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――――――


「ん……ぅ~ん……」

窓から射し込む日の光を受け、結城リトは目を覚ました。

「むぅ……朝か…」

そしてリトは、ベッドから起き上が――。

(あれ?)

――ろうとしたが出来なかった。
それどころか、まるで身体が何かに押さえつけられているかの様に、動くことさえできなかった。

(………って)

ふとリトは気付いた。
自分の身体に何か柔らかいものが当たってる事に。

(まさか…(汗))

恐る恐る、横目でチラリと隣を見てみると…。

「すぅ…すぅ………んみゅ~……リトぉ~…♪」

最早お約束といってもいいかの如く、ララが裸で抱き付いて寝ていた。

(……)


……………。


…………。


………。


「ぬあぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!!///」

これもお約束といっても過言ではない、リト朝一の絶叫。

「ララまたかよ!!オレのベッドで寝るなっていつも言ってるだろ!!しかも裸でよぉ!!///」

「ムニャムニャ…………えへへ……もう食べられないよ~……」

「コラァ!!古典的な寝言言ってないでさっさと起きろぉ!!(怒)」

リトの怒鳴り声で、ようやくララは目を覚ました。

「ん…う~ん…、あ、リトおはよぉ~…♪」

「『おはよぉ~』じゃねーっつーの!!お前何回言ったら分かんだよ、毎度毎度よぉ!!///」

「え~、だってリトと一緒に寝たかったんだもん~」

 

いつも通りのやり取りを交わすいつも通りの結城家の朝の光景――。
だが、一つだけいつも通りじゃない点があった。


それは――。


「それに、リトの女の子の身体って柔らかいし、いつもよりスッゴくあったかいんだもん♪」


そう――。


このララのセリフから解る通り、リトは今、身体が『女の子』になってしまっているのだ。
(何故こんな事になっているのか、詳細は3スレ548にて)


「おかげで今日はいつもの三倍はぐっすり眠れたよ♪」

「人を安眠抱き枕みたいに言うな!つーか、早いトコ服着ろっての!!///」

「でもペケまだ寝て「叩き起こせぇ!!!(怒)」」


まあ…、何はともあれ…。


リトの女の子生活二日目の始まりである――。


――――――


彩南高校――。


まだ朝も早いので、あまり人影を見かけない。
部活の朝練をしている生徒は何人か見かけたが、練習に集中している為こちらの『男子の制服を着た女子』を気にする者は誰もいない。
そんな中を、リトは真っ直ぐ御門先生が待つ保健室へと向かった。

『ガラッ』
「おはようございま~す」

軽く挨拶しながら保健室のドアを開ける。

「ふわぁ~…ぁふ…、あら結城君、おはよう。待ってたわよ」

大きな欠伸をしながら『全然寝たりません』的な感じで、御門先生が挨拶を返す。

「眠そうっスね、先生」

「本来ならこの時間帯はまだ寝てんのよ?それなのに、はふ…、こんな朝一番から学校に来る事になるなんて思いもよらなかったわ。」

「いやいや、あなたが原因作ったんだからちゃんと責任持って下さいよ」

「や~ね~、悪いと思ってるからこうして頑張って早起きしてきたんでしょうが♪」

手をヒラヒラさせて笑顔でそう言う御門先生。

 

「とりあえず結城君、まずはコレに着替えて頂戴」

そう言って、リトにその服が入った手提げ袋を手渡す。

「……」

そして、その袋の中を見て固まるリト。
てゆーか、このシーン昨日もあったような…。

「………………先生」

「ん?」

「何スか、コレ?」

「見て分からない?」

「………女子の制服にしか見えませんが…」

「分かってるじゃないの」

「………オレにコレを着ろと?」

「ええ」

「何故!?」

「女の子が男子の制服着て授業受ける訳にはいかないでしょ?」

「……」

「……」

「……ちなみに拒否権は――。」

「あると思う?」

「……」

「なんなら先生が着替えさせてあげましょうか~?」

手をワキワキさせて、怪しげな笑顔でそんな事を言う御門先生。

「……(汗)」


……………。


…………。


………。


「はぁ~……、分かりましたよ、着ますよ…。着ればいいんでしょ、着れば…」

 

これ以上の抵抗は無駄だと悟ったのか、リトはあっさりと承諾した――。


――――――。


「ほっほ~う、似合うとは思ってはいたけどまさかこれほどとは」

「……///」

女子の制服を着たリトを見て、素直に感心する御門先生。

「ホント、なんかずっと前からいるみたいな雰囲気がする位完璧な着こなしね。とても今日初めて着たとは思えないわ」

「そりゃあ…、まぁ…(汗)///」

「昨日、コレ含めて色々と着せられましたから」とは口が裂けても言えない。
言ったらこの人の事だ。また何か良からぬ事を企んでくるだろう。いや、企んでくるに決まってる。(断言)

「でも結城君…」

「はい?」

「どうして下着は付けてないの?」

「い、いいじゃないですか。下着位付けてなくても///」

「まぁ確かに、ブラはしてない娘は結構いるけど、流石にショーツの方は…」

「そっ、そこは体操着の短パンでも穿いて誤魔化しますからっ!そ、そんな事よりも早く本題に入りましょうよ!HR始まっちゃいますよ!?」

HRまでまだ一時間近くあるのだが、これ以上このネタで引っ張られたくないので先を促すリト。

「あ、待って待って。せっかくだから記念に一枚――♪」

「本・題・に・入・り・ま・し・ょ・う!!(怒)」

「む~、結城君のいけず~」

デジカメ片手にちょっと拗ねる御門先生。

「……まぁいいわ。ちょっと残念だけど、これ以上時間を掛けるのもアレだし…」

という訳で、いざ本題へ――。

「とりあえず学校側には、『結城君は事情があって二週間程学校に来れなくなった』、『その間、短期編入生として別の子を代理で通わせてほしい』とだけ言っておいたから」

「はぁ…、その事情って?」

「そこは自分で考えなさいな。私も流石にそこまでは面倒見切れないわよ」

「そう言われても…、何かこう、アドバイス的なものを――。」

 

「そうね~…、例えば『日本全国のメイド喫茶、完全制覇の旅に出た』とか♪」

「自分で考えます(キッパリ)」

返事するまで0.01秒。

「あらそう?残念♪」

とても残念そうには見えない。

「でもよくそんな説明で学校側があっさり納得しましたね…」

「ああ、それ?いえね、さっきの説明と昨日こっそり隠し撮りした結城君の写真を校長先生に見せたら――。」


(親指立ててとてもスバラシイ笑顔で)
『なんだかよく分からんけどカワイイからOK♪』


「――だってさ♪」

「……………………まぁそんなトコだろうと思ってはいましたけどね、あのエロ校長なら…(汗)」

故に、これ以上何も言う気が起きないリト。

「さぁ、早いトコ編入手続き済ませちゃいましょう♪それで担任の先生にも挨拶に行かなきゃ」

「あ~い」

という事で、二人は職員室へと向かった――。


「ところで先生、何時オレの写真を隠し撮りしたんスか?」

「禁則事項です♪」


――――――


一方、教室――。


『ガラッ』
「おはよ~」

今日も元気一杯で教室に入るララ。

「あ、ララさんおはよう」
「おぃーすララちぃ」
「ララちぃおっはー」

春菜と、その友達の籾岡里沙と沢田未央が返事を返す。

「……ってアレ?ララちぃ、結城は?」

ここで籾岡が、いつも一緒にいる筈のリトがいない事に気付いた。

 

