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 大陸北部の港町・ルナータに侵攻中の、異国から来た黒船艦隊。
そのうちの一隻と対峙するカネモリ一行を乗せた小舟。

 〈チャッ! チャチャッ!!〉
軍艦の甲板上では、異人兵どもがクロスボウの弦を張り、矢を次々と装填している。
「…エンリケ。わたくしの呪文詠唱が完了したら、全速力で突ッ込んで下さい。」
「わかった。今の俺は活力薬のおかげで元気バリバリだ!」
力役を買って出てくれた友に指示を出して、静かに呼吸を整えるカネモリ。
「…偉大なる錬金術の祖・ヘルメス=トリスメギストゥスよ、我(われ)が
水に宿りし精霊・ウンディーネの力借ること許し給え。
…水の精霊・ウンディーネよ、我に守りの盾与う可し(べし)。
『防御水盾《アクア・シールド》』!」
次の瞬間、海の水が球体となって数限りなく浮かび上がり、それらは互いに結合して
小舟全体を覆う大きさの分厚い水壁となった!
「せいやぁぁーーーッッ!!!」

 エンリケの剛腕で一気に加速し、黒船側面に向かって突進する小舟。
〈ヒュン! ヒュヒュヒュンッ!!〉
異人軍のクロスボウ部隊が強烈な矢の集中斉射を仕掛けてくるが…
〈プツッ…プツプツッ…〉
水壁はそれら無数の矢を突き立てたまま、貫通を決して許さない!
異人兵どもはムキになって急接近するカネモリの小舟に矢を射掛けるが、
それが仇となって、弾幕に偏りが生じてしまった。
これ幸いとばかりに他の小舟たちもカネモリの後を追って次々と接近、
ハンターやスナイパーの乗る舟からは反撃の矢が繰り出され、
矢の装填に時間のかかるクロスボウ兵を少しずつ削り取ってゆく…。

 「…用意はいいか?」
「うん。せーのッ!」
〈ブンッ!!〉
いち早く艦船の側に到着した小舟から足の裏をエンリケに押し上げられ、そこに自らの
脚力を上乗せしたジュリアが高くジャンプ!
〈ヒュッ……カッ!〉
彼女は空中でフック付きのロープを投げ上げ、先端のフックを船縁に引っ掛け固定すると
そのままロープをつたって登り、ヒラリと甲板に躍り出る。
…そして風のような素早さで、残るクロスボウ隊を瞬く間に仕留めてしまった!
「みんなぁー、もう上がって大丈夫だよぉーー!」
ジュリアは甲板から次々にロープを海面へと垂らし始める。
ロープの端を船体に結び付けるのは、港町で育った彼女にとっては造作もないことだ。
 「…うぅっ……、ディアブロよ…やるのだッ!!」
〈ワサワサッ…ダッ!!〉
倒れた弩兵が絞り出した叫びに応えるように、空中から竜の翼を背負った大柄な体躯の
獣人が飛来して、ジュリアの背後に力強く着地!
「グルルルル……」
「…………………」
振り返りコリシュマルドを抜き放った彼女は、虚無の心を宿した戦闘モード。
〈ヒュヒュヒュヒュッ!!!〉
ディアブロが拳を振り上げたときにはすでに「死点突」の技が極り、
その額・喉笛・胸・腹からドス黒い血が噴き出していた!
「………………………。」
無言で剣を鞘に収めるブレイブマスターの目前で、哀れな獣人はドサリと斃れ伏した。

 先陣を切って艦に乗り込んだジュリアが仕掛けたロープを登り、
支援士たちが次々と甲板に上がってくる。
自らロープを登る体力のないマージナルやネクロマンサたちも、先に登った支援士が
ロープを引き上げることで後に続いて船上に到達する。
一方、船上の異変に気付いた異人軍も侵入者を迎撃すべく兵力を集結し、
甲板へと一気に送り出す。
『ウォワァァーーーッッッ!!!!』
こうして黒船の甲板は、大乱戦の場と化したのだった!
「カネモリ、ボクたちは…どーする?」
「いま内部はかなり手薄な状態となっているはずですから、この場は他のみなさんに
お任せして入り込みましょう。
…その間に、例の『幻術』の謎を解き明かすのです。」

 「うぉりゃぁぁーーーッッ!!」
艦内に残っていた戦力をバトルハンマーで次々と叩き伏せるエンリケを先頭にして、
三人は奥へと進んでゆく。
(…!)
「ふたりとも、ここで兵を足止めして下さい!」
「どうした!?」
「先ほど通り過ぎた船室の向こうから、わたくしが知らない鉱石の気配を感じたのです。」
「キミが知らない…鉱石(いし)?」
長い研究生活であらゆる物質についての知識を蓄えたアルケミスト。
その領域を越えて存在している鉱石は、未知の幻術に結び付いている可能性が極めて高い。
「わかった、行ってこい!」
「ここはボクたちが食い止めておくよ!」
支援士ふたりに戦闘を任せ、謎の船室に向かうカネモリ。
〈グッ…〉
「…鍵が掛かっているのですね? 泥棒みたいで気が進まないのですが…。」
彼が複雑な表情をしながら袖の中から取り出したのは、鍵の解除(ピッキング)の道具一式。
………………………………………………。
……………………………。
………………。
〈カコン〉
「…ふぅ。手間を掛けさせますね…。」
鍵穴から細く折れ曲がった工具を抜き取り、真鍮で出来たドアノブに右手を掛けたとき、
〈パシッッ!!!〉
稲妻に打たれたような衝撃が、カネモリの全身を襲ったではないか!!?

 〈パシッッ!!! …ドサッ…〉
艦内に残っていた異人兵。
その最後のひとりを叩き伏せた直後、
ふたりの支援士の背後で不吉な音が響き渡った。
『!?!?』
彼らが一呼吸置いて振り返ると……
『!!!』
……そこには黒い羽織を纏ったひとりの中年男が無言で横たわっていた。
「…おい…、まさか!?」
「…冗談…、だよね!?」
ふたりが駆け寄って彼の身体を抱え起こすが、
「………………」
ぐったりとしていて何の反応も示さない。
『カネモリぃぃーーーッッ!!!』