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烈心『畜生…!! こんな所で吹雪に巻き込まれるなんてよ…。』


 俺は猛吹雪の山の中を一人彷徨っていた…。辺り一面は吹雪の所為で完全なる白一色になっており、どちらが北か南も判別できないほどだ。


烈心『…ったく!! これじゃあ動こうにも動けねえや…。取りあえず一時凌ぎしゃなきゃな…。』


 そうボヤきながら俺は吹雪の中、周囲の雪を高く盛り上げて『かまくら』なるものをこさえた。
北国の国で子供たちが挙って作る秘密基地みたいなものだが、意外と保温効果があり、一時凌ぎにはうってつけの代物だ。


烈心『ふぅ…、これで何とか冷凍食品になっちまう事だけは免れたか…。』


 俺はかまくらの中で漸く安堵の一時を味わった。そして中で火を熾して暖を取る事にした。
此処まで読んでいる人には俺が何でこうなったか解りゃしないだろうな…。何で俺が遭難する羽目になったのは昨日に遡る…。






烈心『さてと、今日の晩飯は雪芋の煮っ転がしと新巻鮭の塩焼きにしますか……って、なんだアリャ?』


 俺は晩飯の食材を買いに十六夜の市場に赴き、その帰り道に番所の前を通ると何やら沢山の人だかりができていた。
俺もなんでこんなに人がいるのか気になり、その人だかりを掻い潜り、その理由を確かめた。


烈心『…ッ!? こりゃ一体…。』


 俺が見たものは、蓆(むしろ)を掛けられて横たわっていた2体の子供の亡骸だった…。身長のデカさから見て大体12,3歳位の少女だと推測される。
あと、蓆から何やら獣耳らしきものと尻尾らしきものがはみ出している。恐らく人間…ヒトではなく獣人であろう。


町人A『おい…、また2体の仏が近くで見つかったぜ…。』
町人B『なんでまたこんな所に獣人が居るんだ? 奴等はこの周辺には居ないはずだぜ?』
町人C『そんなの俺が知るかよ。』
町人A『なんでも単なる噂話らしいが、南東にある白羅山地に獣人の女子供達が何やら沢山収容されているらしいぜ?』
町人B『マジか!? 何でだよ?』
町人A『さあ? 一説にはとある奴隷商が各都市にある地下奴隷市場に放り込む奴隷集めに無抵抗な獣人の子供を利用しているとか何とからしいが、真偽の程はよく解らんね。』


 なにやら向こうの方で数人の若い男が興味深い話をしていた。俺は黙って聞き耳を立てながら2人の亡骸をじっと見ていた。


警備隊『さあさあ帰った帰った! 見世物じゃないんだ!!』


 番所の警備隊が群がる人だかりを追い払うように散らせる。俺は他の人達が去った後でも一人その亡骸を見つめていた。


警備隊『ほらほら、お前も早く行った行った!!』
烈心『この子達に…、一輪の花でも手向けてやりたいんだがな…。』
警備隊『そんな事だったら埋葬した後にでもすればよかろう。お前達野次馬が居たら此方の仕事も進まなくて困るんだ。』
烈心『さいですか、じゃ、また後で来るわ。』


 俺は半ば警備隊に追い払われるようにその場を去った。その後も俺はあの子達の事が気になって仕方が無かった…。


烈心『娼婦集めに無抵抗な子供をか…、ケッ! 反吐が出やがる…。』


 俺は番所からの帰り道、久々に沸いた腹の煮えくりに道端の石を思いっきり蹴り上げた。
俺自身に獣人との繋がりも義理も無いに等しいが、同じ知性を持つ生き物でありながら、一方的に迫害を受けているとされている心境には深い憤りを感じる。
ましてや無抵抗な子供を己の欲望の対象にするなど以ての外だ。俺は事の真相を確かめるべく、白羅山地へ赴こうと決心した。


