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????『うらぁ!! この馬鹿野郎共!! さっさと此処から出しやがれッ!!』
牢番A『五月蝿いぞ!! 少しは黙ってろ!!』
????『んだとコラ!! てめえ此処から出たら覚えてろ!! ぶった斬ってやる!!』








 俺は今、どこぞの雪国の町の番所の牢屋に放り込まれている…。
なに? 何か悪い事をしたんじゃないのかって…? 馬鹿野郎!! 俺がそんな事する訳ねーだろが!!
只単に、俺の格好が余りにも珍妙無類だとの理由で牢に放り込みやがったって話だ。
その上俺の事を妄想癖の持ち主だと勝手に決め付けていやがるし…。なんか俺、泣きたくなってきそうだ…。


牢番A『全く、なんて凶暴な奴だ…。取り押さえるのに怪我人が10人も出るとは…。』
牢番B『お陰で今日は非番だった僕でさえ借り出される始末だよ…。』
牢番C『泣きっ面に蜂とは正にこの事だな。』
牢番A『それは全然違うと思うぞ…。』


 奥で牢番どもが俺に対してボヤいていやがる…。ボヤきたいのはこっちだっつーの…。
ブッタ斬ってやりたいところだが、俺の刀はあいつ等に押収されているし…。


????『だあぁぁ…、なんでこんな目に遭うのよ俺…。』


 俺は差し出されている御握りを齧りながら呟いた。
すると、番所の奥が何か騒がしい。どうやらお偉いさんが番所に帰還したようだ。


????『ホヤホヤホヤ、今帰ったぞ。ん? なにやら奥が騒がしいようじゃが…?』
牢番B『ハッ、実は赫々云々…』


 どうやら奥の方で俺に関する事をお偉いさんに報告しているらしい。聞き耳立てているといらん事まで報告していやがる…。
漸く話が終わって、奥の方から一人の爺さんが俺の所にやって来た。


爺さん『ホヤホヤホヤ、お主かね? 見慣れぬ風体の輩というのは?』
????『…ああ。』
爺さん『さてさてさて、一つ二つ程聞いておこう。お主は何処の出身で名は何というのかね?』


その爺さんは穏やかな口調で俺に尋ねた。俺も自然とこの爺さんにだけは不意に口が動いた。


????『烈心…、磐野 烈心(ばんの れっしん)だ…。倭国出身だよ…。』
爺さん『烈心…か、良い名じゃの。ワシの名は安曇(あずみ)、十六夜を統括する五老家の一人じゃ。それにしても倭国とは聞き慣れぬ国の名じゃの?』
烈心『其れに関してはこっちも十六夜なんて聞かない街の名だよ…。俺の住んでいた国ではそんな名の街なんて知らないぜ…。』
安曇『ふむふむふむ、ならばお主はこの大陸の人間では無いという事かな?』
烈心『…少なくとも、その可能性の方が大いにあると思うな…。』


 安曇の爺さんは少し半信半疑な表情で俺を見る。


安曇『それで…、お主はどうやってこの十六夜に迷い込んできたのじゃ?』
烈心『俺が湖の辺で釣りをしていたら…、いきなり空間が歪み、その歪みから発生した時空乱流と思われるものに吸い込まれ、気が付くとこの街に倒れていたんだ…。』
安曇『歪み? 時空乱流? なんじゃそれは…? ワシには初耳な言葉じゃな…。』


 安曇の爺さんは更に半信半疑な表情で俺を見る。
確かにそう思われたり見られても不思議はない。誰だっていきなりそんなチンプンカンプンな事を言われればそういう対処をするものだ。


安曇『では…、それを証明付ける証拠はあるんじゃな…? 証明付けるものが無ければ残念ながらお主を依然此処へ放り込んでおかねばならぬ。』
烈心『証拠…か、いいぜ…。』


 俺は自分が身に付けている物を全て取り出して安曇の爺さんに差し出した。


安曇『ホヤホヤホヤ…、此れは何とも珍妙無類な…。見るからに時計のようなものじゃがちと違うのう…。』
牢番A『なんだこの丸いのは…? なんか甘い匂いがするなぁ…。』
牢番B『こっちの小さい板状のものも良い匂いがしますよ。』
牢番C『これまたえらい薄い紙だな…、何に使うんだコレ?』
牢番D『だあああ!! なんだこの光る玉は!? 爆弾じゃないだろうな!?』


 安曇の爺さんが俺の腕時計を手にとって目を丸くして驚いている。回りの連中も俺がポケットから出した菓子諸々にチリ紙やビー玉を見て驚いている。
そりゃそうだ、この世界にこんな物が在る筈が無い。ビー玉ぐらいはありそうだと思うけどな…。


烈心『これで…、俺が此処の世界の人間じゃないって事が解ったろ?』
安曇『むう…確かに…。こんな珍しい品を見せられては信じない訳があるまい…。それにな…。』
烈心『それにな…?』
安曇『お主のその濁り無き水晶の様な瞳、そういう瞳をしている人間が嘘八百を申す事などあるまい。ワシは最初お主を見た時からそう思っておったよ。』
烈心『な…、なんでぇ…。そうならそうと最初から云ってくれりゃあいいのによ…。』
安曇『ホヤホヤホヤ。こういう取調べはワシの趣味なんでな。』
烈心『こ…この爺は…。』


 俺は安曇の爺さんのその一言にたじろいでしまった。俺をたじろがせるなんて大した爺さんだ…。


安曇『これこれ、早くこの者を牢から出してやれ。』
牢番A『よ…、よろしいのですか? こやつは意外どころか可也凶暴な男ですが…。』
安曇『ワシが良いと云っておるのだ。異存はあるまい?』
牢番A『ぎ…御意に…。』


 牢番は渋々牢の扉を開け、俺を外に出した。


烈心『くぁ~~~~~っ、こんな薄暗い所に半日放り込まれていたら目が悪くなっちまうぜ。』


 俺は背伸びをして解放感を体中に感じた。こんなに良い気持ちなのは久々だ。


安曇『それで烈心、お主はこれから行く当てはあるのかね?』


 俺が解放感を体中で感じている時、安曇の爺さんがポツリと呟いた。


烈心『当てねぇ…、当てなんざ端から無いようなものだしなぁ…。』
安曇『ならば、少し情勢が掴めるまでワシの家に来ぬか?』
烈心『爺さんの家に…? そんなの良いのか?』
安曇『主が良ければ構わんぞ?』


 安曇の爺さんがニコニコしながら俺の方を見ている。


烈心『そうだな…、爺さんが良ければ御厄介になりますか。』
安曇『なら決定じゃな。』
烈心『それに、俺をあそこから出してくれた礼もしたいしな。飯担当ぐらいなら恩返しできるぜ?』
安曇『ホヤホヤホヤ。それは楽しみじゃの。』

 
 そうして、俺は五老家の一人である安曇の爺さんの家に厄介になる事になった…。



-- 第一話 終劇 --