「え、えーっと…(汗)」


実は、リトが家を出る前…。


『いいかララ、オレが女になったなんて誰にもバラすんじゃねーぞ!特に籾岡と沢田と猿山には!!』


――と、ララに釘を刺していたのだ。

リト曰わく、
『普通こんな話信じてもらえないだろうが、宇宙人や幽霊が存在している位だからそれくらいあっても不思議では無い。
バレたらこの三人の事だから、きっとろくでもない事を仕掛けてくるに違いない。絶対に。
特に猿山辺りは『親友』というポジションを傘に立てて、アレコレセクハラ行為を仕掛けてくるに決まっている。200%間違いなく!』らしい…。
………随分信用の無い親友である。

「ゆ、結城くん昨日から用事でどこかに出かけてるんだよ。だよね、ララさん?(汗)」

なんとなく事情を察したのか、見かねた春菜が助け船を出す。

「へ?あぁうんうん、そーそー。どんな用事かは知らないけど、それで二週間位学校に来れないってさ(汗)」

「「ふーん…」」

冷や汗一杯で返答し、なんとか誤魔化す事に成功。

「でも春菜。何で結城が昨日からいないって知ってるの?」

「え゛っ!(汗)///」

沢田のツッコミに対して、不意に顔を赤らめる春菜。

「あぁ。だって春菜、昨日ウチに来たもん♪」

「ちょっ、ラ、ララさんっ!!///」

「え~なになに~?もしかして春菜、休みの日に結城に会いたいが為に――。」

籾岡がニヤニヤ含み笑いをしながら尋ねる。

「ちちちち違うよぉ!!きき、昨日はララさんからCDを借りようと思って行っただけで、決して結城くんに会いたいとかそんな事は全然まったくこれっぽっちも――!!///」

本心を知られたくないからか、必要以上に必死なって誤魔化そうとする春菜。
リトが見たら、間違いなくヘコむであろう光景である。


『ガラッ!』
「うぉーい、大変だー!!」

突然、猿山が慌てふためきながら教室に入ってきた。

「え、何々?どーしたの猿山?」

「またしょーもない企画でも思い付いた?」

「ちげーよ!!(怒)」

籾岡と沢田の茶化しを一蹴して、猿山が興奮気味に喋り出す。

 

「今日、このクラスに転入生が入るんだってさ!!しかもそいつ女だ!!」


『なにぃーーーー!!!!』


クラスの男共が一斉に声を上げる。

「猿山っ!!その話マジか!?」

「マジもマジ、大マジだ!!さっき御門先生と一緒に骨川先生に挨拶してたからな!!」

「なっなあ!!その女って可愛かったか!?」

「それが後ろを向いてたから顔の方は見えなかったけど…、ただ!!」

『ただ!?』

「オレの見立てではその娘………、ララちゃんにも引けを取らない身体をしているっ!!!」


『うおぉぉぉーーーーーー!!!!』


男共は一斉に雄叫びを上げた。


「はぁ~…、ウチの男共ってどーしてこう…」

籾岡が呆れた声で呟く。

「でも転入生ってどんな娘なんだろうね~」

「うん、なんか楽しみだね~♪」

沢田と、何故かララまでその『転入生』の話題に花を咲かす。

「ラ、ララさん、ララさん(小声)」

「ん?」


「あの…、その転入生って、結城くんの事じゃ無いの?(小声)」

「ぇええっ!!そうなのぉ!?(驚)」

「ラ、ララさん……(汗)」

ララの天然ボケに、春菜苦笑い。

 

『キーンコーンカーンコーン――』


そして、始業のチャイムが鳴った――。


――――――


「え~それでわぁ、ワシが呼んだら入ってきてくだふぁい」

「は、はい…」

そう言って、骨川先生は教室の中へ…。


(うぅ~…、なんか緊張する~…)

リトはソワソワ落ち着かない感じで、呼ばれるのを待つ。


『え~まず最初に~、結城君が一身上の都合で二週間程学校に来れなくなりまひたぁ~』

そう言った途端、教室内がざわつく。

『せ、先生。結城くん何か怪我でもしたんですか!?』

少し慌てた感じで、古手川唯が質問する。

『いやぁ、ワシもそこんトコは詳しく知らなんで…』

『し、知らないって、知らないって何ですか!?普通そういう事情諸々は把握しておくものじゃ無いんですか!?』

『ワ、ワシはただそれだけ聞かされただけで――(慌)』


(まぁ、確かに普通はそうだよな…(汗))

唯と先生の言い争いを聞きながら苦笑いを浮かべるリト。

(にしても…、古手川、もしかして心配してくれてるのかな…)

その事が少し嬉しくて、リトは思わず顔がほころんだ。


『先生っ!!そんな事よりも転入生の娘を紹介して下さい!!』

『そーですよ!!結城の事なんかどーでもいいから早く転入生をぉ!!』


(そっ、そんな事!!?)

だが、猿山及びクラスの男共の心無い発言にカチンときて、表情を一変させる。

(今言った奴…、元に戻ったらブッ飛ばす!(怒))

拳をワナワナ震わせながら、心の中でそう誓うリト。

 

『おぉ、そうじゃった。ではその転入生を――』

『ちょっ、先生!まだ話は――!』

『まーまー唯っち。いくら結城の事が気になるからってそんな必死になんなくても』

籾岡がニヤニヤしながら茶化す。

『んなっ!!何言ってんの籾岡さん!!わっ、私は別に結城くんの事なんか――///』

顔を真っ赤にして全力否定する唯。

『ほ、ホラ先生っ!!一時限目始まっちゃいますから早いトコその転入生を紹介して下さいっ!!』

そして、誤魔化しから先を促す。


(何もそこまで力一杯否定しなくても…(泣))

その一方で、さっきの唯の発言に軽くヘコむリト。


『え~それででふね~、結城君のいない間、代理という形でこのクラスに短期の編入生が入りまふ』

『短期ぃ!?ずっとじゃないんスか!?』

『別にいいよ、結城なんかずっといなくても!!その娘代わりに入れようぜ、代わりによぉ!!』


(……)

