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XW10-B:インターミッション」(2008/03/18 (火) 23:30:38) の最新版変更点

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「……キャプチャーした物をメールで送れるなんて、初耳だよ」 「最初のメールの説明に書いてなかったから仕方ないよ。 まあ、『データ』化して持ち歩くわけだから、データを転送できるメール添付ができたってことだよね」 その後、エンリケの車で一足先にティールの家にたどり着いたクリア達は、その後少し経ってから帰ってきたティールとその一行を向かえ、リビングでソファや床に直接など思い思いの場所に腰かけて、とりあえず会議の形だけは整っていた。 大分とフランクな雰囲気なのは、まぁメンバーは学生がメインということの表れなのだろう。 ……ちなみに、メール転送は普通は送った側にもデータは残るものだが、キャプチャーした物質を送る際は文字通りの『転送』で、送り手の方には転送した物質は残らないのが使い方のポイントかもしれない。 「……さて、と。 雑談はこのへんにして早速本題にいきたいところだけど……改めて、今のメンバー確認しておこうか」 「そうね……っていうか、なんかティールのチーム増えてない? 私達の誘いは断っといて……」 エルナのその一言は、学校で彼女に出会った全員が思ったことだった。 あの後ティールは、宣言通り空也と共に校内を探索していたのだが、その時に何人かと出会ってそのまま行動を共にしていたという事なのだが…… やはり、一度誘って断られた後だけに、どこか納得はいかない様子だった。 「いや、私は一人っきりでどうしようもなかったと言うのもあるからのぉ……正直、見つけてくれて助かったのじゃ」 「私も、礼拝堂で誰か来るのを隠れて待ってましたから……別行動なんて、恐くて……」 と言って、ソファでお茶を口にするエミリアとリスティ。 片方はちょっとした不幸を笑いとばしながら、もう片方はどこか脅えたような様子で小さくなっていたが、どちらも一人きりで――いわゆるダンジョン化した校内に放り出されていたのは変わり無い。 それで笑ったり泣いたりするのは、性格が出ているのかもしれない。 「ま、そういうこと。 そっちのメンバーは、クリアとエルナとイルは、メンバーとしては変わってないね」 「うん。 あ、でもセオとエルンストが……」 「それはさっき電話で聞いたけど……まぁ、セオについては連絡取りながら、合流できるタイミングを見るしかないか」 とりあえず、この後も多少話は脱線しつつもどうにか現在のメンバー構成を確認していくティール。 中学一年というこの中ではもっとも歳下の人間ながら、この比較的騒がしい面々をうまく取りまとめているあたり、人を纏める才覚は確かなものだとうかがえる。 「さて、と。 それじゃ次は……」 「ふぁ…… なんか騒がしいけど、誰か来てるの?」 そして、メンバーの確認も終えて次の話に移ろうかと言うそのタイミングで、奥の部屋からどこか寝惚けたような声を出しながら現れる女性が一人。 彼女は、クリア達にとってもそれなりに馴染み深い仲の一人―― 「レイス!? お主も来ておったのか……」 隣町にある大学の薬学科所属。 そしてエミリアと、エミリアの恋人であるディンとは幼馴染の関係にある女性。 普段は大学の学生寮に住んでいるのであまりこちらまで来る事は少なくなっていた、ということもあり、この場にいる事はそれなりに珍しいことだった。 「あらエミィ、おはよ。 ……でもみんなしてえらいコトに巻き込まれたものね。 まぁ、不可抗力だし仕方ないかな」 「ていうか、レイスちゃんいつからこの家に……?」 少なくとも、『寝ていた』ということは自分達がここに辿りつく随分前からいたことになる。 というか、彼女が家にいるならわざわざティールがクリアにカギを渡す必要も無かった気もしてくるのだが、誰もその事に気付くような様子は無かった。 「3時間ほど前かな。 いきなりバグに襲われた時にティールに助けられて、私の変身は戦闘能力ゼロだから、うろつくよりここにいたほうがいいって言われてね」 「……ちょっとまって、今なんて言った?」 一瞬、聞き捨てならない一言が耳に入った気がして、クリアはレイスを制止し、改めてその口から出た言葉を問い直した。 なんだか、携帯にあるシステムの意味を根底から崩してしまうような一言が、あったような気がしたのだ。 「うろつくよりここにいたほうが――」 「もう一つ前!」 「……あ、変身に戦闘能力がゼロって方?」 レイスそう口にするとコクリ、とティールと空也を除く全員が頷く。 空也も何も言わないという事は、彼もその事情と意味を知っているのだろう。 「口で説明するより見せた方が早いね。 ティール、何か材料になりそーなのある?」 「あ、さっき雑木林で見つけたバグが薬草っぽいの落としたから、これでいいかな?」 「んー、ナイス。 あと水かな」 「はい、用意してあるよ」 「おお、さっすが♪ 空気読んでるね」 なにやら妙に手際よく話を進行させる二人だったが、周囲で見ているだけという状況を強いられている一同にとっては、その行動の意味は全くもって理解不能だった。 