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黒き子龍とレアハンターズ」(2007/04/10 (火) 07:50:03) の最新版変更点

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ティールは船の床に座りこみ、ルナータ周辺の海図に、他の支援士や自警団の情報から確認した敵艦の位置を乱雑な円という形で描きこんでいた。 彼女の周囲には、同じ船に同乗した4名の支援士が集まり、全員が彼女の海図を見つめている。 とりあえず、全員戦艦の位置を把握しようとしているのだろう。 ……敵の配置は中型の戦艦が港に近い位置に4隻、大きさはほぼ同じものの、若干形状の違う艦がその奥に8隻。 前方の5隻は前2隻、後ろ3隻というスピア型の陣形をとっている。 三角形を描く形からおそらく最前線にもう一隻あったのかもしれないが、そうだとしてもすでに味方が落としてしまったのか海上にその姿は無い。 「……それにしても、このぽっかりと空いた部分はいったい……」 ……気になるのは、奥の8隻がかたどっている、まるで円を描くかのような陣形。 が、それ自体はあまり重要では無く、肝心なのはその中央部分で、その円の内側はぽっかりと穴があいたように敵戦の姿が見当たらなかった。 それは目視でも同じで、特にその内側になにかがあるような様子は無い。 「…陣形から見て、前の5隻はこの穴には多分関係ない……それに、大将の艦らしい艦がないのも気になる」 こういった乗り物を使った戦いでは、海戦にしろ陸戦にしろ、大抵それらを統括する旗艦というものが存在する。 それは多くの場合他の艦より強固に造られており、その大きさもそれに比例して巨大化していく。 ……だが、目の前の艦体にはそういった類の艦は全く存在していない。 海上を飛ぶ魔物の群れは、紛れもなく誰かに操られているもの。 ならば、近くにその指令塔であるオパールを置く必要がある。 「……なるほど、旗艦がただの戦艦に化けて、あの13隻のどれかにまぎれているか……もしくは、外部から見えなくなる幻覚でも使っているか……」 「おい、こっちも見つかった! 来るぞ!!」 そう結論付けたところで。耳に飛び込んでくるのは同乗した支援士のうちの誰かの声。 ……擬態ならば一つづつ潰していけばいずれは本命にぶつかる。 視覚を遮る幻覚というのならば、その術を発生させているアンテナを破壊すればいい。 ……後者ならば、大型の艦一隻を隠してしまうような大掛かりの術。 おそらく、艦体のどこかにそれなりに大型の仕掛けが組み込まれている。 「なんにせよ、前のを片づけないと奥には進めないね!!」 細かい事が分かるまでは、とにかく手当たり次第に進むしかない。 今の自分達には情報が少なすぎるのだ。 ティールは海図をたたんでふところにしまうと、武器を握りしめ、跳びはねるようにして立ち上がった。 接近してくるのは悪魔のような姿をした石像の魔物、ガーゴイルの群れ。 空を飛ぶ以外にこれといった能力も持たない魔物だが、石の塊だけにその硬さは折り紙つきである。 「おい船頭、手前の艦に寄せろ!! 沈めにいくぞ!!!」 ガーゴイルの相手をしながら、支援士の一人がオールをこぐ船頭に向けて叫ぶ。 ティールはひとまず船頭に攻撃を加えようとするガーゴイルを叩きおとし、自分達の船が向かおうとしている敵艦へとその目を向けた。 「――絶対に、この大陸は渡さない!」 ―ディン・エミリアサイド― 「始まったな」 手前を走る船に魔物が群がり始めたのを確認し、そう呟くディン。 エミリアは望遠鏡を伸ばし、味方の小船の向こうに居並ぶ敵艦の姿を一つ一つ確認していく。 同乗している他の支援士は、それぞれの武器を手にし、いつでも戦闘に移行できる体勢をとっていた。 「ふむ……セオリーだけを言うならば、まずは手前の艦から落として、ルナータから被害を遠ざけるべきなのじゃが……」 とりあえず現在確認できる13隻の位置を、望遠鏡を伸ばしたり縮めたりを繰り返して確認し、どこか疑問を抱くような顔を見せるエミリア。 