『ブッ飛ばす』んじゃなくて『ブッ殺す』にしとこうか…。
――と、再度心に誓う今日は表情百面相なリトだった。


『………先生、気にせず先を進めて下さい』

こめかみをピクつかせながら唯が先を促す。

『それでわぁ、どうぞ入ってきてくだふぁい』


(――っと、呼ばれた)

さっきまで考えていた事を振り払い、教室のドアに手を掛ける。

(よし…、行くか)

そして、ゆっくりとドアを開けた――。


『ガラッ』
「ど、どうも~…」

精一杯の愛想笑いを浮かべながら教室に入る。

『……』

途端に、教室内が静まり返った…。

 

(って、アレ?リアクション無し?(汗))

予想外の雰囲気に戸惑っていると…。

「あの~、自己紹介を…」

「え?あぁ、はい!(慌)」

先生に先を促され、慌てて自己紹介を始める。

「えっと……、初めまして…。今日から二週間程、リトの代わりにこの学校に通う事になりました――」

一呼吸置いて、そして…。

「結城零紋(レモン)といいます。短い間ですが、よろしくお願いします。」

そう言って、深々と頭を下げた。


『……』


……………。


…………。


………。


(………………………………………アレ?(汗))

教室内、ノーリアクション。

(な、何だ?もしかして…もうバレたとか!?(焦))

心の中で焦るレモンことリト。

「あ…、あの~……(汗)」

恐る恐る訪ねようとしてみると…。


『うおぉぉぉーーーーーー!!!!』


「ひぃっ!!?(驚)」

突然男共が雄叫びを上げ、思わずビクッと仰け反るリト。

 

「むっ、ムチャクチャ可愛いーーー!!!」
「ララちゃん以来の超極上級の美少女だーーー!!!」
「うぅ…、このクラスで良かった…(泣)」

「ぁ………、ぁははは……(汗)」

男共の様々なリアクションに軽くドン引きなリト。

「ハイハイ、質問ー!!」

勢いよく猿山が手を挙げる。

「レモンちゃんは名字がリトの奴と同じなんだけど、アイツとどんな関係なの!?」

いきなり名前の方で呼ばれて『ちょっと馴れ馴れし過ぎやしないか?』とも思ったが、とりあえず質問に答えておく。

「え、えっと……、一応……イトコになるのかな…?(汗)」


『イトコ!!!』


打ち合わせでもしていたかのように声を揃えて復唱する男共。


「何だよリトの奴!!こんな可愛いイトコがいたなんて聞いてねーぞ!!(怒)」
「なんでアイツばっかり女が寄ってくるんだよ、しかも美少女限定で!!(怒)」
「チキショー、少しはこっちにも回せってんだよ!!(怒)」


普段思っているリトへの不満を爆発させる男共。

「レモンちゃん!!もしかしてレモンちゃんも結城の奴が――!!」

「え゛っ!?い、いや、あの、オレ…じゃなくて、ボクは別にそんな――(汗)」


『しかもボクっ娘くわぁぁぁ――――!!!!(狂)』


男共、更にテンションUP。


(……(大汗))

リトは思った…。
今まで気付かなかったが、いや、薄々は気付いていたのだが…。
いやいや、気付いてはいたんだけど認めたくなかったというか、改めて再確認したというか…。


(このクラス…、変な奴ばっか!!(大汗))


もっとも、その『変な奴』に自分は含まれているのかどうかは定かではない…。


ま、とにもかくにも…。


『結城梨斗』改め『結城零紋』の受難の学校生活が始まった――。

 

――――――


「つっ、疲れたぁ~……」

「だ、大丈夫?結城く…じゃなくて、零紋さん…(汗)」

机の上でグッタリうなだれるリトを、春菜が心配そうに気遣う。


休み時間の度に男女問わず質問攻め&好奇心の目に晒され、
しかもこの『極上の短期編入生』の噂は瞬く間に全校生徒に広がり、そのおかげで教室の前には、一目見ようと上から下まで沢山の野次馬が押し寄せ、
ようやく落ち着いた時には既に昼休みになっていた…。


ちなみにどんな質問をされたかというと…。

『レモンちゃんって彼氏いるの?』
『レモンちゃんってどんな人がタイプなの?』
『レモンちゃんってデートするなら何処行きたい?』
『犬とお呼び下さい』


……って、最後のは質問じゃ無いのでは…。


「ねーねーリト~」

「ララ、学校にいる間はその名前で呼ぶなって」

「あ、そっか。えーっと…、何だったっけ?」

「レモンだよ。レ・モ・ン」

「んー、何か別の名前呼ぶのって違和感あるなぁ~」

「仕方ないだろ、本名なんか名乗れる訳ないし」

「む~、そうは言っても…。もっとこう…、違和感の感じない名前に出来なかったの?」

「例えば?」

「『リト子』とか『リト美』とか♪」

「安易過ぎるしゴロ悪りーし一発バレだろーが!」

「ぁ…ぁはは……(汗)」

そんな風に、ララと簡素な漫才を繰り広げていると…。

「ララちぃ~、春菜~、レモり~ん♪」

籾岡と沢田が笑顔で近づいて来た。

「里沙、未央」
「あ、リサミオ~♪」
「れ、れもり…(汗)」
(早くもあだ名すか…)

苦笑いするリト――とゆーかレモンに籾岡が尋ねる。

「ねーねーレモりん。すっかり聞くタイミング逃してたけど、レモりんは結城の奴がなんでしばらく学校に来れなくなったか知ってる?」

「え゛!?ぁー…ぅん…(汗)」

冷や汗を掻きながら、さっき速攻で考えた言い訳――もとい、来れない事情を話す。

「ホラ、リトのお父さんで売れっ子の漫画家でしょ?実は今、物凄く気合の入った読切漫画を書いてるらしいんだけど、どうも作業の方が滞ってるらしくて…。
それでリトが呼び出されたんだけど、なんせ連載も三本も抱えてるもんだからあまりにも進行が遅れててかなりギリギリの状態になっちゃってるらしくてさ…。
それで二週間位帰るに帰れなくなったって言って、それで何を血迷ったのか、たまたまリトん家に来てたボクに…」


『すまねぇがレモンちゃん、二週間ばっかしリトの通ってる学校に代わりに行ってやってくれねーかな?』


「――って叔父さんに頼まれてこーゆー事になったってワケ(汗)」

ここ最近、たまたま父・才培が書いていた読切漫画のネームの手伝いに追われていたから、すべて嘘という訳ではない。
実際、何週間か後になったらその読切が雑誌に載るから辻褄は合うはずだとリトは思い、この様な理由になった。
(ちなみに、その読切漫画の原稿は予想以上に早く仕上がっていたりする)

「へ~。て事はレモりん、春菜とは昨日会ってたの?」

「ま、まあね。ね?西連寺……さん(汗)」

「う、うん…。零紋さん、昨日は…どうも…(汗)」

「ふ~ん、そーなんだ。あたし結城の事だからてっきり、『日本全国メイド喫茶、完全制覇の旅』に出たんだと思った」

「あー、結城だったらそんな理由も有り得るかも~」

(オレってそんな印象!!?(ガビーン!!))

