※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

―8―





「そっか、チームに入るつもりはないんだな」
一部逃げ出してしまった末端の兵士を除いて、モレク鉱山裏の洞窟を根城にしていた盗賊団は壊滅し、自警団の手でそのメンバーは連行されて行った。
ティールとレオン達のチームは自警団のメンバーに去り際に報酬を手渡され、今はモレク~リエステールを結ぶ街道の上で別れの挨拶をしているところだった。
「うん……ちょっと、今は一人で考えたい事があるから……」
その時、レオンの口から自分達のチームに入らないかという提案が出されていたのだが、ティールは決して首を縦には振らなかった。
どちらかといえば、今は誰かと組むにしても、様々な人と関わっていきたい。
誰かと組みたいとは望んでいても、一つのチームに留まって、あまり情を深く持ちたくは無いと考えていた。
―こんな考え方をするという事は、まだまだトラウマは払拭されているとは言えないだろう。
「なら、またどこかで共に戦える日を楽しみにしているよ」
「…そうね。 私も、楽しみにしてる」
最後にそれだけの言葉を交わし、レオン、アルト、クリスの3人と手を握り合いながら、ティールはリエステールへと帰って行く彼らに別れを告げた。
……そして向かうところは、自分の旅の拠点であるモレクの街。
リエステールとモレクをつなぐこの街道を歩くのは、すでに慣れたものだった。