レイスの専攻である薬学を考えると、ティールが取り出した薬草っぽい草と水で何かを作ろうとしているようには見えるのだが…… それが、変身と何のつながりがあるのかは、全く見えてこない。 「さて……」 ―SKILL TRACE SYSTEM ON. TIME COUNT 120sec ・・・・・・START― この場にいる者達ならば、もう何度か目にした光景。 時には自分が、時には誰かが……戦うための力を得るために、光に包まれる。 だが今はそんな必要も無く、それはつまり変身する意味は無いように思わされるのだが…… その先にレイスの先程の一言の意味があると信じて、誰も口出しすることなくその光景を見つめていた。 「じゃ、いくよ!」 光の中から現れたのは、白衣のような上着に身を包み、目にはモノクル、腰のベルトにはいくつかの試験管をぶらさげた、いかにもな化学者を思わせる姿のレイス。 そして景気のいい掛け声と共にテーブルの上の草や水に手をかざし―― 【クリエイション!】 そう一言、宣言するように口にした。 「!?」 その直後、目の前にあったそれらが光に包まれ混ざり合い、数秒ほどそのまま発光しつづけたかと思うと…… 突如急速に光がおさまっていき、その後にはエメラルド色の液体が、水が入っていたはずのコップにちゃぷんと溜まっていた。 また、その横にあったはずの薬草は忽然と姿を消している。 「『クリエイター系』能力者……って、私の解説メールには書いてたよ。 この世界で集められるいろいろな物を合成して、別の物を創り出す能力が私のスキルトレースの内容みたい」 「……なるほど、戦闘能力がないってそう言う意味だったんだ……」 まったく戦えない代わりに、前線で戦う人達を支援する道具を作る事が出来る。 ……そういう立ち位置にいる、ということなのだろう。 「でもさ……言っていい?」 「うん、言いたい事は分かってるよ?」 「…………でも言わせて、それって、どこの錬金術師……?」 「気にしちゃ負けだよ」 てへ♪ とでも言うかのように笑顔を見せるレイス。 言いたい事を言ってすっきりできたのかどうかは分からないが、クリアはそれ以上はつっこむ事も無く口を閉じていた。 「普通に考えて時間のかかる調合を二分以内なんてムリがあるし、この形が苦肉の策だったんだろうね……」 「……ティール、何か言ったかの?」 「ううん、何も。 ……それよりレイスの事も説明したし、状況確認続けるよ」 エミリアの問いかけに、特に迷うような様子も無く答えたティール。 直前に口にしていた一言は、誰の耳にも明確には入ってはいなかったようだ。 それがいいのかわるいのかは、おそらく彼女にしか分からない事なのだろう。 「今は合流待ちのセオと休憩中のエルンストも含めると、連絡が取り合える相手もそれなりの人数は確保できてる。 これならいくつかの部隊で分けても問題ないかな」 「そうね。 ……って、空也と二人だけで行動してた子のセリフじゃないんじゃないの?」 「まぁ、立ち回りはそれなりに考えながら動いてたからね」 エルナのつっこみも軽く受け流し、ティールはさらに言葉を続ける。 「とりあえず、ここから先は私の家を活動拠点にしようと思う。 それなりに広いから仲間が増えても集まれるし、いざって時に集合場所をはっきりさせられるしね」 「うむ。 確かにそういった場所を確保するのは重要だ。 余裕があれば、他にそういった風に使える場所を捜しておくのもいいかもしれないな」 一部よくわかっていない者もいたようだが、とりあえずは納得した様子で、二人のその言葉に反対する言葉はなかった。 また、もしこの後にもクリエイター系の能力者と出会うような事があれば、とりあえず拠点となる家に移動させるべきだな、という意見もこの後に出されていたことをここに記しておこう。 まぁ、連れていって現地でアイテムを作って貰うという方法も考えられるが、やはり非戦闘の人間は前線に出すべきではないかもしれない。 「で、学校調べてて気付いた事だけど……やっぱり、中心部から一定距離のところで、そこから先には入れなくなってるみたい」 「……そっかぁ、やっぱりなんか怪しいね……」 「それと、校内は校外よりも強い敵が多い事かな。 さっきは運よく抜け出せたけど、もう少し戦力が整うか、力の扱いに慣れるまでは気をつけるべきかも」 「…………それだけ?」 「今入り込める範囲だとそんなものかな。 正直大した情報じゃないのは分かってるけど……万一、一人で踏み込むなんて事があったら、ね」 「……」 確かに、知ると知らないでは対応の仕方も変わってくるだろう。 それが周囲に伝わっただろう、と判断したのか、とりあえず少し申し訳無さそうな顔をしつつ、改めてティールは口を開いた。 「……あとは今の最大の問題の黒いもやだけど……はっきり言って正体不明。なんの情報も無いから考えるだけムダってところかな」 「……そう、ですね。 なんだか恐いです……」 「ま、ワールドマスターがアイツだとすれば……そろそろヒントでも送って来そうな気がするけど」 「……ティール?」 「大したことじゃないよ。 