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「御免!」  1人の男がリエステールの酒場に訪れ、誰もが振り向くような大声で入ってきた。  無論マスターもそちらに目を向け、人物を見て声を上げる。 「おお! アルラシード様じゃねぇですか!!」  その人物は、豪商ハートゥーン・アルラシード。  ミナルにて、発火しやすくエネルギーを持った『黒水』というものを発掘し財を成した、ハートゥーン家の当主である。  豪商。という言い方をすれば金にがめつく、強欲なイメージがあるかも知れないが、彼の場合は180度違う。  一切の贅沢を嫌い、黒水による収入の全てを基金として振り込むとんでもない性格の持ち主である。  だが、その気持ちの良いまでの清清しさ。裏表の無い豪快な性格から多くの人から慕われ、  老若男女問わず、人気が高い人物として有名だった。 「マスター殿お久しゅう!! いや、とある人物より、ヴァイ・リュークベル青年に挑戦状を届けるよう頼まれましてな!!」  そう言ってアルラシードが取り出したのは、封書というよりは、カードに近い…まさに、挑戦状という言葉が相応しい者だった。 「へ、へぇ…確かに受け取りますぜ…」  自信たっぷりにカードを差し出すアルラシードに対し、マスターは半ば顔をひくつかせながら、それを受け取った。 (…とある人物。ねぇ…)  まず、『豪商であるアルラシードに手紙の伝達を頼んだという事』。『直接本人が来ず、書面と言う形で来たこと』  そして、『目の前の人物がハートゥーン・アルラシードであること』  マスターは内容を予測しながらカードに目を落とした。  そしてもちろん、その予測は当たっていた。 『ヴァイ・リュークベル殿  貴殿の『大切な人物を護る為に力が欲しい。その為に修練を積みたい』という精神  我輩は強く感動をした!!  よって、今宵0時。リエステール中央通 噴水公園にて、我輩が貴殿に挑戦をさせてもらおう!!  待っておるぞ!!                  愛と正義の使者ジャスティスムーン』 「ではマスター殿! 宜しく頼みますぞ!」 「へ、へぇ。確かに受け取りやしたぜぇ」  アルラシードは、「ではサラバ!」と言い残し、酒場を後にした。  その一方で、落とした目からマスターは顔をあげ、アルラシードを見送りながら、 「…良い人なんだが、ほんっとうにワケのワカランお方だぜぇ……」 ■深夜0時。リエステール中央通 噴水公園 「しかし、何でまたこんな時間に指定して着やがったんだ…」  ヴァイは酒場のマスターからお昼に渡されたカードを見ながら呆れた声を上げた。  辺りに人通りは無く、家々の光も静まり、人達は眠りに就こうとしている。そんな街中に包まれている。 「さて。もう直ぐ0時なワケだが…」  と、ヴァイが呟いた。その刹那!  ババン! バン! ババババン!! という大きな音が鳴り、そしてまぶしいばかりの光が一点に向けられる!! 「っ!! 何だ…!!」 &size(40){「ヌハハハハハハ!!! フハハハハハハ!!!」}  その光の差す先。ヴァイは空を見上げる。  そこには、満月の光を背に、白装束にマントを風になびかせた男の姿があった!!  男は高笑いをし、ヴァイを見下ろして屋根の上から地面に飛び降りたのだった!! &bold(){ ど~このだ~れだかわ~からな~い~♪ け~れどもさ~っそうとあ~らわれる~♪ } &bold(){ せ~かいがやみに~そまるとき~♪ み~んなのえがおをまもるために~たたかうんだ~♪ } &bold(){ ひかれ~! せいぎのこぶしジャスティスパーンチ~!! はなて~! あくをきりさくジャスティスキーック~!! } &bold(){ よわきをたすけ~つよきをくじく~♪ そのなは~♪ ほこ~りたか~きジャスティスムーン~♪} &size(40){「ヌハハハハ!!! 今宵も清く美しい満月の夜!!} &size(40){ 今宵は悪を滅さず、正義を志す青年を導く!!} &size(40){ 愛と正義の使者ジャスティスムーンッ!! 華麗に参上ッ!!」} 「ジャスティス…ムーン」  どこからとも無く流れてくる音楽と、謎の歌。  そして、ヴァイが突然のとんでもない登場に半ば放心気味……… &bold(){「うるせぇぞ!! 今何時だと思ってやがる!! 騒ぐなら他所でやりやがれっ!!!」}  …になる間も無く、民家から怒気を含んだ声で男が叫んだ。  そして、続けて「バンっ!」とドアが勢い良く閉まる音 「ヌゥ!! この趣向が理解できぬとは無粋な者よ。だがそれも良かろう!!」  ぽかーん。という効果音が今のヴァイには一番合っているだろう。  1人ポーズを決める男に、ヴァイはとんでもない人が依頼を受けに来た。とだけ理解する事が出来た。  ……無理もないだろうが。 「あの、おっさん。とりあえず街中で騒ぐのも戦闘すんのも良く無ぇから、外行くぞ」 「フハハハハ!! 了解した青年よ!! 我輩とて迷惑を掛ける事は本意ではない!!」  