心の中でショックを受けるリト。

「でも…、何で結城はその事レモりんに話してララちぃには知らせなかったの?」

「う゛ぇっ!?(大汗)」

今度は沢田から疑問をふっかけられる。

「あーっと、その時夜中だったからララちゃん寝ちゃってたんだよ!後でちゃんと話そうかと思ってたんだけど、朝早かったから時間が無くて…。ゴメンねララちゃん(大汗)」

「そっ、そーだったんだ~!ヒドいよレモン~、私リトがしばらくガッコ来れないって聞いて心配してたんだよ~!?(大汗)」

若干目を泳がせながらぎこちなく会話を交わすララ。端から見ても結構怪しい…。

「でもさ~、いくら頼まれたからって、そんな簡単に部外者の人間が代理で通うなんて真似――」

続いて、籾岡が至極当然なツッコミをするが…。

「いや、ボクもそう思ったんだけど……………………ここの校長が…(汗)」

「「「………………………………………ぁー…(汗)」」」

「あの校長ならそれ位有り得る」と思ったのか、妙にあっさり納得した籾岡と沢田。……そして春菜。

「じゃあさ、レモりんも地元の学校に通ってるんでしょ?そっちの方はどーすんの?」

更に沢田からの質問(追い討ち?)。

「い、いや、その………、じ、実はボク、色々あって学校の方には通ってないんだ(汗)」

「えっ、そうなの!?」

「えっと、聞いちゃまずかった?(汗)」

「い、いやいやいやいや気にしないでよ!?別にボクなら全然大丈夫だからっ!(慌)」
(しまった…、もっと気の利いた事言えば良かった…(汗))

自分の迂闊な発言を少し後悔したリトだが…。

「分かった、じゃ気にしない♪」

「そんなのいちいち気にしてたらキリがないもんね~♪」

「……」

リトの心に『前言撤回』という言葉が浮かんだ。

「にしても…」

そう呟いて、まじまじリト(レモン)の顔を覗き込む籾岡。

「な…ナニ?///(汗)」

女の子に顔を凝視され、少し頬を染めて距離を取るリト。

「レモりんって、何となく結城に似てるよね…」

「え゛っ!!?(大汗)」

ギクッとなるリト。

「あー、そー言われれば…」

「でしょ?なんか全体の雰囲気がというか、なんというか…」

「ぁ、ぁははは…、ボクもよく言われるよ…(大汗)」

冷や汗をダラダラ流しながら、何とか誤魔化そうと考えるリトだが…。

「簡単に言っちゃうと……、結城をそのまま女の子にしたみたいな感じ?」

「ギックぅっ!!?(滝汗)」

「「ぎっくぅ?」」

「あ、いや……、ぎ、ギックリ腰になったおばーちゃん今頃どーしてるかな~って(滝汗)」

物凄いベタベタな誤魔化し方である…。

「あ、ちょっとボクトイレ~…(汗)」

そう言って、リトは逃げる様に教室を出た――。
てゆーか実際逃げてるんだし…。

「どーしたんだろね?レモりん。なんか焦ってたみたいだけど…」

「さぁ~?ずっと我慢してたからじゃないの?」


「春菜~、ヒミツにするのって大変なんだね~(小声)」

「ぁ…ぁははは…(汗)」


――――――。


「あぶねーあぶねー、あいつらこんな時に妙に鋭い勘を発揮すんだもんなぁ~…(焦)」

少し籾岡と沢田に脅威を感じつつ、リトはトイレの中に入って行った。

『うわっ!?(驚)』

「へ?…………あ!」

中にいた男子生徒達から驚きの声を上げられて、リトは気付いた。
今現在『女の子』である自分が『男子トイレ』に入ってしまってるという事に。

「すすすすすすすすいませーーーん!!///(慌)」

慌てて男子トイレから飛び出す『女の子』リト――いやレモン。

(やっべー…、ついいつものノリで普通に男子トイレに入ってっちゃったよ…。そうだよ、オレ今女なんだから入るなら女子トイレの方――(汗))

 
という事で、リトは女子トイレの方へ足を向け、その中へ入って――。

『ピタッ』

――行こうとしたが、不意に足を止めた。

(……)


……………。


…………。


………。


(入るのか!!?(大汗))

風呂場に続き、第二の試練到来。

(い、いやいや待て待て落ち着け。オレ今は女なんだから別に何も可笑しくはないんだよ。うん、問題は無い…(汗))

とりあえずそうやって自分を納得させようとするが…。

(いや、でもなぁ…、確かにナリは今女だけど中身は男だからなぁ…。オレとしてはそこんトコやっぱり抵抗が…(汗))

男としての人格とプライドがブレーキを掛ける。

そんな昨日と同じような心の葛藤を抱きながら、女子トイレの前をウロウロしていると…。

「結城さん、何してるの?」

「うひゃあぁっ!!?(驚)」

不意に唯から声をかけられ、思わず飛び退くリト。

「そ、そんなに驚かなくてもいいじゃない…(汗)」

冷静に宥めようとするが、実は心の中ではリト(レモン)のリアクションに少し傷ついた唯。
気の強い人ほど、中身は繊細なものなのだ。

「あ……、こ…古手川……さん…(汗)」

「あれ?私名前名乗ったかしら?」

「あっ!さ…西連寺さんに教えてもらったの!あの人がクラスの風紀委員をやってる人なんだって!(汗)」

「あ、そうなんだ」

なんとか誤魔化し成功。

「それよりも結城さん、何でトイレの前でウロウロしてたの?入りたいなら入ればいいのに」

「え゛!?ぁー…ぅん…、そーなんだけど…(汗)」

「え、何?もしかして個室全部埋まっちゃってるとか?」

「い、いや、そーゆー訳じゃ…(汗)」

 
「じゃ、早いトコ入っちゃえば?でないと何か変な誤解受けちゃうかもしれないわよ?」

「え?何で?」

「だってさっきの結城さん…」

「へ?」

「なんか『女子トイレを覗こうとしている変質者』みたいに見えたから」

唯は苦笑いしながら冗談混じりに言ったつもりだったが…。

「ぐはっ!!?」

既に変な誤解を受けて物凄く傷ついたリトは、全身に暗~いオーラを纏ってその場に突っ伏してしまった。

「ゆ、結城さんっ!?どうしたの、大丈夫!?(汗)」

何が起こったのか解らず、とりあえずリト(レモン)を慰めようとする唯。

「ふ…、ふふふふ………」

『ビクッ!』
「ゆ…、結城さん…?」

突然、リト(レモン)が怪しげな笑い声を発し、唯は思わずズザザザッと後退りをした。

「そうだよ、何を恐れる必要があるオレ。オレは今女なんだから女子トイレに入ったって何の問題も無いだろ…?(小声)」

「ぇ……えーっと…(汗)」

ブツブツ何かを呟くリト(レモン)を見て軽く恐怖する唯。

「そうだ!!オレは女なんだ!!女が女子トイレに入って何が悪い!!」

「あ、あの…、結城さん…?(大汗)」
(『オレ』?)

