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『セレスティアガーデン』小話集『なにこの依頼』






その1


―――時は、エリアルワールド暦3569年
リエステール~グランドブレイカー中憩所南口間街道の西にあるコボルト帝国は、
突如として街道東にあるレムリナム共和国に対し、宣戦布告。
ここに『第三次フィールドモンスター大戦』が勃発したのである。

 当初、人間の武器を自在に操るコボルト帝国軍が圧倒的な強さを見せつけ、
レムリナム共和国の本拠地のすぐそこまで攻め入ったが、
ここにウェアウルフ共和国が介入、
『レムリナム・ウェアウルフ連合軍』を結成すると、猛反撃を開始。

 今や戦況は五分五分。
街道を挟んでにらみ合いの様相を呈していた。


 ところが、ここに一人の少女が通りかかった所を、
食欲に耐え切れなくなったレムリナムが強襲。
これを合図に、両軍入り乱れての戦いが始まったのである。
後にこれを、『マグノリアの役』と呼ぶことになる。



「あーっはっはっは!!! ・・・って、ちょっと、何勝手に変なテロップ流してんだ!! セー!!!」
「あら、流してるのはテロップだけじゃなくて・・・」

 どこからともなく聞こえて来るのは、『ダース・ベイダーのテーマ』
さっきまでモンスターを切りまくって高笑いをしていたマグノリアの顔が真っ赤になる。

「以前から決めてたのよ、次にマグノリアが戦闘中に高笑いしたらコレやろうって。 ねー、リリー♪」
「うん、でもこれ、ウクレレとリコーダーじゃないね。」
「あ、じゃあそっちかけよっか? B.G.M.魔法『やる気のないダース・ベイダーのテー・・・」
「そっちはもっとやめてーーっ!!!」

 マグノリアの叫びが晴天のフィールドにこだました。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「コボルト帝国とか、実在するんですか?」

 先ほどのテロップについてセーに尋ねるシルエラちゃん。
そのままにしておくとマグノリアが襲い掛かって来そうだったので、セーはB.G.M.魔法を停止させたようだ。
テロップは地面にぶつかる前に垂直に曲がり、地面と平行に1メートルほどの上空を、リエステールの方へ進んでいった。
数時間後、リエステールでは、触れない・厚みがない・意味不明な文字列の襲来で大騒ぎになっているだろう。

「そう!! 何を隠そう、この街道を挟んで西側にコボルト共和国が、そして東側に・・・」
「セー、シルエラちゃんに嘘を吹き込まないの!!」
「っつーか、セー、さっき言ってたの、コボルトは帝国の方じゃなかったか?」
「あれ、そうだっけ?」

 自分で言っておいて、帝国と共和国を間違えるセー。

「えー、改めて、街道を挟んで西側にコボルト帝国が、そして東側に・・・」
「だから、嘘教えちゃダメだって!! 年号も適当だし・・・」

 嘘とバレバレなのに、再度訂正して説明を開始するセー。
それでもシルエラちゃんはうんうんと頷いて聞いていたりする。

 本当は、リエステール~グランドブレイカー中憩所の間の街道で、モンスターの集団が小競り合いをやっていて、
危ないから黙らせてくる(勿論、生死は問わねーぜ)というのが今回の依頼。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ところで、『レムリナム』って何だっけ?」

 さっきから引っかかっていた疑問点をおもいきって口にするリリー。

「え?」
「ウソだろ?」
「リリーねえちゃん・・・」

 目を丸くしてリリーの方を見る3人。
その反応に、顔を赤くするリリー。

「え? もしかして、知らないの私だけ?」
「いつもあたし達が相手にしてるヤツだよ!! ほら、あそこにいる・・・」
「あ、あのトカゲ人間ってそんな名前だったんだ!! レムリナムさんね!!」

 マグノリアの説明を聞いたが、まだ何か勘違いしているらしいリリー。

「あ、言っておくけど、あのトカゲの固有名詞がレムリナムなんじゃなくて、トカゲ人間全体の種族名がレムリナムだからな。」
「え? ・・・っと、分かってるよ、それくらい!!」
「リリー・・・」
「な、何? セー、そんな目で見つめて・・・」
「もうちょっと上手いリアクションとろうね。」
「うぅ~・・・」



 トカゲ剣士・レムリナム。
『Tale of Vai』でリスティを襲う所からはじまり、
『セレスティアガーデン』での登場回数も多い。
とりあえず出しておく的な、雑魚モンスターとしての知名度は抜群?