まぁとにかく……」 ―ぴろりーん― と、ティールが何かを言いかけたところで鳴るクリアの携帯。 その音は通話着信ではなく、メール着信。 この状況では通話の方が入力の手間もなく、確実にその場で連絡がつくと思うのだが…… 「みんなここにいるし、セオくんかエルンストくんかな?」 そう思いつつも、とりあえずメールの受信フォルダを開くクリア。 そして目に映ったアドレスは、推測したそのどちらのものでもなく…… 「……ワールドマスター!?」 『ぇええ!!?』 がたがたがた! と全員が音を立ててクリアの背後に回りこみ、そのメール画面を覗きこむ。 しかしただ一人、ティールだけは落ち着いた様子でいたが、何かふに落ちないような表情をしていたのには……全員がメールに集中していたためか、誰も気が付く事は無かった。 ---- こんにちわ。 そろそろ皆さんもこの世界における立ち回りや、能力の扱いに慣れてきた頃合いだと思います。 また、見たところそれなりの人数も集まり始めたようなので、今後の集団行動にも変化を必要とされる頃でしょう そのためというわけではありませんが、あなたがたに大型のバグの討伐をお願いしたいと思います。 場所は町の東部にある水族館『ヴァーグパーク』内部、北西部にある植物園『シュヴァル』内部です。 ――運が悪ければ、バグの肥大化が進行し、この世界におけるバグの侵食が大きくなりますので、貴方がたが『出口』を捜す際に障害がより大きくなるでしょう。 こちらでもバグの消去処理を行っていますが、現在の状況では不可能でした。 ですが、多少の弱体化をさせることには成功しましたので、戦闘による消滅は可能だと考えられます。 重ね重ね事件に巻き込んでしまい、申し訳ありません。 健闘を祈ります。 ---- 「勝手な事言うな! ……って言いたいところだけど……これって行かなきゃまずいのかな?」 文面だけを見れば、この”ワールドマスターを名乗る誰か”にとっても予想していなかった事態だという事は分かる。 また、さっきの黒いもやもこの『大型のバグ』の影響によるものであると推測も出来る。 『大型のバグの侵食』で、それまで雑魚的な強さしか備えていなかった相手も、より強くなったり数が増えたりと、どのような事態にしろ、悪化する予想しかつかない。 「……だろうね。 読む限りだと時間をかけるとあまりよくなさそうだから……チームを二つに分けて行くべきだね」 水族館と植物園。 それぞれ文面にあったとおり、町の東の端と北西の端にある建物で、片方をなんとかしてからもう片方に向かうとなると、車で移動してもかなりの時間を使う事になるだろう。 全員、ティールの提案に賛成のようだった。 「じゃあ、早速グループ分けしようか」 全員の意思を確認して、相談を始めるように促すティール。 クリアもそれに参加しようとテーブルの方へと少し身体を寄せた…… が、その直前。 突然ティールに手を引かれ、リビングから少し離れた廊下まで連れられていってしまった。 「ティールちゃん、いきなりどうしたの。 チーム分け相談しようって言ったのあなたじゃ……」 「……ちょっと、スキルトレースで教えておきたい機能があってね。 多分これも隠し機能だから、気付いて無いと思うし」 クリアの言葉を制止して、自分の携帯を取り出すティール。 話を聞く時は聞くことにのみ徹しているくせに、自分が話す時は有無を言わせず話を進める。 そんな極端な二面を持ち合わせていながら、うまく切りかえているので周囲からもあまり嫌な顔はされないという彼女。 まぁ、慣れない者は多少疲れされられることもあるかもしれないが、クリアはいい加減なれてきているのか、この場は黙って話を聞く事に決めた。 「簡単に説明すると、何回分かのXPをまとめて消費して、回数分の時間……つまり、消費数×2分変身してられるようにする隠し機能なんだけど……」 そう言いながらカチカチと携帯を操作し、スキルトレースの起動確認画面を出すティール。 ここで決定キーを押せばシステムが発動し、それぞれの携帯に記録された能力を2分間使えるようになるのだが…… 「この画面で、まず『♯』を押して、次に2を押して、その後に決定キーを押すと……」 「……2……もしかして、それで2回分の4分変身してられるって事?」 「ご名答。 ♯の後に使用したい回数分のキーを押してから決定すると、溜まっていればその分を纏めて使う事が出来る。 わざわざ2分ごとに5分待たなくてもね」 それだけ言うと、OFFキーを押して起動確認をキャンセルするティール。 そのままパタン、と携帯を閉じると、微笑むような表情を浮かべてクリアの方へと顔を向け直した。 「…………いつ気付いてたの?」 「あなた達と別れた後。 聖堂に行ってリスティを見つけた辺りかな、色々試しておこうと思っていじってたら、見つけた」 「……そっか。 でも、それならすぐに教えておいて欲しかったなぁ、電話通じるんだから」 もし知っていれば、ホームセンターに行く途中で、みんながタイムアウトして変身できなくなる、という事態も避けられたのに。 あの時は自分も変身しようとしたのを制止され、それでふみとどまったからどうにかなったわけで…… そんな事を思いながら、クリアはその一言を口にしていた。 