何か大きな決意を固め――とゆーか、ヤケクソになったリト。
一方、さっきの『オレ』発言に若干引っ掛かった唯だが、リト(レモン)の勢いに押されてそんな疑問も吹っ飛ぶ程ドン引きしていた。

「…………………ふー」

深く大きく深呼吸をして、そして…。

「うおぉぉぉーーーー!!行くぞコラァァァーーーー!!!」

気合の入った叫び声と共に、リトは女子トイレへと突撃していった――。

「な、何もそんなに気合入れて入って行かなくても……(汗)」
(ひょっとしてアレかしら?ここ最近、お通じが来てないとか…)

そんなリト(レモン)の様子を、ただひたすら頭に?マークを浮かべながら呆然と見送る唯なのだった――。

――――――


「ぁーー……」

どうにかトイレの難関をクリアしたリトは、妙にぐったりした感じで廊下を歩いていた。

「なんでトイレ行くだけでこんなに疲れなきゃなんねーんだよ~……」

そんな事をぶつぶつ呟きながら教室に戻ろうとすると…。

「ヘイ、そこの彼女!!」

「………ほえ?」

不意に後ろから声を掛けられ、振り返るとそこには…。

「どうしたんだい?浮かない顔して。悩み事があるならいつでも相談に乗るぜ!!」

『さすが弄光センパイ!ここが学校だという事もお構い無しに今日もナンパしまくりだ!!』

(げっ、弄光!!?)

元祖女たらし軽犯罪者、弄光(と、その後輩's)が爽やかな(ウザい?)笑顔で立っていた。

「むむっ!」

突如、弄光が目をくわっと見開いて、懐から『MOTE NOTE』と書かれた怪しげなノートを取り出し、パラパラ捲り始めた。

(オレのマル秘ノートにデータが無い美少女……。この学校にまだこれほどの娘がいたとは…!)

「キミっ!!」

「はっ、はいっ!?」

「キミこの学校じゃ見かけた事が無いけど、もしかして転入生かい!?」

「ぁ……は…はい…、一応……今日から短期間の編入…ですけど……」

「何っ!?という事は、今学校中で噂になっている『あのララ以来の美貌と身体を持ったボクっ娘編入生』というのはキミの事かい!!?」

「い、いえ、編入生なのは確かですけど、そんな大袈裟な者じゃあ――!」
(てゆーか、何故『ボクっ娘』の部分を強調する?)


余談だが、何故リトは自分の一人称を『私』では無く『ボク』にしたのか…。
一応、外見は女の子だが中身は男のままであるリトにとって、自分の事を『私』と呼ぶのは、なんか精神的にも『女の子』になってしまいそうな気がして少なからず抵抗があった。
だからこそ、自分はこれでも男だという事を忘れない様に、女が使っても別に可笑しくない呼び方(てゆーか、先日読んだマンガの女の子キャラが使ってた)という事で『ボク』という一人称を使う事にしたのだ。
………まぁ、それがここまで男子生徒内で大反響を呼ぶとは、リトにとっては予想外だった様だが…。 

 (どっちにしても、コイツにはあんまり関わりたくないから、どーにかしてここから離脱しなければ…)

この場から逃げ出す方法を模索するリトの様子など全く気付きもせず、弄光は嬉々として話し(口説き)かける。

「キミ、名前は何ていうのかい?」

「へ?あぁ、レモンです。結城レモン」

「へぇ、レモンちゃんというのかい。甘酸っぱい雰囲気がするキミにとてもお似合いの名前だね♪」

「ぁ、あぁ…、どーも…」
(意味解んねっつーの)

「そうだ!レモンちゃんこの学校の事よく知らないだろ!?オレが案内してあげるよ!」

「い、いえ結構です!大体の場所は御門先生に教えてもらいましたから!」
(つーか元々この学校の生徒だし…)

「遠慮するなよ!オレが誰も知らない様な、『二人きりで』まったり出来る穴場スポットを教えてあげるから♪」

「だ、大丈夫ですから!間に合ってますから!知りたくもありませんからっ!」
(あーもー、しつけー!そしてウゼー!つーか馴れ馴れしいな、コイツ!!)

しつこく食い下がる弄光に嫌悪感を感じ、一刻も早くこの場から離れたいリト。どうやって誤魔化そうかと思考回路をフル稼働させて、導き出した答えは…。


「あの、ボクちょっと急いでますんでこれで――」

踵を返して強行突破。

「あっ、ちょっと待って――うわっ!?」

「え?わぁっ!?」

引き止めようとした弄光だが、不意に足を滑らせ、そのままリト(レモン)に後ろから抱き付いてしまった。


しかも…。


『むにゅ』


「え?」

「……………へ?///」

両手で思いっ切りその豊満な胸を掴んでしまった。

「あ…………あれ?」

「な………な………な…………///」

暫くその状態で時間が止まった様に固まる両者。


そして…。


「~~~~~~っ!!!///」


リトの顔が一気に紅潮して――。


「何すんだてめぇぇぇーーーーー!!!///」
『ドゴォッ!!!』

乙女の怒りのJETアッパー(廬○昇龍覇)、炸裂。

「ごばぁっ!!?」

まともに受けた弄光の身体はそのまま宙を舞い、頭から真っ逆さまに墜落した。

『せっ、先輩~~~!!』

慌てて弄光に駆け寄る後輩's
その隙に、リトは全速力でその場から離れた。

『先輩!!しっかりして下さい、先輩~~!!』

「の………の………の……」

『の?』

「ノーブラでした…♪」(ガクッ…)

『さすが先輩っ!!こんな時でも探求心を忘れないなんて、男の中の男だーー!!』(感動)


――――――


一階、渡り廊下――。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ…///」

顔を真っ赤にしながらも、何とか気分と呼吸を整えようとするリト。
よっぽどさっきの出来事がショックだったのか、教室に戻る筈が何故かこんな所まで来てしまった。

「あんの野郎ぉ…、人の胸思いっ切り掴みやがってぇ~…///」

胸を押さえて、弄光に対してふつふつ怒りが湧き上がる。

(おかげで一瞬変な気分になっちま………って何考えてんだよオレはぁ!!///)
『ガンガンガンガンッ!!!』

さっきの感触が一瞬頭をよぎって、一刻も早く忘れようと校舎の壁に頭を打ち付けまくるリト。
端から見れば、ヘッドバッドの練習をしている様にも見える。

「あ、あなた…。何をやってるんですの…?」

「へ?」

再び後ろから声を掛けられ、振り返ると…。

「壁に向かって頭突きなんかされて…、何か格闘技の練習でもされてるのかしら?」

自称、彩南校のクイーン(通称、変人クイーン)天条院沙姫が、何か不思議な物を見る様な目をして立っていた。
勿論、今日もお供の九条凜と藤崎綾も一緒である。

(ぅわー…、今度は天条院センパイだよ…)

