【霧の中の女】

・塚本夫人
『たから屋』のお得意さん。
気むつかしくやかまし屋。
ひどい近眼でそそっかし屋。


・村上ユキ
『サロン・ドウトンヌ』のホステス。
色白の膚のきれいな女。
店ではピカ一。
子供が病身で、入院費が必要で金に困っている。
経堂の駅からかなりはなれた寂しい場所で間借りをしている。


・長谷川善三
通称ハーさん。
肥満型のロマンス・グレー。
度の強そうな近眼鏡。
Y生命保険会社の専務。
『サロン・ドウトンヌ』の常連。
連れ込み宿『みよし野荘』の常連。


・宇野達彦
長谷川善三の秘書。
女のようなやさ男。
口に毒があるので女の子から敬遠されている。
どこか陰険な感じ。
伯父がY生命の親会社の重役。


・村上謙治
ユキの良人。
S駅の手荷物一時預かりの係。






【洞の中の女】

・日疋隆介
銀座裏で『ドラゴン』というキャバレーを経営している。
もと満州ゴロかなにかであったらしい。
昭和二十二年ごろ、満州から引きあげてきた。

やせぎすの、目つきの鋭い。
ちょっとすごみな人物。
いかにもひとくせありげな面魂。
眉間にうすく傷あとがのこっている。
ちょっと普請道楽みたいなところがある。


・日疋珠子
隆介の妻。
もと『ドラゴン』のナンバー・ワン。
どこか傲然たるところがある。
旧姓甲野。


・根岸昌二
この二、三年急に売りだしてきた大衆作家。


・根岸喜美子
昌二の妻。
昭和二十五、六年ごろ、銀座裏のバーに勤めていた。
当時、岡沢ハルミの同僚。


・岡沢ハルミ
昭和二十五、六年ごろ、銀座裏のバーに勤めていた。
当時、根岸喜美子の同僚。
いまもって、バーへ出てみたり、人のめかけになってみたり、不安定な生活をしている。


・山本田鶴子
もと『ドラゴン』のダンサー。
以前、品川良太と内縁関係にあった。


・品川良太
艶歌師。
以前、山本田鶴子と内縁関係にあった。

ぼさぼさの髪を額に垂らして、もみあげをながく伸ばした。
いかにもキャバレーやバーに縁のありそう。
用心棒としては肉体的に貧弱だし、ぐれん隊としては目つきに鋭さが欠けている。
青白い皮膚の底に不健康な生活のよどみが沈潜している。
なにかしら油断のならぬものを感じさせる目つき。
たぶんに女性的な倒錯を思わせる。


・高井千代子
高井敬三の妻。
五十前後。
細面の眼鏡をかけた顔に一種の気品がある。






【鏡の中の女】

・増本克子
聾唖学校の先生。
読唇術を心得ている。
いつかの事件で金田一耕助に協力したことがある。

ある種の金魚のようにとびだした目。
相当ひどい近眼だが、容貌をそこなうことを気づかって、眼鏡をかけることをおそれている。
髪がおそろしくちぢれている。
年齢は四十前後。


・河田重人
○△産業専務取締役。
でっぷりとした肥満型。
一見して好色な重役といったタイプ。
きちんと左分けにした顔の小鬢にちらほらと白いものをまじえている。
栄養のよさそうな、つやつやとしたあから顔。
年齢は五十五、六。


・河田登喜子
河田重人の妻。
栄養のよさそうな、あごが二重にくびれるほども小太りにふとった。
髪の毛にいくらか白いものがまじっている。
小じわひとつ見えない膚はつやつやとしている。
赤ん坊のようにまるまるとふとった指。
年齢は五十ちかい。


・河田由美
河田重人の娘。
不行跡が目にあまって退校になった。
背は五尺三寸五分。
すらっとした姿。
年齢はかぞえで十九、高校三年生。


・倉持タマ子
河田重人の妾。
河田登喜子の遠縁。
一時期河田家に奉公していた。
西銀座のキャバレー『ランターン』で働いていた。

まゆをほそくそりこんで口紅の濃い。
年齢は二十代。


・杉田豊彦
河田家の運転手。
若い美貌。
三船敏郎ばりの苦み走った好男子。
年齢は三十歳。






【傘の中の女】

・野口誠也
銀座裏のキャバレー『フラ』のトランペット吹き。
たくましいというほどでないにしても、色の浅黒い、均斉のとれた体。
男振りも悪くない。
歳は二十七、八。


・野口和子
誠也の妻。
『フラ』のマダム。
どうわかく踏んでも三十五より下ではないだろうと思われる大年増。


・川崎慎吾
川南商会の専務。
川崎早苗の兄。
妻と二人の子持ち。
なかなか子煩悩。
自宅は成城。
別荘は軽井沢。

鼻下に手入れのいきとどいたひげをはやしている。
キャバレー『フラ』の常連。


・武井清子
川南商会勤務。
川崎早苗の友人。
K大学の学生時代は早苗と同級。
美人。





【鞄の中の女】

・片桐梧郎
彫刻家。
美校卒。
阿佐ヶ谷在住。
親の遺産をたんまりもらって、道楽三昧に世を送っている。
召し使いをおかずに、ただ一人で自炊している。
おそろしいやきもちやき。

かなり長くのばした髪はもじゃもじゃにちぢれていて、首のうしろで波打っている。
鼻がワシのくちばしみたいにまがっており、ギョロリとした目、大きな口。
身長は五尺九寸にちかい。



・緒方由紀子
梧郎の前妻。
以前『金色』に出ていた。
住いは駒形の昭和アパート。



・駒井泰三
西銀座のキャバレー『金色』の経営者。
住いは渋谷羽沢町。

きびしいほおの線を持った、いくらか目つきの鋭い、一見紳士風。
きびきびした態度や口のききかたは小気味がいい。
どこかあいてをひやりとさせるような鋭さを身につけた。
三十前後。



