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「はあああっ!!」
ディンの剣がマンティコアの身体を貫き、そのまま引き抜く流れから背後にいる異人の兵士に斬りつける。
だが、その後の一瞬のついて横からガーゴイルがその爪を振りかざし接近していた。
「我が手に宿りし青の精霊よ 全てを貫く槍となれ アイスニードル!!」
しかし、その腕がディンの身体に触れる直前に、ガーゴイルの身体を貫くとまではいかなくとも、大きく吹き飛ばした。
「我が求むは仇なす者の破滅―」
その間にアルトは詠唱しながら移動を始め、一度に多くの敵を巻き込める位置を探し始める。
彼女のその詠唱を食い止めようと、一人の兵士が勢いよく跳びかかってきたが……
「悪いですが、そうはいきません」
フランベルジュを振るい、その腕ごと剣を弾き飛ばすクリス。
そのままその敵の腹部に蹴りをいれ、敵がやや密集している地点へと放り込む。
「ほらよ、お前もだ!!」
それとほぼ同時に、先程エミリアの魔法で吹き飛ばされたガーゴイルに、ミラージュスローから双つの月の連撃に繋げ同じ地点に叩き落とすレオン。
「雷の精霊よ 我が前に在りし敵を包みこめ! サンダーコート!!」」
「―今ここに其の力を以って 粉砕せよ!! シャドウグローブ!!」
アルトが詠唱の後半に入る丁度そのタイミングでエミリアも詠唱に入り、二人の魔法はほぼ同時に発動される。
そして、エミリアの魔法により半径3M程度の範囲が雷に包みこまれ、それと同じ地点にアルトの杖から発せられた、先ほどより数段大きな黒き破壊球が叩きこまれ、そこに放り込まれた者達は纏めて葬り去られる。
そう思えたが……
「オオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「ちっ、まだ生きていたか」
その中から、一匹のマンティコアが咆哮と共に、背にある翼を羽ばたかせ、大きく舞い上がった。
全身に雷によって焼け焦げたものと、シャドウグローブの衝撃による傷痕を見せながらも、血走った瞳でディン達に狙いを定めている。
「ブレイブスピア!!」
―だが、その直後だった。
青白い炎の槍がそのマンティコアの頭を貫き、間もなくして、再び船の上に墜落する。
その一撃は脳を直接貫いたのか、すでに絶命している。
「ティール……」
その槍が飛んできた方向に目を向けると、魔物の血と人間の血が池のように溜まったその上に、別のマンティコアの屍を横に、槍を構えるティールの姿があった。
……マンティコア一匹だけなら、ディンやレオンでもなんとか倒せるレベルだが、その光景の作用か、その様はまるで黒い服を纏った死神が魔物を殺した後のような姿に見えていた。
「これでこの船も全滅、かな?」
「ん、ああ……そうだったな」
一瞬言葉を失っていたディンだったが、ティールの声に我に帰り、なんとか声に出して返事をする。
その様子を見ていたエミリアは、一度気を取り直すかのように咳払いをし、全員の注意を自分の方へとむけた。
「……敵が片付いたのなら、私はこいつの中を調べようと思うのじゃが……」
「ん、奇遇だね。 私もこの船は怪しいと思ってた」
海図上で見る敵艦の位置と、実際の位置。
海図自体が描かれたのはもう数時間前になるはずだが、この8隻はそこから全くと言っていいほど動いていない。
いや、錨を下ろしているくらいなので、動かす気がない、と言った方が正解かもしれない。
そうなれば、やはり内部に何かあるだろうと疑うのが普通だろう。
「よっし、じゃあエミリアとディン、それとティール、調べて来てくれ。 俺達は中に敵が入らないように見張っておく」
「うむ、そうじゃな。 まかせたぞ」
……人員の割りふりは互いに『剣』『盾』『砲』がそろうような形であると同時に、やはり普段から連携で慣れているチームであるから、といった理由からだろう。
レオン達3人は内部への扉を背にするかのように並び、ディン達3人はその扉から戦艦の奥へと入りこんでいった。






