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ざくッ、と踏み締めた足元から草の擦れる音が聞こえる。 眼前に広がるのは、まばらに並んで生える木々。 森というには見通しがよく、草原と呼ぶには木が多すぎる。 林、というのはこのくらいのものだろうか、などとどうでもいい事が頭に浮かんだ。 「ここで間違いない……か?」 ヴァイはガサガサと酒場で受け取った地図を広げ、ここが指定された場所である事を確認する。 リエステールから少し歩けばある、木々が多少密集しているだけの特に名前もない林。 これといって採れる物もなく、街道からも外れるために普段は誰にも見向きもされない場所だ。 『あなたの戦闘訓練の依頼を受けさせていただきます。  私なりの趣向を凝らしてお迎えしますので、地図の場所に来てください』 ぺらりと地図を裏返し、そこに書き込まれた文章を改めて読む。 妙に丸っこいかわいい文字が気になるといえばなったのだが、それはとりあえず無視する。 ……趣向、と言うからにはそれなりの仕掛けを用意して待っているのだろう。 単純な戦闘訓練もだが、自分が出した依頼の主な目的は特殊な状況における対応力を磨くため。 とはいえ、ヴァイもそれなりに修羅場を潜ってきた身。 多少のことであれば経験則で掻い潜る自信はある。 そんな自身の経験にない趣向である事を願いつつ、記されたその場で足を止めた。 「あのー、あなたがヴァイさんでしょうか?」 と、丁度それに合わせたかのようにかけられる声。 目を向けると、ひざまで伸ばした金色の髪と深い蒼色の瞳を持つ、どこか幼さを残した顔立ちの女性がそこにいた。 「ああ…………お前が、依頼を受けたのか?」 服装はといえば白を基調にしたシンプルなドレスを纏い、これといって武器や防具のようなものは持っていない。 正直、とても戦いが出来るような雰囲気ではなく、そう尋ねたヴァイ自身が尋ねたこと自体が間違いだったような気すらしている程だ。 「私、ヴァイさんにこれを渡すために待ってたんです」 が、当の本人はそんなヴァイの視線を気にも留めておらず、ごそごそとポケットから取り出した一通の手紙を差し出してきた。 またこんな場所に似付かず無駄にキラキラ光ってそうな笑顔をしていたが、とりあえずこの手の相手へのツッコミは半ば諦めて黙ってその手紙を受け取る。 そしてその中身を開いてみると、地図の裏と同じ丸っこい文字でこう書かれていた。 『チェスのルールは知っていますか? チェスのキングといえば、自軍であれば最優先で護るべきもの。 敵軍であれば最優先で包囲し、倒すべき対象。 あなたの目の前にいるその人がこの盤上のキングです ルールは一つ、敵のキングに一撃入れればあなたの勝ちとします』 「……何…?」 思わず、改めて目の前の存在に顔を向ける。 状況がわかっているのかいないのか、ほんわりとした笑顔を浮かべたまま、ヴァイの様子を黙って見つめている女性。 『護るべき人が戦えない人なら、あなたはどう戦いますか?』 「難しい顔をして、どうしたんですか?」 思考の中で手紙の最後の一文が、正面から女性のそんな声が…… そんな二つの言葉が同時に響くと共に、ヴァイはハッと周囲の変化に気がついた。 「伏せろ!」 「きゃっ!?」 半ば強引に女性をしゃがませ、自分自身も体勢を低くする。 直後、それまで自分達の頭があった場所を、大きな氷塊が通り過ぎるのが見えた。 そんなもの、マージナルの魔法に間違いない。 ヴァイは即座にフェルブレイズを抜き、周囲の状態に意識を広げる。 趣向を凝らすのはいい。 その点については、通常とは異なる戦場という経験を求めていたヴァイ自身も望んでいたことだ。 だが、見るからに戦いなどとは無関係で、見た限りは何も知らされていない人間を巻き込む道理などあるわけがない。 少し、灸を据えてやろうか。 彼自身、人に説教できるような生き方をしてきたとは思っていないが…… その瞬間は確かにそんなことを考えていた。 ---- チェスを趣向として出してきただけに、ヴァイと女性を取り囲むように現れた『兵隊』達もまた、チェスの駒を髣髴とさせる者ばかりだった。 