「まだみんな戦闘慣れしてないと思って。 この機能、うかつに使うと危険だし」 「……え? 危険って……」 急に神妙な顔つきになり、貫くような鋭い目をクリアに向けるティール。 彼女がこの表情をする時は、本当に危険な事がありうる時…… それこそ、一歩間違えれば死にかねないような、危険なコトを制止する時に見せる表情だった。 「すこし考えてみなよ。 変身してる時の私達は、現実的に考えて人間の限界を超えた力を使ってるでしょ?」 「……それは確かに……」 衝撃波を飛ばしたり、ものすごいスピードで動き回ったり…… ゲームやらマンガの中ではよくありそうな能力だけど、確かに現実で考えるとありえないことばかりだ。 「……まぁ、すむ世界が違えばそれも普通なんだろうけど……っていうか『向こう』の私達がまさにそうなんだし」 「『向こう』?」 「ああ、こっちの話。 ……とにかく、人間の限界を超えた力を、なんの反動も無く扱えるという事そのものが考え違いだよ」 そこまで言うと、ふぅ、となんとも言えない表情で溜息をつく。 ……おそらく、彼女の言葉における『見つけた』というのは『使ってみた』ということでもあるのだろう。 それを思い出しているのかもしれない。 「……えっと、使うとどうなるの? そっちを知らないと、教えて貰った意味が……」 忠告してくれたのはありがたいが、何が起こるかわからないのではそれこそ使うに使えない。 しかしその内容さえ分かっていれば、多少の覚悟をした上でその機能は使う事が出来るかもしれないのだ。 「あー……うん、多分これはクリアとか私……あと空也みたいな戦士型だけだと思うけど……疲労で身動き取れなくなるよ」 「…………疲労って、筋肉痛とか?」 「それもあるけど、それ以前に全然力が入らないんだよ。 リスティが治癒型の僧侶系だったから治して貰ったけど、それでもしばらくダメージが残って思い通りに身体が動かない感じ……かな」 「うわ、それ辛いね……」 「しかも、次の変身までの空き時間も回数分だから、2回分使うと10分は使えなくなるみたい」 「…………」 肉体的な反動と、変身できない時間の延長。 確かに、よく考えて使わないと後々大変なコトになりかねない。 ……しかも2回分でソレということは、3回4回を纏めて使うとどんなことになるのやら…… 「あとこれは予測だけど、魔法使い型でコレやると、精神疲労で眠っちゃうんじゃないかと睨んでるよ。 しかもそう簡単に起きないくらいぐっすりと」 「……それは困るなぁ、寝られるとだれかが運ばなきゃいけなくなるし……」 しかもその間に新手のバグに襲われたら、それこそ対応が大変な事になる。 『戦闘になれない間は知らないほうがいい』というティールの言葉は、的確に注意点をついているということだろう。 「でも、なんで私だけ?」 「……ワールドマスターが、他でもないあなたにメールを送ってきた。 それが理由」 「…………」 「あの人のやる事には何らかの意味がある。 ああいう内容なら全員に同時送信すればいいのにあえてクリアにだけ送ってきた」 「……ちょっとティール。 もしかして……この『ワールドマスター』のコト、何か知ってるんじゃ……?」 「まぁ、多少はね」 特に悪びれた様子も無く、あっけらかんとした表情で答えるティール。 だが、その裏でいったい何を考えているのかが、全く持って読む事が出来ない。 聞きたい事は山ほどあるはずなのに、なぜか開かない自分の口。 ……ティールはそんな様子を目にして、最後に”ふふっ”と笑うと、そのまま玄関の方へと足を進め出した。 「ち、ちょっとティール!? 一人でどこ行く気!!?」 「ゴメン。 用が済んだら、私も加勢に行くから」 クリアは肩を掴もうと手を伸ばすが、ティールはそれをいとも簡単にすりぬけて先へと進む。 そして最後に、『大丈夫、ちょっと調べる事があるだけだから』と口にすると、微笑んだまま玄関の向こうへと消えていってしまった。 「ちょっとクリア、ティール。 あなた達がいないとチーム決められ無いじゃないの。 はやく戻ってきなさい」 「…………うん、今戻る」 リビングから呼びかけるエルナの声に、どこか気が抜けたような声で答えるクリア。 ワールドマスターの事を『多少は』知っていると言ったティール。 それが何を意味するのかが分からないが、彼女が言った『用』がなんなのかは……きっと、その事が関係しているのだと、根拠も無く思っていた。 ---- ・パーティキャラ残りXP ※イベント発生につき、PTを二つに分けてください※ 参考までに変身後ジョブを記載しておきます |クリア|5回|ブレイブマスター| |エルナ|5回|カーディアルト(攻撃型)| |イル|4回|スナイパー| |トート|8回|ブレイザー| |エンリケ|5回|ベルセルク| |シータ|4回|フルレンジアタッカー| |空也|5回|ブレイブマスター| |エミリア|8回|マージナル(氷雷メイン+風・土)| |リスティ|8回|カーディアルト(回復&補助型)| ・連絡可能の別行動キャラ ティール セオ ・拠点(ティールの家)待機クリエイター ※クリエイションレベルが高い程、それに関係するアイテムでいいアイテムを作る事が出来ます レイス 【クリエイションレベル(最大5)】(薬:4 爆弾:3 鍛冶:2 機械:1) ・連絡可能の戦線離脱キャラ エルンスト