「よく考えると、トカゲとはいえ、刃物持った人型が雑魚扱いって贅沢よね~。」
「確かに・・・、でも、まあ、雑魚は雑魚だろ?」

 トカゲ人間殺害回数では恐らくトップを狙えるだろうマグノリアがそう断言する。
しかし、セーは何かが納得いかない様子。

「人型のトカゲといえば、素早い動きで突っ込んで来て、油断しているとすぐに石化全滅っていう強敵だったのに、リメイク版では出なくなってるし・・・」
「あ、でも別のゲームでは、前衛でも強くて、後衛では上級魔法を連発してくる強敵だよね? ・・・って、セーが異世界から取り寄せたゲームの話してるんじゃないでしょ!!!」

 最近セー好みに染まり始めたリリーのノリツッコミ。
しかし、ツッコミ対象のセーは既に目の前にはいなくて・・・

「それでは、リリーのリクエストにお答えして、『ディバインセイバー』っ!!!」
「だから、何でこっちに撃つんだよ!! セーっ!!!」


 ズドドドドドドッ!!!


 幾つもの雷(何故か聖属性)が輪を描くようにしてリリーたちの周りに降り注ぐ。
今日もセーは絶好調のようだ。主に余計な方面で・・・。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「で、いつまでここに隠れてるんだ?」

 マグノリアが飛び出したくてウズウズしながら問いかける。

 一時はマグノリアが街道を堂々と突っ込んであろうことかモンスターを挑発したために、
トカゲ人間が何体か襲い掛かって来たのだが、
幸か不幸か、それを契機にトカゲ人・人狼とコボルトの小競り合いが再開。
今、リリーたちは、街道沿いの岩陰に隠れて静観している所だ。


「マグノリア、こういう時は下手に割って入ると、かえって戦況を混乱させちゃうだけじゃないかな?」
「リリー、マグノリアは戦闘を止めさせに入るわけじゃないと思うから、それはちょっと違うって。」
「ああ、勿論、どっちも叩くぞーーーっ!!!」
「あんたは戦国無双の伊達政宗かっ!!?」

 しかし、セーがそう言った時には既にマグノリアは戦場の、それも一番激しく戦っていそうな所に向かって駆け出していた。

「あーもう、こういう時は大将を叩きに行くのがセオリーなのに・・・」

 やれやれといった感じで後に続くセー。

「ちょっと、セー、待ってよ!! ほら、シルエラちゃんも早く起きてっ!!」
「うぅ~、眠い・・・」

 リリーも、いつの間にか眠ってしまっていたシルエラちゃんを起こし、マグノリアとセーの後を追う。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「うりゃーーーっ!!!」

 次々とトカゲ人間・人狼・コボルトを切り倒していくマグノリア。

「そういえば、マグノリアってあんまり技がないよね。」
「まあ、武器があれだしね~。 特に必殺技とかなくても、当たればまず必殺だし・・・。」

 マグノリア武器、ライトセイバーは、使用者の力加減に関係なく、敵を焼き切るビームの剣。
技などがあまり関係しないため、マグノリア自身、これといって必殺技といえるものはない。


「そうだ、どうせ雑魚掃討戦だし・・・、リリー、あれ出して」
「あ、えーと、はい。」

 リリーが取り出したのは、マグノリアの予備の武器、ドラゴンスレイヤー。
セーはそれを受け取ると、

「マグノリアーっ!! たまにはコレ使いなさーーいっ!!」

 マグノリアの方へおもいっきりぶん投げる。

「って、ちょっと待てっ!!」

 ものすごい回転をかけて。


シュシュシュシュシュ・・・ズサッ!!

「あ、危ねぇー!! 取れるかそんなのーーっ!!」

 セーの投げたドラゴンスレイヤーは、マグノリアの足元の地面に勢いよく突き刺さる。
マグノリアはそれを引き抜くと、ライトセイバーの出力を切って、その柄をしまう。

「分かったよ、こんな雑魚ぐらい、こいつでやってやる!!」
「なんか技撃ってみなさいよ!!」
「わ、技ぁ?」

 セーのリクエストに戸惑うマグノリア。
それでも、向かってくるトカゲ人間を3体ほど斬り落としてはいるのだが。


「ほら、『散空斬』、あれ撃ってみて!!」
「ああ、それくらい・・・」

 そう言って剣をやや斜め下に構えると、

「『散空斬』っ!!」

 衝撃波を飛ばして少し離れた位置にいたコボルトを切り裂く。

ズゴォォォォォーーーッ!!

「はい?」

 しかし、それだけに留まらず、放たれた光の暴流は軸線上に居たモンスターを次々と飲み込み、

ズドドドドドドーーン!!!