「―あった、やはり予想通りじゃ!」
奥の部屋に入り、まず目に入ったのは、台座の上に置かれた何かの魔法陣が描かれた円形の板と、さらにその上に飾られているのは水晶のような輝きを放つ一つの宝珠があった……が、それは光の幕のようなものに包まれている。
また、その台座を囲むように色違いの3つの宝珠が飾られていた。
「……やっぱり何か企んでたのか……」
「それで、この魔法陣、なに?」
「うかつに触らぬ方がいいぞ、私が見る」
魔法に関しての知識は、おそらく一般人とほぼ同等程度とも言えるティールとディンの二人。
エミリアは懐からメモ用紙を取り出して、その上の魔法陣に描かれた術式を読み解いていく。

「水晶を魔力媒体としているのは間違いないじゃろうな、となるとこの部分の線はこの紋章とのリンク、さらに枝分かれしてこっち側に……いや、でもこの様式は大陸のものと少し違うようじゃな、だとすればこの部分のリンクはこう切り替わり、繋がっている紋章が差す意味は、炎と大地。 なるほど、陣の様式は違うようじゃが、どうやら魔術理論の上では同じ形式。 炎と大地のメンタルを統合し、『幻』の効果を発生させているようじゃな。 じゃが、この程度のサイズの魔法陣だけでは、期待できる効果などたかがしれている……となると、やはり他の離れたところに配置した陣とリンクさせるための術式が……あった! 台座も術式の一部にしているとは中々高度な仕掛けを施しているようじゃな。 じゃが、気になるのはこの程度の幻覚なら星を8つも用意せずとも、5つで充分のはず。 わざわざ八亡魔法陣にしたてる理由は……」

「おいエミィ、いいからそれはなんなんだ!?」
長時間メモ用紙の上にペンを走らせ、ブツブツと小さく呟くようにしていたが、流石に理解不能な領域の一人ごとに頭が痛くなってきたのか、ディンはいらついた様子でエミリアに声をかけた。
「おお、すまぬな。 どうやら、円陣を組んでいる8隻の船全てにこの仕掛けが施されているようじゃ」
てへ、とでも言いそうな表情を浮かべつつ、解説を始めるエミリア。
……そのあたりの態度にも多少なれてはいるが、緊張感のないその行動はディンには頭痛の種としてしか感じられなかった。
「……やっぱりね、仕掛けの内容はさっぱりだけど、何かの儀式でもやってるんじゃないかって思ってた」
「うむ。 ……色々とふに落ちない点もあるが、どうやらこれは視界から物体を消滅させる幻覚……恐らく、魔法陣の『星』となる8隻の中心に、隠しておきたい何かがあるようじゃな」
「隠しておきたい何かって……」
「……十中八九、敵の旗艦だな。 解除は出来るのか?」
「それは問題ない。 簡単に手出しは出来無いようにしているつもりのようじゃが……」
そこまで言うと、周囲に配置された宝珠のうちの一つに両手を置くエミリア。
「ディンはそっち、ティールはそっちの球を頼む」
一瞬首をかしげつつ顔を見合わせ、言われた通りに残った二つの宝珠に両手を乗せる。
「まず私、次がディン、最後がティールの順番で右に回すのじゃ」
『わかった』
エミリアは二人の返事を確認すると、まず自分の目の前の宝珠をぐるりと回転させる。
それを確認したディンも自分の宝珠を回し、次に、ティールも同じようにそれを回した。
……すると、三人が手を離すと同時に3つの宝珠は光を失い、中央の宝珠を包んでいた光の幕が消え去っていく。
「よし、仕掛けが単純で助かったのじゃ」
「……なんでわかったんだ? 順番とか……」
「シールドを司るしかけも、全部この魔法陣に描いてあった。 こういったものは、何かあった時に解除できるようになっているものじゃからな。 方法など探せば見つかるものなのじゃ」
「へぇ……」
「あとはこの水晶を破壊すれば、他の陣とのリンクが外れて一気に幻覚も崩壊するはずじゃ」
コンコン、と杖の先で台座の上の水晶を叩くエミリア。
とりあえず単純に理解できるように要約され、頭を抱えていた手を離すディン。
そして、一呼吸おくと、水晶に向けて天羽々斬を構え……
「はぁっ!」
一撃の元に切り裂き、切り裂いた直後に水晶は灰のように粉々に散っていき、魔法陣が放っていた輝きも瞬時に消えていった。
幻覚魔法の効果が失われた、という証拠だ。
そこまで確認したディン達3人は、急いで甲板でまつレオン達の元へと駆けて行った。
「どうだ! 何かあったか!!?」
「……ああ、ドンピシャだったみたいだ。 アレを見ろ」
呆然とした顔をしつつも、そう言いながらレオンは海のある一点を指差す。
それは、いままで疑問しか呼ばなかった8隻の中央に位置するの空白部分。
……そう、空白部分”だった”場所
「―……これは!!」
そこにあったのは、黒艦。
しかし、今まで相手をしてきた護衛艦や、この結界艦のような小型のものでは無い。
それこそ、海に浮かぶ要塞のように巨大な姿で、5人の目の前に悠然と浮かび上がっていた。
「やっと、黒幕の元へと行けそうですね」
「ああ……行くぞ!」
武者震いだろうか。 どことなく嬉しそうな表情で全身を振るわせ、そんな声を張り上げるレオン。
アルトは楽しんでいる子供を見るような顔でくすりと笑い、クリスはやれやれ、とばかりに肩をすくめている。
ディンとエミリアも、その様子を見てレオンの性格を察したのか、苦笑するような顔を浮かべていた。
「待って!! 他の艦が動き出してる!!」
―だが、そんなどこか和むような情景も束の間。
ティールが声を張り上げ、近くにある結界艦が動き出した事を告げる。
「……結界が壊されたからじゃないんですか? もう一箇所に留まっている意味が無いですし……」
「……いやまて、それにしても動きが変だ。 それなら敵を沈めに向かってくるはずだろう」
アルトが冷静な意見を言ったのに対し、目に見える範囲の船の動きを見るレオンがそう口を挟む。
一隻はこちら側に向かってくるような気配があるが、その他はまったくそんなそぶりも見せない。

