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[[《BACK》>—モレク〜モレク鉱山1—]]  鉄鉱石から宝石まで、多様な鉱物資源を産出するモレク鉱山。 その鉱山の麓に開けたモレクはかつて坑夫たちの町であった。 しかし、鉱山が魔物の巣窟と化し鉱業が停滞してからも、冒険者や道具作りを生業とする 人々が残された資源を求めてそこに分け入ることが多く、町の活気は未だに衰えていない。 「ジュリア、この町にはわたくしの友人が住んでいます。 元坑夫で鉱山の内部にも詳しい人ですから、今晩は彼の家にお世話になって、 鉱山の内部情報を聞こうではありませんか。」 「…うぅ〜、カネモリぃ〜〜。その前に、酒場行こうよぉ〜〜。 きょう一日携帯食しか食べてないから、もうお腹ペコペコ……★」 「大丈夫ですよ。わたくしと違って彼には奥さんがいますから、きちんとした夕食も 食べさせてくれます。」 「でもぉ〜、夕食時までまだちょっと時間あるし…、ボク…もう我慢できない……。 …お願い…、軽くでいいから、何か食べさせてぇ……」 「…ふぅ、仕方ありませんね。それでは先に、酒場に寄りましょう。」  「わーい! いッただっきまーす☆」 昼間でも人の入りが絶えることのない、酒場のカウンター。 ジュリアの目前には、パンとチーズと茹でたソーセージ。 「それではしばらく、ゆっくりとお食べください。 …わたくしは他の方々から、鉱山の近況を聞くことにします。」 大きめのパンを頬張るジュリアに声を掛け、カネモリはひとり酒場の奥に向かった。  「…なンだ、お前さんも『新鉱石』がらみの仕事かい?」 「…あぁ、そこの創作者(クリエイター)さんが 『どうしてもその鉱石を手に入れたいから護衛してください』 なんて依頼してくるからさぁ。」 「『護衛してください』ならまだいい方だぜ。 俺の仕事なんて、依頼者は顔ひとつ出さずに 『例の鉱石(いし)を採ってこい』 ッて依頼だけ酒場に投げてよこすンだから、ヤになッちゃうよな〜!」 ………………………。 ……………。 ………。 酒場のあちこちで耳にする支援士たちの話題は、いずれも近ごろ発見されたと噂の 「新種の鉱石」に関することばかり。 元素(エレメント)に関する話題など、微塵も聞こえはしない。 (…無理もない。 元素の存在、そしてその重要性を理解している人は まだほんの一握りに過ぎないのだから…。) 落胆の思いを隠し切れず、ジュリアの座るカウンターに戻ろうとすると… 「…お主、もしや『黒の錬金術師』かの?」 カウンターの別の場所から、カネモリを呼び止める声が。 「……?」 彼が振り返ると、そこには古風な話し口調とは不釣り合いな十代後半の女性。 彼女が相当高度な魔法の使い手であることは、初歩的ながらも魔法心得のあるカネモリには 十分に感じて取れる。 「うむ。その黒き髪、黒き瞳、黒き最北の民の装束に、薬の匂いのする大きな木箱。 噂に聞こえし『黒の錬金術師』に間違いないのじゃ! 究極の薬・エリクシールを夢見る錬金術師(アルケミスト)は数あれど、 いま実際にエリクシールの合成にまで手を付けておるのは、大陸南部ではお主ひとり との話じゃぞ?」 「…そうですか。わたくしのことがそこまで噂で広まっているとは、存じませんでした。 ところで、あなたは『レアハンター』ではありませんでしょうか?」 「!?」 「理使い(マージナル)でありながら魔道具の類に造形深く、稀なる品物を逃さずその 手中に収める、古風な言葉遣いで話す青紫の瞳の娘さん。 その手には見事なアクアマリンで拵え(こしらえ)られた杖を持つと…。」 マージナルの女性の傍らには、確かに杖が置かれている。 しかし、その先端を飾る宝玉は布で隠されており、それを「アクアマリンだ」と看破できる者は そうそういない。 「…参ったのぉ、いかにも私は『レアハンター』と呼ばれておる。時に…」 菫青石(アイオライト)の瞳が、にわかに輝きを増す。 「お主もアルケミストなら、何か珍しい品を持っておろう! …少しで構わぬ、見せてはくれぬか?」 「…えぇ、ご覧になるだけでしたらいくらでもどうぞ。まずは元素から。」 左右の袖に振り分けて仕舞ってあった三色の塊を、カネモリはおもむろに取り出した。  「この紅いものが『火の元素』、水色のものが『水の元素』、そして琥珀色のものが 『土の元素』です。」 「なんと! これがアルケミストだけが精製できる元素なのか!? …ところで、『風の元素』は持っておらぬのか?」 