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エミリア「うー寒いのう寒いのう。今日は一段と冷えおるわ。」  そう言いながらエミリアはリエステールの酒場に入ってきた。 夜はもう更けており酒場にいる人もまばらである。彼女はこういう時間帯に限って酒場で一杯やるのを日課としている。 マスター「おうエミリアか。またこんな時間に来たとすると、コレが目当てかい?」 エミリア「ふふふ、こんなに寒い季節じゃからのう。一杯飲まんとやってられんわい。」 マスター「まあな。だが、お前さんはまだ未成年だから酒はほどほどにしとかねぇとな。」 エミリア「む、わかっておるわい! まったくディンにも何度同じことを言われたことか・・・。」  そう他愛のない会話を交わしながらエミリアはカウンター席に着き ショットグラスに注がれたブランデーをチビチビと口にしている。 エミリア「マスター、今日はどうも人が少ないようじゃの。こんなに寒い日なら暖かい酒場で皆どんちゃん騒ぎしとるはずじゃが。」 マスター「ああ、なんか今日は人の入りが悪いわな。まあそんな日もあるわな。」 エミリア「ふーん、珍しいことじゃのう。ん?」  エミリアが店内を見回したとき、同じカウンターの隅の方でどこかで見たような人物が一人静かに酒を飲んでいるのを見つけた。 その人物は最近リエステールやミナルでよく見かけ、街中のチンピラや教会関係者から『狂犬』と蔑まれ、恐れられていた人物であった。 エミリア「おや、珍しいのう。こんな所で鉢合わせするとはな、磐野烈心や。」 烈心「ふん、誰かと思えば時代の掛かった口調のガキか。ガキは家に帰って寝る時間だぞ。」 エミリア「が、ガキ・・・っ!! ふざけるでない! 私はもう17歳じゃぞ!」 烈心「そういうところがガキだと言ったんだ。用が無いのならあっちいけ。」  そう言うと烈心はそっぽを向いて酒を飲み返した。 エミリアは烈心のそっけない態度に顔を真っ赤にするもすぐに落ち着きブランデーを口にしている。 エミリア「ふ、ふん! まあ珍しく顔を合わせたことじゃ。今日は一緒に飲まんか?」 烈心「・・・勝手にしろ。」 エミリア「ムカ! 相変わらず愛想のかけらもない男じゃのう!! そんなんじゃ女性にモテやせんぞ!!」 烈心「そんなもので寄って来る女なんかこっちから御免だ。俺は馬鹿な女どもには興味は無い。」 エミリア「ムキー! ほんっとに減らず口の尽きぬ男じゃのう!! どうしてこんな男をリスティは気に入ったのやら・・・!!」  エミリアは烈心の返しに憤慨しながらふてくされてチビチビとブランデーを口にしている。そして烈心も静かに酒を仰いでいる。 そんな空気が数十分続くものの、ふと発した言葉がその空気を終わらせたのであった。 しかも、発した言葉の主がエミリアではなく、烈心からであった。 烈心「そういえば、リスティとかいったな。あの娘は元気か? 確かお前と一緒のリトルなんたらギルドとかという集まりの一員だろう。」 エミリア「お? お主がリスティの事を気にかけるとは珍しいのう。ひょっとして彼女に惚れたかの?」 烈心「馬鹿を言うな。あいつにはヴァイという小僧がいるだろう。あいにく俺はグリッツとかいう色ボケた小僧と違って好きな人がいる娘に手は出さん主義でな。」 エミリア「酷い言われようじゃのうグリッツは・・・。まあそう言われても仕方のないヤツじゃがなあやつは。まあお主が心配するほどでもない。ヴァイがちゃんと付いておるから安心じゃて。」 烈心「そうか・・・。それを聞いたら安心した。あの娘、どうも最近酷い仕打ちを受けたと聞いたもんなんだがな。」 エミリア「ん? 何か言ったかの?」 烈心「いや、ただの独り言だ。気にするな。」  そう言いながら烈心はグラスに注いであった酒を仰ぐ。エミリアも首をかしげながらグラスを仰ぐ。 エミリア「で、そういうお主には好きな人とかおるのかの? まあお主の事じゃからそういうのは興味は無いと思うがの。」 烈心「いたさ。」 エミリア「そうじゃろうそうじゃろう。お主には興味がな・・・・・・ってええええええ!!!(ガターン!)」  エミリアは、さらっと『いた』と答えた烈心に、イスから転げ落ちるほど驚愕した。 正直、烈心に恋人などいるはずが無いと思っていたからだ。それだけに烈心の答えには相当驚愕したと見える。 エミリア「い、意外じゃのう・・・、お主に恋人がおったとは・・・。