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―プロローグ―





この世界には、いろいろな人がいる。
それは平穏に日々を暮らす町人だったり、そんな人達を守る騎士だったり、名声を求めて旅する冒険者だったり……
その人生の形も様々で、それら一つ一つが世界と言う名の書物に刻まれる。
人間は、一人一人がそんな物語の主人公であり、人それぞれの苦難にも出会うだろう。
たとえ成功者と呼ばれる者であっても、幾度の試練を超え、またこれからも挫折と成功を繰り返しながら生きていくのだ。

――人は、明日への希望を忘れない限り、どこまでも歩いていけるのだから。




「―ふぅ」
……そう思って、毎日を生きている。
今まで生きてきた時間も、大きなもの、小さなもの、様々な壁があったと思う。
時には、大きな壁にぶつかって先へ進めなくなったこともあったけれど、それでも、回り道を探したり、無理にでも乗り越えたりを繰り返して、なんとか今日まで生きてきた。
「……だめ、こんなんじゃ、とても人になんて見せらんないよ……」
多分、今ぶつかっている壁もそんな中の一つ。
でも、目の前にある真っ白な世界にぶつかってもう半年は経つだろうか。
……食べていくだけなら、今までの蓄えもあるので無理をしなければ当面は心配は無い。
けれど、自分は白紙の世界に自分の世界を描く以外の道を知らない。
今更逃げて他の事を始めようとしても、とてもではないが無理だろう……
「……ちょっと休も……」
ちゃぽん、と音がたつような勢いで、その手に持っていた絵筆を筆洗い用の水の中に放り込む。
彼女の目の中に映るのは、純白の世界……美術系クリエイターの必需品である、真っ白なカンバス。
一度たりとも筆をつける事のなかったパレットも、そっと横の机に置き椅子から立ち上がると、両手を高々と上げて、全身をぐーっと引き伸ばした。



「……あっ」
気晴らしとばかりに紅茶を淹れて、買いおきのクッキーを引っ張り出して、ちょっと気取ったティータイム。
そんな中で溜息混じりに過ごしていると、ふと覗いた窓の外の雲ひとつない空の上に、暖かな光を放つ太陽が見えた。
……”彼”は毎日東の果てからやってきて、日の終わりには西の果てへと去っていく。
そしてその光は地上に生きる全てのものに力を与え、日々、自分達を見守ってくれている。
……そんな”彼”はきっと”旅人”
何度も何度も世界を巡り、いまだ終わらぬ旅を続けている冒険者。
「あなたにくらべたら私の人生なんて、きっととるにたらないものなんだろうな……」
ぽかぽかと降り注ぐ陽光を右手で遮りながら、そんな事を呟いてみる。




―アウロラ・ピアレスティ
幼少の頃から絵の才能で注目され、若くしてその道の一流と称された彼女は、今ではリエステールが誇る美術家の一人として名を連ねている。
しかしその名声そのものが、今の彼女の壁となっている事は……恐らく、彼女自身も気付いていない事かもしれない。