「…はい、残念ながら。 『淡い緑色に光る固体』であることは文献にも記されているのですが…。 どこかのダンジョンで見かけたことはございませんでしょうか?」 「うーむ…、暗闇の中でも光るものなら、見逃すはずはないのじゃがなぁ…。」 首をかしげながら、思案する「レアハンター」。 「…すまぬ。私には心当たりがない。」 結局、彼女は首を横に振った。 「…そうですか。それでは次に…」 「待つのじゃ! ものは相談じゃが、この元素。全部とは言わぬが、どれかひとつでも 譲ってはくれぬものか?」 「エミィ! それは無茶ッてもんだろ!?」 「レアハンター」の傍らでそれまで黙って話を聞いていた青年が、咄嗟に止めに入る。 それに構わず、カネモリは… 「そうですね…。わたくし、『水の元素』なら比較的簡単に作れますから、よろしければ お持ちください。」 「なんと! 話しはしてみるものじゃな。」 「…その『アクアマリンの杖』と引き換えにですが。」 「なっ!?!?」 ……………………………………………。 「…冗談ですよ。 鞄の中にある『魔獣の牙』で十分です。」 「レアハンター」はホッと胸を撫で下ろし、鞄から牙を取り出す。 「確かにいただきました。 この『水の元素』、魔力を使える人が『解放《リリース》』すれば、瞬時に大量の水を 発生させることができます。」 「水の元素」の小さな欠片(かけら)をカネモリが掌に乗せて念じると、 〈パシャッ!〉 それは直ちにコップ一杯分以上の水となってこぼれ落ちた。 「おおっ、それは素晴らしい! それでは大切にさせてもらうぞ、『黒の錬金術師』。」 「…いいえ、必要とあらばいつでもお使いください。 道具は使ってこそ、その価値があるものですから…。」 「レアハンター」に「水の元素」を手渡し、次なる道具紹介に移ろうとしたとき… 「お待たせっ、カネモリ! そろそろ行こうよ!」 食事を終えたジュリアが彼を呼び止めた。 「…申し訳ありません。行く所がございますので、これにて失礼いたします。 『エミィさん』、いつかまたどこかでお会いしましょう。」 「うむ。その時はまた道具について語り合おうぞ、『カネモリ』!」 [[《NEXT》>—モレク〜モレク鉱山3—]]
[[《BACK》>—モレク〜モレク鉱山1—]]  鉄鉱石をはじめとして、多様な鉱物資源を産出するモレク鉱山。 その鉱山の麓に開けたモレクはかつて鉱夫たちの町であった。 しかし、鉱山が魔物の巣窟と化し鉱業が停滞してからも、冒険者や道具作りを生業とする 人々が残された資源を求めてそこに分け入ることが多く、町の活気は未だに衰えていない。 「ジュリア、この町にはわたくしの友人が住んでいます。 元鉱夫で鉱山の内部にも詳しい人ですから、今晩は彼の家にお世話になって、鉱山の 内部情報を聞こうではありませんか。」 「…うぅ〜、カネモリぃ〜〜。 その前に、酒場行こうよぉ〜〜。 きょう一日携帯食しか食べてないから、もうお腹ペコペコ……★」 「大丈夫ですよ。わたくしと違って彼には奥さんがいますから、きちんとした夕食も 食べさせてくれます。」 「でもぉ〜、夕食時までまだちょっと時間あるし…、ボク…もう我慢できない……。 …お願い…、軽くでいいから、何か食べさせてぇ……」 「…ふぅ、仕方ありませんね。それでは先に、酒場に寄りましょう。」  「わーい! いッただっきまーす☆」 昼間でも人の入りが絶えることのない、酒場のカウンター。 ジュリアの目前には、パンとチーズと茹でたソーセージ。 「それではしばらく、ゆっくりとお食べください。 わたくしは他の方々から、鉱山の近況を聞くことにします。」 大きめのパンを頬張るジュリアに声を掛け、カネモリはひとり酒場の奥に向かった。  「…なンだ、お前さんも『新鉱石』がらみの仕事かい?」 「あぁ、そこの創作者(クリエイター)さんが 『どうしてもその鉱石を手に入れたいから護衛してください』 なんて依頼してくるからさぁ。」 「『護衛してください』ならまだいい方だぜ。 俺の仕事なんて、依頼者は顔ひとつ出さずに 『例の鉱石(いし)を採ってこい』 ッて依頼だけ酒場に投げてよこすンだから、ヤになッちゃうよな〜!」 ………………………。 ……………。 ………。 酒場のあちこちで耳にする支援士たちの話題は、いずれも近ごろ発見されたと噂の 「新種の鉱石」に関することばかり。 元素(エレメント)に関する話題など、微塵も聞こえはしない。 (…無理もない。 