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 黒船艦隊から送り込まれた異人と魔物の連合軍に蹂躙された、大陸北部の港町・ルナータ。
しかし、町の随所では生き残った市民たちが大戦に参加しなかった中堅支援士とともに
小規模な義勇軍(パルチザン)を結成し、ゲリラ的に侵略者どもと抗戦(レジスタンス)を
続けていた。
『……………。』
そんな最中に、ふたりは町にやって来た。
「…カテリーナ。敵はどのくらいいるのだ?」
「エルンスト様。黒い肌の輩(やから)が5人、獣(けだもの)が7頭でございます。」
「…うむ。
敵陣に踏み込んだならお前は退がり、防戦に徹するのだ。
決着は…この僕が付けてみせる。」
「はいっ! 伯爵様…ご武運を。」

 「…クッ! もはや…これまでか…ッ?」
異人と魔物の軍勢に追い詰められた、満身創痍のレンジャーナイト。
彼の背後には、やはり傷付き疲れ切ったパルチザンの少女がふたり。
「物共よ…、やれ!」
非情の異人兵が号令を下し、魔獣数頭が飛びかかろうとした次の瞬間…
〈ズサッ!!!〉
炎のように波打った大振りの両手剣がその物どもを薙ぎ払い、一刀の元に斬り伏せた!
『!?!?』
パルチザンと異人軍との間に立ち塞がった両手剣の使い手は、重厚な甲冑を身に着けた
金色の髪・青い瞳のパラディンナイト。
「……そこにいるのは…何者だ?
…だが、我らの民に害為す者には容赦などせぬ!」
そう言い放つ彼の虚ろな視線は、まるで敵の存在方向を意識していない。
「…おい。あいつ……、大丈夫…なのか?」
先ほどまで彼の手を取って先導し、今は傷付いた三人をかばうようにその背後へと退いた
銀色の髪・灰色の瞳のメイドに話し掛けるレンジャーナイト。
「お任せ下さいな。伯爵様なら、きっと大丈夫です!」

 『グオォォーーッッ!!!』
ライオンの身体にコウモリの翼とサソリの尾を併せ持った魔獣・マンティコア3頭が
盲目の騎士・エルンストに襲い掛かる!
〈ガッ! ズザッ…〉
しかし、彼の纏う堅牢な鎧の前には大したダメージも与えられず、カウンター気味に
振り出されたフラムベルジェの攻撃に1頭、また1頭と斃れ(たおれ)沈んでゆく。
「…?」
「…!」
手駒を失った異人どもは声を潜め、目配せと首振りだけを合図に四方から一斉に突撃を
仕掛けてくるが…
〈ザッ! ドスッ!!〉
近付く足音。空気の流れ。血なまぐさい匂い。
失われた視覚以外、全ての感覚を研ぎ澄ませて敵の動作を読み取る
エルンストが振るう剣は、長いリーチで浅はかな者どもを捉えて打ち斃す。
「…ウグッ……!」
それでもダメージの浅い1人の異人兵が起き上がり、あろうことか無防備なメイドに
向かって右手のシャムシールを振り降ろすではないか!?
(万事…休す……!)
彼女の背後で、自らの最期を悟ったパルチザンたちが固く目を閉じる!
〈バッ…カキンッ!〉
『……?』
金属どうしのぶつかり合う予期せぬ音に、そろりそろりと目を開くと…
「世の中は、そんなに甘いものではないのです!!」
メイドはどこから抜き出したのか両手に一振りずつのショート・ソードを持ち、
それらをクロスさせて異人の一閃をしかと受け止めている。
「…すまぬ、カテリーナ。」
「いいえ、伯爵様は立派に戦い抜きました!」
主君の瞳に映らぬ笑顔を少しも崩さず、双剣使いのメイド・カテリーナは両手のバゼラードを
スライドさせて敵の剣撃を押し返し、直後にそれらの切ッ先を胸と腹に突き立てて
止めを刺したのだった。
「…あら嫌だ、エプロンに返り血が少し飛んでしまいました。」
「…気にするな。着替えなら後で用意する。」
「伯爵様! 一介のメイドとあろう者が、曲者の血など浴びることはありえないのです!
あぁ…。わたし、恥ずかしいです…★」
『???』
せっかく命拾いをしたというのに、レンジャーナイトとパルチザンの少女たちは
今目の前で起こった出来事をすぐには信じられず、互いに首をひねり合うばかり…。

 それから二・三日後。
「勇敢なる我が同士たちよ!
我らパルチザンは今こそ船を出して、黒船の脅威に立ち向かうのだ!
…我が命の恩人・クラウゼヴィッツ伯爵とともにッ!!」
『オオォーーーッッ!!!』
エルンスト一行に命を救われたレンジャーナイトの喝により、士気昂ぶるパルチザン一党。
彼らは戦乱を免れ残った三隻の大型漁船に分乗し、軍勢の手薄な海岸から
黒船艦隊の展開する沖に向かって漕ぎ出してゆく。
それら船団の先頭の船に、エルンストとカテリーナの姿があった。
「伯爵様、いよいよでございますね!」
「…うむ。
……カテリーナ。僕は、『貴族の義務』を果たせているだろうか?」
「大丈夫ですよ!
伯爵様のご活躍があったからこそ、パルチザンのみなさまはより結束を固めて
あの禍々しき黒船に反撃する勇気を得たのですから。
伯爵様の強いお心は、きっとみなさまが頼りになされているとわたしは思います。」
「…ならば僕は、なおいっそう彼らの信頼に応えなければならぬ。
この敵の姿さえ見ることかなわぬ身ひとつで…」
「エルンスト様はお独りではございません!
敵の数や姿形なら、わたしが見極めてさしあげます。
敵の居場所までの道のりは、わたしが案内してさしあげます。
たとえ伯爵様が敵を討ち損じたとしても、わたしが…。
…申し訳ありません。身分をわきまえない、過ぎた言葉でした。」
「…構わぬ。
リックテールからルナータまでの道中も、お前にはずいぶん世話になった。
…これからも、頼む。」
「はいっ、伯爵様!」

  盲目の騎士・エルンストと双剣使いのメイド・カテリーナ。
…ふたりの進む道の前には、幾多の困難苦難が待ち受けていることだろう。
それでもふたりは手に手をとって、目指すものに向かって歩んでゆく。