「……キャプチャーした物をメールで送れるなんて、初耳だよ」 「最初のメールの説明に書いてなかったから仕方ないよ。 まあ、『データ』化して持ち歩くわけだから、データを転送できるメール添付ができたってことだよね」 その後、エンリケの車で一足先にティールの家にたどり着いたクリア達は、その後少し経ってから帰ってきたティールとその一行を向かえ、リビングでソファや床に直接など思い思いの場所に腰かけて、とりあえず会議の形だけは整っていた。 大分とフランクな雰囲気なのは、まぁメンバーは学生がメインということの表れなのだろう。 ……ちなみに、メール転送は普通は送った側にもデータは残るものだが、キャプチャーした物質を送る際は文字通りの『転送』で、送り手の方には転送した物質は残らないのが使い方のポイントかもしれない。 「……さて、と。 雑談はこのへんにして早速本題にいきたいところだけど……改めて、今のメンバー確認しておこうか」 「そうね……っていうか、なんかティールのチーム増えてない? 私達の誘いは断っといて……」 エルナのその一言は、学校で彼女に出会った全員が思ったことだった。 あの後ティールは、宣言通り空也と共に校内を探索していたのだが、その時に何人かと出会ってそのまま行動を共にしていたという事なのだが…… やはり、一度誘って断られた後だけに、どこか納得はいかない様子だった。 「いや、私は一人っきりでどうしようもなかったと言うのもあるからのぉ……正直、見つけてくれて助かったのじゃ」 「私も、礼拝堂で誰か来るのを隠れて待ってましたから……別行動なんて、恐くて……」 と言って、ソファでお茶を口にするエミリアとリスティ。 片方はちょっとした不幸を笑いとばしながら、もう片方はどこか脅えたような様子で小さくなっていたが、どちらも一人きりで――いわゆるダンジョン化した校内に放り出されていたのは変わり無い。 それで笑ったり泣いたりするのは、性格が出ているのかもしれない。 「ま、そういうこと。 そっちのメンバーは、クリアとエルナとイルは、メンバーとしては変わってないね」 「うん。 あ、でもセオとエルンストが……」 「それはさっき電話で聞いたけど……まぁ、セオについては連絡取りながら、合流できるタイミングを見るしかないか」 とりあえず、この後も多少話は脱線しつつもどうにか現在のメンバー構成を確認していくティール。 中学一年というこの中ではもっとも歳下の人間ながら、この比較的騒がしい面々をうまく取りまとめているあたり、人を纏める才覚は確かなものだとうかがえる。 「さて、と。 それじゃ次は……」 「ふぁ…… なんか騒がしいけど、誰か来てるの?」 そして、メンバーの確認も終えて次の話に移ろうかと言うそのタイミングで、奥の部屋からどこか寝惚けたような声を出しながら現れる女性が一人。 彼女は、クリア達にとってもそれなりに馴染み深い仲の一人―― 「レイス!? お主も来ておったのか……」 隣町にある大学の薬学科所属。 そしてエミリアと、エミリアの恋人であるディンとは幼馴染の関係にある女性。 普段は大学の学生寮に住んでいるのであまりこちらまで来る事は少なくなっていた、ということもあり、この場にいる事はそれなりに珍しいことだった。 「あらエミィ、おはよ。 ……でもみんなしてえらいコトに巻き込まれたものね。 まぁ、不可抗力だし仕方ないかな」 「ていうか、レイスちゃんいつからこの家に……?」 少なくとも、『寝ていた』ということは自分達がここに辿りつく随分前からいたことになる。 というか、彼女が家にいるならわざわざティールがクリアにカギを渡す必要も無かった気もしてくるのだが、誰もその事に気付くような様子は無かった。 「3時間ほど前かな。 いきなりバグに襲われた時にティールに助けられて、私の変身は戦闘能力ゼロだから、うろつくよりここにいたほうがいいって言われてね」 「……ちょっとまって、今なんて言った?」 一瞬、聞き捨てならない一言が耳に入った気がして、クリアはレイスを制止し、改めてその口から出た言葉を問い直した。 なんだか、携帯にあるシステムの意味を根底から崩してしまうような一言が、あったような気がしたのだ。 「うろつくよりここにいたほうが――」 「もう一つ前!」 「……あ、変身に戦闘能力がゼロって方?」 レイスそう口にするとコクリ、とティールと空也を除く全員が頷く。 空也も何も言わないという事は、彼もその事情と意味を知っているのだろう。 「口で説明するより見せた方が早いね。 ティール、何か材料になりそーなのある?」 「あ、さっき雑木林で見つけたバグが薬草っぽいの落としたから、これでいいかな?」 「んー、ナイス。 あと水かな」 「はい、用意してあるよ」 「おお、さっすが♪ 空気読んでるね」 なにやら妙に手際よく話を進行させる二人だったが、周囲で見ているだけという状況を強いられている一同にとっては、その行動の意味は全くもって理解不能だった。 レイスの専攻である薬学を考えると、ティールが取り出した薬草っぽい草と水で何かを作ろうとしているようには見えるのだが…… それが、変身と何のつながりがあるのかは、全く見えてこない。 