で? どんな女性なんじゃ?」 烈心「そうだな・・・、髪の色は綺麗な琥珀色で瞳は青い宝石のような透き通った瞳をしていたな。そして容姿端麗で優しい娘だった。」 エミリア「ほ、ほう・・・。ん? でもお主、さっき『いた』や『だった』と答えたのう? 今はおらんのかえ? まあ異世界から来たお主じゃからこの世界にいるとは思えんが。」 烈心「そうだ。今はあっちにいる。」  そう言うと烈心は空に向かって人差し指を立てた。 エミリア「上・・・? 空なんかにお主の恋人がおるの・・・・・・、あっ・・・・!」 烈心「・・・。」 エミリア「す、すまぬ・・・。」 烈心「構わん。聞かれたから答えただけだ。お前が気にする事はない。」  そう言いながら烈心は淡々と酒を仰いでいる。 エミリアも罰が悪そうにチビチビとブランデーを口にしている。 そしてまた、烈心の方から語りかけてきた。 烈心「あいつはな、俺が弱かったが為に死んだものだ。俺が不甲斐ないばかりにな・・・。だから俺は強くなろうとした。そらがむしゃらにと言うか無茶苦茶やったもんさ・・・。 そのお陰で剣の腕や体術とかは上達した。だがな、肝心の俺の心だけは強くなれなかった。それは今でも続いている・・・。」 エミリア「・・・。」 烈心「ちなみにどうしてあいつが死んだのかはここで言うつもりは無い。話が長くなるからな。 そういう事があったから、俺はあのリスティとヴァイが他人事には思えなくてな。だからつい心の隅で心配してしまう。まあ、ヴァイのやつには至極迷惑な話だろうがな。」  烈心は酒の注がれたグラスを持ちながら淡々と話している。 その姿は『狂犬』と蔑まれ、恐れられていた普段の烈心とは似ても似つかぬ姿であった。 烈心「俺はな、初めてヴァイを見た時目を疑ったぜ。全く俺と同じ生き様を送っていたんだからな。だが、俺とあいつと一つだけ違うところがある。 それはリスティの存在だ。あの娘のお陰でヴァイは道を違わずに進んでいる。たとえどこかで道が反れようとも、リスティがいる限りあいつはくじける事はない。 そしてリスティの他にもお前達という仲間がいる。正直、俺はあいつがうらやましいさ。俺があいつと同じ年の頃は一匹狼で相当荒んでいたからな。」 エミリア「お前さんには、仲間はおらんかったのか・・・?」 烈心「いなかった。いや、いたはずだった。いたはずだったのに俺は自分でその仲間を拒んでいた。当時の俺は相当にヤケクソになっていたんだろう。 いるはずだった仲間を拒んでまで独りよがりな人生を歩んでいたからな・・・。」  自身の過去を淡々と語る烈心の目はとても寂しい目だった。エミリアもその語りには口を挟みにくく、ただ聞くしか出来なかった。 そして不意に柱時計の音が鳴り響く。時計を見るともう深夜22時を回っていた。 烈心「もうこんな時間か。悪いが俺はこの辺で失礼させてもらう。明日は朝早くからミナルに行かんといかんのでな。」 エミリア「えっ・・・!? ああ、もうこんな時間かの・・・。」 烈心「店主、代金はここに置いておく。あとついでにこいつの分もな。」 エミリア「ちょ、ちょっとそんな・・・! 私はそんなつもりで話しかけたわけでは・・・!!」 烈心「気にするな。俺なんかと付き合ってくれた礼だ。」  そう言いながら烈心は金の入った袋をマスターに手渡し、酒場を後にしようとした。 エミリア「ちょ、ちょっと待つのじゃ烈心・・・!」 烈心「なんだ?」 エミリア「また、酒に付き合ってくれるかの? お主からもうちょっと色々話を聞きたいものでの・・・。」 烈心「フン、構わんよ。だが、俺なんかと話してたらディンという小僧がやきもちを焼くかもしれんぞ? それに、お前はあの小僧に惚の字なんだろう?」 エミリア「なっ!! そ、そんな事があるわけなかろう!! まったくなんちゅうことを言うんじゃこの狂犬!!」 烈心「フン・・・。」  烈心の言葉にエミリアは耳まで真っ赤にして叫び上げる。どうやら図星のようだ。 烈心もそんなエミリアを見て鼻で笑う。 烈心「じゃあな。お前と飲んでて楽しかったぜ。」  そう言って烈心は酒場を後にした。気が付くと店内にはエミリア以外の客はすでに帰っており、エミリアとマスターの二人だけになっていた。 エミリア「まったく・・・、よくわからん男じゃてあやつは・・・。」  そう愚痴を吐きながら、エミリアはグラスに残ったブランデーを一気に仰いだ。
