさ、ララ」
「な、なに?」
「最後の一口、なんだけど……」

見れば茶碗によそわれたおかゆはすでにそのほとんどがリトの胃袋に収められ、残りはレンゲ一杯分ほどしかない
それを見たリトがある提案をする

「その……口でってのは……ダメかな?」
「えっ……えぇ!?」

さすがのララも目を丸くして驚いている
当然だ、言った本人ですら自分が何を言っているのかわからない
ただ、ララに甘えると言った以上はそれを貫かなければ気が済まないわけで
その中で最上級のものと言えば、それしかない……そう思ったのだ

「えっと……つまり」
「だから、ララがおかゆを口に入れて、それをそのままオレに……」

リトの顔がみるみる真っ赤になっていく
自分で言っておいて、これはかなり変態チックな要求ではないかと今更になって後悔し始める
というかまるっきり変態の発想だ
しかし、やってほしいのも事実
ここまで来てしまったらもう後に退くことはできない

「頼むよ、ララ……」
「……えっと」

戸惑うララ
無理もない、いくらララと言えどリトに口移しなど一度もしたことはない
そもそもそんな発想がララには無いのだから
しかし、リトの頼みとあらばララの頭に拒否の二文字は出てこなかった

「……いいよ」
「えっ!?いいのか?」

興奮気味に身を乗り出すリト
ララはそんな様子にまた少し驚いたようだ

「そ、そんなに嬉しいの?」
「あ、いや……うん、まぁ……」

ララの問い掛けに情けない相づちを打つことしかできない
だがリトの心はまさに天にも昇るような気持ちだった
好きな女の子から、口移し
考えただけで体が震えてしまう
自分に素直になるということがこれほどまでにすばらしいことだといつ想像しただろうか

「じゃ……いくね?」
「う、うん」
「はむっ……ん」

リトが凝視する中、ララが残ったおかゆを形の良い唇に収める
レンゲを置き、両手でリトの頬を優しく包む
それだけでリトの胸ははち切れそうなほど鼓動していた

「ん……」
「ララ……」

ゆっくりとララの顔が近付く
心なしかとろんとしているような瞳が自分との距離をどんどん縮めていき、それに従うように鼓動もさらに速さを増す
リトの吐息が顔にかかると、ララもピクッと肩を震わせた
そして……

「んっ……」
「……んぐ……ちゅる……」
「ちゅ、ぅ……ん、ふぅあ……」

ララからリトへ
繋がれた口内を通じて流体状のおかゆが受け渡された
口の端から液体が一筋零れ落ちるが、気にせずリトはそれを受け止めている
ララの舌に自分を絡ませながら、全て舐めとるように吸い尽くす
そうして入ってきたものを二、三度口の中で転がしたあと、ごくりと飲み込んだ

「……ぷはぁ」
「ど、どうだった?」
「……やばい」
「え?」
「信じらんねーくらい、美味かった……」
「も、もうっ……ばか」

ゆでダコのように顔を上気させ目を逸らすララ
こんな風に恥ずかしがる彼女はすごく新鮮だ
いつも積極的なララがしおらしい一面を見せると、ギャップの効果もあって愛らしさが倍増する
そんな姿を見せられたリトは、当然のごとくララをもっと愛したくなる

「わ、私食器洗ってくるね」

下手な照れ隠しでその場を離れようとするララだが、リトの腕はそれを許さない
ララの腕を掴み自分にグイッと引き寄せた

「きゃっ」

案の定バランスを失ったララはリトの胸の中に倒れ込む
もちろん嫌がる素振りはなく、腕に抱かれたままリトの顔をぽーっと見上げている

「り、りと……」
「行くなよ……ララ」

うなじを掻き上げるようにララの頭を撫でる
するとララはより気持ち良さそうに震えながらリトのシャツを握った

「めちゃくちゃ可愛いよ……」
「ん……やぁ……」

耳元で囁かれ、ララの全身が髪の色よりも濃い桃色に染まる
付き合い始めてから気付いたことだが、ララは思っていた以上にこういうことに対しての耐性が無い
自分からキスをしておきながら恥ずかしさで俯いてしまったり、今のようにリトから気持ちを伝えると真っ赤になったり
初夜の時など、普段あれほどオープンな性格のララが頑なに裸を見せようとしないのだ
その時の恥じらった表情をリトは一生忘れることはないだろう
リトといるとき、ララは一人の奥手な女の子でしかなかった


「ララ……オレやっぱ熱あるみたいだ。ララにずっと看病しててもらわないと」
「えっ。じゃあ氷枕で冷やさないと」

素直に驚いて立ち上がろうとするララ
しかしリトはさらに力を込め、ララを逃がそうとしない

「そんなんで治まらないよ……ララじゃなきゃダメだ」
「どういう……っ!」

わけがわからないララの手を引き、自分の股間へと誘導する
そこはすでに爆発しそうなほど熱が集まり、リトの意思と関係なく硬く隆起していた
それが示す意味を瞬時に理解し、ララはまた言葉を失ってしまう