「さて……」 ―SKILL TRACE SYSTEM ON. TIME COUNT 120sec ・・・・・・START― この場にいる者達ならば、もう何度か目にした光景。 時には自分が、時には誰かが……戦うための力を得るために、光に包まれる。 だが今はそんな必要も無く、それはつまり変身する意味は無いように思わされるのだが…… その先にレイスの先程の一言の意味があると信じて、誰も口出しすることなくその光景を見つめていた。 「じゃ、いくよ!」 光の中から現れたのは、白衣のような上着に身を包み、目にはモノクル、腰のベルトにはいくつかの試験管をぶらさげた、いかにもな化学者を思わせる姿のレイス。 そして景気のいい掛け声と共にテーブルの上の草や水に手をかざし―― 【クリエイション!】 そう一言、宣言するように口にした。 「!?」 その直後、目の前にあったそれらが光に包まれ混ざり合い、数秒ほどそのまま発光しつづけたかと思うと…… 突如急速に光がおさまっていき、その後にはエメラルド色の液体が、水が入っていたはずのコップにちゃぷんと溜まっていた。 また、その横にあったはずの薬草は忽然と姿を消している。 「『クリエイター系』能力者……って、私の解説メールには書いてたよ。 この世界で集められるいろいろな物を合成して、別の物を創り出す能力が私のスキルトレースの内容みたい」 「……なるほど、戦闘能力がないってそう言う意味だったんだ……」 まったく戦えない代わりに、前線で戦う人達を支援する道具を作る事が出来る。 ……そういう立ち位置にいる、ということなのだろう。 「でもさ……言っていい?」 「うん、言いたい事は分かってるよ?」 「…………でも言わせて、それって、どこの錬金術師……?」 「気にしちゃ負けだよ」 てへ♪ とでも言うかのように笑顔を見せるレイス。 言いたい事を言ってすっきりできたのかどうかは分からないが、クリアはそれ以上はつっこむ事も無く口を閉じていた。 「普通に考えて時間のかかる調合を二分以内なんてムリがあるし、この形が苦肉の策だったんだろうね……」 「……ティール、何か言ったかの?」 「ううん、何も。 ……それよりレイスの事も説明したし、状況確認続けるよ」 エミリアの問いかけに、特に迷うような様子も無く答えたティール。 直前に口にしていた一言は、誰の耳にも明確には入ってはいなかったようだ。 それがいいのかわるいのかは、おそらく彼女にしか分からない事なのだろう。 「今は合流待ちのセオと休憩中のエルンストも含めると、連絡が取り合える相手もそれなりの人数は確保できてる。 これならいくつかの部隊で分けても問題ないかな」 「そうね。 ……って、空也と二人だけで行動してた子のセリフじゃないんじゃないの?」 「まぁ、立ち回りはそれなりに考えながら動いてたからね」 エルナのつっこみも軽く受け流し、ティールはさらに言葉を続ける。 「とりあえず、ここから先は私の家を活動拠点にしようと思う。 それなりに広いから仲間が増えても集まれるし、いざって時に集合場所をはっきりさせられるしね」 「うむ。 確かにそういった場所を確保するのは重要だ。 余裕があれば、他にそういった風に使える場所を捜しておくのもいいかもしれないな」 一部よくわかっていない者もいたようだが、とりあえずは納得した様子で、二人のその言葉に反対する言葉はなかった。 また、もしこの後にもクリエイター系の能力者と出会うような事があれば、とりあえず拠点となる家に移動させるべきだな、という意見もこの後に出されていたことをここに記しておこう。 まぁ、連れていって現地でアイテムを作って貰うという方法も考えられるが、やはり非戦闘の人間は前線に出すべきではないかもしれない。 「で、学校調べてて気付いた事だけど……やっぱり、中心部から一定距離のところで、そこから先には入れなくなってるみたい」 「……そっかぁ、やっぱりなんか怪しいね……」 「それと、校内は校外よりも強い敵が多い事かな。 さっきは運よく抜け出せたけど、もう少し戦力が整うか、力の扱いに慣れるまでは気をつけるべきかも」 「…………それだけ?」 「今入り込める範囲だとそんなものかな。 正直大した情報じゃないのは分かってるけど……万一、一人で踏み込むなんて事があったら、ね」 「……」 確かに、知ると知らないでは対応の仕方も変わってくるだろう。 それが周囲に伝わっただろう、と判断したのか、とりあえず少し申し訳無さそうな顔をしつつ、改めてティールは口を開いた。 「……あとは今の最大の問題の黒いもやだけど……はっきり言って正体不明。なんの情報も無いから考えるだけムダってところかな」 「……そう、ですね。 なんだか恐いです……」 「ま、ワールドマスターがアイツだとすれば……そろそろヒントでも送って来そうな気がするけど」 「……ティール?」 「大したことじゃないよ。 まぁとにかく……」 ―ぴろりーん― と、ティールが何かを言いかけたところで鳴るクリアの携帯。 その音は通話着信ではなく、メール着信。 この状況では通話の方が入力の手間もなく、確実にその場で連絡がつくと思うのだが…… 「みんなここにいるし、セオくんかエルンストくんかな?」 