 光の束の直撃を受けたモンスターは爆発。
後には何も残らない・・・

「って、ちょっと待て、セー!! なんか仕掛けたろ!!?」
「あ、バレた?」

 わけではなく、何事もなくピンピンしたモンスターたちが、何が起こったのか分からずにキョロキョロしていた。
結局、マグノリアの散空斬で仕留めたのはコボルト一体だけだった。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「よく考えてみれば、シルエラちゃんも技って少ないよね?」
「私ですか?」

 セーの問いかけに疑問符を浮かべるシルエラちゃん。

「まあ、シルエラちゃんはまだ、支援士になって間もないし・・・。」

 それでも一通りハンター系のスキルを覚えていて、決して弱くはない、
メインの必殺技は風系の能力を付加したエレメンタルアロー。

「でもまあ、たまには変わった技も使ってみないとね~。」
「そうですか? それじゃあ・・・」


 そう言うと、矢筒に付いたダイアルを回し、

「いきます!! 店長作の特製矢!! ランダムアロー!!!」

 矢筒から取り出した、店長印の入った矢を構えて、敵に向かって放つシルエラちゃん。


 それが、先陣切って突進してくるトカゲ人間に当たると・・・、

ピキュィイーーーーン!!
ズゴドドドドドドドーーン!!!

 一瞬閃光が走ったかと思うと、数十体は居たであろうトカゲ人・人狼の群れは、この世のものとは思えない大火力の爆発に包まれる。
空には巨大などす黒い黒雲がまるでキノコのように舞い上がり・・・

「セーっ!! またあんたの仕業かーーっ!!」

 しかし・・・

「『エナジー・フェザー 防御展開』っ!!!」

 一同を包み込むように羽根を広げて、炎や火の粉を防御するセー。

「って、え? あれ??」
「これって、セーは何もしてないってこと?」
「・・・」
「ちょっと、シルエラちゃん? 大丈夫?」

 あまりの出来事に、目を丸くしたまま固まるシルエラちゃん。
撃った本人が一番驚いている様子。

「あの店長め・・・、シルエラちゃんにこんな危ないものを持たせて・・・、やるわね!!」
「やるのかよっ!!」

 舞い上がるキノコ雲を見つめながら呟くセー。
確かにこの火力は異常かもしれない。

 レムリナム・ウェアウルフは全滅。
反対側に陣取っていたはずのコボルトも、被害甚大。
難を逃れたコボルトも既に撤退を開始していた。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「何はともあれ、これで依頼は終了ね~。」
「なんか釈然としないけどな・・・」
「シルエラちゃん? 大丈夫??」
「う~・・・」

 なんだかんだで、わけが分からない内に依頼は終了。
敵ももうほとんど残っていないので、この場にこれ以上留まる意味はなかった。

「やっぱり、核の脅威よね~。」
「え? セー?? さっきの核だったの?」
「あら、冗談に決まってるじゃない。 あれが核だったら、私たちみんな消し飛んでるわよ。」

 恐ろしいことをさらりと口にするセー。

「でも、やっぱり、戦争ものといえば、核でしょ!!」
「いや、戦争ものだって言ってるのセーだけだからね。」

 そこでふと、思い出すリリー。

「そういえば、あのセーが流してたテロップどうなったかな?」
「今頃リエステールで騒ぎになってるかも!? 早いとこ帰ってどうなってるか確かめよっ!!」

 リリーに言われて思い出し、街道をリエステール方面へとランラン気分で飛んでいくセー。

「あ、ちょっと、セー、置いていかないでよーーっ!!」

 一同、セーの後に続いリエステールへの帰路についた。



――中央都市リエステール――
 ――inセレスティアガーデン

「あら、セーじゃない、依頼の方は片付いた?」
「もう結果は知ってるくせに、わざとらしく尋ねないでよ。」

 着いて早々、店長がセーに尋ねる。
反射的に言い返すセー。

「シルエラちゃんにあんな危険なもの持たせて・・・」
「あ~、アタリを引いたのね。そろそろ出るころだと思ってたわ。 ・・・ってことは、あのキノコ雲はセー達の仕業か~。」
「店長の仕業でしょっ!!!」

 どうやらあの時のキノコ雲は、ここリエステールからでも見えたらしい。
驚いた表情一つせずに淡々と述べる店長。
やはり確信犯?

「今夜は黒い雨が降りそうね。 早く洗濯物を取り込まないと・・・」
「って、アレやっぱり核なの!?」
「冗談よ。」

 笑えない冗談を言って、洗濯カゴを持ち、庭先に出ようとする店長。
いや、どっちなの? マジで!!?