「な?ララ……オレこんなになっちゃったんだよ」
「で、でも風邪ひいてるんだし、休まないと……」
「ガマンするほうが体に悪いと思うんだ」

無茶苦茶な言い分ではあると思う
しかし、沸騰してしまったララを崩すには十分すぎる言葉だ

「ララ、お願い。もうガマンできないよ」
「……りと」

とろんとした瞳を引き寄せ、熱くなった唇を重ね合わせる
すぐさま舌が交わり、くちゅくちゅといやらしい音が部屋の中に響く

「ん……ふぅ、ちゅう……」
「くちゅ……ちゅるる」

リトの舌が必死でララを求め、ララはそれに応えるのが精一杯だ
互いを愛し合う感覚で脳が痺れ、相手のこと以外何も考えられなくなっていく
貪るようにキスを交わしながらベッドに倒れこんでいき、リトがララを抱きしめるように仰向けになる
唇を離してしばし見つめ合うと、今度はララのほうから軽く口付けをした

「リト……えっちなんだから」
「ごめん」
「でも嬉しい……リトが私のこと欲しいって思ってくれるの、すごく嬉しいよ」

頬を染めたままニッコリとララが笑う
普段の可愛らしさと求愛する女性の色っぽさが入り混じり、余計にリトを興奮させる要因となる

「だからね、私もリトのこと……欲しくなっちゃった」
「ララ……うぁっ」

覆い被さるようになっていたララが硬くなったリトのものをズボンの上から優しく撫でる
あまり厚い生地ではなかったため、急な刺激に表情を歪ませるリト
他人に触られるというのはどうしてこうも気持ち良いのだろうか

「すごい……硬いよ」
「なんか、いつもより興奮してるかも」
「どうして?」
「ララに甘えたいって思ってるから、かな……?」

リトがそんなことを言うと、ララは一瞬キョトンとしたあと喜びをかみしめるように微笑んだ

「そっかぁ……リト、甘えたいって思ってくれてるんだ」
「ララがそう言ったんだろ」
「うん。でも、嬉しいなぁ。えへへ」

白い歯を見せてはにかむララ
先ほどとは打って変わって無邪気な笑顔に、リトはどこまでも溺れていく
この子はどこまで自分を夢中にさせれば気が済むのだろう
再びララの頭を引き寄せて唇を塞いだ

「ふぅ、んん……」
「ララ……好きだよ」
「ん、私も……大好き」

甘い囁き合いを繰り返しながら、何度も何度も口付けを交わす
互いの体が十分に上気してきたところで、ララが体を起こす

「ララ?」
「リトが私に甘えてくれるなら、私もいっぱい応えてあげなきゃいけないよね」

言いながらおもむろにリトのシャツをたくし上げる
リトは慌てたようにララの手を掴んで止めた

「な、なんだよいきなり?」
「リトにしてあげたいなって思って。リトはあまり動かなくていいように、私が全部してあげるよ。ね?」

うっ……と言葉を詰まらせるリト
わかっているのかいないのか、ララの言葉は想像を絶する破壊力だ
上目遣いでそんなことを言われてしまっては従う外に選択肢がない

「お、お願いします」
「はーい♪」

ララは元気よく返事をすると、リトによって中断されていた行為を続行する
リトの服を首の下辺りまで捲くると、また顔を上げて尋ねた

「大丈夫?寒くない?」
「うん。ララが布団あったかくしてくれたし、さっきのでも大分あったまったし」
「そっか。じゃあ、触るね?」
「お、おう」

一度確認したあと、ララが白い指をそっとリトの上半身に沿わせる
そんなところをあまり触れたことのないリトにとっては、くすぐったいような何とも言えない感覚だ

「ふわぁ……リトの胸、硬いんだね」
「これでも一応男だからな。女の子よりは筋肉も多いだろうし」
「ふーん……ここかな?」
「うぁっ……!」

しなやかな指先がリトの左胸の頂点の、薄く色づいた部分を掠める
リトの口からため息にもにた吐息がこぼれた

「やっぱり男の子もここが気持ちいいの?」
「……なんか、変な感じだな」
「じゃあ、これはどうかな」

言いながらララがリトの胸に顔を埋める
リトが反応する間もなく、突起を口の中に含んだ
するとリトの反応も先程より大きなものになる

「うく、はぁっ……!」
「ん……リトの声、かわいい♪」
「ちょ、やばいって……なんか変……!」

ララが舌を動かす度、電流のような刺激がリトの体に走る
今まで感じてきたものとはベクトルの違う快感に、否応なく息を乱す
リトの反応に気を良くしたララはどんどん責め方を変え、舐めるだけでなく舌先で突いたり周辺を包むように愛撫したりする
甘く切ない快感がリトの思考力を奪ってゆく