そう思いつつも、とりあえずメールの受信フォルダを開くクリア。 そして目に映ったアドレスは、推測したそのどちらのものでもなく…… 「……ワールドマスター!?」 『ぇええ!!?』 がたがたがた! と全員が音を立ててクリアの背後に回りこみ、そのメール画面を覗きこむ。 しかしただ一人、ティールだけは落ち着いた様子でいたが、何かふに落ちないような表情をしていたのには……全員がメールに集中していたためか、誰も気が付く事は無かった。 ---- こんにちわ。 そろそろ皆さんもこの世界における立ち回りや、能力の扱いに慣れてきた頃合いだと思います。 また、見たところそれなりの人数も集まり始めたようなので、今後の集団行動にも変化を必要とされる頃でしょう そのためというわけではありませんが、あなたがたに大型のバグの討伐をお願いしたいと思います。 場所は町の東部にある水族館『ヴァーグパーク』内部、北西部にある植物園『シュヴァル』内部です。 ――運が悪ければ、バグの肥大化が進行し、この世界におけるバグの侵食が大きくなりますので、貴方がたが『出口』を捜す際に障害がより大きくなるでしょう。 こちらでもバグの消去処理を行っていますが、現在の状況では不可能でした。 ですが、多少の弱体化をさせることには成功しましたので、戦闘による消滅は可能だと考えられます。 重ね重ね事件に巻き込んでしまい、申し訳ありません。 健闘を祈ります。 ---- 「勝手な事言うな! ……って言いたいところだけど……これって行かなきゃまずいのかな?」 文面だけを見れば、この”ワールドマスターを名乗る誰か”にとっても予想していなかった事態だという事は分かる。 また、さっきの黒いもやもこの『大型のバグ』の影響によるものであると推測も出来る。 『大型のバグの侵食』で、それまで雑魚的な強さしか備えていなかった相手も、より強くなったり数が増えたりと、どのような事態にしろ、悪化する予想しかつかない。 「……だろうね。 読む限りだと時間をかけるとあまりよくなさそうだから……チームを二つに分けて行くべきだね」 水族館と植物園。 それぞれ文面にあったとおり、町の東の端と北西の端にある建物で、片方をなんとかしてからもう片方に向かうとなると、車で移動してもかなりの時間を使う事になるだろう。 全員、ティールの提案に賛成のようだった。 「じゃあ、早速グループ分けしようか」 全員の意思を確認して、相談を始めるように促すティール。 クリアもそれに参加しようとテーブルの方へと少し身体を寄せた…… が、その直前。 突然ティールに手を引かれ、リビングから少し離れた廊下まで連れられていってしまった。 「ティールちゃん、いきなりどうしたの。 チーム分け相談しようって言ったのあなたじゃ……」 「……ちょっと、スキルトレースで教えておきたい機能があってね。 多分これも隠し機能だから、気付いて無いと思うし」 クリアの言葉を制止して、自分の携帯を取り出すティール。 話を聞く時は聞くことにのみ徹しているくせに、自分が話す時は有無を言わせず話を進める。 そんな極端な二面を持ち合わせていながら、うまく切りかえているので周囲からもあまり嫌な顔はされないという彼女。 まぁ、慣れない者は多少疲れされられることもあるかもしれないが、クリアはいい加減なれてきているのか、この場は黙って話を聞く事に決めた。 「簡単に説明すると、何回分かのXPをまとめて消費して、回数分の時間……つまり、消費数×2分変身してられるようにする隠し機能なんだけど……」 そう言いながらカチカチと携帯を操作し、スキルトレースの起動確認画面を出すティール。 ここで決定キーを押せばシステムが発動し、それぞれの携帯に記録された能力を2分間使えるようになるのだが…… 「この画面で、まず『♯』を押して、次に2を押して、その後に決定キーを押すと……」 「……2……もしかして、それで2回分の4分変身してられるって事?」 「ご名答。 ♯の後に使用したい回数分のキーを押してから決定すると、溜まっていればその分を纏めて使う事が出来る。 わざわざ2分ごとに5分待たなくてもね」 それだけ言うと、OFFキーを押して起動確認をキャンセルするティール。 そのままパタン、と携帯を閉じると、微笑むような表情を浮かべてクリアの方へと顔を向け直した。 「…………いつ気付いてたの?」 「あなた達と別れた後。 聖堂に行ってリスティを見つけた辺りかな、色々試しておこうと思っていじってたら、見つけた」 「……そっか。 でも、それならすぐに教えておいて欲しかったなぁ、電話通じるんだから」 もし知っていれば、ホームセンターに行く途中で、みんながタイムアウトして変身できなくなる、という事態も避けられたのに。 あの時は自分も変身しようとしたのを制止され、それでふみとどまったからどうにかなったわけで…… そんな事を思いながら、クリアはその一言を口にしていた。 「まだみんな戦闘慣れしてないと思って。 この機能、うかつに使うと危険だし」 「……え? 危険って……」 急に神妙な顔つきになり、貫くような鋭い目をクリアに向けるティール。 