「第3話「しっかりと覚えておくように」」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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<リエステール~ミナル街道―橋付近>
―ガゥン!!!
爆発にも似た轟音と同時に巨大レムリナムの体が大きく揺らいだ。
空砲弾―専用の弾倉内で空気を圧縮して生成した弾丸を打ち出す物である。
ドレッドノートの弾種では短射程であり威力も最も低いものであるが、それでもなお十二分の威力を誇るものであった。
しかし、それを受けてなお巨大レムリナムは踏みとどまる。
ショコラ「まだ、終わりじゃないですよっ!」
即座にショコラは撃鉄を起こし、弾倉に残っている二発も連続して発射した。
二発目は体勢を立て直そうとしている巨大レムリナムの左肩に、三発目は二発目で体勢を完全に崩した状態の胴体へ叩き込まれた。
それにより巨大レムリナムは仰向けに倒れこんだ所へ、アルが飛び掛る。
アル「これで、終わりだ!」
大剣で胴体の急所を貫くのと同時に、巨大レムリナムの体が大きく跳ねる。
アルがバランスを崩したが、それを最後にして巨大レムリナムの動きは止まっていた。
それは、同時にこの戦闘の終わりを意味していた。
ショコラ「やっと・・・終わったのですよー」
ヴァン「やれやれ・・・・・・だな」
戦闘が終わった安堵から、それぞれが思い思いの言葉を口にする。
アル「ちょっと・・・危なかったけどね」
エリス「だねぇ・・・すっかり助けられちゃったもんね」
そう言ってエリスは巨大レムリナムのさらに後方に目を向ける。
そこにいたのは先ほどの少女と声をかけた青年の姿があった。
少女の方はエリスたちに向けて手をひらひらと振っている。
エリス「キョウさんもフィリアさんもありがとー」
フィリア「お安い御用! ですの~」
キョウ「まぁ、これぐらいはいいんだけどね」
少女―フィリアは右手の親指を立てて応え、青年―キョウは左手を顎に当て、少し考え事をしているようであった。
二人ともエリスたちとは顔見知りであり、同時にエリスら4人がミナルで拠点にしている家の大家でもあったりする。
キョウ「俺たちが来なかったら結構危なかった気がするけど・・・」
エリス「う゛・・・・・・」
キョウ「まぁ、大きな怪我も無く終わったからいいか。 ところでショコラー?」
ショコラ「!? は、ハイですよ!」
キョウはヴァンのそばにいたショコラを呼ぶ。
急に呼びかけられたショコラは恐怖とも取れるほどの勢いで返事をした。
キョウ「ドレッドノートの空砲弾の装填時間は?」
ショコラ「・・・一発約15秒、なのですよ」
キョウ「そうだね、それじゃ弾倉装着時の初期装填時間は?」
ショコラ「一発約25秒の計約75秒・・・なのですよ」
キョウ「そうそう正解。それじゃあ、使うかもしれないと思ったときはどうしておく?」
ショコラ「あらかじめ弾倉だけつけて装填を済ましておく・・・・・・なのですよぉ・・・・・・・・・」
エリス「キ、キョウさん!? そ、そろそろ勘弁してあげても・・・むしろ止めてたの私だし!」
ドレッドノートの運用に必要なことのおさらいを始めるキョウ。
ショコラはそれを半分涙目になりつつもそれ答え、エリスは彼女をフォローしようとがんばっていた。
キョウは「やれやれ」と嘆息し、
キョウ「まぁ、橋がすぐそばにあるのもあって使わない事前提だったんだろうし、こんなのが出てくるとは普通予測はできないしな」
そう言ってすでに動かなくなった巨大レムリナムを一瞥する。
キョウ「ただし、次は大事になるかもしれないから忘れないようにね」
ショコラ「は、はいですよ!」
キョウ「エリスもしっかりと覚えておくように」
エリス「は、はいぃー!」
キョウ「うん、わかればよろしい」
ちなみにキョウは怒っているわけでもないのだが、二人とも妙に脅えているような様子だった。
それだけ基本で大切なことを失念していた、という事だろうか。
キョウ「さて、お説教も終わったことだし早いとこミナルに帰るか。夕飯の準備もあるしな」
フィリア「おー。ですの~」
エリス「やっと・・・久々にミナルでゆっくりできるのね」
アル「ここのとこ、支援士の仕事であちこち行ってたからね」
エリスのぼやきにアルが応える。
ここ半月ほど北の方で依頼をこなしていたため、疲れがたまっているのだろう。
「あとは・・・」と疲れた表情をしながらエリスが続いてつぶやく。
エリス「とりあえず戻ったら、いくつか思いついた調合試してみないとなぁ。工房じゃないとまともにできなかったのよね・・・フフフフ」
ショコラ「えーりんがなんだか燃えてるですよ・・・・・・」
ヴァン「頼むから俺たちを巻き込むなよ・・・・・・」
エリス「フ、フフ、フフフフフ」
アル「エ、エリスー!?」
疲れのあまりに妙なテンションに突入していくエリスと、それに引き気味な他3名。
キョウとフィリアは・・・・・・
キョウ「さて、何作るかなー。 久々に大人数だし、カレーあたりが妥当か?」
フィリア「それがいいですの! みんなでいっぱい食べれるですの~」
聞こえていないのか、夕食の献立などを考えながらすでに歩き出していた。
それに気づいてエリスら4人も急いで追いかけ始める。
そんなこんなで意気揚々と歩くフィリアを先頭に、一行はミナルへの帰路を歩いていくのであった。