そう言い残し、ジャスティスムーンは「付いて来い!青年よ!」と言って駆け出してしまう  …いや、迷惑掛けてるだろ。と内心ツッコミを入れつつ ■リエステール郊外。草原 「あのおっさん…!! どんだけ速ぇんだよ…!!」  ヴァイは速さにはそれなりに自信を持っていた。当然、ブレイブマスターとして。  だが、そのヴァイですら中々ジャスティスムーンに距離を詰める事が敵わなかった。  草原でジャスティスムーンはくるりと身体を半回転させ、身軽に、そして華麗に着地をする。 「青年!! 我輩に付いて来れるとは流石!! 我輩も腕が鳴るというもの!! この依頼はまさに僥倖かもしれぬ!!」 「……」  ヴァイは模造刀を抜き、ジャスティスムーンに構える。  この暑苦しいまでの熱血。これで戦意を削ぐ戦い方が今回の相手。ジャスティスムーンの戦い方なのかも知れない。  その裏に見せるジャスティスムーンの実力は、このふざけた雰囲気とは逆に、とんでもないものである。と判断していた。  ……もちろん、戦意を削ぐというのはヴァイの深読みだが 「良い! 良いぞ青年!! 真っ直ぐな良い目をしておる!! 青年。名は何と申す!!」 「ヴァイ・リュークベルだ。…ってアンタ依頼通してるから知ってるだろうが!!」  思わず名乗り、そしてツッコミを入れるが、対するジャスティスムーンはといえば 「ヌハハハハハ!! 当然知っておる! だが、これはお約束というものなのだぞ青年!!」 「くっ…!!」  バッ! バッ!! ババッ!! とジャスティスムーンはポーズを取り  ……そして、雰囲気が一変した。 「…っ!!」 (なんだこれは…!! これが、このおっさんの覇気なのか…!!)  その飲み込まれるまでの力の気配。それに堪え、ヴァイは正眼に模造刀を構えなおした。 「青年。護りたい者が在るのだろう。 ならば全力だ!! 全力を出し切れ!!  我輩の胸を借りるつもりで全力を以って挑みに来るのだ!!  それが出来ぬというのであれば……」  ジャスティスムーンが力強い言葉で語ったその末尾。  それを言うか言わぬかの刹那。  ジャスティスムーンは一気に距離を詰め、ヴァイへと右ストレートを伸ばしていた!!! &bold(){「…朽ち果てぃ!!」} 「っ!!?」  反応が若干遅れたが、そこはブレイブマスター。止水の感覚を以って直感を込ませ、ジャスティスムーンの一撃を回避する。  ジャスティスムーンは直後、バックステップを行って距離を取り、構えを直していた。 「トゥ!! ヌハハハ!! 虚を突いたつもりだったが流石は青年!! 避けよったか!!」 「いきなりは反則だろおっさん…!!」 「だが青年よ。魔物は容赦なく来るぞ。虚を突かれる事も多々有ろう。そこに反則もズルもありはしない」  そこでヴァイはハッとなり、頬を叩いた (しっかりしろ。おっさんの言うとおりだ。魔物はそんな事待ってはくれない)  ジャスティスムーンは形こそ急とは言え、そこを教えに来た。  なるほど依頼としてしっかり考えている。とヴァイは顔を締め、ジャスティスムーンに対面する。 「続けていくぞ青年!!」  オオオオオオオオオ!! という掛け声と共に、ジャスティスムーンは一気にヴァイに距離を詰める。  その迫力に一気に飲み込まれそうになるが、飲み込まれた時点でその拳に喰われるだろう。  ヴァイは冷静に動きを見切り、『静』の型…止水でジャスティスムーンの『動』を受け流し、読む。 &size(40){「瞬走一閃!!} &size(40){ シャイニィィィィィィング・ナッッコォォォオオオ!!!!!」} 「うお!!!」  ジャスティスムーンから放たれた、当たれば身体が両断されてしまうかのような強烈な蹴りをヴァイは紙一重で回避する。  そのまま模造刀でカウンターを入れるが、一歩遅かった。  既にジャスティスムーンは距離を取り、ヴァイの懐から逃れていた。 「ヌハハハ!! 青年!!思わず攻撃を受け止めようと思ってしまったではないか!! だが青年は剣闘士!! 片刃剣の切れ味では我輩の腕が持っていかれかねぬ!! 模造刀とはいえ避けさせてもらった!!」 「くそっ…!! というか、ナックルとか言っておきながら何で蹴りが飛ぶんだよ!! あんたアホなのか!!?」  止水で動きを把握していたから避けられたものの、言葉に素直に従って拳を警戒していたなら確実に一撃を持って行かれただろ う。  ヴァイの言葉にジャスティスムーンはさして反省した色も無く、 「フハハハ!! ちょっとしたお茶目な間違いというものだ!! 青年、あまり細かい事を気にしているようでは高みは目指せぬぞ!!」 (いや、そう言う問題じゃねーだろ…) 「まだまだゆくぞ!! 青年!!」 「くっ!!」  強烈なジャスティスムーンの蹴りに、地面がクレーターを作り上げる。 (このおっさんマジかよ!!)  ジャスティスムーンの戦い方はいたってシンプルだったが、ヴァイは苦戦を強いられた。  一気に距離を詰め、強力な一撃を見舞い、カウンターを避ける為に距離を取り、そして再び距離を詰めて攻撃を入れる。  