 次の日、俺は安曇の爺さんに休暇を貰い、白羅山地へ向けて足を進めた。
白羅山地までの道のりはほぼ一本道だが、道中には谷川やら凹凸状の小高い丘陵がある為に思ったより遠く感じられる。その上山の天気は変わり易い事で有名だ。
そうこうしているうちに辺りは吹雪一色になり、俺は立ち往生せざるを得ない状況に陥ってしまった。


烈心『畜生…。この状況じゃあどうにもならんな…。』


 俺はかまくらの中で干し肉を齧りながら呟いた。流石の俺でもこの状況で先に進むのは雪だるまになりに行くようなものだ。


烈心『仕方が無い…。吹雪が止むまで一眠りでもするか。』


 俺は自分が着ていたコートを布団代わりにし、雪壁に背凭れて一休みする事にした。




 それから数時間後、先程まで轟々と吹き荒れていた吹雪が徐々に下火になり、日が暮れる頃にはピタリと治まっていった。
俺は静かになったのを感じて起き上がり、かまくらから這い出た。辺りはすっかり夜になっており、満天の星空と満月が眩いほど輝いていた。


烈心『漸く治まったか…。さて、先に進むとしますか。』


 俺は再度進行の用意をし、先に進もうとした。その時…、遠くの方で何か悲鳴のようなものが聞こえた。


烈心『!? 何だ一体!!』


 俺は悲鳴の聞こえた方向へ向かって疾走した。すると其処には数人の男が一人の少女を追い駆けていた。
よくよく見ると獣人の女の子だ。と、すると奴等は例の奴隷商の一員か…!?


奴隷商A『待ちやがれこのガキ!!』
少女『だ…ッ!! 誰か…助…けてッ!!』


 少女は追いつかれまいと必死に逃げている。しかし悲しいかなすぐに追いつかれ取り押さえられてしまった。


奴隷商A『やっと捕まえたぞこのガキ!!』
奴隷商B『まだ痛い目見ないとわからねえようだな!!』
少女『嫌ッ!! 放してぇっ!!』
奴隷商A『このガキ!! いい加減に…ぶえッ!?』


 一人の男が少女に手を挙げようとした瞬間、俺はその男目掛けて大玉の氷塊を放り投げた。
その氷塊は男の顔面に見事にめり込み、男は鼻血を豪快に噴出しながら雪の中へ突っ伏した。


奴隷商B『な…っ!! 何だ貴様!!』
烈心『おうコラ…、今すぐその子を放してやれ。んでもってとっとと失せやがれ…。さもなくばてめえの頸が胴体から豪快に離れるぜ?』


 俺は腰に挿した刀に手を掛けながら少女を押さえている男を睨んだ。男は俺の眼光に戸惑いの表情を隠せない。しかし次の瞬間に開き直って俺に向かって啖呵を吐いた。


奴隷商B『ヘヘヘ、動くんじゃねえぞ…。動いたらこのガキ殺すぞ…!!』
少女『ひっ…!!』


 男は手にした匕首(あいくち)を少女の首に当てて俺を脅す。


烈心『やってみろ…、やった瞬間お前もブチ殺すぞ…!!』
奴隷商B『ヤロウ強がってんじゃねぇ!! 俺は本気だぞ!!』


 男は俺の挑発に屈することなく俺と対峙している。このままだとこの男は少女を殺すに決まっているのは火を見るよりも明らかだ。


烈心『(こいつ…、一向に動じやがらないな…。くそっ…!! どうするか…。)』


 俺は冷や汗を垂らしながら刀に手を掛け、相手の動向を探ろうとした。

  





 その時…、何処からともなく妙にハイテンションな大声が聞こえてきた。







????『ヌハハハハハ!! ハハハハハハ!!』




 俺と奴隷商の男が声の聞こえた方向を振り向くと、月光をバックにマントを着けた白装束の男が腕組みをして悠々と立ちはだかっていた…。






-- 第三話 終劇(四話へ続く) --