エミリア「うー寒いのう寒いのう。今日は一段と冷えおるわ。」  そう言いながらエミリアはリエステールの酒場に入ってきた。 夜はもう更けており酒場にいる人もまばらである。彼女はこういう時間帯に限って酒場で一杯やるのを日課としている。 マスター「おうエミリアか。またこんな時間に来たとすると、コレが目当てかい?」 エミリア「ふふふ、こんなに寒い季節じゃからのう。一杯飲まんとやってられんわい。」 マスター「まあな。だが、お前さんはまだ未成年だから酒はほどほどにしとかねぇとな。」 エミリア「む、わかっておるわい! まったくディンにも何度同じことを言われたことか・・・。」  そう他愛のない会話を交わしながらエミリアはカウンター席に着き ショットグラスに注がれたブランデーをチビチビと口にしている。 エミリア「マスター、今日はどうも人が少ないようじゃの。こんなに寒い日なら暖かい酒場で皆どんちゃん騒ぎしとるはずじゃが。」 マスター「ああ、なんか今日は人の入りが悪いわな。まあそんな日もあるわな。」 エミリア「ふーん、珍しいことじゃのう。ん?」  エミリアが店内を見回したとき、同じカウンターの隅の方でどこかで見たような人物が一人静かに酒を飲んでいるのを見つけた。 その人物は最近リエステールやミナルでよく見かけ、街中のチンピラや教会関係者から『狂犬』と蔑まれ、恐れられていた人物であった。 エミリア「おや、珍しいのう。こんな所で鉢合わせするとはな、磐野烈心や。」 烈心「ふん、誰かと思えば時代の掛かった口調のガキか。ガキは家に帰って寝る時間だぞ。」 エミリア「が、ガキ・・・っ!! ふざけるでない! 私はもう17歳じゃぞ!」 烈心「そういうところがガキだと言ったんだ。用が無いのならあっちいけ。」  そう言うと烈心はそっぽを向いて酒を飲み返した。 エミリアは烈心のそっけない態度に顔を真っ赤にするもすぐに落ち着きブランデーを口にしている。 エミリア「ふ、ふん! まあ珍しく顔を合わせたことじゃ。今日は一緒に飲まんか?」 烈心「・・・勝手にしろ。」 エミリア「ムカ! 相変わらず愛想のかけらもない男じゃのう!! そんなんじゃ女性にモテやせんぞ!!」 烈心「そんなもので寄って来る女なんかこっちから御免だ。俺は馬鹿な女どもには興味は無い。」 エミリア「ムキー! ほんっとに減らず口の尽きぬ男じゃのう!! どうしてこんな男をリスティは気に入ったのやら・・・!!」  エミリアは烈心の返しに憤慨しながらふてくされてチビチビとブランデーを口にしている。そして烈心も静かに酒を仰いでいる。 そんな空気が数十分続くものの、ふと発した言葉がその空気を終わらせたのであった。 しかも、発した言葉の主がエミリアではなく、烈心からであった。 烈心「そういえば、リスティとかいったな。あの娘は元気か? 確かお前と一緒のリトルなんたらギルドとかという集まりの一員だろう。」 エミリア「お? お主がリスティの事を気にかけるとは珍しいのう。ひょっとして彼女に惚れたかの?」 烈心「馬鹿を言うな。あいつにはヴァイという小僧がいるだろう。あいにく俺はグリッツとかいう色ボケた小僧と違って好きな人がいる娘に手は出さん主義でな。」 エミリア「酷い言われようじゃのうグリッツは・・・。まあそう言われても仕方のないヤツじゃがなあやつは。まあお主が心配するほどでもない。ヴァイがちゃんと付いておるから安心じゃて。」 烈心「そうか・・・。それを聞いたら安心した。あの娘、どうも最近酷い仕打ちを受けたと聞いたもんなんだがな。」 エミリア「ん? 何か言ったかの?」 烈心「いや、ただの独り言だ。気にするな。」  そう言いながら烈心はグラスに注いであった酒を仰ぐ。エミリアも首をかしげながらグラスを仰ぐ。 エミリア「で、そういうお主には好きな人とかおるのかの? まあお主の事じゃからそういうのは興味は無いと思うがの。」 烈心「いたさ。」 エミリア「そうじゃろうそうじゃろう。お主には興味がな・・・・・・ってええええええ!!!(ガターン!)」  エミリアは、さらっと『いた』と答えた烈心に、イスから転げ落ちるほど驚愕した。 正直、烈心に恋人などいるはずが無いと思っていたからだ。それだけに烈心の答えには相当驚愕したと見える。 エミリア「い、意外じゃのう・・・、お主に恋人がおったとは・・・。で? どんな女性なんじゃ?」 烈心「そうだな・・・、髪の色は綺麗な琥珀色で瞳は青い宝石のような透き通った瞳をしていたな。