「ララ……よすぎっ……うぅ」
「すごいね……リトのここも硬くなるんだ」

いったん唇を離し、指先でリトのそこを摘んでみる
突起は触る前よりも明らかに硬度を増し、リトがしっかりと感じていることを示していた

「気持ちよかった?」
「う、うん……乳首舐められるってこんな感じなんだな」
「ふふ♪でも、リトがしてくれるときはもっと気持ちいいと思うよ」
「そ……そうか?」

今ララにしてもらったのでもずいぶん気持ち良かったと思うが、自分がする時はそれ以上だと言うのだろうか
確かに考えてみれば、いつもララにする時の反応はこんなものではない
シーツを握り目をギュッと閉じ、涙を浮かべながら快楽に堪えている、そんな印象だ
もしかしたらララに比べてその部分の性感がまだ開発されていないのかもしれない
とは言え自分がそんな風になるところなど想像もしたくないが

「でもリトもすっごく感じてくれたんだね。ほら」
「え?あ……」

ララが指し示す部分
そこにははちきれんばかりに血液が集まり、自己主張をしているリトの分身があった

「ずーっと私のおなかに当たってたよ」
「な、なんか恥ずかしいな」
「苦しそう……ちゃんと楽にしてあげるからね」

慈しむような母性を含んだ笑みを浮かべ、ララがリトのズボンを脱がせにかかる
脱がされることに多少気恥ずかしさもあったが、せっかくのララの好意なのだからと抵抗せずそれに従う
一刻もはやく解放されたいという想いを感じ取ったのか、トランクスごと一気にズボンを下ろす
すると、中に鉄の塊でも入っているかのごとく硬化したものが元気よく飛び出した

「わ、ぁ……すごぉい」
「自分でもビックリするな……これは」

リトのものは今まで見たことがないほど肥大化していた
全体に血管が浮かび上がり、先端部分が痛々しいほどに膨れ上がっている
見た目にも辛そうなほどだ
おまけに鈴口からは透明な液体がにじみ出て、トランクスとの間に糸を引いている

「すっごくえっちな形になってるね……えっちなお汁も出ちゃってるよ」
「気持ちよかったんだ……ララ」

自分のものを凝視しているララの頭を、そっと撫でてやる
すると我に返ったようにララが目をぱちくりさせた

「そんなに見とれてたの?」
「だ、だっておっきいんだもん」
「挿入れるとこ想像しちゃった?」
「ば、ばかぁっ……!」

軽口を叩くリトを恨めしげに見つめる
しかし迫力はまるでなく、リトからすればさらなる劣情を誘う表情でしかない
否定しないところを見るとあながち外れていたわけでもなかったらしい

「そんなこと言う悪い子は……こうだもんっ」

パクッ

「おわっ!?」
「んふふ……れる、りゅるん……」

不意打ち気味にリトのものを頬張り、いきなり舌で責め立てるララ
これには余裕の表情を浮かべていたリトも一転、強烈な刺激に歯を食いしばる
唾液をいっぱいに含ませたララの舌が撫でる度、リトは背中をゾクゾクと震わせる

「ららっ、いきなり……そんなっ……!」
「んく、はむん……ちゅるちゅる、くちゅぅ」

リトがララの頭を掴んでも、ララは責める姿勢をやめようとしない
まずい、このままではすぐに果ててしまう
そう思った時にはすでに遅かった

「うあっ!?」

ララの舌がリトの裏筋を舐め上げた瞬間、溜まっていたものが一気に尿道を駆け上がり暴発する

びゅく、びゅるるるっ!

「んん、んぐっ」

いくらなんでも早すぎだろうと思った
そしてその量は一瞬失禁したかと思うほどだ
ララの口に収まらなかった精液が端から流れ落ち、さらに第二、第三の波がララの顔を汚す
その勢いにララは半ば呆気にとられ、付着した精液を指で拭き取る

「ふわぁ……たくさん出たね〜」
「ララがあんな責め方するからだろ……」
「でも気持ちよかったでしょ?」
「う……そりゃ、まあ」

聞かずともその量を見れば一目瞭然だ
さらにリトのものは一度精を放った後も硬度を失うどころか、汚れてしまったララを見て益々大きくなっている
ララはそれをウットリした様子で見つめ、つんつんと指先でつついてみたりする