まさに、ヒット アンド アウェイという戦い方である。  ヴァイも隙があればこちらから詰め寄り、一撃を入れに行ったところだが (同速…!! いや、僅かに速いかもしれない…!!)  その隙を掴めない。避け続ける防戦一方になっていた。 &size(40){「どうした青年!! お前の思い! 熱意!!} &size(40){ 心の輝きは!!! その程度のものなのか!!!} &size(40){ 我輩にぶつけて来い!!! 肉体!!! 魂!!} &size(40){ 精神の全てを賭し!!! 我輩を屠って見せよ!!!} &size(40){ でなければ、お前の護りたい者を護るという事など、} &size(40){ お前よりもより良い人物は幾らでも居るのだぞ!!!!」} &bold(){「…っざけんな!!おっさん!!!!」}  冷静なヴァイらしく無いかもしれないが、その模造刀を全力でジャスティスムーンに狙っていた。  模擬戦という事も忘れ、全力でジャスティスムーンに挑む!! &size(40){「リスティを護るのはオレだ!!} &size(40){ アイツは…アイツは、心の脆かったオレを救ってくれた!!} &size(40){ ドジでトロくて弱いけど、オレの大切なヤツなんだ!!} &size(40){ 他の誰にも護らせるかっ!!!」}  ギン!! ガギリ!! と金属のぶつかる激しい音が鳴り響く!! &bold(){「ヌハハハハハ!!! 先ほどの蚊が刺したような一撃とは段違いではないか!!! 青年!!一撃が一気に重みを増したぞ!!} &bold(){ もっと輝け!!! 青年!! その真っ直ぐな剣で護ってみせい!!!」} &bold(){「らあああ!!!」}  ガギン!!! という激しい音を打ち合わせた後、  ジャスティスムーンとヴァイは距離を取り、お互いに目線を交差させた。 「……青年。腰の剣を抜け」 「ああ…当然」  ジャスティスムーンはマントをバサッ!!と脱ぎ捨て、ヴァイは腰のフェルブレイズを抜き正眼に構える。  そしてお互いに見合って1秒から2秒  ザッ!! という一瞬の音を残し、ジャスティスムーンは一気にヴァイの方へと距離を詰めた。  そしてそのままのスピードで、銀の一閃を残すかの如き鋭い蹴りを飛ばしたのだ!! &size(40){「天罰覿面……} &size(40){ ムーンライトォォォォ!!!  キィィィィィッッッッックッ!!!!」} &bold(){「グオオオオオオ!!!!」}  そのヴァイの背後。巨大なトカゲが吹き飛ばされ悲鳴のような声を上げる  そのままトカゲは木に体をぶつけ、ようやく止まった時には泡を吐いて死んでいた。 「おっさん!!」 「ぬぅ!!」  ジャスティスムーンに切りかかってきたトカゲ…そう、レムリナムに、ヴァイはフェルブレイズで斬り倒し、ジャスティスムーンと背をあわせる。 「青年よ。あの巨大なものが見えるか」 「ラジア・レムリナム……!!」 「夜討ち朝駆けとは卑怯也…!! リエステールの街を夜襲するつもりか!! 『夜襲とかどうかな?』などと言った暁には、無視されるやもしれぬぞ!!」 「おっさんメタな事言ってんな! 寝床の近くでドンパチしてたから目が覚めて襲ってきたってトコだろどう考えても!」  ヴァイの言うとおり、ラジア・レムリナムは怒れたような声を放ち、ジャスティスムーンとヴァイに血走った目を向けていた。 「そういえば依頼に出てたな…行商を襲ったラジア・レムリナムの討伐って」 「ぬううう…!! 弱き者を襲い、強奪をするなどとは言語道断!! 許せぬ!! 青年! 共に倒すぞ!!」 「当然!!」 ピンポンパンポン  作者です。ラジア・レムリナムというとそれなりに強いボスモンスターなのですが、相手が悪かったですね  ココから先は、Aランク支援士。冥氷剣の名を持ったヴァイさんと。変態ながらも強いジャスティスムーンさんのフルボッコシーンをお楽しみください。  この二人相手ならしかたないね ぴんぽんぱんぽん  ジャスティスムーンとヴァイは散り、取り巻きのレムリナムに挑みかかる 「せぁ!! 襲破斬!!」  ヴァイは、上段。横薙ぎ、切り上げからの技と、流れるような動きでレムリナムを切り倒す。  レムリナム程度ではなす術も無く、ヴァイの速さに付いて来る事が出来ずに瞬く間に倒されていった。 &bold(){「ぬう!! せぃ!! とぉぉぁぁぁ!!! ムゥゥゥゥンセイバァァァァァ!!!!」}  ジャスティスムーンも同様。レムリナムに殴り、蹴り、或いは曲刀で斬りかかった。  レムリナム達は次々に吹き飛ばされ、地面を滑り、木に背をぶつけた。 「ガアアアアア!!!」 「悪しき魔物よ!! 愛と正義の使者。ジャスティスムーンが引導を渡してくれよう!!!」  先に対面したのは、ジャスティスムーン。ラジア・レムリナムがその手の巨大な剣を、ジャスティスムーンの居た所に振りかざした!!  だが、ジャスティスムーンの姿はすでにそこには無かった!!  ラジア・レムリナムの肩に乗り、腕を組んで立っていたのだ!! &bold(){「もはや後悔をする暇すら与えぬ!!」