「…ん?」
そして、モレクの町への入り口が目に入った時、ふと横に目を向けると……自分からは少しはなれたところで、二人の支援士が3匹のウェアウルフと戦っている光景が眼に映る。
支援士の片方は、無骨な大剣を振るう聖騎士(パラディンナイト)の青年で、もう片方は理遣い(マージナル)の少女。
「……加勢する必要は無さそうだね」
戦いを見る限り、特に苦戦している様子もなく、むしろ余裕、と言った感じだった。
ぱっと見る限り、二人ともランク的にはBの中から末あたりで、それなりに熟練した支援士だろう。
人によるかもしれないが、下手な加勢はプライドにも関わる。
とりあえず大丈夫だろうと判断し、ティールは再びモレクへの道を進み始めた。
「―おい、待ちな」
……が、その直後に背後から飛んでくる声。
いかにもガラが悪そうな、いわゆる”荒くれ者”が出す無作法な声だった。
「……何か?」
片手で支え、肩にかけるようにしていたハルバードを両手で持ち直し、何でもないような表情でその声の主に返事をする。
……見ると、潰したばかりの盗賊団の末端の兵士が着ていたのと同じ服を着た男が5人、並んでこちらを睨みつけていた。
「よくも親分をやってくれたな! 俺らのチームを崩しやがって…!!」
「チームって……よくそんな事が言えたものだね」
他人の生き方を否定したくは無いが、他者から無理矢理物を奪うような横暴は、個人が行使できる自由の範疇を超えている。
それは決して許される行為ではなく、それが彼らにとっての生き方だとしても、御世辞にも肯定できるものではない。
「うるせぇ! 親分の仇だ、死にやがれ!!」
問答無用とばかりに武器を抜き放ち、斬りかかる盗賊の残党達。
―そこまで言うならなんで逃げたりしたんだろう―
自警団に捕まらずにこの場にいると言う事は、つまりは親分とやらが捕まる瞬間にはあの場にいなかったと言うこと。
そして自分にかかってくるという事は、自分が頭を倒す瞬間はその眼で見ていたと言うことになる。
要するに、親分を捕らえる自警団に斬りかかる勇気は無くその場は逃げてしまい、後から一番弱そうな子供を仇として狙うような人間という事だろう。
ついでに言えば、その親分とやらは右手を斬り落とされ捕まりはしたが、まだ死んではいない。
「はぁ……」
正直呆れてモノが言えない。
例え相手が自分の敵わない者でも、仲間を守るために命を捨てられるような、かつての自分の仲間の姿を思い出し、目の前の男達にはただただ溜息しか出てこなかった。
―目の前に5人…と、そこの木の上に4人か―
跳びかかってきた盗賊の一撃をかわしつつ、すぐ近くにあった木の上にちらりと目を向ける。
おそらく先に出てきた5人でこっちの体力を削り、隠れている者はあとから加わって一気に潰す算段なのだろう。
作戦としては普通の出来だが、目標となる相手にばれてしまえばあまり意味は無い。
「しょうがない、相手するよ!」
次々と跳びかかってくる五人の攻撃をかわし、時には自らの武器で弾き返し、蹴りや体術を交えた攻撃を加える。
―できれば人間相手に命は奪いたくないため、武器の刃部分で斬りつけるのは腕や足が中心になってしまう。
が、相手のレベルはまだ低いほうなのか、それでも特に労することなく5人の身体にダメージを蓄積させていく。
「―ん?」
そんな中で、ちらりと敵が隠れている木の方へと目を向けると、四人の敵の姿はいつのまにかその上から消えていた。
だが、代わりにその下あたりから何か言いあうような声が聞こえ、視線をそちら側へと移す。
そこには、先程見かけた二人の支援士と、四人の盗賊が退治している光景があった。
「元々金目当てに徒党組んでる奴らだ。そんなもんだろ」
パラディンナイトの青年がそう口にすると、大剣を振るい目の前にいた盗賊の一人を斬り倒した。
―……加勢に来てくれたんだ……―
余裕ではあるかもしれないが、自分は盗賊団をひとつ潰してきた後の身で、多少の疲労はまだ残っている。
半分の四人を相手してくれるのなら、正直に言うと、有り難い。
……しかし、やはり仲間の死という事に対する不安は、この程度の状況でもどうしても脳裏に差し混んできてしまう。
そんな事を考えながらも、再び自分の戦いへと意識を向け直すティール。
消耗してきているだろう敵を選び、武器を持つ腕や足に斬りつけることで、戦闘不能へ持ち込んでいく。
あと2人……
少し余裕ができ、再び加勢に来た支援士の方へ目を向けると……
「―っ!?」
盗賊の一人が、背後から青年の首目掛けて剣を振るっているのが目に入った。
青年は目の前の敵に気をとられているのか、その攻撃に気がついていない。
「ライトニング!!」
が、刃が彼の首に触れる直前に少女の声が響き、その声に反応し転げるように青年はその場を離れ、同時に迸る雷が、剣をかざしていた男の身体を貫いた。
強烈な電撃を受け、ブスブスと全身からこげた匂いを出しながら倒れていく男。
少女はそれを見ながら高らかに勝利宣言しているようだったが……
「……お前な、もうちょっと考えて撃てよ」
青年は、自分にも命中しかねない位置に魔法を撃ち込まれた事に少々ご立腹のようだった。
―危なかったのに気づいてないし…―
ティールは素直にそんな感想を抱きながら、残った二人のうちの一人を蹴り飛ばす。
……そのまま耳を傾けていると、どうやら少女の方は青年の命が危うかった事に気付いていたようだが、そこを助けたなどと口に出すような様子はなかった。
それは青年のプライドを傷付けまいとしての行為なのかもしれないが……
「……はぁああ!!」
「ぐあぁあ!!」
意を決し、最後の一人の顔面を、支援士の二人が立っている方向へと力の限り蹴りとばす。
「―っ…!」
やはり、ムリに全力を出すと一瞬ではあるがその部分に激痛が走る。
だが、子供が大人をあんな勢いで吹っ飛ばす様を見れば、誰でも自分の方へ興味を持つだろう。
「…完全に気絶しておるの」
つんつん、と杖でつつきながら、少女が一言。
「……すごい子供もいたもんだな、5人全員倒したのか」
足の激痛が治まるまでを絶えつつ、何でも無いように汗をぬぐい、そんな感想を口にする二人に向けて、笑顔を向ける。
……そして、まず口に出すのはお礼の言葉
「ありがとう」
二人は、一瞬なにが起こったのか分からずに、沈黙してしまう。
「な…何がだ?」
「私を助けようとしてくれたみたいだから。 そのお礼」
―そう、これから私がする事は、加勢してくれたお礼―
まだ、戦う様を一目見ただけなのでなんとも言えないかも知れない。
しかし、目を向けた一瞬に行われた光景は、彼女の脳裏にしっかりと焼きついていた。
……誰にも、大切な仲間を失う悲劇を味わわせたくは無い。




―そう、絶対に―














『Turning Point』 ~FIN~