「りとぉ……」
「ん?」

こつん、とリトの肩にもたれ掛かるララ
そんな仕草が可愛くて、ララの体を抱き寄せてキスする

「変な味」
「そうかなぁ?私は好きだけどな〜」
「……マジ?」

嘘を言っているとは思えないが、とても信じられない
自分の出したものなど臭いも嗅ぎたくないというのが本音だ
しかし好きな相手のものならどんなものでも受け入れられてしまうのかもしれない
いつもララを愛撫している時のことを思い出しながら、そんなことを考えてみる

「リト……なんかね、リトの熱……私にも移っちゃったみたいだよ」
「そりゃ大変だ。どうすれば鎮まりそうなんだ?」

答えはわかっていながら、また意地悪な質問をしてしまう
こうやってララをいじめることが染み付いているらしい
しかし今度はララも困った様子はなく、熱のこもった瞳でじっとリトを見つめている

「んとね、リトにギュってしてほしいな」
「今してるじゃん」
「もっと強く、だよ」
「……ん」

言われたとおり、ララの体をより強く抱きしめる
それだけでララは本当に気持ち良さそうに腕の中で震えた
抱きしめているリトも、ララのやわらかさを体全体で感じる心地よさに身を任す
自分とは何もかもが違うララの身体
本当に同じ人間なのかと疑ってしまうほどだ(確かに種族は違うが)
そしてその意識は自然とララの首より少し下、腰よりも上の部分に集中してしまう

「あぁ……ララのおっぱいやわらけー……」
「あ、ちょっと……また大きくなってる」
「なー、触ってもいいよな?」

リトのおねだり
いつものララなら照れながらも快く応じるのだが、今日は少し勝手が違う
少し考えたあと、小悪魔の笑みを浮かべて言った

「触るより、もっといいことしてあげる」
「いいこと……?」

言うなりララは着ていた服を一枚一枚丁寧に脱ぎ始めた
リトを焦らすようにゆっくりと
下着だけになったララの姿に、興奮を隠しきれない

「ララ……オレもうしたいんだけど」
「焦っちゃダメだよ……もう少しリトを良くしてからね」

するとララは再びリトの股間の辺りに顔を近付ける
また舐めるのかと思いきや、今度は先程より少し上の辺りに顔がある
不思議がるリトをよそに、ララはブラのホックを外したわわな双実を露にした

「リトの隠してた本読んで、勉強したんだよ」
「へ?オレの本って……おわっ」

目を丸くするリト
なんとララは、自らの乳房の間にリトのものを挟み込んだのだ
一見するとまるでララの谷間から卑猥な物体が生えているようにも見える

「男の子って、こういうのが夢なんだよね……?」
「ら、ララ……」

確かに夢かもしれない
しかしそれは漫画やアダルトビデオの中だけの話で、よもや現実に自分がそのような体験をするとは思っても見なかった
まさか女の子のおっぱいに自分のものを挟まれる日が来るなどとは

「どうかな?」
「想像してたより、凄いかも……てかやわらかすぎ」

リトのものに与えられる刺激はとてつもないものであるはずなのに、圧迫感はそれほどない
どちらかというとララの胸が吸い付いているような感触だ
ほんの少し汗ばんだララの谷間がリトのものと密着し、呼吸に合わせて締め付けている
じっとしているだけなのにたまらなく気持ちいい

「動くね?」
「ちょ、ちょっと待った!」
「どしたの?」
「嬉しいんだけど……これじゃまたすぐにイッちまう」

返事を待たずに上半身を動かし始めたララを慌てて制止する
情けないが、少し動かれただけで熱いものが込み上げて来たのは事実だ
それほどにララの豊満な胸の感触は凄まじい

「私は構わないよ?何度でもリトに気持ちよくなってもらいたいもん」
「そ、そうじゃなくてな……」
「?」

怪訝そうに首を傾げるララ
彼女からしてみれば、なぜリトが自分の愛撫を妨げるのかわからない
喜んでいるのは間違いないのだが
そんなララを諭すようにリトが口を開く

「今いっぱい出して、ララとする時ちょっとしか出なかったら嫌だろ?オレはララにたくさん受け止めてほしいし」
「えっ……」

先ほどあれだけの量を出したのだ、次で枯れてしまっても不思議ではない
自分で言っていて思わず赤面してしまうような内容だが、これくらいハッキリ言わないとララは納得してくれそうもなかった
案の定リトの言葉を受けたララは谷間にものを挟んだまま固まってしまっている

「だから……な?」

そう言って右手をララの頬に優しく沿わせる
ララもそれに左手を重ねた

「……そうだね。先走っちゃってごめんね」
「ララが謝ることじゃないよ。嬉しかったのは事実だし。ただそれ以上に、ララと一緒に気持ちよくなりたいんだ」
「うん……リト」
「ん……ちゅ」

