※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

「……水柱に氷の霧? マージナルの魔法か……」
奪った敵船で交戦しつつ、戦線の奥、円陣を組む8隻のうちの一つに接近するティール達。
ちょうど目の前にある味方の小船が、水煙にまぎれて突き進む姿が目に映った。
そして、煙が上がる前に一瞬見えた姿。
遠目からなので断定する事はできないが、小船に乗っているたのは、モレク鉱山で同行したディンとエミリア、そして、その前に盗賊討伐隊として共に戦ったレオン、クリス、アルトのチーム。
―奇妙な縁もあるものだね―
多くの支援士が参加して入る戦いとはいえ、めぐり合わせというものはかくも奇妙なものである。
ティールは目の前の状況を確認すると、砲手を務めるフェイタルスキルの元へと駆けた。
「あそこ! 味方が敵艦に乗り込もうとしてる、援護してあげて!!」
指を向けた先にいるのは、船上からクロスボウを構えてずらりと並ぶ異国の兵士達。
水煙にまぎれた小船を狙うには苦戦しているようだが、魔法にも持続限界と言うものがある。
「わかった」
幸い、自分たちのが狙っている敵艦でもある。
すでに砲身は敵艦へと向けられており、準備と言っても兵士達を狙う位置に微調節を行う程度だ。
「私は先に行くから!!」
どうやらこの艦に乗っている人達は、充分な強さを持っている。
周辺の小船にいた味方も、この艦が味方が奪ったものだと気付き、何人かが加勢のために乗り込もうとしている。
……一人離れても、問題は無いだろう。
それだけ考えて、ティールは敵艦までの直線上にいる敵を、射抜くような瞳で見据えた。
「……ブレイブハート、脚部集中」
そして、炎のオーラをブーツのように足に纏い……海上へ、駆け出す!
「おい!! 泳いでいく気か!?」
―距離は大した事ない、一回か二回……―
仲間の制止も振りきり、向かう先は……空中を舞う魔物の”頭上”
手近にいたガーゴイルの角を掴み、そのまま体勢を入れ替えてその背中に足を乗せる。
そして、振り切られるその前に、足に纏っていたオーラを更に凝縮、集中し、目の前の敵艦に向けて跳び上がる。
「バースト・ステップ!!」
直接背中に火柱を伴った蹴りを打ち込まれ、爆炎と共に墜落していくガーゴイル。
ティールは、その反動を使い先へと突き進み、失速が始まる頃には再び適当な敵の身体をむんずとひっつかみ、同じように体勢を整えて、その背に足をつけていた。
「……パピーというより……フライドラゴンだな……って、見てる場合じゃない!!」









