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 大陸北部の港町・ルナータに侵攻中の、異国から来た黒船艦隊。
その砲撃をギリギリ避けられそうな海域に停泊した、一隻の客船。

 「俺らが案内できるのはここまでだ。…さぁ、あとはよろしく頼んだぜ!」
ヨイチ船長からの指示のもと、客船から三・四人乗りの小舟が次々降ろされてゆく。
『………………』
それら小舟に続いて乗り込むは、「黒船に潜入して『征魔の珠』を粉砕」という
困難なる依頼を請けた、勇敢な支援士たち。
…彼らの心の内には、それぞれ違ったものが去来していることだろう。
しかし、目指す目標、願うものはただひとつ。
『征魔の珠を砕き、侵略者を退ける!』

 〈ザパッ…ザパッ……〉
「…いや。『鉱山(ヤマ)の男』が海に出て舟漕ぎとは、笑い話にもならんなぁ?」
「エンリケには感謝しています。
…ジュリアもわたくしも、腕力には自信がありませんからね。」
「ホントだよ。エンリケ、今度もありがとうー!
…それにしても、カネモリは薬ばッか作ってないで、ちょっと鍛えた方がいいと
思うなぁ!?〈ヂト目〉」
「…うぅっ。それができる性分なら、『武人』にもなれたのですが……★」
一艘一艘離れた距離を保ちながら艦隊に向かう小舟の集団。
そのうちの一艘に、錬金術師カネモリと支援士ジュリア・エンリケの姿があった。
〈ドン… ヒューッ……ドパッ!!〉
「わわっ!? 撃ってきたよぉ! どーする?」
「いくら最新鋭の兵器とはいえ、これだけ離れた小舟など狙い撃ちできるものですか。
それに、ある程度近付けば、今度は死角に入って狙うことすらできなくなるはずです。
…このまま速度を上げて、一直線に進んで下さい!」
「わかった! そいやぁぁーーッッ!!!」
四十代とは思えぬ強腕でエンリケがオールを振るうと、小舟は弾かれたように加速!
砲撃の着弾により激しくうねる海面をものともせず、一気に艦隊との距離を縮めてゆく…。

 「…ハァっ、持久力が昔より下がってやがる。…カネモリ、活力薬くれないか?」
「お疲れさまです。…どうぞ。」
主砲の射程圏を越えて接近したカネモリ一行の小舟に、艦隊からの攻撃は一時止まる。
…もっとも、これ以上接近する敵に対しては弩(クロスボウ)部隊が控えているので、
三人も迂闊(うかつ)には進めないのだが…。
「わぁ…、これが異国の黒船かぁ!
でもぉ、軍艦(フネ)の隊列。その2列目と3列目の間が何だかポッカリ開いてるね?
…もしボクが艦隊の指揮官だったら、ちょっと違う編隊にしたいよなぁ~。」
「そうなのか、ジュリア?
俺は山育ちで船のことなどよくわからんから、何とも言えないが…。」
「ボクはフローナの浜ッ子だったから、気になっちゃうんだ。
カネモリ、キミはどう…」
「………………………………。〈ボソボソ〉」
『…カネモリ!?』
彼はそれら黒船の隙間にある空間を凝視して、ブツブツと小さく独り言。
「…ふっ、ふっふっふっ…ふふふふふ……★」
やがてその口元から、正気の沙汰とは思えないアブナい笑いがこぼれ落ちてきたではないか!?
「どーしようエンリケ! カネモリがヘンになッてるぅー!!」
「…いや。こいつは珍しいものを見つけると、ときどきこうなるんだ。
おい、今度は何を見つけたんだ?」
漆黒の瞳に不可思議な輝きを宿して振り返ると…
「魔物を操るだけでなく幻術まで仕掛けてくるとは、敵ながらなかなかですね。
…しかし、それでアルケミストの目をごまかせると思っているのですか!?」
『???』
不敵な笑みをニヤリと浮かべるカネモリ。
深緑と茶色の目を思わず点にしてしまうジュリアとエンリケ。
「…どのように巧妙にその姿を消しても、大量の木材や鉄鋼から発せられる
『土の元素』の気配までは、消すことなどできはしないのですよ。」
「何のことだ、いったい?」
「そうだよ! ボクたちにもわかるよーに説明してよぉ!!」
「エンリケ、ジュリア。
艦隊の隊列に開けた隙間には、恐らくもう一隻の艦船が隠れています。
…この艦隊の指揮官も、きっとそこにいるのでしょう。」
「『もう一隻の艦船(フネ)』!? …あそこにかッ?」
ふたりは改めてその空間を凝視するが、そこには青黒い海面が開けているだけ…。
「えぇ。何らかの幻術で、見えないようにしているだけですよ。」
「そんじゃ、その『幻術』とかナニか、どーやッたら解けるのかな?」
………………………………………………。
………………………。
…………。
「…すみません、ジュリア。そこまではわたくしにもわかりません。」
〈ガタガタッ!!!〉
「…うぅっ、期待してたのにぃ~~★
とりあえず、見えてる船から順に攻略してくしかないね。」
「そうだな。
…そろそろ疲れも取れてきたようだ。行こうか。」
活力薬の効果で体力を取り戻したエンリケが、再び小舟のオールを握り締める。