重い荷物をひきずり、クロッセルへと到着する。
「真っ白なシーツと清潔なベットの上で寝たい。」
「着いてからの第一声がそれですか…セオさん。」
少し呆れながら、彼を見る。
「それじゃあ、まずは部屋をとりに行きましょう。」
宿屋で部屋を確保してから食事を取り、各自聞き込みと買い足しへ。
「竜?しらないな。大体にしてなんで町中で魔物を探すんだい?」
そういって、ほとんどの人が通り過ぎる。
「参ったな…。」
一日目が終わり、二日目の朝。
夜明けと共に起きたのは、15歳くらいの少年。
うつむきながら、町中を歩く。
「セーオー!」
聞き覚えのある声、ふと後ろを振り向くとやはりそこにはイルの姿。
「何?見つけた?」
「ううん。でもね、卵が跳ねてるんだって!」
「そんなバカなこ…。」
跳ねている。卵が、フライパンから必死に逃げている。
その状況に唖然とし、目をつむる。
「…夢だ夢。卵が跳ねるなんて、まずありえない。」
もう一度、目を開く。
卵は跳ねてこっちへ近づいてくる。
フライパンを持ったコックが赤い顔をして走っている。
その後ろから、ライがもの凄い速さで走ってくる。
「…あれ?ライだよね。ライ。」
「ライだね。ライ。」
ついにはコックを追い抜き、跳ねている卵を手で取りそのまま逃走。
「…えぇ!?ちょっと!」
「た、卵ドロボウ!」
「ラーイ戻ってこーい!」
走りながら呼びかけるが、停まろうとしない。
「はいコックさん。卵代。あれ、もらうね。」
そういってから、彼女は二人を追いかける。
裏路地に入り、ライとセオを見つける。
「はぁ…ライ。何考えてるの…。」
「いや…すいません。せっかく見つけた竜の卵がゆで卵になりそうだったので…。」
「これが、竜の卵ねぇ…。本物?」
イルが首を傾げながらたずねる。
「ええ。さっき、これ。店内で話したんですよ。」
「話した?」
「はい。お茶を飲んでいたときに、『こんなのでゆでられてたまるか!』って。」
「面白いね。話してくれないかな?」
「………。」
卵は何も話そうとしない。
「むー…。」
「寝てんじゃねぇの?」
「とりあえず、竜は確保できました。次は、ランプですね。外で話し合うのは寒いので
 酒場で食事を取りながら決めましょう。そろそろお昼です。」
防寒具を着ていても寒いので、酒場へ行き暖かいスープと飲みパンを食べる。
「支援者さんは何処から来たんだい?」
「リックテールからだよ。」
「ほう、リックテールからか。その歳でここまで来るとはたいしたものだよ。」
「マスター。ランプ知らない?ランプ。」
イルがマスターに聞く。
「ランプ…かぁ。いや、ここでは見ないし、俺も実際見たことは無い。」
「そう…。」
「まぁ、ゆっくり探せばいいだろ。一つは見つけたんだから。依頼受けながら進めばいいだろ?」
「依頼受けながら?」
「金だってそう無限にあるわけじゃないんだ…。すこし遅れるけどいいライ?」
依頼のリストを見ながら、彼はライに尋ねた。
「えぇ。いいですよ。そこまで僕が決めることではないですし。」
「んじゃあ。マスター、これ受ける。」
「おいおい、大丈夫か?そんな細身で、しかも寝れば死ぬぞ。」
「寝なきゃいい話。」
このとき受けた依頼は魔物の討伐。
「俺一人でいい。弓は視界悪くちゃ放っても矢の無駄だから。イルとライは待ってて。帰ってくるから。」
「わかった。」
防寒用の帽子を被り、茶色いボロボロのコートを着て魔物の討伐へ出発する。
「雪か。」
先ほどまで降っていなかった雪が少しずつ降ってくる。
「大丈夫かなぁ…。一人で。」
「…雪も降り出しましたしね。」
不安そうにしている二人に、マスターが尋ねる。
「それほど、信用できない仲間ならどうして彼と此処に来たんだい?報酬のためか?」
「違うよ!違う…。」
「なら、帰ってくるって信じて待ってやりな。あの子は帰ってくるって言っただろう。」
最終更新:2007年04月18日 19:29