相手を誘引する役割を持ち、また眼前まで引き込んだところで仕留めにかかるポーンが8体。 盤上では斜めに対して無限の射程を持つ2体のビショップは、マージナルの魔法という形で再現している。 前後左右の直線を駆り、時にキャスリングでキングをかばうルークは、突撃槍を持ったパラディンナイト。 他の兵の位置に関係なく盤上を跳ねるナイトは、エアレイドに近い動きをする兵が受け持っている。 盤上最強と名高いクイーンと、それらを統率するキングの姿はまだヴァイは捉えておらず、その実態はわかってはいないが…… ここまでこだわっているのなら、恐らくクイーンとキングも他の兵たちと同じ、白一色の装束を身につけていることだろう。 いまこの戦場という盤上で黒に近い衣服を身につけているのがヴァイだけというのも、『チェス』という相手の趣向に叶っているのかもしれない。 ……兵士達の個々の力はそこまで高くはなかった。 時に女性を兵士達の射程内に捉えられることも無かったわけではないが、ヴァイは絶えず女性から一定以内の距離を保ち、時には移動するように呼びかけながら、秒単位で駆けつけられる位置をキープするように行動をコントロールしている。 肝が据わっているのか状況が分かっていないのか、女性は女性で常にほほんとした調子でいるのも気にはなったが、それは意識的に意識しないように勤めていた。 「召喚魔かコイツら……」 と、その時。 ある一体のポーンにクリティカルな一撃を入れたと思った瞬間、煙のようにその存在が消え去り、ポトリと足元に白のポーンの駒が落ちるのが見えた。 はた目には何の変哲もない、ただチェスの駒なのだが…… 「だったら、もう少し本気でいかせてもらう!」 召喚された魔物や精霊は、倒されても暫く再召喚できなくなるだけで死ぬことはない。 ただひたすらに速さを追い求めた彼の動きを捉えられるのは、熟練の者でも限られ…… ただ数で包囲すれば動きを制限できるなどという単純な次元ではなく、彼の周囲にいた兵士達は、剣閃がその盤上を走る度にひとつのチェスの駒へと還されていく。 そして――― 「クイーンと……キング!」 豪勢な鎧を身につけた女性型の召喚魔と、全身に白いマントを纏った巨体の召喚魔。 ヴァイ残っていた2体目のルークを叩き伏せながら、突如現れたその2体を見据えた。 ……かと思ったその直後、クイーンがその手の槍を構えて、一気にヴァイの横を駆け抜け、後方にいた女性へと距離を一気に詰める。 「っ!」 出現からタイムラグがほぼゼロで行動を開始され、虚をつかれたということもあるかもしれないが…… 前後左右と斜め四方に無限の射程を持つ盤上最強の駒。 その召喚魔である彼女もそうであると瞬時に実証されたようで、ヴァイの脳裏に一瞬諦めの文字がちらつく。 ―――が、 「ああああああああ!!!!」 散空烈破 そんな一瞬の迷いも振り切り、地面を蹴り、駆け出すとほぼ同時に剣閃を放つ。 駆ける初速を加えた衝撃波は、クイーンの剣が女性に届くよりも僅かに早く、その足元を穿った。 「冥……氷剣!!」 直後、足にダメージを負い一瞬動きを止めたクイーンの身体が、氷に包まれ両断される。 間一髪……そんな単語が脳裏に浮かび、荒く肩で呼吸するヴァイ。 もしここにいるのがリスティだったら? ……無論他の誰かならいいというわけではないが、虚を突かれてこのような状況になるのは、いついかなる時でもありえる事だ。 対応できたのは、運がよかっただけかもしれない。 「……あとは、キングだけだ」 安心するのは早い。 相変わらず緊張感なくたたずむ女性を背に置き、正眼にフェルブレイズを構える。 目に映るのは、いまこの盤上にいる最後の『白の駒』キング。 キング単体は、戦力としては1歩づつしか動けない射程の短い駒。 対して、『黒』もヴァイたった一人しかいないものの、ブレイブマスターの足であれば相手の射程外から一気に斬りかかる事は造作でもない。 駒のすべてがチェスのルールに基づいた特徴であるのなら、この対峙の決着は明白だ。 「……白?」 が、ふと”あること”に気付く。 