そして容姿端麗で優しい娘だった。」 エミリア「ほ、ほう・・・。ん? でもお主、さっき『いた』や『だった』と答えたのう? 今はおらんのかえ? まあ異世界から来たお主じゃからこの世界にいるとは思えんが。」 烈心「そうだ。今はあっちにいる。」  そう言うと烈心は空に向かって人差し指を立てた。 エミリア「上・・・? 空なんかにお主の恋人がおるの・・・・・・、あっ・・・・!」 烈心「・・・。」 エミリア「す、すまぬ・・・。」 烈心「構わん。聞かれたから答えただけだ。お前が気にする事はない。」  そう言いながら烈心は淡々と酒を仰いでいる。 エミリアも罰が悪そうにチビチビとブランデーを口にしている。 そしてまた、烈心の方から語りかけてきた。 烈心「あいつはな、俺が弱かったが為に死んだものだ。俺が不甲斐ないばかりにな・・・。だから俺は強くなろうとした。そらがむしゃらにと言うか無茶苦茶やったもんさ・・・。 そのお陰で剣の腕や体術とかは上達した。だがな、肝心の俺の心だけは強くなれなかった。それは今でも続いている・・・。」 エミリア「・・・。」 烈心「ちなみにどうしてあいつが死んだのかはここで言うつもりは無い。話が長くなるからな。 そういう事があったから、俺はあのリスティとヴァイが他人事には思えなくてな。だからつい心の隅で心配してしまう。まあ、ヴァイのやつには至極迷惑な話だろうがな。」  烈心は酒の注がれたグラスを持ちながら淡々と話している。 その姿は『狂犬』と蔑まれ、恐れられていた普段の烈心とは似ても似つかぬ姿であった。 烈心「俺はな、初めてヴァイを見た時目を疑ったぜ。全く俺と同じ生き様を送っていたんだからな。だが、俺とあいつと一つだけ違うところがある。 それはリスティの存在だ。あの娘のお陰でヴァイは道を違わずに進んでいる。たとえどこかで道が反れようとも、リスティがいる限りあいつはくじける事はない。 そしてリスティの他にもお前達という仲間がいる。正直、俺はあいつがうらやましいさ。俺があいつと同じ年の頃は一匹狼で相当荒んでいたからな。」 エミリア「お前さんには、仲間はおらんかったのか・・・?」 烈心「いなかった。いや、いたはずだった。いたはずだったのに俺は自分でその仲間を拒んでいた。当時の俺は相当にヤケクソになっていたんだろう。 いるはずだった仲間を拒んでまで独りよがりな人生を歩んでいたからな・・・。」  自身の過去を淡々と語る烈心の目はとても寂しい目だった。エミリアもその語りには口を挟みにくく、ただ聞くしか出来なかった。 そして不意に柱時計の音が鳴り響く。時計を見るともう深夜22時を回っていた。 烈心「もうこんな時間か。悪いが俺はこの辺で失礼させてもらう。明日は朝早くからミナルに行かんといかんのでな。」 エミリア「えっ・・・!? ああ、もうこんな時間かの・・・。」 烈心「店主、代金はここに置いておく。あとついでにこいつの分もな。」 エミリア「ちょ、ちょっとそんな・・・! 私はそんなつもりで話しかけたわけでは・・・!!」 烈心「気にするな。俺なんかと付き合ってくれた礼だ。」  そう言いながら烈心は金の入った袋をマスターに手渡し、酒場を後にしようとした。 エミリア「ちょ、ちょっと待つのじゃ烈心・・・!」 烈心「なんだ?」 エミリア「また、酒に付き合ってくれるかの? お主からもうちょっと色々話を聞きたいものでの・・・。」 烈心「フン、構わんよ。だが、俺なんかと話してたらディンという小僧がやきもちを焼くかもしれんぞ? それに、お前はあの小僧に惚の字なんだろう?」 エミリア「なっ!! そ、そんな事があるわけなかろう!! まったくなんちゅうことを言うんじゃこの狂犬!!」 烈心「フン・・・。」  烈心の言葉にエミリアは耳まで真っ赤にして叫び上げる。どうやら図星のようだ。 烈心もそんなエミリアを見て鼻で笑う。 烈心「じゃあな。俺もお前と飲んでて楽しかったぜ。」  そう言って烈心は酒場を後にした。気が付くと店内にはエミリア以外の客はすでに帰っており、エミリアとマスターの二人だけになっていた。 エミリア「まったく・・・、よくわからん男じゃてあやつは・・・。」  そう愚痴を吐きながら、エミリアはグラスに残ったブランデーを一気に仰いだ。

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