またしてもあまり関わりたくない人に出会ってしまい、軽くうなだれてしまった。

「な、なに人の顔を見るなりそんな嫌そうな表情されるんですの!?失礼ですわね」

少し不愉快な気分になる沙姫。まぁ、いきなりこんな行動をとられれば当然といえば当然だが…。

「ってアラ?あなた見かけない顔ですわね。転入生かしら?」

「え゛っ、ええ、まぁ…」

「んー、それにしては何か何処かで…、それもごく身近で会った事がある様な顔なんだけれども…」

リト(レモン)の顔をまじまじ見ながら考え込む沙姫。
と、ここで凜が――。

「沙姫様、もしかしてこの娘ではないでしょうか?本日ララのクラスに編入してきた、『あの』結城リトのイトコというのは――」

「ああ、あなたが今学校中の話題になっている噂の編入生なのですか」

「ぁ…、ぁはは……」

「ふ~ん、そう…。あなたが…」

苦笑いするリトをよそに、何か考え込む沙姫。

(やば…、何か嫌な予感がビンビンする…)

頭の中で、日頃の非日常的日常の中から生まれた危機察知能力が警報を鳴らす。
そうでなくとも、只でさえこの人と関わるとロクでも無いことばっかり起きるので、リト自身これ以上この場に留まりたくなかった。

(これ以上ここにいるのはマズい…。何か分かんないけどそんな気がする!早いトコ逃げなければ!)

という訳で、ややこしい事に巻き込まれる前にさっさとこの場から立ち去ろうとしたリトだったが…。

「あなた、名前は?」

「う゛ぇっ!?」

一瞬早く、沙姫の方から会話を切り出され、逃げる機会を潰されてしまった。

「『う゛ぇっ!?』ではなくて、名前は何と言うのか聞いてるんですの」

「ぇ、ぇーと…、れ、レモン…です…」

「そう、レモンさん。私は三年の天条院沙姫。この彩南高校のクイーンですわ」

「は…はぁ……」

「いい機会だからあなたに一言だけ言っておきますわ。いい?彩南高の真のクイーンはララなんかではなくこの私です!!あなたもそこの所勘違いしないで、私をクイーンと称え敬う様に!!
いいですわね?彩南高のクイーンはこの私!!ホーーホッホッホッホッ――!!!」

「はい分かりました。それじゃボクはこれで――」(投げやり気味)

「ちょっ、ちょっとお待ちなさい!!何故そんなそそくさ逃げようとするのですの!!?」

「いやだって…、なんか『センパイとは関わっちゃいけない』って本能が言ってまして…」

「どういう意味ですの、それは!!?」

至極当然、ごもっともなお怒り。
しかし、今までが今までなのでリトの言い分も解らなくはない。

「あなた、見掛けだけじゃなく中身まで結城リトと同じで私をバカにしてるんですの!?」

「い、いえ、決してそーゆー訳じゃあ――!?」

「じゃあどういう訳なんですの!?」

激昂してリト(レモン)を責め立てる沙姫。

「ぇ…ぇーと~……、その~………」

返答に困るリト。説明しようと思えば出来るかもしれないが、何分この人にはその自覚症状が無いので多分理解してもらえないだろう…。いや、きっと理解してもらえない。(断言)
その上、後ろにいる凜と綾にも睨まれ、図式3対1状態でかなり厄介な状況である。

(ほーら、やっぱり段々とややこしくなってきた…。なんとか適当に誤魔化して早いトコここから離れなきゃあ――)

どうやってか沙姫の機嫌を宥め――とゆーか、いい加減これ以上関わりたくないので、この場からの離脱方法を考えるリト。

そして、考え抜いた結果…。


「あっ、ザスティン!!」

「えっ!?どこっ、どこっ、どこっ、何処ですのザスティン様ぁ~!!///♪」

リト(レモン)の指さした方向へ向かって、自分の想い人の名前を連呼しながらその姿を探す沙姫。

「あぁザスティン様ぁ~!!何処にいらっしゃるのですか~、私のザスティン様ぁ~!!///♪」

「沙姫様、沙姫様」

「ちょっ、五月蝿いですわよ綾。ザスティン様ぁ~!!あなたは一体何処に――!!///♪」

「沙姫様っ!!」

「って何ですの綾!!さっきからゴチャゴチャと!!」

「あの…、彼女逃げちゃいましたけど…」

「へ?」

振り返った時にはもう遅く、既にリト(レモン)の姿はそこには無かった…。

「……」


……………。


…………。


………。


「はっ…、謀りましたわねぇ~~~~!!!」


古典的な手口ほど、案外簡単に引っかかるものである…。


「しかし、あの短い時間で足音一つ起てずに…。逃げ足も結城リト並みですね…」

「凜、感心してないでさっさと追いかけなさい!!」

「む、無理ですよ沙姫様ぁ~。もう完全に見失っちゃってますから~」

「綾、世の中諦めなければ何でも出来る様になっているのよ!!」

「沙姫様、それでもやはり無理があると思いますが…」

「ムッキーーー!!!おのれ~ララといいあの娘といい、私をコケにしくさってぇ~!!この屈辱必ず返して差し上げますからねぇ~~!!!」


沙姫の怒りの叫び声が、澄み切った青空へ消えていった――。

――――――


『ガラッ』
「た…、ただいま~…」

「おぉ、おかえりレモり――ってどーしたの?何か随分疲れてるみたいだけど…」

「トイレ行ってきただけでそんなにバテバテになるもんなの?」

「いや、ちょっと痴漢と変人に会っちゃって…」

「「は?」」

頭に?マークを浮かべる籾岡と沢田をよそに――。

(ぁー…、また何かあったんだろーな~…)