} 「いやおっさん。それオレのセリフ…」  冷静なヴァイのツッコミを無視して、「ガアア!!」と身体を振るラジア・レムリナムからジャスティスムーンは飛び降り、着地した刹那、その姿は消え、既にラジア・レムリナムの背後を取っていたのだった!! &size(40){「滅せよ!! 月光絢爛!!!} &size(40){ ムーンライト!! ワルツゥゥゥ!!!!」}  閃光と共にラジア・レムリナムは暴れ、その体に穿つかのごとく蹴りを入れ、ラジア・レムリナムは吹き飛んだ!!  だがそれだけではない!! 吹き飛んだラジア・レムリナムより先回りをしたジャスティスムーンは熱き裁きの拳を叩き込んだ!! 「グオオオオ!!!」 &bold(){「これでトドメ!! 覚悟するがよいっ!!!」}  逆方向に飛ばされたラジア・レムリナムが呻き声を上げながら吹き飛ぶ中、ジャスティスムーンはやはり既に先回りをしており、曲刀を構えて飛び込んだ!! &size(40){「斬ッッッッ!!!!」} &bold(){「グギャアアアア!!!!」}  スタッ!! とジャスティスムーンは華麗に着地をし、ラジア・レムリナムは断末魔を上げながら散った。 「…残月と共に消えるがよいっ!!」  親分が倒された事で、残りのレムリナムは…とはいえ、ヴァイが倒していたので殆ど居なかったが。  散り散りに逃げ行き、後には静かな空気が流れた…… 「すまぬ。青年。まさか魔物に邪魔をされるとは…この勝負は、引き分けと言った所か」 「いや…」  曲刀を仕舞うジャスティスムーンに対し、ヴァイは小さく首を振り、 「おっさん。あんた手加減をしていただろ? あの最後に見せた奥義…とても受けれるレベルじゃねぇよ」  完敗だ。とヴァイが言うとジャスティスムーンは一つ大きく頷いた。 「だが、それでもだ。我輩は青年を導く事こそがこの依頼の使命と感じた。また機会があれば我輩が直々に、青年がどこまで強くなり、心の輝きを高めたか見せてもらいたい。だから、今回は引き分けなのだ!!」  ジャスティスムーンは手を差し出し、ヴァイと握手をする。  その時、夜は終え、朝日が顔を覗かせ始める。 「見ろ。青年。綺麗な朝日ではないか…!! また一つ青年が高みを目指したこの朝日は、より一層の輝きを放っておるように感じる」  ジャスティスムーンはビシィィ!!と朝日を指差し、熱く語り始める。 「ジャスティスムーンは夜の正義を護りし使者。朝日と共に消えようぞ!! では青年よ!! また逢おう!! サラバだ!!」  「ヌハハハハハハーーー!!!」と高笑いをしながら、ジャスティスムーンは朝日に向かって走り始める。  …つまり、東側。港町フローナに向かって 「……」  ヴァイはがくぅ。とへたり込み、考えをめぐらせた (いやいやいやいや。あのおっさんのノリに妙にノッちまったけど、よく考えればおかしいだろ  というかあの人、徹夜してフローナまで走る気かよ…正気なのか?)  だが、ヴァイは「あの人に関しては気にしたら負けだろう」と思い直し、  重たい足取りでLLギルドへと向かうのであった… 後日。酒場にて 「失礼します。手紙を一つお届けにあがりました」 「おおすまねぇ。貰えるかい?」  支援士の1人が酒場のマスターに手紙を渡し、マスターはその手紙を開ける。  その送り主は、愛と正義の使者ジャスティスムーン 『マスター殿  我輩、愛と正義の使者ジャスティスムーンは事情により依頼金を受け取れなくなってしまった。  だが、その依頼金は我輩が青年の修行を付けて得るべき報酬である為、我輩の使いたいように使わせて頂く。  ところでマスター殿。愛と正義の使者ジャスティスムーンが一つ依頼として頼みを申し上げたい。  貴殿の奥方に、たくさんのお菓子を作っていただいて、孤児院へと振舞って頂きたい。  報酬は、青年の修行の報酬でどうだろうか?  それではまた、いつかの月夜を護る為に馳せ参じようぞ!!                  愛と正義の使者ジャスティスムーン』  それを読んだマスターは手紙を折りたたみ、支援士に「手紙は確かに受け取ったぜ。ご苦労だったな!」と報酬を渡す。  そして、もう一度ジャスティスムーンからの手紙を読み返し、頬を緩ませた。 「全く。あのお方は本当に大したお方だぜぇ」  そして、マスターは厨房に向かって妻に声を掛けた。  ジャスティスムーン直々の依頼を。約束どおり行う為に 戦績 3戦 1勝 1敗 1引き分け 過去対戦者 タキア・ノックス:冥氷剣を十枚符・魂縛術で暴発され、敗北してしまった。 ルーレット21:冥氷剣に対抗しジェノサイドブレイズを自分に撃ち、自爆特攻を狙うが失敗し勝利。 愛と正義の使者ジャスティスムーン:ラジア・レムリナムの乱入により中断。再戦(再修業)を約束し、引き分けとした。 あとがき  というわけで、ヴァイVSジャスティスムーンでした。  この人は未公開状態(作成途中)の作品でも一度書いたことがあるのですがやっぱり動かすと熱血で面白い!!  愛と正義の使者!! その名もジャスティスムウウウウウウウン!!!!