ララのほうから身を寄せて唇を押し付ける
それに応えるように肩を抱き、ついばむようなキスを何度も繰り返す
唇とともに想いが重なってゆく感覚が、たまらなく心地好い

「それじゃ、挿入れるね?」
「ああ……頼む」

リトの胸に手をつき、腰の上に跨がる
女の子がこれから交わろうとする姿はなんとひたむきさが伝わってくることだろうか
騎乗位は今までも何度か経験があるが、何度見てもその光景には情欲を掻き立てられる

「んっ……」

ララが腰を落とす
リトの先端と蜜壺の入り口が触れ合い、くちゅりと卑猥な水音を立てる

「いつの間にこんな濡れてたんだ?」
「リトの触ってたら、勝手に……」

ゾクゾクと肩を震わせながらララが言う
どうやら快楽に溺れるリトの姿を見ながら自分もひどく興奮してしまっていたらしい

「んっ、んっ……あれ、おかしいなぁ……」
「ちょ、ララっ……」

必死にリトのものを食わえ込もうとするララだが、粘液が滑って上手く挿入できない
性器と性器が擦れ合い切ない快感が何度も電流のように走る
特にリトは最も敏感な部分を刺激されているのだ
このままでは外に暴発しかねない

「ララ、押さえててあげるからちゃんと入れて……?」
「あ、ありがと……」

堪えかねたリトが自分のものを動かないようにしっかりと手で固定し、ララに挿入を促す
器用なようで不器用なララ
そんなところもリトがララを好きな部分だ

ぬちゅ……

「んく、ぁ……」
「ララっ……」

リトの助けを借りて、やっとララの秘部がリトのものを飲み込んでゆく
他のどんなものにも例えがたいその感覚
互いの体が一つに融け合うその瞬間、頭の中は真っ白になり相手を求める本能だけが全身を支配する

「り、とぉ……っはぁ」
「すっげ……!」

まだ半分ほどしか入っていないというのに、全身を貫く快楽で天に昇りつめてしまいそうだ
そのままズブズブと腰を沈めていき、ララの一番奥の深い部分とぶつかる
少しざらざらとした感触が広がるそこは、リトのものにも極上の快感を与える

「んはぁ……ぜんぶ、はいったよっ……」
「うん……なんか、すげー深いよ」
「りとの、奥にこつんって当たってるのぉ……!」

まだ体を動かしてもいないというのに、はやくもララの腰は痙攣を始めている
重力がかかっている分いつもより挿入が深くなっており、リトのものが子宮の入り口まで届いているらしい
呼吸をするたびララは奥のほうでリトを感じる

「なんか、ふぁっ……奥がきゅんきゅんするよぅ……」
「感じてるララの顔、すごく可愛いよ……」

ララの腰に腕を回して抱き寄せ、目の前の果実の突起にしゃぶりつく
するとララは本日一番の甲高い嬌声をあげた

「ひあぁっ!」
「む、ちゅぷ」
「ん、んっ!りと、だめぇ……!おっぱい吸っちゃ……んひゃうぅ!」

下半身と上半身が同時に刺激され、いよいよララの余裕は無くなる
目尻からは玉の涙が零れ、口の端からは涎が伝っている
もう自分で動くのが無理そうだと判断したリトは、下からララの体を突き上げてやる

「あぁうっ!り、とぉっ」
「ララっ、いいよ……可愛いよ、ララ」
「はあぅっ……あた、あたってるぅぅ……!りとのが、おくにずん、ずんって……!」
「オレも感じるよ……ここがララの、女の子の一番深いところなんだな」

絶えず腰を打ち付けながら、感心するようにリトが呟く
本当に女の子の体は不思議だ
こんなに狭いのに、こんなに太いものが入っているのに
中は拒むどころか逃がすまいと吸い付いて、奥にはこんなにも気持ちいい場所が広がっている
そこからは溢れるほどに愛が滲み出る

すごくいやらしいはずなのに、どこか包み込むような優しさを持っていて
きっとそれは、そこが新たな命を紡ぐ場所だからなのだろう
そんなことを考えると、自分の上で無意識に腰を上下させるララが一層愛しく思えてしまう