今この盤上にいる『白』い『駒』は眼前のキングだけ。 だが、それはあくまで『駒』であり、ただの『召喚魔』だ。 また、盤上で『黒』という『色』を背負っているのは『自分だけ』 だが、『白』という『色』を背負っているのは、『もう一人』…… 「ヒントは、いくつか書いておいたつもりでしたよ?」 「っ!!」 トン、と背後から首筋に冷たく細いものを突き付けられる感覚。 その瞬間に目の前にいたキングの姿が消え去り、その場に残ったのは巨体を包んでいた、カーテンのように巨大な白いマントと、ヒラヒラと地面に舞い落ちていく『トランプ』の『キング』が一枚。 「チェックメイト、私の勝ちだね、ヴァイお兄様♪」 首筋に触れていたもの離れた感覚と同時に、ザッと一気に距離を取りつつ振り替えると…… いつもの青いエプロンドレスではなく、先程までそこにいたはずの女性が着ていたものと同じデザインの、白いドレスを纏う、もはや見慣れた金髪碧眼なギルド内の妹分の姿。 「…………兵隊は、トランプだけじゃなかったんだな」 アリス・I・ワンダー Little Legendの年少組の一人で、ティールの妹的存在。 彼女は、彼女の夢の一部であるクロックラビの力を借りて、一時的に大人の姿に変身できる魔法を持っている。 たまにそれで遊んでいる事はヴァイも話に聞いて知っていたが、こうしてまともに目にしたのはこの日が初めてだった。 また彼女は『言葉遊び』が得意で大好きだという。 ---- 戦績 3戦 1勝 2敗 0引き分け 過去対戦者 タキア・ノックス:冥氷剣を十枚符・魂縛術で暴発され、敗北してしまった。 ルーレット21:冥氷剣に対抗しジェノサイドブレイズを自分に撃ち、自爆特攻を狙うが失敗し勝利。 アリス・I・ワンダー:言葉のトリックに気付きかけるも、回答が一歩遅れ敗北 ---- スキル:ピースナイツ チェスの駒をそれぞれの行動を再現した特徴を持つ兵隊として召喚する。 アリスの召喚は基本的に白が出てくるらしい
ざくッ、と踏み締めた足元から草の擦れる音が聞こえる。 眼前に広がるのは、まばらに並んで生える木々。 森というには見通しがよく、草原と呼ぶには木が多すぎる。 林、というのはこのくらいのものだろうか、などとどうでもいい事が頭に浮かんだ。 「ここで間違いない……か?」 ヴァイはガサガサと酒場で受け取った地図を広げ、ここが指定された場所である事を確認する。 リエステールから少し歩けばある、木々が多少密集しているだけの特に名前もない林。 これといって採れる物もなく、街道からも外れるために普段は誰にも見向きもされない場所だ。 『あなたの戦闘訓練の依頼を受けさせていただきます。  私なりの趣向を凝らしてお迎えしますので、地図の場所に来てください』 ぺらりと地図を裏返し、そこに書き込まれた文章を改めて読む。 妙に丸っこいかわいい文字が気になるといえばなったのだが、それはとりあえず無視する。 ……趣向、と言うからにはそれなりの仕掛けを用意して待っているのだろう。 単純な戦闘訓練もだが、自分が出した依頼の主な目的は特殊な状況における対応力を磨くため。 とはいえ、ヴァイもそれなりに修羅場を潜ってきた身。 多少のことであれば経験則で掻い潜る自信はある。 そんな自身の経験にない趣向である事を願いつつ、記されたその場で足を止めた。 「あのー、あなたがヴァイさんでしょうか?」 と、丁度それに合わせたかのようにかけられる声。 目を向けると、ひざまで伸ばした金色の髪と深い蒼色の瞳を持つ、どこか幼さを残した顔立ちの女性がそこにいた。 「ああ…………お前が、依頼を受けたのか?」 服装はといえば白を基調にしたシンプルなドレスを纏い、これといって武器や防具のようなものは持っていない。 正直、とても戦いが出来るような雰囲気ではなく、そう尋ねたヴァイ自身が尋ねたこと自体が間違いだったような気すらしている程だ。 「私、ヴァイさんにこれを渡すために待ってたんです」 が、当の本人はそんなヴァイの視線を気にも留めておらず、ごそごそとポケットから取り出した一通の手紙を差し出してきた。 