ひとまず望遠鏡をたたみ、荷物の中へと放り込んだ。 ……そして、今度取り出すのは、船に乗る前に渡された戦況を示す海図。 そこには、乱雑に13の円が描きこまれていた。 「……どうかしたのか?」 「いや、奥の8隻の陣系が気になるのじゃ」 簡単に説明された分には、この海図は今までの情報を元に自警団が作りあげた敵の陣形の見取り図だという。 望遠鏡を通してみた敵艦の位置と海図上の円の位置は、多少のずれはあるものの確かに一致している。 ……すくなくとも、こちらの軍がこの図を作ってからも、敵は陣形を一切動かしていないと言うことが理解できる。 「手前の5隻はともかく、ぴくりともうごかない後方の8隻…………それだけ考えても、私にはまるで何かの陣を張っているように見えるのじゃが……」 「……陣って、陣形のことか?」 「たわけ。 ……<ruby>魔術師<rt>マージナル</ruby>の私が言う『陣』とは、魔法陣のことじゃ」 目を細めて、もう一度奥の8隻の方へと目を向ける。 距離が遠いせいで、肉眼では明確な陣形は全く分からない……が、少なくとも奥の8隻が進撃する様子は無い。 そして、見取り図通りに、ある一定の空間が不自然なほどぽっかりと穴が空いているということくらいはよくわかる。 ……そして、マージナルとしての勘を信じるならば、恐らく奥の8隻は円形の陣を張り……《八亡魔法陣》を形成している、ということも。 「てことは……」 「戦艦を『星』に見立てるほど大規模な魔法陣……だとすれば、何か大きな魔術を使おうとしているか…すでにあの陣の内側に”何か”が発生しているかのどちらかじゃな」 「……そこまで分かってるなら、判断はエミィに任せる」 「…………責任重大じゃのぉ……」 今までの話を聞いていたのだろう。 ディン以外の同乗した支援士も、すでにエミリアの顔をじっと見つめるようにして立っていた。 ……見ると、オールを持つ船頭も彼女の判断を待っているように見える。 「…………迂回して奥の一隻を攻撃する。 あの陣形、見捨ててはおけん!!」
ティールは船の床に座りこみ、ルナータ周辺の海図に、他の支援士や自警団の情報から確認した敵艦の位置を乱雑な円という形で描きこんでいた。 彼女の周囲には、同じ船に同乗した4名の支援士が集まり、全員が彼女の海図を見つめている。 とりあえず、全員戦艦の位置を把握しようとしているのだろう。 ……敵の配置は中型の戦艦が港に近い位置に4隻、大きさはほぼ同じものの、若干形状の違う艦がその奥に8隻。 前方の5隻は前2隻、後ろ3隻というスピア型の陣形をとっている。 三角形を描く形からおそらく最前線にもう一隻あったのかもしれないが、そうだとしてもすでに味方が落としてしまったのか海上にその姿は無い。 「……それにしても、このぽっかりと空いた部分はいったい……」 ……気になるのは、奥の8隻がかたどっている、まるで円を描くかのような陣形。 が、それ自体はあまり重要では無く、肝心なのはその中央部分で、その円の内側はぽっかりと穴があいたように敵戦の姿が見当たらなかった。 それは目視でも同じで、特にその内側になにかがあるような様子は無い。 「…陣形から見て、前の5隻はこの穴には多分関係ない……それに、大将の艦らしい艦がないのも気になる」 こういった乗り物を使った戦いでは、海戦にしろ陸戦にしろ、大抵それらを統括する旗艦というものが存在する。 それは多くの場合他の艦より強固に造られており、その大きさもそれに比例して巨大化していく。 ……だが、目の前の艦体にはそういった類の艦は全く存在していない。 海上を飛ぶ魔物の群れは、紛れもなく誰かに操られているもの。 ならば、近くにその指令塔であるオパールを置く必要がある。 「……なるほど、旗艦がただの戦艦に化けて、あの13隻のどれかにまぎれているか……もしくは、外部から見えなくなる幻覚でも使っているか……」 「おい、こっちも見つかった! 来るぞ!!」 