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アリスのワンダーランド」(2007/06/08 (金) 15:04:16) の最新版変更点

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エメトシリーズ。 それはとある世界において、一人の研究者が作り上げたゴーレムタイプの魔道兵器。 それぞれ、核として『炎』『氷』『轟雷』『嵐』『大地』『聖』『魔』のメンタルが込められた宝玉が埋め込まれており、その7属性と、それらの統合体の『グラン・エメト』の計8体の存在が確認されているという。 ……現在は、この”エリアルワールド”と呼ばれる大陸に迷い込み、ダンジョンの奥地などで魔物として生息しているという。 「ゴオオオオオオオオオオオ!!」 そして、今自分たちの目の前にいるのは、『エメトゼロ』と称されるエメトシリーズの模造品。 ……いや、厳密には核に属性をもたないだけであり、言ってみれば試作型を再現したものと言えるだろう。 「……来るよ」 「ああ、”ルミナス”の時の分も含めて、思いっきりやってやるのじゃ」 「…ま、とりあえずあの時の手段でも試してみるか」 ティール、エミリア…そしてディンの3人は、どこか懐かしいような感傷に浸りつつも、それぞれ武器を構え、戦闘態勢に入っていた。 「くっそ、いくらなんとかしてくれっつっても、この数はキツイな……」 その周囲で、その他大勢の異人兵と機会兵、そして魔物を蹴散らし続けるレオン達。 可能な限り、ホールの中央でエメトゼロと交戦する3人へ攻撃が行かないように行動しようとするものの、それには少々辛い部分もあった。 今のところはその現状を保てているものの、少しでも油断すれば確実に被害は中央へと行くだろう。 2、3体とり逃したところであの3人ならば問題なく捌けるとは思うものの、可能な限り負担は軽減してあげたかった。 「弱気になっていてはだめよ」 手近な機械兵を葬りつつ、そう呼びかけるルイン。 彼女の戦闘力は単純に強力で、こんな状況においては非常に頼りになる。 もし彼女が敵として自分たちと相対していたならば、こちらの不利は絶対的なものになっていただろう。 ……などと、考えかけた時だった。 「レオンさん、上!!」 アリスの声にその方向へ振り向くと、3体のアイズが彼の頭上からレーザーを放とうとしているところだった。 「うぉお!!?」 咄嗟に横へ飛び、直後に射出されたデルタショットを回避するレオン。 それにより何もない空中を通り過ぎたレーザーは、地面に深い弾痕を残して消え去っていった。 「――エンリケさん、右に跳んで! セオさん、クローディアさん、左から敵! アルトさん、後ろに魔法撃って!!」 アリスは、レオンへの指示の直後も味方全体に向けて的確に指示を飛ばしている。 ただ、それが普通に指示を出しているだけなら、単に感心するだけで終わったかもしれない。 ……その光景は、少し考えればかなり特殊な光景であると理解できるだろう。 「……目を、閉じたまま…!?」 そう、アリスは目を閉じ、何も見えていないはずにもかかわらず、このホール内ので行われている動きを完全に把握していた。 それは敵と味方の位置だけでなく、今どこをどう動いているか、どんな状態なのか、それらすべてを理解し、それを元にして指示を出している。 「エレメントシーカー。 あれがアリス本来の力……領域把握」 「領域把握だって…?」 「半径50M圏内の状況を、一切の死角無く完全に把握する能力。 52体もの兵士をたった一人で同時に操るには、不可欠な力よ」 「……」 自分は、52枚のトランプ兵と戦うなどという状況には遭遇していない。 しかし、この場にいる半分の人間は、先程までアリスと戦っていたことを聞くと、確かにそれを見ていたのだろう。 ……一定領域の、完全把握。 そんなことができるのならば、前しか見えない目から入る情報は、確かに不必要なのかもしれない。 「――とはいえ、いくら把握できても、このままじゃ全員カバーできないわね」 「そりゃそうだ。 