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 俺が十六夜に来て…と言うか牢にブチ込まれていたのを長老である安曇の爺さんに助けられてから1週間…。
行く当ても無い俺は安曇の爺さんの家に厄介になっている。
爺さん曰く『お主は客分の身分だからのんびりしているといい』だが、どうも俺はのんびりするのが性に合わない。
だから俺は一宿一飯の礼として雑用やら色々手伝いをしている。


烈心『よっこらしょっと…。』


 俺は安曇の爺さんの家の裏手にある倉庫の屋根に上り、スコップ片手に降り積もった雪を下に降ろしている。
北国の十六夜では万年雪らしく、頻繁に雪降ろしをしないと雪の重さで家が傾いたり挙句の果てには倒壊したりする。
温暖地域育ちの俺には到底考えられない事だ。雪など年に数回降るか降らないかの代物だっていうのに。


烈心『ふい~、ちっと休憩するか…。』


俺はスコップを傍の雪の塊に突き刺し、屋根の上に座り込んだ。朝の爽やかな風が実に清々しい。


烈心『それにしても良い場所だなぁ此処は…。何処か懐かしい感じがしやがる…。』


 俺は煙草を咥えて一服しながら呟いた。確かに此処は俺の居た世界とは違うが、何処か俺の居た世界に通じる所がある。風土も生活も酷似している点が多い。
そうのんびり物思いに耽っている時、下の方で何か悲鳴が聞こえたような気がした。


烈心『ん? なんだ一体?』


 俺は悲鳴のした方に振り向いた。すると数人の御世辞にも人相がよくない男が一人の女性を取り囲んで何やら良くない事をしようとしている。


????『いい加減にして下さい!! 宇陣(うじん)さん!!』
宇陣『ゲハハハハ、そう堅い事云うなよほ・た・るちゃん?』
ゴロツキ1『そ、そうそう!! た、ただ俺達はほたるちゃんに刀を打って貰いたいだけな、なんだよ!』
ゴロツキ2『んだんだ! 俺たちゃお客様なんだぜ!?』
ほたる『ならば直に私の工房の方へ持参して頂ければ済む話です!! 何故場所を指定されなければいけないんですか!!』
ゴロツキ1『そ、そりゃあ!! お、俺達の紹介する工房の方が設備がい、色々揃っているからな、なんだな!!』
ゴロツキ2『んだんだ!! だから俺達の紹介する場所で打って欲しいんだなコレが!!』


 聞き耳立てて聞いてるとよくあるナンパっぽいが、明らかに違う点は奴らの下心が丸出しになっている事ぐらいか。俺は余りにもの下らなさに溜息すら出ない。


ほたる『ですから何度も申しますが、私はあなた方の紹介する工房に赴く気は毛頭御座いません!!』
ゴロツキ1『う、宇陣のアニキ…!! ど、どうしやす!? 彼女も、ものすんごいお堅いですぜ!!』
宇陣『ゲハハハハ! どうするもこうも簡単じゃねえか。手っ取り早く掻っ攫ってしまえば済む事よ!!』
ゴロツキ2『んだんだ! 流石は宇陣のアニキだ!! それじゃあ早速いただきまぁ~~す!!』
ほたる『嫌…ッ!! やめ…ッ!! 止めて下さいッ!!』


 業を煮やしたゴロツキどもはほたると呼ばれた少女を羽交い絞めにし、そのまま建物の裏の方へ連れて行こうとしている。
流石に静観できる状況ではないようだ。俺は傍に突き刺してあるスコップを大盛の雪ごと抜き取り、宇陣と呼ばれた男の頭上にその雪をブチ撒けた。


宇陣『ゲハハハハハ…はぶらっ!!??』
ゴロツキ1『あ、あああアニキぃ!? わぶっ!!??』


 宇陣は俺のブチ撒けた雪に埋もれ、無様な雪だるま状態になっている。
それを見たゴロツキの一人が宇陣に駆け寄る。俺はすかさずそのゴロツキにも頭上に雪をブチ撒けてやった。


宇陣『な、ななな!! 誰だ一体!! 誰がやりやがった!?』
烈心『へっ、どうやらドブネズミにかけちまったようだな。』
宇陣『なっ!! て、てめえは安曇のジジイんトコにいやがる居候野郎じゃねえか!!』