そう結論付けたところで。耳に飛び込んでくるのは同乗した支援士のうちの誰かの声。 ……擬態ならば一つづつ潰していけばいずれは本命にぶつかる。 視覚を遮る幻覚というのならば、その術を発生させているアンテナを破壊すればいい。 ……後者ならば、大型の艦一隻を隠してしまうような大掛かりの術。 おそらく、艦体のどこかにそれなりに大型の仕掛けが組み込まれている。 「なんにせよ、前のを片づけないと奥には進めないね!!」 細かい事が分かるまでは、とにかく手当たり次第に進むしかない。 今の自分達には情報が少なすぎるのだ。 ティールは海図をたたんでふところにしまうと、武器を握りしめ、跳びはねるようにして立ち上がった。 接近してくるのは悪魔のような姿をした石像の魔物、ガーゴイルの群れ。 空を飛ぶ以外にこれといった能力も持たない魔物だが、石の塊だけにその硬さは折り紙つきである。 「おい船頭、手前の艦に寄せろ!! 沈めにいくぞ!!!」 ガーゴイルの相手をしながら、支援士の一人がオールをこぐ船頭に向けて叫ぶ。 ティールはひとまず船頭に攻撃を加えようとするガーゴイルを叩きおとし、自分達の船が向かおうとしている敵艦へとその目を向けた。 「――絶対に、この大陸は渡さない!」 ―ディン・エミリアサイド― 「始まったな」 手前を走る船に魔物が群がり始めたのを確認し、そう呟くディン。 エミリアは望遠鏡を伸ばし、味方の小船の向こうに居並ぶ敵艦の姿を一つ一つ確認していく。 同乗している他の支援士は、それぞれの武器を手にし、いつでも戦闘に移行できる体勢をとっていた。 「ふむ……セオリーだけを言うならば、まずは手前の艦から落として、ルナータから被害を遠ざけるべきなのじゃが……」 とりあえず現在確認できる13隻の位置を、望遠鏡を伸ばしたり縮めたりを繰り返して確認し、どこか疑問を抱くような顔を見せるエミリア。 ひとまず望遠鏡をたたみ、荷物の中へと放り込んだ。 ……そして、今度取り出すのは、船に乗る前に渡された戦況を示す海図。 そこには、乱雑に13の円が描きこまれていた。 「……どうかしたのか?」 「いや、奥の8隻の陣系が気になるのじゃ」 簡単に説明された分には、この海図は今までの情報を元に自警団が作りあげた敵の陣形の見取り図だという。 望遠鏡を通してみた敵艦の位置と海図上の円の位置は、多少のずれはあるものの確かに一致している。 ……すくなくとも、こちらの軍がこの図を作ってからも、敵は陣形を一切動かしていないと言うことが理解できる。 「手前の5隻はともかく、ぴくりともうごかない後方の8隻…………それだけ考えても、私にはまるで何かの陣を張っているように見えるのじゃが……」 「……陣って、陣形のことか?」 「たわけ。 ……&ruby(マージナル){魔術師}の私が言う『陣』とは、魔法陣のことじゃ」 目を細めて、もう一度奥の8隻の方へと目を向ける。 距離が遠いせいで、肉眼では明確な陣形は全く分からない……が、少なくとも奥の8隻が進撃する様子は無い。 そして、見取り図通りに、ある一定の空間が不自然なほどぽっかりと穴が空いているということくらいはよくわかる。 ……そして、マージナルとしての勘を信じるならば、恐らく奥の8隻は円形の陣を張り……《八亡魔法陣》を形成している、ということも。 「てことは……」 「戦艦を『星』に見立てるほど大規模な魔法陣……だとすれば、何か大きな魔術を使おうとしているか…すでにあの陣の内側に”何か”が発生しているかのどちらかじゃな」 「……そこまで分かってるなら、判断はエミィに任せる」 「…………責任重大じゃのぉ……」 今までの話を聞いていたのだろう。 ディン以外の同乗した支援士も、すでにエミリアの顔をじっと見つめるようにして立っていた。 ……見ると、オールを持つ船頭も彼女の判断を待っているように見える。 「…………迂回して奥の一隻を攻撃する。 あの陣形、見捨ててはおけん!!」

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