元素の存在、そしてその重要性を理解している人はまだほんの一握りに過ぎないのだから…。) 落胆の思いを隠し切れず、ジュリアの座るカウンターに戻ろうとすると… 「お主、もしや『黒の錬金術師』かの?」 カウンターの別の場所から、カネモリを呼び止める声が。 「?」 彼が振り返ると、そこには古風な話し口調とは不釣り合いな10代後半の女性。 彼女が相当高度な魔法の使い手であることは、初歩的ながらも魔法心得のあるカネモリには 十分に感じて取れる。 「うむ。 その黒き髪、黒き瞳、黒き最北の民の装束に、薬の匂いのする大きな木箱。 噂に聞こえし『黒の錬金術師』に間違いないのじゃ! 究極の薬・エリクシールを夢見る錬金術師(アルケミスト)は数あれど、いま実際に エリクシールの合成にまで手を付けておるのは、大陸南部ではお主ひとりとの話じゃぞ?」 「…そうですか。わたくしのことがそこまで噂で広まっているとは、存じませんでした。 ところで、あなたは『探究者(レアハンター)』ではありませんでしょうか?」 「!?」 「理使い(マージナル)でありながら魔道具の類に造形深く、稀なる品物を逃さず手中に収める、 古風な言葉遣いで話す青紫の瞳の娘さん。 その手には見事なアクアマリンで拵え(こしらえ)られた杖を持つと…。」 マージナルの女性の傍らには、確かに杖が置かれている。 しかし、その先端を飾る宝玉は布で隠されており、それを「アクアマリンだ」と看破できる者は そうそういない。 「…参ったのぉ、いかにも私は『レアハンター』と呼ばれておる。 時に…」 菫青石(アイオライト)の瞳が、にわかに輝きを増す。 「お主もアルケミストなら、何か珍しい品を持っておろう! …少しで構わぬ、見せてはくれぬか?」 「…えぇ、ご覧になるだけでしたらいくらでもどうぞ。 まずは元素から。」 左右の袖に振り分けて仕舞ってあった三色の塊を、カネモリはおもむろに取り出した。  「この紅いものが『火の元素』、水色のものが『水の元素』、そして琥珀色のものが 『土の元素』です。」 「なんと! これがアルケミストだけが精製できる元素なのか!? ところで、『風の元素』は持っておらぬのか?」 「…はい、残念ながら。 『淡い緑色に光る固体』であることは文献にも記されているのですが…。 どこかのダンジョンで見かけたことはございませんでしょうか?」 「うーむ…、暗闇の中でも光るものなら、見逃すはずはないのじゃがなぁ…。」 首をかしげながら、思案する「レアハンター」。 「…すまぬ。私には心当たりがない。」 結局、彼女は首を横に振った。 「…そうですか。それでは次に…」 「待つのじゃ! ものは相談じゃが、この元素。全部とは言わぬが、どれかひとつでも譲ってはくれぬものか?」 「エミィ! それは無茶ッてもんだろ!?」 「レアハンター」の傍らでそれまで黙って話を聞いていた青年が、咄嗟に止めに入る。 それに構わず、カネモリは… 「そうですね…。わたくし、『水の元素』なら比較的簡単に作れますから、よろしければ お持ちください。」 「なんと! 話しはしてみるものじゃな。」 「…その『アクアマリンの杖』と引き換えにですが。」 「なっ!?!?」 ……………………………………………。 「…冗談ですよ。 鞄の中にある『魔獣の牙』で十分です。」 「レアハンター」はホッと胸を撫で下ろし、鞄から牙を取り出す。 「確かにいただきました。 この『水の元素』、魔力を使える人が『解放《リリース》』すれば、瞬時に大量の水を 発生させることができます。」 「水の元素」の小さな欠片(かけら)をカネモリが掌に乗せて念じると、 〈パシャッ!〉 それは直ちにコップ一杯分以上の水となってこぼれ落ちた。 「おおっ、それは素晴らしい! それでは大切にさせてもらうぞ、『黒の錬金術師』。」 「いいえ、必要とあらばいつでもお使いください。 道具は使ってこそ、その価値があるものですから…。」 「レアハンター」に「水の元素」を手渡し、次なる道具紹介に移ろうとしたとき… 「お待たせっ、カネモリ! そろそろ行こうよ!」 食事を終えたジュリアが彼を呼び止めた。 「…申し訳ありません。行く所がございますので、これにて失礼いたします。 『エミィさん』、いつかまたどこかでお会いしましょう。」 「うむ。その時はまた道具について語り合おうぞ、『カネモリ』!」 [[《NEXT》>—モレク〜モレク鉱山3—]]

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