 頭上からいきなり雪をブチ撒けられた宇陣はまるで餌を取られた猿山の猿の如く顔を真っ赤にしていきり立っている。傍から見ると滑稽な事この上ない。


宇陣『ヤッヤッヤロ~!! 降りてきやがれ!! ぶっ殺してやる!!』
ゴロツキ1『そ、そうだそうだ!! ブチ殺してやるぅ~!!』
ゴロツキ2『んだんだ!! ブッチ殺してやる~!!』
烈心『はっ、そう云われなくとも降りてきてやるぜ。よっと!!』
宇陣『わがふっ!?』


 俺は宇陣達の罵詈雑言をものともせずに、宇陣の顔面目掛けて飛び降りた。思いっきり顔面に直撃を受けた宇陣は後頭部から無様に雪の中へ突っ伏した。


宇陣『ふ、ふがふがふがふがふが!!(もがいている)』
ゴロツキ1『あ、あああアニキぃ!!』
烈心『あ~らら、そんな所に突っ立ってちゃ危ないでしょ?』


 俺は依然宇陣の頭上に突っ立ってニヤニヤと笑みを浮かべた。宇陣はまるで土座衛門の如くもがき、そのうち気を失ってしまった。


ゴロツキ1『な、なななナロ~!! ブッタ斬ってやるぅ~!!』


 親分をやられていきり立った子分のゴロツキが抜刀し、俺目掛けて斬り掛かってきた。しかし俺はそれをサラリと避け、反対にそのゴロツキの顎目掛けて強烈な掌打を食らわせた。


ゴロツキ1『わがひっ!! あ~!! あががごが!!』


 掌打を食らったゴロツキは顎をカタカタ言わせながらその場に突っ伏した。そして俺は少女を羽交い絞めにしているゴロツキの方を向いた。


烈心『最後に残ったのは…、お前一人だぜ?』
ゴロツキ2『トワッタ! ワヒィィ!!』


 ゴロツキは俺の眼光に射竦められ、脚をガタガタ震わせている。


烈心『これ以上痛い目見たくなかったら、此処に転がってるドブネズミどもを連れて失せるんだな。そうすりゃあ俺も今回だけは見逃してやるぜ?』
ゴロツキ2『ウヒッ…!! たたた…たぁすけてぇ~~~!!』


 俺の眼光に負けたゴロツキは少女を解放し、転がっている宇陣と仲間のゴロツキを抱えて一目散に去っていった。


烈心『ったく…、何処でもああいう輩はいるもんだねぇ…。さてと、仕事の続きをしますか。』


俺は再度スコップを持って倉庫の屋根に攀じ登ろうとした。


ほたる『あ…、あの…。どうも有り難う御座いました…。』


すると下から先程の少女が俺に向かってお辞宜をした。


烈心『ああ、別に良いって事よ。ああいう輩は俺的には気に食わないんでな。ちと痛めつけたかっただけだ。』
ほたる『あの…、今回助けてくれた御礼をしたいのですが…。』
烈心『礼? そんなのいらないさ。俺のお節介でした事だからな。』
ほたる『でも…。』
烈心『んな事よりも、何か用事でもあるんだろ? 俺に構うよりそっちの方を優先した方が良いと思うぜ?』
ほたる『あ…、どうしてそれを?』


 ほたるが何で用事の事を知っているのかと不思議そうな顔で俺を見る。


烈心『何かメモ書き手にしてるじゃねえかよ。それ見りゃあ大体は想像が付くぜ。』
ほたる『あ…。』


 それに気付いた彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめる。よく見りゃこの子、結構可愛いかも…。あのゴロツキどもが襲うのも頷ける。


烈心『兎に角、早くその用事を済ませてきな。』
ほたる『あ、はい! どうも有難う御座いました!!』
烈心『おう! また気を付けるんだぜ。』
ほたる『確か…烈心さんでしたよね? 今度私の工房に訪ねてきて下さいね~。色々お礼致しますから~。』
烈心『ああ! またな~!!』


ほたるは何度も手を振りながら待ちの方へ走っていった。そして彼女を見送った俺は再度屋根に攀じ登って雪掻きの仕事を始めた。


時はもう昼時になりかけていた所だった…。



-- 第二話 終劇 --