「御免!」  1人の男がリエステールの酒場に訪れ、誰もが振り向くような大声で入ってきた。  無論マスターもそちらに目を向け、人物を見て声を上げる。 「おお! アルラシード様じゃねぇですか!!」  その人物は、豪商ハートゥーン・アルラシード。  ミナルにて、発火しやすくエネルギーを持った『黒水』というものを発掘し財を成した、ハートゥーン家の当主である。  豪商。という言い方をすれば金にがめつく、強欲なイメージがあるかも知れないが、彼の場合は180度違う。  一切の贅沢を嫌い、黒水による収入の全てを基金として振り込むとんでもない性格の持ち主である。  だが、その気持ちの良いまでの清清しさ。裏表の無い豪快な性格から多くの人から慕われ、  老若男女問わず、人気が高い人物として有名だった。 「マスター殿お久しゅう!! いや、とある人物より、ヴァイ・リュークベル青年に挑戦状を届けるよう頼まれましてな!!」  そう言ってアルラシードが取り出したのは、封書というよりは、カードに近い…まさに、挑戦状という言葉が相応しい者だった。 「へ、へぇ…確かに受け取りますぜ…」  自信たっぷりにカードを差し出すアルラシードに対し、マスターは半ば顔をひくつかせながら、それを受け取った。 (…とある人物。ねぇ…)  まず、『豪商であるアルラシードに手紙の伝達を頼んだという事』。『直接本人が来ず、書面と言う形で来たこと』  そして、『目の前の人物がハートゥーン・アルラシードであること』  マスターは内容を予測しながらカードに目を落とした。  そしてもちろん、その予測は当たっていた。 『ヴァイ・リュークベル殿  貴殿の『大切な人物を護る為に力が欲しい。その為に修練を積みたい』という精神  我輩は強く感動をした!!  よって、今宵0時。リエステール中央通 噴水公園にて、我輩が貴殿に挑戦をさせてもらおう!!  待っておるぞ!!                  愛と正義の使者ジャスティスムーン』 「ではマスター殿! 宜しく頼みますぞ!」 「へ、へぇ。確かに受け取りやしたぜぇ」  アルラシードは、「ではサラバ!」と言い残し、酒場を後にした。  その一方で、落とした目からマスターは顔をあげ、アルラシードを見送りながら、 「…良い人なんだが、ほんっとうにワケのワカランお方だぜぇ……」 ■深夜0時。リエステール中央通 噴水公園 「しかし、何でまたこんな時間に指定して着やがったんだ…」  ヴァイは酒場のマスターからお昼に渡されたカードを見ながら呆れた声を上げた。  辺りに人通りは無く、家々の光も静まり、人達は眠りに就こうとしている。そんな街中に包まれている。 「さて。もう直ぐ0時なワケだが…」  と、ヴァイが呟いた。その刹那!  ババン! バン! ババババン!! という大きな音が鳴り、そしてまぶしいばかりの光が一点に向けられる!! 「っ!! 何だ…!!」 &size(40){「ヌハハハハハハ!!! フハハハハハハ!!!」}  その光の差す先。ヴァイは空を見上げる。  そこには、満月の光を背に、白装束にマントを風になびかせた男の姿があった!!  男は高笑いをし、ヴァイを見下ろして屋根の上から地面に飛び降りたのだった!! &bold(){ ど~このだ~れだかわ~からな~い~♪ け~れどもさ~っそうとあ~らわれる~♪ } &bold(){ せ~かいがやみに~そまるとき~♪ み~んなのえがおをまもるために~たたかうんだ~♪ } &bold(){ ひかれ~! せいぎのこぶしジャスティスパーンチ~!! はなて~! あくをきりさくジャスティスキーック~!! } &bold(){ よわきをたすけ~つよきをくじく~♪ そのなは~♪ ほこ~りたか~きジャスティスムーン~♪} &size(40){「ヌハハハハ!!! 今宵も清く美しい満月の夜!!} &size(40){ 今宵は悪を滅さず、正義を志す青年を導く!!} &size(40){ 愛と正義の使者ジャスティスムーンッ!! 華麗に参上ッ!!」} 「ジャスティス…ムーン」  どこからとも無く流れてくる音楽と、謎の歌。  そして、ヴァイが突然のとんでもない登場に半ば放心気味……… &bold(){「うるせぇぞ!! 今何時だと思ってやがる!! 騒ぐなら他所でやりやがれっ!!!」}  …になる間も無く、民家から怒気を含んだ声で男が叫んだ。  そして、続けて「バンっ!」とドアが勢い良く閉まる音 「ヌゥ!! この趣向が理解できぬとは無粋な者よ。だがそれも良かろう!!」  ぽかーん。という効果音が今のヴァイには一番合っているだろう。  1人ポーズを決める男に、ヴァイはとんでもない人が依頼を受けに来た。とだけ理解する事が出来た。  ……無理もないだろうが。 「あの、おっさん。とりあえず街中で騒ぐのも戦闘すんのも良く無ぇから、外行くぞ」 「フハハハハ!! 了解した青年よ!! 我輩とて迷惑を掛ける事は本意ではない!!」  そう言い残し、ジャスティスムーンは「付いて来い!青年よ!」と言って駆け出してしまう  …いや、迷惑掛けてるだろ。