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―7―




ざくざくざく……と三人分の雪を踏みしめて歩く音が続く。
日もほとんど沈み、月と星明かりを頼りに進むのは、支援士としてはあまり珍しいことでもないが、晴れているとはいえ雪原を突き進むにしては、いい状態とは言えないだろう。
それでも、雪道そのものに慣れているホタルと、多少なり体力に覚えのある支援士の二人。
その程度の労はものともせず、順調に歩を進めていた。
「お…っと、海か?」
……そうして、夕暮れの十六夜から歩き続けて一刻ほどたったころだろうか。
足元が崖のような形になり、その向こうに北の海を見渡せる、オーロラの絶好の見物場所とも言われている、天衣岬と呼ばれる場所にたどり着いた。
「オーロラ、見えないようじゃの……」
しかし、その上空は何の変哲も無い夜空が広がっているだけで、あるものと言えば、月と星、そしてわずかな雲くらいなものだった。
空を見上げながら、ただ無数の星が広がるだけの光景を目にしつつ、エミリアは少し残念そうにそう呟いた。
「見れない事の方が多いそうですからね。今は発生自体していないかもしれません」
「発生って…そういうものなのか?」
そんな様子を目にして、なぐさめをいれるかのように語りかけるホタルと、それに続けるようにエミリアに向けて問いかけるディン。
エミリアはその言葉に、ん? と表情を変えると、やれやれと言うかのようにして、少し得意気に口を開く。
「うむ……なぜ発生するのか、という詳しい原因はわかっていないのじゃが、時々消えたり、場所も動いたりといろいろあるのじゃ」
それだけ話を聞いて、よく分かっていないながらふーん、と頷くディン。
続けて”太陽や大地が発する磁場や光が関係しているという説もある”といった感じのことを話していたが、これといってピンと来ない者にとっては、ただ難しいだけの話でしかなかった。
そんな彼の状態を察したらしいエミリアは話を止め、本来の目的であるオーロラを見るための座り込みを決めたらしく、”座るとしようか”と言いながら雪の上にシートのようなものを広げて、その上に腰を下ろしていた。
「気長に待つのが一番といいますからね」
それに続いて、落ちついた調子で座るホタル。
ディンも同じように座ろうとしたようだが、その前に周囲を確かめるようにぐるりと見回していた。
「ホタルの知り合いが来てるのは、確かこのへんだったか?」
「はい。 ここに観光にくる人達の安全の確保のための討伐隊ですから……」
「……それっぽい人影は見えないけどな」
「まぁ、この位置だけをどうにかすればかわるものでもないじゃろう」
「…ま、そりゃそうか」
エミリアの言葉通り、たとえその位置を確保したとしても、周囲に巣くう魔物もある程度何とかしておかなくては、後から討伐した地帯に入りこんでくる、という事も考えられる。
それでも、その範囲がこの周囲である以上、今見える範囲内にいないとしても、近辺にいる事は間違いないのかもしれない。
「この時間ですし、もう討伐も終えて戻ったという事も考えられますが……」

『……コ…ダ…』

ホタルがそう口にした丁度その時、三人の耳に……いや、頭に直接響くように、声のようなものが聞こえてきた。
「……なんじゃ?」
杖に手をかけて、おろした腰を上げるエミリア。
ディンも背中に下げていた太刀を抜き、再び周囲の状況に目を向け始める。

『ワレ……モトメシ宝…刀……ドコ…ダ…』

生ける鎧(リビングアーマー)か!?」
何も無いところから、スーっと浮き出てくるように現れるのは、十六夜式の甲冑の姿をした魔物が数体。
「いえ、これは亡霊武者……? 確か、『祠』に納められていると言われている宝刀を探し、志半ばで命を落とした人達の怨念の集合体……」
「宝刀……まさか、『沙々雪之迩哲』の事か?」
「はい……でも、亡霊武者は雪原にしか出ないはずなのに……」

『ヨコセ……カタナ……ヨコセ!!』

鎧武者達の目が、ディンの手にある太刀と、ホタルの腰から下げられた片刃剣に向けられたかと思うと、その全身から不穏なオーラを放ち始め、三人に向かってその手に握られていた片刃剣を振りかざした。
「宝刀と只の片刃剣の見分けもつかぬか……亡霊とは言え、人としての意思は無さそうじゃな」
「何のんきに分析してる! 来るぞ!」

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