ララもいつかオレの子を宿し、お腹を痛めて生んでくれる日が来るのだろうか
いや、絶対にその未来を現実にしたい——してみせる

絶頂への階段を登りながら一人誓う
必ずララを幸せにするのだと

「んぁあ、りと!りとぉっ……もう、だめ、もう……もうぅ……っっ!」
「ララっ……」
「ふ……ぇ……?」

上半身を起こしララの頭を抱き寄せる
耳元にかじりつくほどの距離、聞こえるか聞こえないか程度の声で囁いた

「元気な赤ちゃん……期待してるな」
「りっ……」

ララの返事を待たぬうちに、クリトリスを親指と人差し指で刺激する
それが最後の引き金となり、ララを快楽の頂へと羽ばたかせた

「んぅああああああっ!」
「う、ぐぁっ……!」

ララが絶頂に達した瞬間、内壁が幾千もの舌のように絡み付く
それと同時にリトの中を熱いものが駆け上がり、ララの中に全ての想いをぶちまけた

「あ、あぁ……出てるよぉ……っ」
「ララ、ララ……っ!」

発射してもなおララの膣内は収縮を続け、リトの精を泉の底まで吸い上げようとしている
まるで何度も続けて果てているような感覚に酔いしれる
至高の快楽の後、全力で駆け抜けた徒労感がじわじわとリトの中に広がっていく
ララもリトの上で何度か弓なりになったあと、疲れ果てて放心したようにリトの胸に倒れ込んだ

「はぁ……はぁ、りと……」
「ララ、すごくよかった」
「うん……私も」

体は疲れていても自然に笑みがこぼれてしまう
互いを愛する気持ちが、またひと回り大きくなったような気さえする

「リト、つらくない?」
「ああ……ちょっと熱いけど」
「わ、ホント……熱出てきたみたい」

ララが心配そうにリトの額に手を当てる

「でも汗かいたからもう治りそうだよ」
「そっか。体、冷やさないようにしないとね」
「その点は心配ないだろ?」
「?」

首を傾げるララの首に腕を回し、抱き寄せる

「朝までララがそばにいてくれるんだろ?」
「……んもー。甘えてって言った途端にこれなんだから」
「イヤか?」
「全然っ♪」

今度はララがリトの首にもたれるように抱き着き、体全体で喜びを表す

「あ、そういえば」

じゃれ付いていたララがふと顔を上げた

「さっき私がイクとき、何か言わなかった?」
「……っと、それは……」

ギクリとリトが瞳を逸らす
言ったかもしれない、テンションがマックスの時にしか言えないような、破壊的に恥ずかしい台詞を
というか耳元で囁いたというのに、ララには聞こえていなかったのだろうか
ならば適当に誤魔化してしまえば

「確か、赤ちゃんがどうとかって」

……八割方は聞こえていたようだ
これでは誤魔化しようもない

「もう一回言ってほしいなぁ」
「……言わなきゃダメか?一回言ったんだし、もういいだろ」
「だぁめ」

つんっ
リトの鼻の頭を人差し指で可愛くつつくララ
そんなお姉さん的な仕草に男が弱いことなど、ララは知る由もないだろう
仕方ない、聞こえてしまっているなら一回も二回も関係ないだろうと、半ば開き直って溜め息をついた

「……ララの赤ちゃん、ほしいなって」
「私の赤ちゃん……?」
「ほら、オレたちって普通の恋人同士だけど、ただの恋人じゃないだろ?色々と覚悟してるとこもあるし」
「うん」
「だから、いつかはそんな風になるんだよなって思ったら……急に欲しくなって」
「赤ちゃんって急に欲しくなるものなの?」
「う……いや、もちろん今すぐってわけじゃないけど」
「……リトの赤ちゃん、かぁ」

天井を見上げながらララが呟く
子どもが欲しいという、ある意味プロポーズとも取れる言葉

思えばリトに近付いたのも最初は結婚が目的だった
お見合いが嫌で、王女としての運命から逃れたくて、身を呈して自分を助けてくれた少年に頼ってみようと思った
形だけでも結婚してしまえばそんな運命に束縛されることもなくなるのではないか、と
好きな子がいると聞いたときは、少しだけわがままに付き合わせてしまうことを申し訳なくも思ったけど

しかし、リトの咄嗟の一言でララは初めてにして最高の恋に落ちてしまう
後にそれが勘違いだとわかっても、リトへの恋心が揺らぐことは全くなかった
彼が本当に自分を理解してくれる優しい男性だということに変わりはなかったから
そして今は無意識に子どもが欲しいと口走ってしまうほど、心から自分を愛してくれている
そのことがララは嬉しくてたまらない

「ねぇ、リトは何人くらい子ども欲しいの?」
「え!?そ、そうだなぁ……」

昔のことに想いを馳せていたララが不意にそんなことを訊く
思いがけない質問にリトは声がひっくり返ってしまう

「男の子と女の子1人ずつ、2人はほしいかな……って何の話だよ!」
「名前は、かっこいいの?綺麗なの?それとも可愛いの?」
「男の子だったらやっぱかっこいいのが。女の子はララみたいに可愛い感じのかな。出来れば2人に由来する名前が……って、だから」