と内心ツッコミを入れつつ ■リエステール郊外。草原 「あのおっさん…!! どんだけ速ぇんだよ…!!」  ヴァイは速さにはそれなりに自信を持っていた。当然、ブレイブマスターとして。  だが、そのヴァイですら中々ジャスティスムーンに距離を詰める事が敵わなかった。  草原でジャスティスムーンはくるりと身体を半回転させ、身軽に、そして華麗に着地をする。 「青年!! 我輩に付いて来れるとは流石!! 我輩も腕が鳴るというもの!! この依頼はまさに僥倖かもしれぬ!!」 「……」  ヴァイは模造刀を抜き、ジャスティスムーンに構える。  この暑苦しいまでの熱血。これで戦意を削ぐ戦い方が今回の相手。ジャスティスムーンの戦い方なのかも知れない。  その裏に見せるジャスティスムーンの実力は、このふざけた雰囲気とは逆に、とんでもないものである。と判断していた。  ……もちろん、戦意を削ぐというのはヴァイの深読みだが 「良い! 良いぞ青年!! 真っ直ぐな良い目をしておる!! 青年。名は何と申す!!」 「ヴァイ・リュークベルだ。…ってアンタ依頼通してるから知ってるだろうが!!」  思わず名乗り、そしてツッコミを入れるが、対するジャスティスムーンはといえば 「ヌハハハハハ!! 当然知っておる! だが、これはお約束というものなのだぞ青年!!」 「くっ…!!」  バッ! バッ!! ババッ!! とジャスティスムーンはポーズを取り  ……そして、雰囲気が一変した。 「…っ!!」 (なんだこれは…!! これが、このおっさんの覇気なのか…!!)  その飲み込まれるまでの力の気配。それに堪え、ヴァイは正眼に模造刀を構えなおした。 「青年。護りたい者が在るのだろう。 ならば全力だ!! 全力を出し切れ!!  我輩の胸を借りるつもりで全力を以って挑みに来るのだ!!  それが出来ぬというのであれば……」  ジャスティスムーンが力強い言葉で語ったその末尾。  それを言うか言わぬかの刹那。  ジャスティスムーンは一気に距離を詰め、ヴァイへと右ストレートを伸ばしていた!!! &bold(){「…朽ち果てぃ!!」} 「っ!!?」  反応が若干遅れたが、そこはブレイブマスター。止水の感覚を以って直感を込ませ、ジャスティスムーンの一撃を回避する。  ジャスティスムーンは直後、バックステップを行って距離を取り、構えを直していた。 「トゥ!! ヌハハハ!! 虚を突いたつもりだったが流石は青年!! 避けよったか!!」 「いきなりは反則だろおっさん…!!」 「だが青年よ。魔物は容赦なく来るぞ。虚を突かれる事も多々有ろう。そこに反則もズルもありはしない」  そこでヴァイはハッとなり、頬を叩いた (しっかりしろ。おっさんの言うとおりだ。魔物はそんな事待ってはくれない)  ジャスティスムーンは形こそ急とは言え、そこを教えに来た。  なるほど依頼としてしっかり考えている。とヴァイは顔を締め、ジャスティスムーンに対面する。 「続けていくぞ青年!!」  オオオオオオオオオ!! という掛け声と共に、ジャスティスムーンは一気にヴァイに距離を詰める。  その迫力に一気に飲み込まれそうになるが、飲み込まれた時点でその拳に喰われるだろう。  ヴァイは冷静に動きを見切り、『静』の型…止水でジャスティスムーンの『動』を受け流し、読む。 &size(40){「瞬走一閃!!} &size(40){ シャイニィィィィィィング・ナッッコォォォオオオ!!!!!」} 「うお!!!」  ジャスティスムーンから放たれた、当たれば身体が両断されてしまうかのような強烈な蹴りをヴァイは紙一重で回避する。  そのまま模造刀でカウンターを入れるが、一歩遅かった。  既にジャスティスムーンは距離を取り、ヴァイの懐から逃れていた。 「ヌハハハ!! 青年!!思わず攻撃を受け止めようと思ってしまったではないか!! だが青年は剣闘士!! 片刃剣の切れ味では我輩の腕が持っていかれかねぬ!! 模造刀とはいえ避けさせてもらった!!」 「くそっ…!! というか、ナックルとか言っておきながら何で蹴りが飛ぶんだよ!! あんたアホなのか!!?」  止水で動きを把握していたから避けられたものの、言葉に素直に従って拳を警戒していたなら確実に一撃を持って行かれただろう。  ヴァイの言葉にジャスティスムーンはさして反省した色も無く、 「フハハハ!! ちょっとしたお茶目な間違いというものだ!! 青年、あまり細かい事を気にしているようでは高みは目指せぬぞ!!」 (いや、そう言う問題じゃねーだろ…) 「まだまだゆくぞ!! 青年!!」 「くっ!!」  強烈なジャスティスムーンの蹴りに、地面がクレーターを作り上げる。 (このおっさんマジかよ!!)  ジャスティスムーンの戦い方はいたってシンプルだったが、ヴァイは苦戦を強いられた。  一気に距離を詰め、強力な一撃を見舞い、カウンターを避ける為に距離を取り、そして再び距離を詰めて攻撃を入れる。  まさに、ヒット アンド アウェイという戦い方である。  ヴァイも隙があればこちらから詰め寄り、一撃を入れに行ったところだが (同速…!! いや、僅かに速いかもしれない…!!)  