・駒井昌子
泰三の妻。
梧郎の妹。
以前『金色』でダンサーをしていた。

大柄の、ぱっと目につく容色。
どこか体の線にくずれたところがみえる。
歳は二十六、七。




【夢の中の女】

・本多美禰子
パチンコ屋『大勝軒』の看板娘。
アダ名は「夢見る夢子さん」
ひどく空想的。
夢想家にありがちなおしゃべりで、思ったことを胸にためておけない性質。
無邪気というか、楽天家というか。

かなりかわいいことはかわいい顔立ち。
華奢で繊細で、色の白いすきとおるような膚の色。
まつげのながい黒目がちの大きな目。
住いは目白椎名町。



・本多田鶴子
美禰子の姉。
シャンソン歌手。
内気でじみなほう。
どちらかというと孤独を愛するふう。
いつも夢見るようなまなざし。



・花井達造
『大勝軒』の経営者。
二重あごのでっぷりふとった。



・一枝
『大勝軒』のマダム。
達造のめかけ。
せんにはどこかで芸者をしていた。
なかなかあいきょうのあるべっぴん。
三十二、三という年ごろ。
やせぎすの、目の大きな、どちらかというと日本風の和服の似合いそうな。



・猪場栄
太陽光学の社長。
田鶴子のパトロン。
知性もあり、なかなかよい男振り。
髪もひげもごま塩まじり。
やせすぎず、太りすぎず、ゆったりとした人柄。



・来島武彦
田鶴子の近所に住んでいた学生。
田鶴子のファン。
たぶんに学生臭をおびているわかい青年。
現住はヨヨギ・アパート




【泥の中の女】

・立花ヤス子
丸の内にある某ビルディングの掃除婦。
器用なほうで、編みものの手内職でも相当の収入をあげている。
若い貧しい人妻。
住まいは西荻窪の大宮前。
ことし二十歳。



・立花信吉
ヤス子の夫。
なにかにつけて頼りない。
歳は二十三。



・川崎龍二
近ごろ売り出しの探偵作家。
住まいは吉祥寺。
三鷹の牟礼に仕事場を借りている。
妻子持ち。
じつに女出入りの多い。
まるで相撲とりのような大きなからだ。



・松本梧朗
S大学の助手。
龍二の古い友人。
龍二の小説の材料調査で小遣いかせぎをしている。
探偵小説ファン。
きゃしゃで色の浅黒い、ちょっとした好男子。



・浅茅タマヨ
龍二の情婦。
新宿のキャバレー『丸』に出ているダンサー。
住まいは池袋のアパート。
すくすくとのびたしなやかな四肢。
器量もまんざらではない。



・久保田昌子
龍二の情婦。
小学校の教員。
猛烈な探偵小説ファンで、龍二の崇拝者。
どちらかといえば小柄なほうで、身長は五尺あるかないか。
太い短い脚。
ボチャボチャとした、ちょっとかわいい顔立ち。



【柩の中の女】

・古垣敏雄
芸術家。
色の青黒い神経質そうな人物。
どんより濁った双のひとみ。
その年ごろに似合わぬ膚の色の悪さ。
いかにも病的なかんじの強い人物。
西荻窪在住。
歳は三十七、八。



・江波ミヨ子
モデル。
どこかコケティッシュなかんじのする。
いやにあどけない口のききかた。
歳は二十前後。



・森富士郎
敏雄の旧友で芸術家。
美校在学中に天才といわれた。
春興美術の重要メンバー。
彫刻もやれば絵もかいた。
詩壇でもわかい世代に多くのファンをもっていた。
豪放磊落な話しっぷり。

身長五尺四寸弱。
体重十四貫。
色白で柔和な面持ち。
つのぶちの眼鏡をかけ、頭は無造作なオールバック、ただし長髪ではない。
久我山にアトリエを持つ。
歳は三十六歳。



【瞳の中の女】

・杉田弘
杉田直行の次男。
T新聞社文化部記者。
小学校時代から図画をいちばん苦手とした。

身長五尺六寸くらい。
すらりと華奢なからだつき。
色白の、どこか腺病質らしい容貌。
住まいは成城。
年は二十六、七。



・沢田潔人
声楽家。
住まいは吉祥寺の十一小路。



【檻の中の女】

・新藤啓太郎
政府のある省の係長。
住まいは大森。



・緒方静子
新藤啓太郎の二号。
以前の勤めは銀座裏の料理屋『花清』。
相当の美人。
住まいは今戸。
歳は二十五、六。



・中村清治
銀座裏の料理屋『花清』の亭主。
女房も子供もある。
歳は四十前後。



【赤の中の女】

・榊原史郎
詩人。
たくましい筋骨。
日焼けした顔も男らしくてりっぱ。
背丈はゆうに五尺七寸はある。
歳は三十二、三。



・榊原恒子
榊原史郎の妻。
もと享楽座という新劇一座の女優。
さとの姓は山本。
氏家勝哉と結婚したのち死別。
榊原史郎と結婚するまで氏家姓を名乗っていた。

ちょっとかわいい顔立ち。
背丈は五尺そこそこ。
歳は二十五、六。



・長瀬重吉
舞台の背景画家。
背丈は五尺七寸はあろうという筋骨のたくましい。
額がすこしはげあがっている。
どことなく狡猾そうなかんじのする。



・里見純蔵
安西恭子の婚約者。
中年のでっぷり太った。



・氏家直哉
氏家勝哉の弟。
上品な顔立ちの、いかにもお坊ちゃんお坊ちゃんしたスマートな青年。
歳は二十三、四。