何の話だよ、そう尋ねようとしたリトがララを見ると、とてもご機嫌な様子でニコニコと微笑んでいる
幸せを噛みしめるような表情に、自然とリトの顔も綻ぶ

「そっかぁ。そんなにリトが欲しいって思ってくれてるなら、私がんばっちゃう♪」
「が、頑張るって……」
「……あ、リトえっちなこと考えてるでしょ」
「だっ……じゃ、じゃあ何を頑張るんだよ」
「リトと幸せになれるようにがんばるの。お料理も本格的に勉強して、掃除とか洗濯とか、あと子育ての本も読んで、それから……」

要するに花嫁修業らしい
最後のはさすがに気が早すぎるようにも思うが、思い立ったらすぐ行動に移すのもララの良い所だ

「もちろん、えっちなことだってがんばるよ?リトが喜んでくれると私も嬉しいもん♪てへへ」
「ララ……」

恥ずかしさを照れ笑いに交えながら明るい笑顔を見せるララ
きゅんと胸が熱くなるのを感じる
本当に、なんて可愛い女の子だろう
いつでもどこでも自分のことを純粋に想ってくれる健気さに、心の底から感激してしまうほどだ
この笑顔を守れるのは自分しかいないのだろうと、少しだけ自惚れてみたくもなる

「……オレも頑張るよ。ララに相応しい男になれるように」
「頑張らなくたってリトはいつも優しいし、私のこと幸せな気持ちにしてくれるよ?」
「それでもまだまだだよ。ララを見てるともっと頑張らなきゃって思う」
「私を……?」

不思議そうにリトの顔を見つめているララ
彼女は知らないのだ、自分がどれだけのエネルギーを与えてくれているのかを
その言葉や仕草のひとつひとつが今のリトを支えるのに欠かせない、重要な要素となっていることを

「うん。少なくともクリスマスに風邪ひいてダウンしてるようじゃダメだな」
「だ、だからそれは私が……」
「ララのことだけ考えて生きていくくらい、それくらいララのこと好きになるから……これからももっと」

きっと相手を想う気持ちではまだまだララに全然敵わないのかもしれない
ララの一挙一動にはいつも驚かされてしまうから
それでも、いつまでも負けているわけにはいかない
これほどまで魅力的なララが特に取り柄もない自分を愛してくれているというのに、それ以上に彼女を愛せないなど失礼にもほどがある
そんなことを言えばララは怒るかもしれないが

「リトがもっと好きになってくれるなら……ううん、そうじゃなくても、私ももっともっとリトを好きになるよ」
「おいおい、それじゃいつまで経っても追いつけないじゃん」
「いいじゃない……2人が愛し合ってるなら、どっちが上とか関係ないでしょ?」
「意外に負けず嫌いなんだよ」
「リトったら……ふふ」
「ははっ」

なんだか可笑しくなって互いに声を出して笑いあう
そんな幸せなやり取りをしばらく続けていると、次第に睡魔が襲ってくる
どんなに元気そうに振舞っていてもやはり体は疲れていたらしい
それを察したのか、ララはリトの頭を優しく抱きこんで眠りやすくしてくれる

「ありがと、ララ……」
「ん……ゆっくり休んで、リト」

抱きしめたまま、ララの唇がリトの額に軽く触れる
その瞬間にリトは確信した——何も心配することなどない、と
こんなにも愛に溢れたララのキス
きっとどんな子が生まれようと、このララに愛を感じないはずがない
いつも愛し合っている自分ですらその母性にくらくらしてしまうほどだ

「ララ……寝る前におやすみのキスしよ」
「うん、いいよ」

子どものような要求もあっさりと受け入れてくれる
リトがララを見上げるといういつもとは逆の位置関係で見つめ合っているといつしか距離はなくなり、唇が重なる
これから先、何千何万と重ね合うであろう唇に想いを込めて

「言い忘れたけどさ、ララ」
「うん?」
「メリークリスマス」
「……うん♪」

豪華な料理もケーキもないクリスマス
それでも2人にとっては、この短い時間に交わした言葉がかけがえのないプレゼントとなって胸に残る
それはこれからどんなに時間が経っても消えることはないだろう
心から相手のことを想った、嘘偽りのない純粋な気持ちなのだから

「メリークリスマス」

もう一度だけ優しく口付けを交わし、まどろみの中に意識を放り投げた

「ん……んん……んぅ?」

優しい陽射しの中でララが目を開ける
大好きな温もりを求め隣をまさぐるが、そこに彼の姿はない

「りとぉ……?」

眠い目を擦りながら上体を起こす
何も着ていない体に朝の空気は少しばかり冷たいが、リトが寝ていたと思われる場所はまだほんのりと暖かみが残っている
そこに顔を埋めると幸せな気持ちが胸の中に広がっていく

