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『アリスのメンタル切れ』という形でアリスとアルとの戦闘が終わって間も無くのこと。 バタン! と勢いよく後方の、大広間に入ってきた戸が勢いよく開いた。 大広間にいる者達は疲れの色を見せながらも武器を構えたが、 「大丈夫。この感じは…」 というティールの言葉と先頭に立つ者の姿を見て武器を下ろした。 「みんな、大丈…夫では無さそうだな」 「レオン!」 先頭に立つのはレオン、そして見慣れた12人。そして、 「ルイン殿、貴女も協力していたのですね」 「ええ、アインからの『ラビの救出、及び輸送』はね」 「ところでレオン、この人は誰なの?」 事情が掴めてないティールが彼女について聞いた。 「この人は…」 というレオンの言葉を遮るようにルインが、 「こういうのは私自身が名乗る物よ。 私はルイン、元この船内の兵士。だけど―――」 と、レオン達に会った時のことと同様のことを話した。 話している最中にアルトの手から寝ているアリスに変わってアルがクロックラビを受け渡した。 「つまり、今は味方、って言うこと?」 ティールが重ねて確認するように質問をした。 「そういうことよ」 「ところで、途中でもう一人協力してくれた少女。シータとか言ってたっけ。 彼女は『今は協力できない』とか言ってたけど結局の所はどうなんだ?」 話が一段落した所でセオが先程分担されたレオンチームの皆が疑問に思っているだろうことを口にした。 「…解らない。けど、協力はして欲しいわね…」 一瞬間を空けてから、 「そうだ。彼女が何の為にコレを渡したのだったか…」 と、トロイホースの足元に置きっぱなしにしていた薬箱を取り出し皆に聞こえるように言った。 「この中で特にメンタルや体力の減っている人はいない? 体力は一応全員を回復させるけど、メンタルの回復は数人ならできるわよ」 「すまないが、エミィを頼む」 と、ディンがエミリアを背負い、前に出てきた。 「勿論よ」 と、ルインは合図をし、薬箱から特に容量が多いを選び出して、 「その体力とメンタルの減り方ならコレね。 何なら君が飲ませてあげれば? 彼女もその方がいいと思うよ?」 一瞬躊躇い、そして、 「…ありがたく頂きます」 「うんうん、相思相愛の男女とこのシチュレーション。いいわね~」 「ちょっとマテ、何で初見でそんなことを言うんだ…」 と呆れたような声でディンが反論した。 「この展開的にそうなんじゃない?」 「…」 「そんなことより速く飲ませてあげたら?」 ルインのその声色の中には何処かこの状況を少しだけ楽しんでいるような―――そんな感じが混じっていた。 ディンとエミリアの方を後にし、 「助けはしたけど当の本人のメンタルもここまで無くなるとはね…」 「…アリス様」 アリスとクロックラビを抱えているアルの元にやって来た。 「ほらっ、コレを飲ませてあげて」 先程同様の大容量の物を渡した。 「ところでルイン殿、これはどこから?」 先程はあまり触れられなかったことについてアルが聞いた。 「シータが持ってきてくれたのよ、そして、ここへの最後の道を切り開いてくれたのも彼女」 「そう…ですか」 アルもまた、アリスに薬を飲ませた。 その後、彼女は部屋の中央に行き、 (さて、アレを使いますか) と一思考をし、槍を地面に突き刺し、両目を閉じ、 「―――豊穣の女神、アスタロテの名の元に告ぐ―――」 その詠唱が始まると同時に、部屋全体に光が満ちた。 「―――その身に秘めし、命の輝き。今は弱りしその輝き―――」 「これは…優しい…光…?」 ティールがその光の力を見極め、そう呟いた。 「―――今、その輝きと共に力を呼び戻せ―――ヒールオール!」 詠唱の終了と共に、槍を引き抜き、それと共に全員の体の傷と体力が大幅に回復された。 (これは…やっぱり体が辛いわね…私も薬を飲みますか…) ルインが壁際に移動し、自分のメンタルを回復している最中に、 「ルインさん、その技は…?」 ティールが先程のは何か、と聞いてきた。 「ルイン、でいいわよ。これはそちらの世界で一般的な回復魔法、 リラやラリラとは別物みたいね…」 「でも、これは言葉に表し難いけど『治癒』とか『回復』そんなレベルの技ではないと思う感じがする」 彼女は重い口を開き、 「…強いて言うなら『修復』それが一番しっくり来ている、そう私は思っている」 「『修復』…?」 その言葉を言ったあとに言葉を続けたくないようだというのを感じ、ティールはそれ以上の追求を止めた。 一瞬の間の後、 「そうだ。ティール、貴方『竜に関わった者』って誰だか分かる?」 「―――!」 彼女は一瞬だが驚きを顔に見せた。それを見てルインは確信し、 「アインから『コレを飲ませろ』との伝言があってね」 と、徐に薬箱から透明な瓶を取り出してティールに差し出した。 「これは…?」 「いまいち解らないけど、プラスの効果を与えるのは間違いない筈。彼のことだから、それ以外ありえないかな?」 「…」 ティールもそれを受け取り、それを飲み干した。 「アイン…って、貴方が共に行動していたあの人?」 「そうよ」 「…彼は一体?」 「彼も貴方と同じような力を持つ…いや、違うわね」 と、一旦思考を整理し、 「貴方が関わったことがある種族、と言った方が正しいわね。あの姿ができるのは数少ない筈だから」 「…」 僅かな時間だが、長く感じれた静寂。 その静寂を引き裂くようにティールが言った。 「さ、皆も回復できたみたいだし、私も大分力が戻った気がするし、説明をしてから行こうか?」 「そうね、うん、そうね、これからどうするか、それを話さないとね」 と言い、二人は皆のいる方向に戻った。

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