「ちっ、霧が晴れたか」
「だがこれだけ近付けば充分だ!」
小船を覆い隠していた氷の霧が晴れ、その姿があらわになる。
敵艦上のクロスボウ部隊は再び照準をディン達に合わせ、文字通り矢継ぎ早に撃ち出してきた。
「フローズンピラー!」
しかし、船を旋回させつつ氷の壁を作り出す事で、なんとかそれらを回避する。
「ヒュゥ、詠唱破棄(ショートカット)ってのは便利な能力だな」
「今できるのは下級呪文のみじゃがな。 ……っと、全員伏せるのじゃ!」
その直後、先程からこちら側に近付いて来ている戦艦から、砲撃がこの場に割り込んできた。
―それは、先程味方が奪った戦艦からの攻撃。 それは真っ直ぐに船上のクロスボウ部隊の足元へと直撃し、そのうちの数名を甲板ごと粉砕していった。
「あそこ! 錨がおりてるよ」
「アルトでかした! 全員、あそこから乗り込むぞ!」
その隙に戦艦に横付けて、降りている錨につかまり登り始める。
―女性二人は一応スカートだということで後回しになっていたりするのはお約束と言うべきだろうか。
「なにをしておる、急げ!」
大砲の直撃から逃れたらしい敵兵が、錨をつたって登るディン達にクロスボウを向けていた。
こちらの魔法が届く距離まで接近したとはいえ、それができるのは二人。 相手はまだそれ以上の数の兵がおり、この差ではさすがに対処しきれない。
―が、丁度その時だった。
「ブレイブソード!!」
上空から三日月状の青白い衝撃波が走り、それは残っていたクロスボウ部隊を甲板ごと船上から叩き落とした。
それに一瞬遅れて、黒いワンピースに白いコートのような衣装を身につけた少女が、”ぶぎゅっ”とでも聞こえてきそうな勢いで倒れた兵士の背中に舞い降り、軽く乱れた髪の毛を正している。
「ティール! どこから飛んできたんだ!?」
いち早く錨を登りきったディンが、彼女の姿をその目で確認するがいなや、驚いたような声でそんな事を口にする。
―それはそうだろう、彼女が先ほどまで乗っていたはずの戦艦は、まだ少し離れた位置にある。
服がまったく塗れていないところから、空中を飛んできた事になるのだが、いくら身軽な者でも一気に来れるような距離ではない。
「その辺を飛んでた魔物を踏み台に、ちょっとね。 それより、久しぶりだね、ディン」
「あいかわらずとんでもないお嬢さんだな、パピードラゴンは」
次に登ってきたレオンが、爽やかな笑顔を浮かべて口を開く。
「……レオン、クリス……それに、エミィにアルトも……また、貴方達と戦える日が来て、本当に嬉しい」
残ったクリス、エミリア、そしてアルトも甲板まで登りきり、かつて世話になった少女との再会を喜ぶ一同。
ティールもまた、長く会っていなかった友人との再会に、喜びを覚えているようだった。
―ただ、ディンとエミィのチームと、レオン達三人のチームは、お互いにお互いがティールの知り合いである、ということは知らなかったらしく、そのあたりで軽く驚いていたのは別の話。
「さて……色々話したい事もあるけど、喜ぶのは後にしようよ」
「だな、敵さんも出てきたみたいだし……」
その喜びも束の間に、船の内部から出てくる剣を携えた兵士達。
人間は3人、背後に待機しているマンティコアとガーゴイルも含めれば、相手をするべきは大体10体といったところか。
あまり前衛に出ている船と大きさ自体は変わらないので、先程殲滅した兵も含めればおそらく人間はこの3人で最後だろう。
「……よくかんがえたら、このチームすごく安定してませんか?」
ふと、自分達の布陣を見てそんな事を漏らすクリス。
その声に反応するかのように、他の者も同じように周囲を見回す。
『盾』のディン(パラディンナイト)クリス(レンジャーナイト)
『剣』のティール(ブレイブソウル)レオン(セイクリッド)
『砲』のエミリア(マージナル)アルト(ネクロマンサ)
回復手段という点はパラディンナイトしかいない、と言う点を除けば、確かにある意味理想的な組み合わせかもしれない。
「……そうじゃな。 よし、後方支援は私達にまかせるのじゃ!」
愛用の杖、『サンタマリア』を真っ直ぐに敵に向け、大きく声を上げるエミリア。
「レオン、クリス、ディンさん、ティールちゃん、おもいっきりやっちゃって下さい!」
いつもの微笑みに少し不敵な物を潜ませて、前衛の四人を鼓舞するアルト
「わかっている。 一気に行くぞ!」
背にある、片刃剣の技術が使われた大剣”天羽々斬”を解き放つディン。
「……大丈夫、みんな、強いから……私も、戦える!」
軽く瞑想するように目を閉じ、長き相棒であるハルバード、”飛竜”を握りなおすティール。
「船の上に上がればこっちのもんだ、俺の足についてこれるか?」
ふっ、と笑みをこぼし、ベルトに留めていた双剣”双龍牙”を鞘から抜くレオン
「一歩一歩、僕らは進む。 それを阻む者には、容赦しない!」
愛剣のフランベルジュを構え、一歩前へ踏み出すクリス。

『行くぞ!!』