「リトのにおい……♪」

安心して再び眠ってしまいそうな心地好さ
目を閉じると意識が溶けていく

「……ハッ。だめだめ……起きて朝ごはんの用意しなくちゃ」

寸前で自分を律し、起き上がるララ
少し名残惜しいが下に行って彼を含めたみんなのために腕を振るわなくては
昨日は随分と早く寝てしまったため美柑がいつ帰ってきたのかはわからないが、物音が聞こえないということはまだ寝ているのだろう
となれば朝ごはんを作るのは自分の仕事だ

タンスから手頃な服を取りだし手早く着替える
最近では自分の部屋よりリトの部屋にいる時間のほうが長いため、ララの私物はほとんどがリトの部屋に置いてある状態だ
そんな状況がどことなく通い妻のようにも思え、勝手に緩んでしまう口許をなんとか正しながら部屋を出た

「リトはどこかなぁ……」

階段を降りてリビングやキッチンを見回るが、彼の姿はどこにもない
小さな不安が胸をつつく
彼が理由もなしに自分を捨てるようなことは絶対にしないとわかっていても、一緒にいないと落ち着かない
いつでも視界にいてほしいと思ってしまう
それほど彼に溺れてしまっていることが嬉しくもあり、時々困ってしまうこともある

「りと〜……」

泣きそうな声が冷たい室内に消える
寝起きに甘えられなかったこともあり、いよいよララの欲求は最高潮だ
そんな時、ふわりという感触とともにあたたかい温もりに包まれる

「えっ?」
「おはようララ」

気付いた時には愛しい彼の腕の中にいた
それだけでも十分すぎるほど安心するのだが、暖かさの原因はそれだけではない

「リト、これ……」
「クリスマスプレゼント」

驚いて固まるララの肩には、可愛らしいファーのついた白いコートがかけられている
まるで白雪姫のドレスのようなそれは、まさにお姫様であるララにはぴったりの代物だ
どう見ても簡単に買えそうなものではない
値段など聞かずとも、リトが相当に頑張ってくれたことは容易に想像できる

そういえばいつもよりリトパパの手伝いに熱心になっていたっけ
すぐに悟られてしまいそうなバイトを入れない辺りがリトらしい

「あったかい……」
「だろ?ふかふかしてそうな生地のを選んだからな」
「そうじゃないよ」
「え?」

コートをかけてくれたリトの手をきゅっと握る
驚かせようと寒い中待っていたせいか、その手はずいぶんと冷えてしまっている
それでもララにはとても温かかった

「リトの気持ちがあったかいの……」
「……オレはその言葉があったかいよ」

握られた手を握り返すと、ほとんど同時にララがリトの胸に飛び込んできた

「ごはん、すぐ作るね」
「へ?」
「だからその前に、ちょっとだけ……充電させてね」

昨夜とは打って変わって甘えモードのララ
どちらのララもとても魅力的で、いつまでも失わないでいて欲しいとリトは思う
背中に腕を回さず、リトの胸の中でシャツをキュッと掴むララがなんだか意地らしくて、とても可愛らしくて
気がつくと全力で抱きしめてしまっている

「いたいよぅ……」

嬉しそうに痛がるララ
もちろんその声に嫌がる様子は微塵もない

「いくらでも充電していいんだぞ。なんなら充電しながら稼働したっていい」
「だめだよ、リトは病み上がりなんだから……って、リト、風邪は?」

ララが顔を上げる
今朝初めて見た彼の顔はとても健康的で、昨日までの顔色の悪さは完全に消え失せている

「この通り、ピンピンしてるよ」
「みたいだね」
「ララの看病のおかげだな。適度な運動もしたし♪」
「て、適度かなぁ」

少し過激すぎたような気もする
しかし、大事なのはそこではなく、一日中ララと一緒にいられたということだ
ララを独り占めにできる権利が自分にはある、それだけで具合が悪かったことなど吹き飛んでしまう

「……そりゃ風邪も治るってもんだよな」
「え、なに?」
「いや、こっちの話」

「むー?」と、特徴的な口癖とともに首を傾げてみせるララ
ええい、どこまでも可愛すぎるやつめ
また抱きしめてしまいたくなるが、それではキリがない

「ララの朝ごはん食べたいな」
「うん♪すぐ作るから待っててね」

もう片方の本音で話を逸らされたとも知らずに元気いっぱいうなずくララ
それを見るだけで朝早く起きてよかったと思える
今日も最高の一日になりそうな気がする——そう思えてしまうリトだった


「……朝っぱらからイチャつかないでほしいわ」

実はララやリトよりも早く起きてトイレにいた美柑だが、リトとララのやりとりが始まってしまい出るに出られなくなっていた
そんなことを2人が知る由もなく
個室の中に空しい溜め息が響くのだった