場所は変わって、クロッセル周辺の雪原。
そこに、吹雪の中、コートを羽織った少年が一人。
「…うーん。ざっと20か、ゴーグル持ってきててよかった。」
利き手の左手には、真っ黒な剣。
足音は風が掻き消し、金属音が微かに聞こえるだけ。
「いいな…ずごい暖かそう。」
そう呟くと、尖った爪が突き出される。
それをかろうじて剣で防ぎながら反撃を繰り出す。
「別に俺は殺し合いに来てるんじゃないんだけどね…
どうも話し合いは無理みたいだから仕方が無い…。」
吹雪の中、鮮血が雪を赤く染める。
「しぶとい…。」
先ほど引っ掻かれた右腕を押さえながら言う。
「ガルルルルルルル…。」
「元気いいのね。こっちはもう、体力ないのに…。」
熊ほどの巨体がジャンプし、尖った爪が迫る。
「…さようなら。物分りが悪いウサギさん。」
巨体が雪原に倒れ、魔物の血が雪を溶かす。
「ガルルルル…!」
巨体の近くに走ってきたのは、デカウサギの子供。
「………。」
無言のまま、持ってきた医療道具を引っ張り出し応急処置を開始。
「ごめんよ、チビ。一応応急処置したから大丈夫だと思う…。」
それだけを言うと、その場を後しにした。
傷口を押さえながら吹雪の中を歩く。
ただでさえ、視界が悪い。
そんな状況の中で一本の矢が飛んでくる。
「…イル、じゃないな。あんなへたくそじゃないもん。」
周囲を見回すと、雪の積もった岩の陰から見ているものがいた。
「…くそ。」
今度は頭に狙いをつけようとするスナイパーだが先ほどの少年は居ない。
「危ないなぁ、それにへたくそだ。」
後ろから、声が聞こえる。
少年の剣が深く足に突き刺さる。
「誰に言われて、何のためにやった?」
少年は笑っている。
「あ。あぁぁ…」
「答えろ。」
「た、頼まれたんだ。あんたを殺せと!」
「誰に?」
「お、俺は知らない!」
「あぁ…そう。それじゃあね、さようなら。」
剣で男の首を斬りおとし、そのまま町へ向って歩き出す。
「おー…流れ星?…か?」
それをずっと見ていると、それは近くに落下したらしい。
興味本位で見に行く彼。
「……石?にしては、おかしいよな。」
その卵形の球体は、淡い光を放っている。
首をかしげながらとりあえず持っていくことに。
何らかの石だったら高く売れるだろう。
町へ戻った時は、出発前の賑わいは無く静まり返っていた。
明かりがついているのは酒場だけ。
店内は暖かく、マスターが笑顔で迎えてくれた。
最終更新:2007年04月18日 19:39