「エピローグ「・・・・・・・・・ちょっと間違った、かも」」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
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<ミナル街外れ―雑貨工房『MAOH堂』>
『MAOH堂』―知る人ぞ知る・知らない人はぜんぜん知らないミナルの街外れに立っている工房兼雑貨屋。
もともと宿屋だった建物を改装しており、四階建てという大きな建物である。
一階の一部を店舗とし、その残りと二階から四階を住居スペースに使っており、エリスたちもその部屋を間借りして拠点にしている。
そんなMAOH堂の二階のリビングにて
???「ハハハ、そりゃとんだ災難だったねぇエリス」
エリス「そんなに笑わないでよ師匠ーー!」
無事に帰ってこれたエリス達の土産話を聞いて面白おかしく笑う女性―マリエルことマリー。
彼女はMAOH堂の店主の一人であり、エリスのクリエイターとしての師匠でもある。
ちなみにキョウも店主の一人だったりする。
マリー「それで、助けられちゃった上にキョウちゃんからお灸すえられちゃったってわけね」
エリス「キョウさんって怒鳴ったりして怒ってるわけじゃないんだけど、なんか逆らえないのよね」
そのときの光景を思い出しながらエリスが口にする。
怒るというよりは注意・忠告に近い形ではあるのだが、なぜか逆らうことのできない威圧感のようなものを感じてしまう。
ただ、自分たちを心配してのことなのがわかるので不思議と恐怖は感じないのである。
マリー「キョウちゃんは滅多な事で怒鳴ったりはしないからねぇ・・・とにかく、無事だったからいいとしてこれからは気をつけなさいよ?」
エリス・ショコラ「「はぁーい(ですよ)」」
マリー「うん、よろしい」
二人がそろって返事をするのを聞いて、マリーは満足してこの話題を打ち切る。
それからは北の方での面白かったことなどを聞いて談笑していた。
しばらくしてそんなところヴァンがうんざりしたような顔でやってきた。
キッチンから来たのか食器を手にしている。
ヴァン「お前らなぁ・・・少しはこっち手伝えよ・・・・・・」
エリス「あ、ヴァン。 ご飯できたの?」
ヴァン「ああ。 わかったらさっさと手伝え」
エリス「はいはい、わかったわよ。 ショコラいこ」
ショコラ「うぃ、ですよー」
返事をしてエリスとショコラはキッチンのほうへ向かっていった。
マリーはその場に残ってエリス達を見送り、ちょうどコップを運びに来ていた少女に話しかける。
マリー「若いっていうのは元気があっていいわよね。 ね、ミィちゃん?」
ミィ「・・・・・・・・・」
マリー「ミィちゃんってばぁ」
ミィ「・・・・・・マリーさんも手伝わないとお酒抜きって。キョウが言ってたよ」
マリー「え゛・・・・・・」
呼ばれた少女―ミィは問いかけには答えずにキョウからの伝言を伝えた。
それは「食事の準備手伝わなければお酒抜き」という簡潔なものであったが、それを聞いたマリーは間抜けな声を発して硬直。
酒好きな彼女にとってはそれは致命的なものだったのかもしれない。
数秒の時間を置いて
マリー「・・・ホントウニ?」
なぜか片言になっていた。
ミィ「うん、本当に。 もうすぐ準備終わるから決定だと思うよ」
マリー「・・・・・・うぁぁぁああ! キョウちゃん、手伝う! 手伝うから!! お酒抜きだけはぁぁぁぁぁ!!!」
そのミィの言葉が引き金になってしまった。
勢いよく席を立ち、半ば錯乱に近い状態でキッチンへ駆け込んでいくマリー。
アル「マリーさん!? ちょっと、落ち着いっ!?」
エリス「ちょっと師しょっ!?」
キョウ「ヴァン、押さえとけ!」
ヴァン「む、無茶いわないでくれ!」
マリーが突入したキッチンからはそんな怒声やら悲鳴やらが聞こえてくる。
ミィと同じように食器をテーブルに並べにきていたフィリアはその光景を見て若干引きつった笑顔をしていた。
フィリア「ミィ・・・あれ、よかったんですの?」
ミィ「・・・・・・・・・ちょっと間違った、かも」
フィリア「ありゃりゃ・・・でも―」
二人は顔を見合わせてから混沌と化したキッチンへ再び目を向ける。
そのキッチンの光景はドタバタと騒がしいものの、どこか微笑ましいものでもあった。
フィリア「いつも通りの賑やかで楽しいご飯になりそうですの~」
ミィ「うん、そうだね」
二人は少しだけ可笑しそうに笑いあう。
ドタバタしつつも賑やかで楽しい時間が、今日もまた過ぎていくのであった。