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「AS03.一つの決着」(2008/12/14 (日) 21:33:35) の最新版変更点
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<p>カムシン―――シャマル率いる『黒船』と呼ばれるこの船の幹部の一人。<br />
それが今アインと二メートルほどの距離を置いて対峙している。<br />
「そこまでして戦いたい、と言うのか? お前は」<br />
アインと対峙しているのはカムシンで合って正確にはカムシンでない。<br />
βシリーズの一、β08-ドッペル・ゲンネ。<br />
対処となったものと同じ姿形、能力をほぼ完全にコピーする機械兵器だ。<br />
「シャマルにいわれてな、だからこんな姿なんだよ」<br />
「そうか…やはり奴の差し金か」<br />
「ククク…そういうことだ! さあ、おっぱじめようぜ!」</p>
<p>その言葉を皮切りに彼らは一気に距離を詰めあった。</p>
<p>「挨拶代わりにこいつを受け取れよ! そらよ!」<br />
「だが断るぞ…」<br />
カムシンの腕に装着された『パタ』と呼ばれる剣から放たれた衝撃波を、アインはとっさに</p>
<p>構え、素早い足裁きでそれをかわす。<br />
続けて突進からの鋭い突きをアインの武器である『ブレードナックル』の刃で受け止め、反</p>
<p>撃の一撃を繰り出すが、それは大きく後ろに裂けられる。<br />
「ふむ…幹部の器は伊達ではないと言うことだが…だが甘いな」<br />
その言葉を言い終え、アインは再度構えなおす。<br />
「うるせえ…貴様に何が判るって言うんだよ!」<br />
そして、突きと斬りを織り交ぜて舞うが如く連続で攻撃を仕掛ける。<br />
カムシンの動きに対抗すべく、アインもそれに合わせて舞うが如くカウンターを繰り出す。<br />
二つの剣劇は互いに交わり、相殺され、エネルギーは空気中に拡散する。</p>
<p>「幹部の器は伊達ではない…しかし」<br />
彼は構えを即座に変えて、<br />
「まだ甘い」<br />
言葉と共に反撃の拳を繰り出す。<br />
攻撃直後の一瞬の隙に放たれたその拳をかわせないと判断したカムシンは、双剣で威力を分</p>
<p>散させようと、とっさに剣を正面に出し衝撃に備える。<br />
そして衝撃は彼を襲う。<br />
彼はその初撃は受け止めることには成功した。ただし、完全に止められた訳では無かった。<br />
直後、もう片方の拳が彼の躰を襲い、後方に激しく飛ばされる。</p>
<p>―――彼、カムシンはパワーとスピードを両立していて、しかもかなりの高レベルの能力で</p>
<p>ある。先ほどアインが言った通り幹部の器に相応の能力だ。<br />
しかし、彼、アインの能力は彼をも凌駕している。この短時間のやりとりからそのことをカ</p>
<p>ムシンは犇犇と感じた―――</p>
<p>「グッ…!」<br />
行動不能にならないよう衝撃に備え、受け身を取り着地する。<br />
「決着を望んでいたが…さて、終わらせるとするか?」<br />
「もちろん決着をだ!」<br />
「ふ…ならば望み通りつけるか!」<br />
足止めの役割が大きいのはアインは分かっていた訳であり、返答も予想通りであったことに</p>
<p>彼は苦笑混じりに構え直す。これも奴の本来の思考に近いな、と。</p>
<p>一瞬の静寂。<br />
刹那、神風の如くアインが先に打って出た。構えは先程とも違う。<br />
これに対するカムシンもまた構える、今度は必殺の構えを。<br />
射程にギリギリ入るか入らないかで彼、カムシンが繰り出したその技は百、いや千回にも見</p>
<p>える神速の突き。<br />
先とは違いカウンターの技で且つアインは勢いが付き過ぎている。いくら手足れの彼も止め</p>
<p>られずに刺さるだろう、そう確信して打たれた必殺の一撃だ。</p>
<p>―――相手が同レベル、いや、彼との差が高いと言っても高が知れているならそれで間違い</p>
<p>無く勝っていただろう―――</p>
<p>その思惑は一瞬で消えることとなる。<br />
「な――」<br />
彼が放った技は剣先をただガントレットを付けた手の掌で押さえられていた。<br />
熟練したものでも、まず、そんなことは出来ない筈だ。<br />
だが、それは今目の前で実際に行われている。<br />
「悪いが終わらせて貰う」</p>
<p>引く間を与えず、剣先は押さえたまま言い放ち、放たれた技は極めて単純な蹴り。一撃目で</p>
<p>右へ、二撃目で左へ、腹部を踏み飛ばす三撃目、最後に跳び膝蹴り。と極めて単純な構成。<br />
しかし威力は図りしれず、蹴り飛ばした各部が陥没するかの如く―――いや、今は陥没しな</p>
<p>い威力に絞った―――重く、早い四回の蹴りだ。<br />
「臥龍体術三式奥義『大地讃頌』」</p>
<p>―――それは彼が本来いた土地で失われた技を独自に改良した技の一つであった―――</p>
<p>…彼は、意や彼であった機兵はいまや元の姿である鉄くずに戻っている。</p>
<p>―――もう少し腕が上がれば…磨き様がある奴だが、惜しかった。</p>
<p>ふと、そう思い、目的を果たすためにひたすら暗がりの中を突き進む。</p>