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「……これは捕獲と言うより、奪還という形では無いのか?」

日も高く昇り、そろそろ傾き始めるだろうと思われる時間帯の、南部フィールドのモレクから少し離れた場所。
そこは街道からも外れ、森と言えるほどの量では無いが樹も多く、普段から支援士すらも寄りつかない場所である。
人が寄り付かない理由は、強い魔物がいるというわけではなく、探索しても何も見つからないので来る価値も無い、という理由からではあるが。
「……話を聞く限りじゃ、そうなるな」
そんな場所で、エミリアとディンの二人は『虹彩の魔鳥の捕獲』の依頼主の指示で、数人のクセレントと肩を並べて待機させられている。
依頼主曰く、このクレセントはエミリア達とは別に雇った支援士であるらしいのだが、マスターとクローディアの話を聞いた後のせいか、どうにも胡散臭い気配を放っている気がしてならなかった。
「……賊に奪われた魔鳥の雛を取り戻してくれと言われたが、それでこんなところに待機させるのも納得がいかん」
「それに、強奪にあったと言うなら支援士より自警団に通報する方が現実的だ」
「ふん、裏に黒い噂が流れている相手じゃ、自警団も動いてくれぬのかのぅ……」
少々嘲笑じみた表情を浮かべながら、そんな事を口にするエミリア。
となりに立っているディンにのみ聞こえるように話していたつもりだったが、どうやらクレセントの一人にも聞こえていたらしく、『黙れ』とでも言うかのように、ギロリと二人の方へ目を向けていた。
「……ま、依頼の中身が”捜索”ではなく”奪還”だとするならば、一番納得がいかぬのがその相手に私達を選んだ事じゃ」
二人は一瞬会話を止めるが、それでも特に恐怖や威圧感などといったものは感じていないらしく、少し間を置いて再び会話を続け出す。
「…………そうだな、確かに、Aランク以上は支援士側に断る権利は無い。 少し前にAに昇格したばかりの俺達より強い連中なら、いくらでもいそうなものだが」
4年近く旅を続けてきた身としては、南部にいるA以上の支援士で、自分達以上に強い者にはそれなりに会ってきた記憶がある。
魔鳥の雛を『奪っていった』相手が誰かは知らないが、指名無しのAランクの依頼の場合、待機中のA以上の支援士が自動的に選ばれる事になる。
だが、捜索依頼でもなければわざわざ『レアハンター』を指名する理由が見当たらない。
「……裏があると考えておいたほうがいいな」
最後は、本当に誰にも聞こえないような小さな声で、ぼそりと呟くようにそう口にした。
元々この依頼に関しては、クローディアからの……強いては自警団からの要請も受けている。
最終的な判断は自分達に任せると言われたが、こうもいろいろと考えさせられる状況が重なると、自警団側の肩を持ちたくなっても仕方ないかもしれない。
「……む、依頼者様が戻って来たようじゃぞ」
そうこうしている間に、視界の向こう側から魔術師系ジョブの様相をした、初老の男が一人の少女を連れてこちらに向かってくるのが目に入ってきた。
……ただ、その後ろを歩いている少女は、ディンとエミリア――二人の精神を揺さぶるのに十分過ぎる存在で、できればこんな状況で出会いたくは無かった、最悪の相手……
黒装束に白い上着、そして白銀の髪と黒真珠の瞳をもった<ruby>子龍<rt>パピードラゴン</ruby>……ティール・エインフィードだった。









「――あの小鳥の居場所は聞かないんだね」
見通しが悪い、という程では無いが木々がまばらに生え、決して見通しがよいとも言えない林の中。
モレクで窓の外に見えた男の後を追い、何をしに来たと問いただしたところ、連れ出されたのがこの場所だった。
……普段はだれも近寄らないような、何の変哲も無い林。
兵士を待機させてあるのは明白だが、下手に町中で暴れられては被害がどこにとぶかわからない。
ティールは、大人しく男が案内する先に向かうことにした。
「あの場に小さな子どもが二人いた……ヤツはすでに人化の力を得ているのだろう? だとすればその二人の内のいずれかが魔鳥だ」
振り返りもせずに、淡々と答える男。
ティールは訝しげな表情を浮かべつつ、もう一度口を開いた。
「……あなたも町の真ん中で目立つ行為は避けたいってワケね。 でなきゃあの場で襲撃してる」
「まあ、そんなところだ」
―逆に言えば、町の真ん中で襲撃する事もできる、という事でもある。
しかしそうなると町の警備兵もコトの中に加わってくるし、どうころんでもややこしい方向に走る事になる。
互いに外に出る事を選んだのは、正しい選択だったかもしれない。
「……さて、改めて聞こうか」
林の中に入って随分歩いただろうか。
ある地点に差し掛かったところで男は急に足を止め、ティールに向けて問いかけた。
「……何を言いたいか分かるけど、言ってみなよ」
「あの子どもを引き渡してくれれば、私達も君を追うことは無い。 だが……」
「断ったら、伏兵を出す気でしょ。 ……いや、もう隠す気も無いみたいだね」
男が言葉を終える前に、周囲の光景に目を向けてそう一言。
……ここは元々見通しが悪くなるほど木は生えていない林の中。
ティールのその言葉通りに、彼女達の周りには、すでに20名近い兵士がずらりと並んでいた。
「てきとーに集めたか、元々あなたの配下なのか……よくもまぁガラの悪いのばっかり集めたものだね」
先日の小競り合いで見たようなクレセント達の他に、ベルセルクやブレイブマスターと思わしき兵士も増えている。
以前よりは本気で潰しにかかってきているという事だろう。
「なかなか言うようだな。 なら、少しはガラのいい支援士もいる事、お目にかけようか」
そう言いながらさっと手を上げると、丁度男の身体で視界からは隠れていた位置から、無理矢理突き出されるようにして二人の支援士が現れる。
「――――!?」
一人は、内側から強度を確保しているだろう白いジャケットに、簡易な上半身鎧と、170近くはある大剣を持ったパラディンナイトの青年。
もう一人は、黒を基調としたドレス風の衣装と、黒地に白い翼の模様が施されたベレー帽を身につけ、その手に特大のアクアマリンがあしらわれた杖を手にしたマージナルの少女。
「……ティール、なんでお前がここに……」
「裏があると読んではいたが……まさか、相手がお主とはな……」
表れたその二人は、ティールの姿を見て驚きを隠せない様子だった。
……が、それはティール自身にとっても言える事で……
「ディン、エミィ……」
それは、つい先ほどまで自分達の話題の中に出ていた二人。
かつて『エメトの欠片』の探索で、即席とはいえチームを組んだ、思い出深い二人との邂逅だった。



「ディン・フレイクレス。 エミリア・エルクリオ……Aランクの依頼を、放棄するとは言うまいな?」

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