またこんな場所に似付かず無駄にキラキラ光ってそうな笑顔をしていたが、とりあえずこの手の相手へのツッコミは半ば諦めて黙ってその手紙を受け取る。 そしてその中身を開いてみると、地図の裏と同じ丸っこい文字でこう書かれていた。 『チェスのルールは知っていますか? チェスのキングといえば、自軍であれば最優先で護るべきもの。 敵軍であれば最優先で包囲し、倒すべき対象。 あなたの目の前にいるその人がこの盤上のキングです ルールは一つ、敵のキングに一撃入れればあなたの勝ちとします』 「……何…?」 思わず、改めて目の前の存在に顔を向ける。 状況がわかっているのかいないのか、ほんわりとした笑顔を浮かべたまま、ヴァイの様子を黙って見つめている女性。 『護るべき人が戦えない人なら、あなたはどう戦いますか?』 「難しい顔をして、どうしたんですか?」 思考の中で手紙の最後の一文が、正面から女性のそんな声が…… そんな二つの言葉が同時に響くと共に、ヴァイはハッと周囲の変化に気がついた。 「伏せろ!」 「きゃっ!?」 半ば強引に女性をしゃがませ、自分自身も体勢を低くする。 直後、それまで自分達の頭があった場所を、大きな氷塊が通り過ぎるのが見えた。 そんなもの、マージナルの魔法に間違いない。 ヴァイは即座にフェルブレイズを抜き、周囲の状態に意識を広げる。 趣向を凝らすのはいい。 その点については、通常とは異なる戦場という経験を求めていたヴァイ自身も望んでいたことだ。 だが、見るからに戦いなどとは無関係で、見た限りは何も知らされていない人間を巻き込む道理などあるわけがない。 少し、灸を据えてやろうか。 彼自身、人に説教できるような生き方をしてきたとは思っていないが…… その瞬間は確かにそんなことを考えていた。 ---- チェスを趣向として出してきただけに、ヴァイと女性を取り囲むように現れた『兵隊』達もまた、チェスの駒を髣髴とさせる者ばかりだった。 相手を誘引する役割を持ち、また眼前まで引き込んだところで仕留めにかかるポーンが8体。 盤上では斜めに対して無限の射程を持つ2体のビショップは、マージナルの魔法という形で再現している。 前後左右の直線を駆り、時にキャスリングでキングをかばうルークは、突撃槍を持ったパラディンナイト。 他の兵の位置に関係なく盤上を跳ねるナイトは、エアレイドに近い動きをする兵が受け持っている。 盤上最強と名高いクイーンと、それらを統率するキングの姿はまだヴァイは捉えておらず、その実態はわかってはいないが…… ここまでこだわっているのなら、恐らくクイーンとキングも他の兵たちと同じ、白一色の装束を身につけていることだろう。 いまこの戦場という盤上で黒に近い衣服を身につけているのがヴァイだけというのも、『チェス』という相手の趣向に叶っているのかもしれない。 ……兵士達の個々の力はそこまで高くはなかった。 時に女性を兵士達の射程内に捉えられることも無かったわけではないが、ヴァイは絶えず女性から一定以内の距離を保ち、時には移動するように呼びかけながら、秒単位で駆けつけられる位置をキープするように行動をコントロールしている。 肝が据わっているのか状況が分かっていないのか、女性は女性で常にほほんとした調子でいるのも気にはなったが、それは意識的に意識しないように勤めていた。 「召喚魔かコイツら……」 と、その時。 ある一体のポーンにクリティカルな一撃を入れたと思った瞬間、煙のようにその存在が消え去り、ポトリと足元に白のポーンの駒が落ちるのが見えた。 はた目には何の変哲もない、ただチェスの駒なのだが…… 「だったら、もう少し本気でいかせてもらう!」 召喚された魔物や精霊は、倒されても暫く再召喚できなくなるだけで死ぬことはない。 ただひたすらに速さを追い求めた彼の動きを捉えられるのは、熟練の者でも限られ…… ただ数で包囲すれば動きを制限できるなどという単純な次元ではなく、彼の周囲にいた兵士達は、剣閃がその盤上を走る度にひとつのチェスの駒へと還されていく。 そして――― 「クイーンと……キング!」 豪勢な鎧を身につけた女性型の召喚魔と、全身に白いマントを纏った巨体の召喚魔。 