その隙を掴めない。避け続ける防戦一方になっていた。 &size(40){「どうした青年!! お前の思い! 熱意!!} &size(40){ 心の輝きは!!! その程度のものなのか!!!} &size(40){ 我輩にぶつけて来い!!! 肉体!!! 魂!!} &size(40){ 精神の全てを賭し!!! 我輩を屠って見せよ!!!} &size(40){ でなければ、お前の護りたい者を護るという事など、} &size(40){ お前よりもより良い人物は幾らでも居るのだぞ!!!!」} &bold(){「…っざけんな!!おっさん!!!!」}  冷静なヴァイらしく無いかもしれないが、その模造刀を全力でジャスティスムーンに狙っていた。  模擬戦という事も忘れ、全力でジャスティスムーンに挑む!! &size(40){「リスティを護るのはオレだ!!} &size(40){ アイツは…アイツは、心の脆かったオレを救ってくれた!!} &size(40){ ドジでトロくて弱いけど、オレの大切なヤツなんだ!!} &size(40){ 他の誰にも護らせるかっ!!!」}  ギン!! ガギリ!! と金属のぶつかる激しい音が鳴り響く!! &bold(){「ヌハハハハハ!!! 先ほどの蚊が刺したような一撃とは段違いではないか!!! 青年!!一撃が一気に重みを増したぞ!!} &bold(){ もっと輝け!!! 青年!! その真っ直ぐな剣で護ってみせい!!!」} &bold(){「らあああ!!!」}  ガギン!!! という激しい音を打ち合わせた後、  ジャスティスムーンとヴァイは距離を取り、お互いに目線を交差させた。 「……青年。腰の剣を抜け」 「ああ…当然」  ジャスティスムーンはマントをバサッ!!と脱ぎ捨て、ヴァイは腰のフェルブレイズを抜き正眼に構える。  そしてお互いに見合って1秒から2秒  ザッ!! という一瞬の音を残し、ジャスティスムーンは一気にヴァイの方へと距離を詰めた。  そしてそのままのスピードで、銀の一閃を残すかの如き鋭い蹴りを飛ばしたのだ!! &size(40){「天罰覿面……} &size(40){ ムーンライトォォォォ!!!  キィィィィィッッッッックッ!!!!」} &bold(){「グオオオオオオ!!!!」}  そのヴァイの背後。巨大なトカゲが吹き飛ばされ悲鳴のような声を上げる  そのままトカゲは木に体をぶつけ、ようやく止まった時には泡を吐いて死んでいた。 「おっさん!!」 「ぬぅ!!」  ジャスティスムーンに切りかかってきたトカゲ…そう、レムリナムに、ヴァイはフェルブレイズで斬り倒し、ジャスティスムーンと背をあわせる。 「青年よ。あの巨大なものが見えるか」 「ラジア・レムリナム……!!」 「夜討ち朝駆けとは卑怯也…!! リエステールの街を夜襲するつもりか!! 『夜襲とかどうかな?』などと言った暁には、無視されるやもしれぬぞ!!」 「おっさんメタな事言ってんな! 寝床の近くでドンパチしてたから目が覚めて襲ってきたってトコだろどう考えても!」  ヴァイの言うとおり、ラジア・レムリナムは怒れたような声を放ち、ジャスティスムーンとヴァイに血走った目を向けていた。 「そういえば依頼に出てたな…行商を襲ったラジア・レムリナムの討伐って」 「ぬううう…!! 弱き者を襲い、強奪をするなどとは言語道断!! 許せぬ!! 青年! 共に倒すぞ!!」 「当然!!」 ピンポンパンポン  作者です。ラジア・レムリナムというとそれなりに強いボスモンスターなのですが、相手が悪かったですね  ココから先は、Aランク支援士。冥氷剣の名を持ったヴァイさんと。変態ながらも強いジャスティスムーンさんのフルボッコシーンをお楽しみください。  この二人相手ならしかたないね ぴんぽんぱんぽん  ジャスティスムーンとヴァイは散り、取り巻きのレムリナムに挑みかかる 「せぁ!! 襲破斬!!」  ヴァイは、上段。横薙ぎ、切り上げからの技と、流れるような動きでレムリナムを切り倒す。  レムリナム程度ではなす術も無く、ヴァイの速さに付いて来る事が出来ずに瞬く間に倒されていった。 &bold(){「ぬう!! せぃ!! とぉぉぁぁぁ!!! ムゥゥゥゥンセイバァァァァァ!!!!」}  ジャスティスムーンも同様。レムリナムに殴り、蹴り、或いは曲刀で斬りかかった。  レムリナム達は次々に吹き飛ばされ、地面を滑り、木に背をぶつけた。 「ガアアアアア!!!」 「悪しき魔物よ!! 愛と正義の使者。ジャスティスムーンが引導を渡してくれよう!!!」  先に対面したのは、ジャスティスムーン。ラジア・レムリナムがその手の巨大な剣を、ジャスティスムーンの居た所に振りかざした!!  だが、ジャスティスムーンの姿はすでにそこには無かった!!  ラジア・レムリナムの肩に乗り、腕を組んで立っていたのだ!! &bold(){「もはや後悔をする暇すら与えぬ!!」} 「いやおっさん。それオレのセリフ…」  冷静なヴァイのツッコミを無視して、「ガアア!!」