人間に口は一つしかないからな」 もし、まったく同じタイミングで指示を出さなければならない相手がいたのならば……どうしても、どちらかを見捨てなければならない場合もあるだろう。 そんな時、選択を迫られるのはアリスであり、たとえ責任は問われないものとしても、『対応できたはずだった』という意識は彼女の中に残るかもしれない。 「……アリス! ”アレ”を使いなさい!!」 再び接近してきたアイズの一団を蹴散らしつつ、ルインはアリスに向けて呼びかける。 その言葉に、一瞬ぴくっ、と反応するアリスだったが……”アレ”とやらを行動に移す前に、アルがルインにむけて言葉を返していた。 「アレはアリス様にも負担が大きいです! 確かに状況は有利になるかもしれませんが……!」 「……いいよ。 ルイン、まだ回復薬はあるんでしょ?」 「ええ、少しなら」 「アル、私は直接戦うなんてできないから……みんなの力になれるなら、なんだってやるよ」 ルインの返答を受けると、にこっと微笑んみながらそう口にし、アルの顔を覗くアリス。 ……そんな表情を見せられて、それ以上行動を制止するような意思は、彼女の中に出てくることはなかった。 人質という理由があったとはいえ、一度は彼らの前に立ちふさがった身。彼女なりの、その償いのつもりなのかもしれない。 「――悪魔の眷属たる52の騎士よ その身をもって、我が戦友に我が意思と力を伝えよ――」 再び目を閉じて、手に握るトランプケースを開くアリス。 その中に収められていたカードはこの時点で完全に修復され、その周囲を舞うかのように展開する。 だが、今度はそれらが兵士として姿を変えることは無く、少しの間アリスの周りを舞った後に、ホール内の各所で戦っている仲間達の下へと飛んでいく。 「――なんだ……?」 そして、それらはそれぞれ向かった先の味方の背に溶け込むようにして消えていき、彼らのその場所に、それぞれ溶け込んだカードに刻まれていたマークが浮かび上がる。 ……同時に、彼らはいままで一度たりとも感じたことの無い、奇妙な感覚を感じ始めていた。 「……後ろっ…!」 半径にして、10M程度だろうか? 先程のルインの解説からくるアリスと比べればごく狭い範囲ではあるが、その領域内で何が起こっているのか、視界が届かない範囲の情報も、頭の中に直接流れ込んでくるかのように把握できている。 「これはっ……能力の共有!?」 「アリスのトランプは兵士であると同時に、それを動かす彼女のメンタルを通すためのアンテナでもある……それを利用した、能力の”擬似譲渡”よ」 その間も、ルインはあくまで冷静に現在の状況を説明する。 最初から力の正体を知る者と知らない者……それによる状況の変化に対する適応力の差は、歴然のようだった。 ……加えて言えば、『A』がブレイブマスタータイプでスピード、『J』がパラディンナイトタイプで防御力……など、付加されたカードの性質事に、ごく小さな影響ではあるが、それぞれのステータスが強化されているようだった。 「……つくづくとんでもない子だな……直接戦えなくても、補助能力の次元が違いすぎる」 「それでも、30人近くに影響を与えてるんじゃ、効果はあまり長くは持たないと思うわ。 この状態が続いている内に、一気にいくわよ!」 「ああ、了解だ!!」 そこまで確認して、ルインとレオンは散開し、それぞれ違うエリアへと飛ぶ。 味方全体も、突然の補助効果で一瞬戸惑ったような様子を見せていたが、それぞれの動きは直前よりも確実に向上していた。 これならば、大丈夫だろう……そう思った時…… 一瞬、部屋の中央部からまぶしいまでの光が放たれたかと思うと、その直後、轟音を鳴らしつつ極太のレーザーが ホールの壁を直撃する。 「なっ……」 運が良かったのだろうか、その射線上にこちらの味方はおらず、一部の機械兵が吹き飛んだだけだった。 ……それでも、この場にいる誰もが見たことの無い大出力の砲撃。 一瞬こちらの思考を奪う程度の影響は、確実に与えられていた。

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