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馬が走っていた。
それも一匹では無く、馬車を引くためのものでもない……純粋に、人一人が乗騎するために訓練された軍馬が数十頭。
その先頭を駆るのは、武人として、支援士して名声の高い十六夜の名家”竜泉”の嫡男、クウヤ。
後に続く者達は、彼の家系で継がれている道場の門下生達だろう。
「おおおおおおお!!」
進行するその方から向かい来るワイバーン達に放つのは、『無銘の剣』による一閃。
馬上からの一撃で、次々と翼竜を斬り裂いていくその様は、初代”竜泉”の姿を彷彿とさせる。
「若様、見えました!!」
「分かっている、このままルナータに突入するぞ!!」
港町ルナータとフィールドをつなぐゲート。 それはすでにところどころが崩壊し、見る影もなかった。
だがそんなことに構っている時間などない。
今は人間には手が出せない飛行型の魔物だけが大陸内部まで入りこんでいるが、真の危機は地上を駆ける魔物が進入を開始すること。
彼らは十六夜に攻めこんできた飛竜族、魔鳥族の魔物を討伐し、ある程度落ちついた末に他の武人達に町を任せると、すぐさまルナータへと向かうべく馬を走らせていた。
それでも、時間が足りない。
一秒でも早くたどり着き、最前線で侵攻を止めなければ……常にそう思い続け来たが、その千秋の思いもようやく終わりを告げた。
……次は、ルナータの魔物の殲滅。
「一番隊はこの周囲を!! 二番隊は南部!! 三番隊は北部!! 四・五・六番隊は私と最前線!! だが状況に応じて判断し行動せよ!!」
『はい!!』
指示に従い、ルナータ内に散っていく武人達。
クウヤも十数人を引き連れ、ゲートからこの戦場の最前線である、港へと馬を走らせる。
その際に途中にすれ違う魔物も斬り伏せ、怒涛の如く突き進んでいくが……
「―くっ!!」
突如足元に巻き起こった火柱に、平静を失った馬が暴れ出し地面に振り落とされた。
しかしとっさに体勢を立て直し、なんとか両の足で地面に降りる。
目の前には、地面に這い蹲るように構えるサラマンダーが数体。
その内の数匹が、地面に落ちたクウヤに向けて同時に炎を吐きかけた。
「若様!」
「散空裂破斬!!」
やや無理な体勢からだが、炎の正面に”風の刃”を飛ばし、その方向を逸らすことで、紙一重の位置で回避する。
そして完全に体勢を立て直し、再び炎を吹くべく息を吸い始めるサラマンダーの中の一匹の首を斬りおとした。
「私に構うな!! お前たちは周囲の味方の援護だ!!」
「は、はい!!」
再び指示を受け、周辺にいる魔物へと散っていく門下生達。
だが、クウヤはそれを確認する間も惜しむように”修羅”の域へと入るべく『無銘の剣』をゆっくりと構える。

―……ホタル殿、私は貴方の剣の完成を見ずして死ぬ事はない……必ず、無事で帰る―

それは、十六夜を立つその前に誓った、一人の女性への言葉。
今一度その一言を想い帰し、スッと目を閉じた。
周囲にはその行動を”隙”と見たのか、魔物が次々と群がり始めている。
……だが……


「極意! 空牙竜王旋!!」


一子相伝、竜泉の『空』の字を継ぐ頭首のみに許された秘伝の奥義。
全身に嵐のメンタルを纏い、並の相手ならば掻き消えて見えるような速度を持って周囲の空間を”喰らい尽くす”風竜の牙。


―今、一筋の風が、ルナータで吹き荒れる