と身体を振るラジア・レムリナムからジャスティスムーンは飛び降り、着地した刹那、その姿は消え、既にラジア・レムリナムの背後を取っていたのだった!! &size(40){「滅せよ!! 月光絢爛!!!} &size(40){ ムーンライト!! ワルツゥゥゥ!!!!」}  閃光と共にラジア・レムリナムは暴れ、その体に穿つかのごとく蹴りを入れ、ラジア・レムリナムは吹き飛んだ!!  だがそれだけではない!! 吹き飛んだラジア・レムリナムより先回りをしたジャスティスムーンは熱き裁きの拳を叩き込んだ!! 「グオオオオ!!!」 &bold(){「これでトドメ!! 覚悟するがよいっ!!!」}  逆方向に飛ばされたラジア・レムリナムが呻き声を上げながら吹き飛ぶ中、ジャスティスムーンはやはり既に先回りをしており、曲刀を構えて飛び込んだ!! &size(40){「斬ッッッッ!!!!」} &bold(){「グギャアアアア!!!!」}  スタッ!! とジャスティスムーンは華麗に着地をし、ラジア・レムリナムは断末魔を上げながら散った。 「…残月と共に消えるがよいっ!!」  親分が倒された事で、残りのレムリナムは…とはいえ、ヴァイが倒していたので殆ど居なかったが。  散り散りに逃げ行き、後には静かな空気が流れた…… 「すまぬ。青年。まさか魔物に邪魔をされるとは…この勝負は、引き分けと言った所か」 「いや…」  曲刀を仕舞うジャスティスムーンに対し、ヴァイは小さく首を振り、 「おっさん。あんた手加減をしていただろ? あの最後に見せた奥義…とても受けれるレベルじゃねぇよ」  完敗だ。とヴァイが言うとジャスティスムーンは一つ大きく頷いた。 「だが、それでもだ。我輩は青年を導く事こそがこの依頼の使命と感じた。また機会があれば我輩が直々に、青年がどこまで強くなり、心の輝きを高めたか見せてもらいたい。だから、今回は引き分けなのだ!!」  ジャスティスムーンは手を差し出し、ヴァイと握手をする。  その時、夜は終え、朝日が顔を覗かせ始める。 「見ろ。青年。綺麗な朝日ではないか…!! また一つ青年が高みを目指したこの朝日は、より一層の輝きを放っておるように感じる」  ジャスティスムーンはビシィィ!!と朝日を指差し、熱く語り始める。 「ジャスティスムーンは夜の正義を護りし使者。朝日と共に消えようぞ!! では青年よ!! また逢おう!! サラバだ!!」  「ヌハハハハハハーーー!!!」と高笑いをしながら、ジャスティスムーンは朝日に向かって走り始める。  …つまり、東側。港町フローナに向かって 「……」  ヴァイはがくぅ。とへたり込み、考えをめぐらせた (いやいやいやいや。あのおっさんのノリに妙にノッちまったけど、よく考えればおかしいだろ  というかあの人、徹夜してフローナまで走る気かよ…正気なのか?)  だが、ヴァイは「あの人に関しては気にしたら負けだろう」と思い直し、  重たい足取りでLLギルドへと向かうのであった… 後日。酒場にて 「失礼します。手紙を一つお届けにあがりました」 「おおすまねぇ。貰えるかい?」  支援士の1人が酒場のマスターに手紙を渡し、マスターはその手紙を開ける。  その送り主は、愛と正義の使者ジャスティスムーン 『マスター殿  我輩、愛と正義の使者ジャスティスムーンは事情により依頼金を受け取れなくなってしまった。  だが、その依頼金は我輩が青年の修行を付けて得るべき報酬である為、我輩の使いたいように使わせて頂く。  ところでマスター殿。愛と正義の使者ジャスティスムーンが一つ依頼として頼みを申し上げたい。  貴殿の奥方に、たくさんのお菓子を作っていただいて、孤児院へと振舞って頂きたい。  報酬は、青年の修行の報酬でどうだろうか?  それではまた、いつかの月夜を護る為に馳せ参じようぞ!!                  愛と正義の使者ジャスティスムーン』  それを読んだマスターは手紙を折りたたみ、支援士に「手紙は確かに受け取ったぜ。ご苦労だったな!」と報酬を渡す。  そして、もう一度ジャスティスムーンからの手紙を読み返し、頬を緩ませた。 「全く。あのお方は本当に大したお方だぜぇ」  そして、マスターは厨房に向かって妻に声を掛けた。  ジャスティスムーン直々の依頼を。約束どおり行う為に 戦績 3戦 1勝 1敗 1引き分け 過去対戦者 タキア・ノックス:冥氷剣を十枚符・魂縛術で暴発され、敗北してしまった。 ルーレット21:冥氷剣に対抗しジェノサイドブレイズを自分に撃ち、自爆特攻を狙うが失敗し勝利。 愛と正義の使者ジャスティスムーン:ラジア・レムリナムの乱入により中断。再戦(再修業)を約束し、引き分けとした。 あとがき  というわけで、ヴァイVSジャスティスムーンでした。  この人は未公開状態(作成途中)の作品でも一度書いたことがあるのですがやっぱり動かすと熱血で面白い!!  愛と正義の使者!! その名もジャスティスムウウウウウウウン!!!!

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