ヴァイ残っていた2体目のルークを叩き伏せながら、突如現れたその2体を見据えた。 ……かと思ったその直後、クイーンがその手の槍を構えて、一気にヴァイの横を駆け抜け、後方にいた女性へと距離を一気に詰める。 「っ!」 出現からタイムラグがほぼゼロで行動を開始され、虚をつかれたということもあるかもしれないが…… 前後左右と斜め四方に無限の射程を持つ盤上最強の駒。 その召喚魔である彼女もそうであると瞬時に実証されたようで、ヴァイの脳裏に一瞬諦めの文字がちらつく。 ―――が、 「ああああああああ!!!!」 散空烈破 そんな一瞬の迷いも振り切り、地面を蹴り、駆け出すとほぼ同時に剣閃を放つ。 駆ける初速を加えた衝撃波は、クイーンの剣が女性に届くよりも僅かに早く、その足元を穿った。 「冥……氷剣!!」 直後、足にダメージを負い一瞬動きを止めたクイーンの身体が、氷に包まれ両断される。 間一髪……そんな単語が脳裏に浮かび、荒く肩で呼吸するヴァイ。 もしここにいるのがリスティだったら? ……無論他の誰かならいいというわけではないが、虚を突かれてこのような状況になるのは、いついかなる時でもありえる事だ。 対応できたのは、運がよかっただけかもしれない。 「……あとは、キングだけだ」 安心するのは早い。 相変わらず緊張感なくたたずむ女性を背に置き、正眼にフェルブレイズを構える。 目に映るのは、いまこの盤上にいる最後の『白の駒』キング。 キング単体は、戦力としては1歩づつしか動けない射程の短い駒。 対して、『黒』もヴァイたった一人しかいないものの、ブレイブマスターの足であれば相手の射程外から一気に斬りかかる事は造作でもない。 駒のすべてがチェスのルールに基づいた特徴であるのなら、この対峙の決着は明白だ。 「……白?」 が、ふと”あること”に気付く。 今この盤上にいる『白』い『駒』は眼前のキングだけ。 だが、それはあくまで『駒』であり、ただの『召喚魔』だ。 また、盤上で『黒』という『色』を背負っているのは『自分だけ』 だが、『白』という『色』を背負っているのは、『もう一人』…… 「ヒントは、いくつか書いておいたつもりでしたよ?」 「っ!!」 トン、と背後から首筋に冷たく細いものを突き付けられる感覚。 その瞬間に目の前にいたキングの姿が消え去り、その場に残ったのは巨体を包んでいた、カーテンのように巨大な白いマントと、ヒラヒラと地面に舞い落ちていく『トランプ』の『キング』が一枚。 「チェックメイト、私の勝ちだね、ヴァイお兄様♪」 首筋に触れていたもの離れた感覚と同時に、ザッと一気に距離を取りつつ振り替えると…… いつもの青いエプロンドレスではなく、先程までそこにいたはずの女性が着ていたものと同じデザインの、白いドレスを纏う、もはや見慣れた金髪碧眼なギルド内の妹分の姿。 「…………兵隊は、トランプだけじゃなかったんだな」 アリス・I・ワンダー Little Legendの年少組の一人で、ティールの妹的存在。 彼女は、彼女の夢の一部であるクロックラビの力を借りて、一時的に大人の姿に変身できる魔法を持っている。 たまにそれで遊んでいる事はヴァイも話に聞いて知っていたが、こうしてまともに目にしたのはこの日が初めてだった。 また彼女は『言葉遊び』が得意で大好きだという。 ---- 戦績 4戦 1勝 2敗 1引き分け 過去対戦者 タキア・ノックス:冥氷剣を十枚符・魂縛術で暴発され、敗北してしまった。 ルーレット21:冥氷剣に対抗しジェノサイドブレイズを自分に撃ち、自爆特攻を狙うが失敗し勝利。 愛と正義の使者ジャスティスムーン:ラジア・レムリナムの乱入により中断。再戦(再修業)を約束し、引き分けとした。 アリス・I・ワンダー:言葉のトリックに気付きかけるも、回答が一歩遅れ敗北 ---- スキル:ピースナイツ チェスの駒をそれぞれの行動を再現した特徴を持つ兵隊として召喚する。 アリスの召喚は基本的に白が出てくるらしい

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