――と、春菜だけはなんとなく事情を察して、憐れみチックな苦笑いを浮かべた…。

「……まぁいいや。ところでレモりん」

「ぅん?何、籾岡…さん?」

「今さっきみんなにも話したんだけど、今日の放課後、レモりんの歓迎会をしようと思ってるんだ」

「へ、歓迎会?」

「うん。駅前に美味しいケーキバイキングのお店があってさ、そこで開こうと思ってるんだけど。あたし丁度そこの割引券持ってるし♪」

「そ、そんな、別にいいよ、そこまで気を使わなくても。なんか悪い気がするし…」

「なーに言ってんのさ。ここはお互いの親交を深めるのに丁度いい機会だし、遠慮なんかしないの♪」

「いや、でも…」

籾岡からの誘いを渋るリト。自分の為に歓迎会を開いてくれるその気持ちは嬉しいのだが、何か騙してる様な立場上、申し訳ない気がして踏み込めない。

「行こーよリ…レモン~。せっかくリサ達が誘ってくれたんだしさ~」

ララがリトの背中を押す。

「ララ……ちゃん…」

自分の事を気遣ってくれてると思ったのか、少しだけ気持ちが揺らぐ。

「私もこの間連れてってもらったけど、あそこのモンブラン凄く美味しいんだよ?あ、チーズケーキも人気あるし、ティラミスもハズせないし…。
今月のお小遣いも残り少ないから、こんな機会じゃなきゃ食べに行けないもん♪」

「――って、目的はそっちかい!!」

おもわず吉○的ズッコケ&ツッコミをやってしまった。

「ま、まぁまぁ…、やっぱりこういうのは大勢で行った方が楽しいし……、行こ?結……零紋さん」

「む……うーん…」

春菜からも背中を押されて、しばし考え込むリト。

「………それじゃ、お言葉に甘えようかな」

「よっし、決まり!」

「そうこなくっちゃ♪」

籾岡と沢田がテンション高く喜びの声を上げた。

「わ~い、レモンありがと~♪」

よっぽどケーキバイキングに行けるのが嬉しかったのか、おもわずリトの胸に飛び込むララ。

「わぁっ!?いいいきなり抱き付……かないでよ!///」

「えへへ~♪」

「いや『えへへ~♪』じゃなくって……ってこら頭っ!頭そこですりすりすんな…じゃない、しないでよ!///」

「う~ん、柔らか~♪ふっかふか~♪♪」

とても気持ち良さそうにリトの胸に顔を埋めるララ。

「ぁ……ぁぅ~……」

その隣で、その様子をちょっと羨ましそうに眺める春菜。


「ぇ……ぇぇの~…///」
「天使が~…、天使が戯れておりますぞ~…///」
「こんなスンバラシイ光景を目の当たりに出来るなんて……、生きててよかった~……///」

そして、少し離れた所で恍惚の表情を浮かべる取り巻きの男共。
数名程前屈みになった奴もいたが、それは見なかったことにしておこう…と、リトは心に誓った。


「「むー…」」

そんな中、二人揃ってその様子を、ある一点を凝視しながら考え込む籾岡と沢田。

「ねーレモりん」

「離れてって!///――って何?どしたの?」

ララを引き剥がそうとしてるリト(レモン)に籾岡が尋ねる。

「朝からずっと思ってたんだけど……、レモりんって何気に胸大っきいよね…」

「うん…、ララちゃんにも負けてないかも…」

「え゛!?///」

そのセリフに、何か嫌な予感がした。

「ぁ…、ぁの~……、それってどーゆー……」

「「……」」

「……」


……………。


…………。


………。


「「ニヤ~リ♪」」

『ゾクッ!!』

籾岡と沢田の怪しい笑みと共に、全身を寒気が襲い掛かる。
リトの危機察知能力が最大級の警戒を告げ、頭の中ではあの名艦長が『総員、第一級戦闘配置!!』と叫んでいたりもする。

「な…な……何なの…カナ…?そのステキな笑顔は…」

「いえいえ別にぃ~♪」

「ただちょっっっとオモシロい事思い付いただけぇ~♪」

手をワキワキさせて、ゆらりと一歩踏み出す籾岡と沢田。

「おお…オモシロい事って……ナニ…?」

顔を青くして、ずさりと一歩下がるリト。

「ん~?とーーってもオモシロい事ぉ~♪あ、気持ちイイ事なのかなぁ~?」

「説明になってないってば。ぼぼ…ボクに何する気さ?」

「大丈夫だって、何もしないからさぁ~♪」

「いやいや、する気満々の人が言うセリフじゃ無いのかなそれは…」

二人が一歩踏み出す度に一歩下がるリト。

と、ここで沢田が――。

「あれ~?」

――と、何か後ろの方を覗き込んで…。

「へ?」

――と、つられて振り返ってしまい…。

「隙ありー!」

「え?」

――と思った時には既に遅し…。

「うりゃあ♪」
『むにゅうっ』

「ひゃうぅっ!!?///」


『おぉぉぉーーーー!!!』


籾岡がリト(レモン)の胸を思いっ切り鷲掴みにした。

同時に、周りの男共が歓喜っぽい雄叫びを上げ、前屈みになる奴続出。

「ひゃ~、やっぱり思った通り、ララちぃにも負けず劣らずのボリューム♪いやちょっと待って、もしかしたらレモりんの方が大っきいかも!」

「なななななな何すんだよ籾岡……サン!!?///」

突然の事に、一瞬素に戻りかけたリトだったが、何とかギリギリの所で踏ん張った。

「だってこんな立派なモノが目の前にあったらそりゃ触ってみたくもなるでしょ?しかも何?レモりんノーブラじゃん!」


『ナニーーーー!!!!』

再び男共が叫び声を上げ、前屈みになる奴が更に増えた。

しかも…。

「ぼばぁっ!!」
「ぶはぁっ!!」

あまりの衝撃に鼻血噴出で倒れる奴出現。


「リサズル~い。あたしも~♪」

「いいよ~♪さぁ、飛び込んでおいで~♪」

リト(レモン)の胸を揉み揉みしながら、ニヤニヤ顔で答える籾岡。

「こっ、こらぁ!勝手に決め―――ひゃあん!///」

籾岡に文句を言いかけたが、間髪入れず沢田がリト(レモン)の胸に飛び込んできた。

その上…。

「そ~れ、ぱふぱふぱふぱふ~♪」

「うひゃ~、スッゴ~い、気持ちいい~。この感触クセになりそ~♪」

「やっ…!ちょっ…いい加減に………はぁん!///」


「じょばぁっ!!」
「ぶばぁあっ!!」

目の前の現状とリト(レモン)の嬌声によって、鼻血噴出被害拡大中。


「あーズルいよ~。私も混ぜて~♪」

(ってうぉい!!『混ぜて~♪』じゃなくて助けんかいララぁ!!///)

更にララまで楽しそうに混ざってきて、最早収拾がつきそうに無くなった頃…。

「み、みんなぁ…、もうやめなよ~…。零紋さんが嫌がってるし、ここ教室だし~…///」

流石に学級委員長として……とゆーか人として、これ以上の公共羞恥プレイはマズいと思い、春菜が仲裁に入る。

(春菜ちゃん~…、やっぱ頼りになるのはキミだけだ~…)

心の中が感謝感激雨嵐なリト。


――が。


「え、何?春菜も混ざりたいって~?しょーがないなぁも~♪」

「はあぁぁっ!!?///」
「えぇぇぇっ!!?///」

事態は予想だにしない展開に発展。
いや、ある意味予想通りなのか?