彼女がこの表情をする時は、本当に危険な事がありうる時…… それこそ、一歩間違えれば死にかねないような、危険なコトを制止する時に見せる表情だった。 「すこし考えてみなよ。 変身してる時の私達は、現実的に考えて人間の限界を超えた力を使ってるでしょ?」 「……それは確かに……」 衝撃波を飛ばしたり、ものすごいスピードで動き回ったり…… ゲームやらマンガの中ではよくありそうな能力だけど、確かに現実で考えるとありえないことばかりだ。 「……まぁ、すむ世界が違えばそれも普通なんだろうけど……っていうか『向こう』の私達がまさにそうなんだし」 「『向こう』?」 「ああ、こっちの話。 ……とにかく、人間の限界を超えた力を、なんの反動も無く扱えるという事そのものが考え違いだよ」 そこまで言うと、ふぅ、となんとも言えない表情で溜息をつく。 ……おそらく、彼女の言葉における『見つけた』というのは『使ってみた』ということでもあるのだろう。 それを思い出しているのかもしれない。 「……えっと、使うとどうなるの? そっちを知らないと、教えて貰った意味が……」 忠告してくれたのはありがたいが、何が起こるかわからないのではそれこそ使うに使えない。 しかしその内容さえ分かっていれば、多少の覚悟をした上でその機能は使う事が出来るかもしれないのだ。 「あー……うん、多分これはクリアとか私……あと空也みたいな戦士型だけだと思うけど……疲労で身動き取れなくなるよ」 「…………疲労って、筋肉痛とか?」 「それもあるけど、それ以前に全然力が入らないんだよ。 リスティが治癒型の僧侶系だったから治して貰ったけど、それでもしばらくダメージが残って思い通りに身体が動かない感じ……かな」 「うわ、それ辛いね……」 「しかも、次の変身までの空き時間も回数分だから、2回分使うと10分は使えなくなるみたい」 「…………」 肉体的な反動と、変身できない時間の延長。 確かに、よく考えて使わないと後々大変なコトになりかねない。 ……しかも2回分でソレということは、3回4回を纏めて使うとどんなことになるのやら…… 「あとこれは予測だけど、魔法使い型でコレやると、精神疲労で眠っちゃうんじゃないかと睨んでるよ。 しかもそう簡単に起きないくらいぐっすりと」 「……それは困るなぁ、寝られるとだれかが運ばなきゃいけなくなるし……」 しかもその間に新手のバグに襲われたら、それこそ対応が大変な事になる。 『戦闘になれない間は知らないほうがいい』というティールの言葉は、的確に注意点をついているということだろう。 「でも、なんで私だけ?」 「……ワールドマスターが、他でもないあなたにメールを送ってきた。 それが理由」 「…………」 「あの人のやる事には何らかの意味がある。 ああいう内容なら全員に同時送信すればいいのにあえてクリアにだけ送ってきた」 「……ちょっとティール。 もしかして……この『ワールドマスター』のコト、何か知ってるんじゃ……?」 「まぁ、多少はね」 特に悪びれた様子も無く、あっけらかんとした表情で答えるティール。 だが、その裏でいったい何を考えているのかが、全く持って読む事が出来ない。 聞きたい事は山ほどあるはずなのに、なぜか開かない自分の口。 ……ティールはそんな様子を目にして、最後に”ふふっ”と笑うと、そのまま玄関の方へと足を進め出した。 「ち、ちょっとティール!? 一人でどこ行く気!!?」 「ゴメン。 用が済んだら、私も加勢に行くから」 クリアは肩を掴もうと手を伸ばすが、ティールはそれをいとも簡単にすりぬけて先へと進む。 そして最後に、『大丈夫、ちょっと調べる事があるだけだから』と口にすると、微笑んだまま玄関の向こうへと消えていってしまった。 「ちょっとクリア、ティール。 あなた達がいないとチーム決められ無いじゃないの。 はやく戻ってきなさい」 「…………うん、今戻る」 リビングから呼びかけるエルナの声に、どこか気が抜けたような声で答えるクリア。 ワールドマスターの事を『多少は』知っていると言ったティール。 それが何を意味するのかが分からないが、彼女が言った『用』がなんなのかは……きっと、その事が関係しているのだと、根拠も無く思っていた。 ---- ・パーティキャラ残りXP ※イベント発生につき、PTを二つに分けてください※ 参考までに変身後ジョブを記載しておきます |クリア|5回|ブレイブマスター| |エルナ|5回|カーディアルト(攻撃型)| |イル|4回|スナイパー| |トート|8回|ブレイブマスター| |エンリケ|5回|ベルセルク| |シータ|4回|フルレンジアタッカー| |空也|5回|ブレイブマスター| |エミリア|8回|マージナル(氷雷メイン+風・土)| |リスティ|8回|カーディアルト(回復&補助型)| ・連絡可能の別行動キャラ ティール セオ ・拠点(ティールの家)待機クリエイター ※クリエイションレベルが高い程、それに関係するアイテムでいいアイテムを作る事が出来ます レイス 【クリエイションレベル(最大5)】(薬:4 爆弾:3 鍛冶:2 機械:1) ・連絡可能の戦線離脱キャラ エルンスト

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