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神経性胃炎」(2007/04/12 (木) 23:28:04) の最新版変更点

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「意味不明、笑止千万……三文芝居。同じ妖精として、恥ずかしい」 戦場の上空、かたや、太陽のような明るい光を、かたや、月のような淡く穏やかな光を、かたや、星のような無数の光の粒を纏う三体の妖精が浮かんでいた。 そのうちの一人、月の妖精が呆れたような表情でそんなことを呟く。 「まあまあ、人間にもいろいろいるんだし、妖精にだっていろいろいるよ」 そんな彼女に、苦笑するようにしながらも星の妖精がそう声をかけ、なだめようとする。自分達も三者三葉、人のことは言えない部分もある。 「それに、あの子はソール達とはちょっと違う感じがする。本当に妖精かな?」 そして最後の一人、太陽の妖精ソール。 一瞬首をかしげながらそんなことを口にしたが、次の瞬間には“まあいいか”と笑みを浮かべていた。 「そうそう。それよりマーニ、月も出てない昼間から大丈夫なの?」 とりあえずソールのその態度には同意し、月の妖精――マーニにそう呼び掛ける。 この場でどうでもいいことにかまっている場合でもない。 「あ、それならいいものあるよ」 だがその問いかけに先に答えを返したのは、ソールだった。 言いながらごそごそと荷物を探って取り出すのは、僅かに白い光をおびた小さな水晶の玉。 「……月光晶……?」 「うんマーニにあげようと思ってたのが、こないだやっと出来たから」 長い長い時間を、月の光だけを浴び続けた水晶には、月の力が宿る。 純度の高い水晶を夜の間以外は、一筋の光も入らないところにしまいこむ事を、一日たりとも忘れては、完成は望めない幻の魔石。 彼女達が寿命が無いに等しい妖精だからこそできる芸当ではあるのだが…… 「ソール……」 そんな事実よりも、目を輝かせて月光昌のペンダント受け取るマーニの態度の方が、普段見ている側には珍しい気がしてならない。 「マーニ、ずっと前に欲しいって言ってたから」 ―確か50年近く前の事だよね、それって― 昼を司る太陽の妖精なのに、律儀に月の宝石を作っている。 恐らく、ソールにしてみれば友達にプレゼントした程度の考えなのかもしれないが、それだけでそんなものを作れる性格は感心を通り越して呆れるばかりだった。 「ありがとう」 と、横で見ている側の感想などお構い無しに、ソールの頬に軽くキスをするマーニ。 彼女はソールに大しては特に好意的に行動する傾向があるが、どの程度に思っているのかはあまり知りたくない予感がしてくる。 ―……”月は太陽の光をもって輝く”とはいえ、私が入り込めない世界を(ひとりで一方的に)作るのはどーかと……― 「あー、コホンコホン。 それより、それつけてみてどうなの?」 「…あ、うん……一騎当千、意気軒昂。 ……とはいかないけど、少しは力を使えそう」 「山椒は小粒でもなんとやらってことか。 ペンダントの大きさでも、多少の加護はあるみたいね」 ……ちなみに妖精サイズのペンダントなので、人間から見れば米粒程度だったりするのはまた別の話。 月の力をより強く引き出せる妖精だからこそ、このサイズでも意味があるものになっているのだろう。 「ヒミン、なんだか疲れてるみたいだけど、どうしたの?」 「もー気にしないでいいよ……それより、早く加勢に行こうよ」 太陽と月から少し目をそらす星の妖精――ヒミン。 付き合ってられないと思う事は数知れず、それでも一緒にいるのは二人の事が友達として大好きだからだけれども。 とりあえず、好きでものしかかってくる気苦労はまた別問題なのかもしれない。 「……気分上々。 ソール、私が最初に行くから、力を貸して」 「いいよ。 そういえばマーニに『&ruby(リンクス){魔力供給}』するのって久しぶりだね」 まぁ、例によってヒミンのそんな心情には気がついていない二人。 今更気にする事でもない気もしてくるのだが、まぁ色々とあてられそうなオーラにはやりきれない部分もあるわけで。 ―まぁ、二人には仲良くしてもらっておいた方がいいのは確かだよね。 太陽と月のリンクスなら、昼でもある程度は月の力が使えるわけだし― 結局は、打算的なところにでも落ちつけないとやってられない部分もあるのは悲しいところか。 『陽光の恵みの元に輝きし望月 時の境界を超え ここに力を』 ソールとマーニの握り合った手が、穏やかながらも強い光を放ち始める。 陽光変じて月光となり、行使されるは月の秘術―― 『――宵闇の天蓋に浮かびし光 其は界を包み理を越える――』 「……ってちょっとまって、その呪文は――!!?」 『――万象を穿つ力をここに!  ルナティック!!』 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― やまのように おおきな まじんが おそろしい わらいごえをあげながら やってきた! ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ……色々とぷち漫才のような展開に持ちこんでしまったものの、とりあえず適当な味方船に乗せて貰うべく奔走していた一同だったが、突如降ってくるように聞こえてきた謎の言葉に、一瞬見上げるように空に目を向けてしまっていた。 「――こ……このアナウンスは……」 だが、これから何が起こるのか分かったらしいセーは、青ざめてふるふると陸の方へと目を向ける。 そして、他の者達もそれにつられるように振り返り…… ――唖然とした 『ぎゃああああああああああああああ!!?』 ――――――――――――――――― まじんは わらいながら かえっていった ――――――――――――――――― 「あの子が気に触ったのは分かったから、&ruby(ルナティック){効果不明呪文}なんて使うな!!」 「九牛一毛、千里一曲……荒唐無稽。 見た目ほど威力は無いから、大丈夫」 「あの『まじん』って、確かダメージ付きの幻覚みたいなものだもんねー」 ルナティック……基本的に何が起こるかは術者にもわからない『月』に属する大魔法。 ほんの一瞬ではあるが常識も物理法則も超えた何かが起こるため、ああいったよくわからないものが、よくわからないナレーションと共に召喚されることもたま~にあるらしいが、その効果が敵味方見境無しなのが珠に傷である。 ただ、マーニとソールの言葉通り、『まじんの幻影』の威力そのものは初~中級魔法クラス。 攻撃範囲は馬鹿みたいな広さだが、相手がよっぽど弱って無い限りとどめを差す事はまず不可能な効果でもあった。 「……ああもう……ソール、大丈夫とは思うけど、巻きこまれた人達を『<ruby>陽光の癒し<rt>リラレイズ</ruby>』で回復してあげて……」 「うん。 ……あ、そうだ。 マーニ、ソールはあんな性格の子は好きだよ? だから、魔法に巻き込んだりするのはやめてほしいな」 「…………うん」 ―ああもう……ソールの性格がうらやましい……― 何があろうと、どんな時でも笑顔を忘れないソール。 悪く言えば楽観的ともとれるその笑顔には幾度も助けられてきたが、今日この瞬間ほど切実にその笑顔で癒されたいと思った瞬間は無かった。 「だれだ! パ○プンテなんて唱えたヤツはー!!」 『まじん』に見事に巻きこまれたらしい妖精が、激怒しながらそんな事を叫んでいた。 パ○プンテなどという呪文は聞いた事も無いが、とりあえず『ルナティック』を使用した事実は隠しておいた方が身のためかもしれない。 とりあえず彼女達の治癒をするべく、地面に向かって降下していく三人。 ―……私達の方が妖精の面汚しのような気がしてきた……― が、ヒミンはなんとなく胃を痛めながら、そんな事を考えるばかりだったという。
「意味不明、笑止千万……三文芝居。同じ妖精として、恥ずかしい」 戦場の上空、かたや、太陽のような明るい光を、かたや、月のような淡く穏やかな光を、かたや、星のような無数の光の粒を纏う三体の妖精が浮かんでいた。 そのうちの一人、月の妖精が呆れたような表情でそんなことを呟く。 「まあまあ、人間にもいろいろいるんだし、妖精にだっていろいろいるよ」 そんな彼女に、苦笑するようにしながらも星の妖精がそう声をかけ、なだめようとする。自分達も三者三葉、人のことは言えない部分もある。 「それに、あの子はソール達とはちょっと違う感じがする。本当に妖精かな?」 そして最後の一人、太陽の妖精ソール。 一瞬首をかしげながらそんなことを口にしたが、次の瞬間には“まあいいか”と笑みを浮かべていた。 「そうそう。それよりマーニ、月も出てない昼間から大丈夫なの?」 とりあえずソールのその態度には同意し、月の妖精――マーニにそう呼び掛ける。 この場でどうでもいいことにかまっている場合でもない。 「あ、それならいいものあるよ」 だがその問いかけに先に答えを返したのは、ソールだった。 言いながらごそごそと荷物を探って取り出すのは、僅かに白い光をおびた小さな水晶の玉。 「……月光晶……?」 「うんマーニにあげようと思ってたのが、こないだやっと出来たから」 長い長い時間を、月の光だけを浴び続けた水晶には、月の力が宿る。 純度の高い水晶を夜の間以外は、一筋の光も入らないところにしまいこむ事を、一日たりとも忘れては、完成は望めない幻の魔石。 彼女達が寿命が無いに等しい妖精だからこそできる芸当ではあるのだが…… 「ソール……」 そんな事実よりも、目を輝かせて月光昌のペンダント受け取るマーニの態度の方が、普段見ている側には珍しい気がしてならない。 「マーニ、ずっと前に欲しいって言ってたから」 ―確か50年近く前の事だよね、それって― 昼を司る太陽の妖精なのに、律儀に月の宝石を作っている。 恐らく、ソールにしてみれば友達にプレゼントした程度の考えなのかもしれないが、それだけでそんなものを作れる性格は感心を通り越して呆れるばかりだった。 「ありがとう」 と、横で見ている側の感想などお構い無しに、ソールの頬に軽くキスをするマーニ。 彼女はソールに大しては特に好意的に行動する傾向があるが、どの程度に思っているのかはあまり知りたくない予感がしてくる。 ―……”月は太陽の光をもって輝く”とはいえ、私が入り込めない世界を(ひとりで一方的に)作るのはどーかと……― 「あー、コホンコホン。 それより、それつけてみてどうなの?」 「…あ、うん……一騎当千、意気軒昂。 ……とはいかないけど、少しは力を使えそう」 「山椒は小粒でもなんとやらってことか。 ペンダントの大きさでも、多少の加護はあるみたいね」 ……ちなみに妖精サイズのペンダントなので、人間から見れば米粒程度だったりするのはまた別の話。 月の力をより強く引き出せる妖精だからこそ、このサイズでも意味があるものになっているのだろう。 「ヒミン、なんだか疲れてるみたいだけど、どうしたの?」 「もー気にしないでいいよ……それより、早く加勢に行こうよ」 太陽と月から少し目をそらす星の妖精――ヒミン。 付き合ってられないと思う事は数知れず、それでも一緒にいるのは二人の事が友達として大好きだからだけれども。 とりあえず、好きでものしかかってくる気苦労はまた別問題なのかもしれない。 「……気分上々。 ソール、私が最初に行くから、力を貸して」 「いいよ。 そういえばマーニに『&ruby(リンクス){魔力供給}』するのって久しぶりだね」 まぁ、例によってヒミンのそんな心情には気がついていない二人。 今更気にする事でもない気もしてくるのだが、まぁ色々とあてられそうなオーラにはやりきれない部分もあるわけで。 ―まぁ、二人には仲良くしてもらっておいた方がいいのは確かだよね。 太陽と月のリンクスなら、昼でもある程度は月の力が使えるわけだし― 結局は、打算的なところにでも落ちつけないとやってられない部分もあるのは悲しいところか。 『陽光の恵みの元に輝きし望月 時の境界を超え ここに力を』 ソールとマーニの握り合った手が、穏やかながらも強い光を放ち始める。 陽光変じて月光となり、行使されるは月の秘術―― 『――宵闇の天蓋に浮かびし光 其は界を包み理を越える――』 「……ってちょっとまって、その呪文は――!!?」 『――万象を穿つ力をここに!  ルナティック!!』 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― やまのように おおきな まじんが おそろしい わらいごえをあげながら やってきた! ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― ……色々とぷち漫才のような展開に持ちこんでしまったものの、とりあえず適当な味方船に乗せて貰うべく奔走していた一同だったが、突如降ってくるように聞こえてきた謎の言葉に、一瞬見上げるように空に目を向けてしまっていた。 「――こ……このアナウンスは……」 だが、これから何が起こるのか分かったらしいセーは、青ざめてふるふると陸の方へと目を向ける。 そして、他の者達もそれにつられるように振り返り…… ――唖然とした 『ぎゃああああああああああああああ!!?』 ――――――――――――――――― まじんは わらいながら かえっていった ――――――――――――――――― 「あの子が気に触ったのは分かったから、&ruby(ルナティック){効果不明呪文}なんて使うな!!」 「九牛一毛、千里一曲……荒唐無稽。 見た目ほど威力は無いから、大丈夫」 「あの『まじん』って、確かダメージ付きの幻覚みたいなものだもんねー」 ルナティック……基本的に何が起こるかは術者にもわからない『月』に属する大魔法。 ほんの一瞬ではあるが常識も物理法則も超えた何かが起こるため、ああいったよくわからないものが、よくわからないナレーションと共に召喚されることもたま~にあるらしいが、その効果が敵味方見境無しなのが珠に傷である。 ただ、マーニとソールの言葉通り、『まじんの幻影』の威力そのものは初~中級魔法クラス。 攻撃範囲は馬鹿みたいな広さだが、相手がよっぽど弱って無い限りとどめを差す事はまず不可能な効果でもあった。 「……ああもう……ソール、大丈夫とは思うけど、巻きこまれた人達を『&ruby(リラレイズ){陽光の癒し}』で回復してあげて……」 「うん。 ……あ、そうだ。 マーニ、ソールはあんな性格の子は好きだよ? だから、魔法に巻き込んだりするのはやめてほしいな」 「…………うん」 ―ああもう……ソールの性格がうらやましい……― 何があろうと、どんな時でも笑顔を忘れないソール。 悪く言えば楽観的ともとれるその笑顔には幾度も助けられてきたが、今日この瞬間ほど切実にその笑顔で癒されたいと思った瞬間は無かった。 「だれだ! パ○プンテなんて唱えたヤツはー!!」 『まじん』に見事に巻きこまれたらしい妖精が、激怒しながらそんな事を叫んでいた。 パ○プンテなどという呪文は聞いた事も無いが、とりあえず『ルナティック』を使用した事実は隠しておいた方が身のためかもしれない。 とりあえず彼女達の治癒をするべく、地面に向かって降下していく三人。 ―……私達の方が妖精の面汚しのような気がしてきた……― が、ヒミンはなんとなく胃を痛めながら、そんな事を考えるばかりだったという。

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