「言ってないっ!そんな事言ってないよぉ~!!///」

「テレるなテレるな。さっきまで混ざりたそうな顔してたくせにさ~♪」

「わっ、私そんな顔してな――!///」

「その割にはさっき未央がぱふぱふしてた時、スッゴく羨ましそうにしてたじゃん♪」

「ぁ……はぅ~…///」

顔を赤らめて俯いてしまった春菜。

(は…春菜ちゃん…、そんな事考えてたの…?///)

そして、嬉しいやら悲しいやら、複雑な気分になるリト。

「ホラ春菜、一回やってみなって。もうホント病み付きになっちゃいそうになるから♪」

リト(レモン)から離れて、春菜を前に押し出す沢田。

「春菜~、レモンの胸凄く気持ち良いんだよ~♪ぷにぷにでふかふかなんだよ~♪」

お気楽そうに語るララだが、二人の耳には全く入っていなかった。
何故なら…。

(ま…マジで?マジで春菜ちゃんまで?それちょっとキツくない?いや個人的には嬉しいんだけど……ぅ゛ーん…///)

(ど…どうしよう…。何とか誤魔化せられないかな…?いや、でもこんなチャンス今後一切無いだろうし…………って何考えてるの私はぁ!!///)

互いにドキドキしながら、これから起こりそうな事について色々といっぱい考えていたから。

「春菜、早くしなってっ!」
『ドンッ!』

「きゃっ!?」

「え?のわぁっ!?」

しびれを切らした沢田に背中を押されて、リトの胸に飛び込まされる春菜。
しかし、勢いがつきすぎた為に、そのままリトを巻き込んでその場に倒れ込んでしまった。

「ぃ…つぅ~……、大丈夫…?西連寺さん」

「ぅ…うん……、何とか……」

そう言って、起き上がろうとした二人だったが…。

「「ぁ……///」」

不意に目が合ってしまい、今の状況(春菜がリトを押し倒しているような状態)を理解して、お互いに顔を真っ赤にしてしまった。
(端から見れば女同士なのだが…)

「ごごごごごめんなさい~!!あのっ決してワザとじゃあ――!!///」

「いいやいやいや解ってるからっ!!そんなに気にしないで――!!///」
(つーかパンツ見えてますからっ!!///)

座り込んだまま後退り、必死に誤る春菜。その拍子に足の隙間から純白のモノが見えてしまったが、男の悲しい性なのか、あえて黙ってるリト。

「な~にやってんのさアンタ達は~……………………って、レモりん…?」

呆れ顔でリト(レモン)を起き上がらせようと手を伸ばした籾岡が突然硬直した。

「ねぇ………レモりん…」

「ん…?どうかした?」

今度は何を考えているのかと思ったリトだが、籾岡の目があまりにもマジなのでつい身構える。

一方、籾岡はリト(レモン)の身体のある一点――それも足下の方を見続けている。


そして…、籾岡が意を決して放った一言は――。


「レモりん…、何でパンツ穿いてないのぉーー!!?」

「んなぁっ!!!///」


『ぶう゛ぁあぁぁぁーーー!!!!!』

おっと、今の衝撃発言で残りの男子生徒全員赤い噴水と化して倒れてしまった。


「ごごごごご誤解を招くような事言うなぁーー!!ちゃんと穿いてるだろーがぁーーー!!!///」

「うん。でもソレ『パンツ』じゃなくて『トランクス』だよね?」

「穿いてる事に変わりねーだろぉーー!!!///」

(ゆ…結城くん…、口調が…)

激昂するリト。よっぽどさっきの籾岡の発言がカンに障ったのか、口調が素に戻ってる事に全く気付いていない。

「でもレモりん、何で男物の下着なんか穿いてるワケ?」

「うぇっ!?」

沢田からの質問で、リトはようやく落ち着きを取り戻した。

「ぁ…え~っとさ~……、こ、こっちの方が何か着心地が良くってさ…、普段から愛用してるんだ~……。は……ははは…」

乾いた笑いを浮かべるリト。しかし心の中は…。

(しまったぁ…、朝からバタバタしてたから下に短パン穿いとくのすっかり忘れてた…)

自分の迂闊さを激しく後悔していた。

「ん?って事はレモりん…」

「ほぇ?」

「もしかして…、こーゆー下着一枚も持っていないとか?」

そう言って、籾岡がおもむろに自分のスカートをめくり上げた。

「わぁあバカァ!!何やってんだよこんな所でぇ!!?///」

「りっ里沙ぁっ!!?///」

春菜が慌ててスカートを下げさせ、その間必死に目を背けるリト。
しかし、バッチリ見てしまった…。黄色いレースの紐パン。

「何テレてんのさレモりん?女同士でしょーが♪」

「んな事ぁどーだっていーんだよ!!ここ教室だぞ!?誰かに見られたらどーすんだよ!!?///」

「な~に言ってんの。パンツ見られるのが怖くて女子高生なんかやってられないっての♪」
(丁度男子共は全員気絶してるし)

「どーゆー理屈だそれは!!///」

籾岡のムチャクチャな言動にマジギレするリト。
最早口調とかはどうだって良さそうな感じになっているように見える。

「しかし…、これはいけませんなぁ未央サン…」

「はい…、いけませんねぇリササン…」

まるで某時代劇の悪代官と越○屋の如く、かなり怪しい笑い声を発する二人。

「よしっ、特別サービスだ!レモりんの編入祝いに、あたし達がレモりんに似合う下着を選んであげるよ♪」

「はあぁぁっ!!?」

籾岡達の申し出に驚愕するリト。

「いやいや、いい!いい!!別にそんなの要らないし――!!」

「何言ってんの!レモりんみたいなとびっきり可愛い娘が男物の下着なんか穿いてたらそれこそイメージが合わないでしょーが!」

「そーだよ!レモりんにはもっとこう、『いかにも』って感じな下着を着けてもらわなきゃ!せっかくの美少女遺伝子が台無しだよ!?」

内容的にはとても嬉しい事を言ってくれてるのかもしれない…。
ただし、それは『女』だったらの話であって、『男』のリトにとっては迷惑極まりない話である。

「わ~なんか面白そ~♪ねーねー、それ私も選んでいいかな~?」

(ってうぉーい!?何お前までノッてんだよララぁー!!?)

何故かララまでノリノリで便乗してきて、唖然とするリト。

「それじゃみんなで選んであげようか、レモりんの為に♪」

「さんせー♪」

「よーし、私張り切っちゃうからね~♪」


「……」

無言で春菜の方を見て助けを求めるリトだが…。

「……」(ふるふる)

『ごめんね…、あーなったらもう止められません…』みたいな感じで、申し訳なさそうに無言で首を横に振る春菜。


「頑張って、レモりんにぴったりの下着を選ぶぞー!」

「「おーー♪」」







「……………………………………………マジ?」