「……待って……あの魔法陣……六亡星で組むとリンクがこう切り替わり……それに五亡星なら……!!」

……エミリアは先程見かけた魔法陣を思い返しながら、何かに気付いたらしく、表情を厳しいものに一転させた。
その様子を目にしたディンは、思わず気圧されるように一歩後ずさってしまう。
「そうか! あの魔法陣、星の数で意味が変わる仕掛けになっておったのか!!?」
「ど、どういうことだ!?」
「……見たところのあの船の速度なら、もうそろそろ六亡魔法陣が完成するじゃろう……見ろ」
『!!?』
くい、とあごで敵旗艦の方へと向くように指示するエミリア。
……そこで五人の目に見えたものは、戦艦を囲むように立ち昇る赤色のオーラの壁だった。
「六亡陣儀式結界魔法<ruby>『炎』の隔離結界<rt>ファイアーウォール</ruby>じゃな。 うかつに近付けばこっちが灰になる」
「……おい、今度はどうすればアレを解除できる?」
「アレはおそらく6隻の戦艦で構築している魔法じゃな。 ……全部で8隻じゃったから、私達が落として残り7隻……」
「いや、6隻だ。 見てみろ、あっちの方で一隻沈没して行くのが見える」
かなり遠くではあるが、確かに1隻だけ海に飲込まれていくように沈んでいく戦艦がある。
「…だったら、あと1隻潰せば―いや、おそらく今度は五亡魔法陣で<ruby>『大地』の隔離結界<rt>ガイアフォース</ruby>を組んでくるな。 となると、あと2隻……4隻以下になれば、あの陣では魔法の構築は不可能じゃ」
「2隻か……どうする?」
「決まっておろう、手近にいる2隻を破壊するのじゃ!」