「あー、そうそう、セー、今日酒場にまた面白そうな依頼が来てたわ。 報酬もいいし、まだ夕飯の時間にも早いからもう一仕事して来たら?」
「うーん、そうは言っても、シルエラちゃんはおねむの時間だし、リリーとマグノリアも部屋でやることがあるみたいだし・・・」
「ただの調査依頼だから、セー1匹でも大丈夫よ。」
「1匹って言うなーーっ!! 調査依頼ね~。 まあ、確かにさっきの仕事はいつの間にか終わってたって感じで釈然としないから、チャチャっと済ませて来ますか♪」

 内容が調査依頼と聞いて、ランラン気分でドアをくぐり、酒場へと向かうセー。





――中央都市リエステール――
 ――in旧市街酒場

 で・・・。

「なにこの依頼?」


  • 調査依頼『謎の文字群を調査せよ!!』
 突如として現れた、グランドブレイカーの方角からリエステールの街中を横切り、
一定の高度を保ちながらどこまでも進んでいく謎の文字群を調査せよ。
対象の文字群は、見ることは出来ても触れることはできず、民家の壁も城壁も魔法障壁もすり抜け、
いかな魔法でも止めることはできなかった。
その性質上、直接的な害はないと思われるが、調査に当たっては細心の注意を払うべし。






その2


――中央都市リエステール――
 ――inセレスティアガーデン・リリーの部屋

「・・・ふぅ~。」

 デスクで分厚い魔道書を読みながら溜息をつくリリー。
本棚には他にも似たような魔道書がいくつも置いてある。

 この魔道書はセーが異世界から取り寄せたもので、どれも比較的新しく、
文字は現代語で書かれていて、挿絵も多く、リリーにも理解しやすい・・・はずなのだが。

「う~ん、わかんないなぁ~・・・。」

 どうやらどこか分からないところがあるらしい。
そこへ・・・

 ガチャ・・・バタン。

「どうしたの~? リリー?」

 勢いよくドアを開け、入ってきたのは、彼女にこの魔道書を与えた張本人、妖精セー。

「あ、セー、ちょうどいい所に・・・、この魔道書なんだけど、この魔法の使い方がどうも分からなくて・・・」
「んー?」

 パタパタとリリーの側まで行くと、リリーの指差した魔道書の項目を覗き込むように見たセーは、

「あー、これね、これはこの条件そのままだよ。」
「え? でもこの条件じゃちょっと分からないんだけど・・・」

 デスクの上に置いてある筆立てに腕を組んで腰掛けたセーに再度尋ねる。

「ん~、そのままじゃん、赤魔道士がレベル20で覚えるって・・・。」
「いや、だからその、『赤魔道士』とか『レベル20』って何なの?」

 セーは、何で分からないかなーというような顔をして、1本の鉛筆をクルクルと回してみせる。

「そりゃ~、この『攻略本』のゲーム内でのレベルとジョブに決まってるでしょ。」
「え? これ『攻略本』なの? 『魔道書』じゃないの!?」
「あら、ゲームの『攻略本』は立派な『魔道書』よ、分かりやすくて、載ってる魔法も多いし。」

 当然のことと言わんばかりにそう宣言するセー。
リリーは呆れた表情で、

「でも、ゲーム内での習得条件提示されても、実際に覚えられないし、意味ないでしょ。」

 それに対し、セーは「しししっ!!」と笑って、

「リリー、魔法でまず重要なのは『どうやって現象を起こすか』ではなくて『どんな現象を起こすか』よ。 その意味では、いろんな魔法を、バリエーションや使い方含めて知っておくことがポイントになるのよ・・・。」
「う~ん、そうかな~・・・。」
「そうよ、発動方法なんてのは、こっちの世界の属性要素だか精霊要素だかを吟味して、後でじっくり組み立てればいいんだから。」
「う~、なんか面倒な手順踏むんだね。」

 セーに言われて、それもそうかなという気になったリリーだったが、
魔道書に構築式が書いてあると思って読んでいただけに、ちょっと複雑な気分だ。

「まあ、私のアンチリザルトフェノメノンで使う場合は、現象さえ分かっていれば、即興で出せるんだけどね。 ゲームで一度見ただけとかでも♪」
「セー基準で考えないでよー!! つか、それダメージないでしょ!!!」

 リリーがセーの発言にツッコむ。
しかし、セーは斜め上を見ながら何かかんがえているようなポーズをとったまま動じない。



「その点、店長はすごいのよね~。」
「へ?店長が?」

 セーは天井の一点を見つめながら続ける。

「そ。 店長ね、私が持ってきた魔道書・・・、って言っても異世界のゲームの攻略本なんだけど、10冊分の魔法の、こっちの世界での詠唱・構築式を一晩で作り上げちゃったのよね~。」
「えー!!? ウソ!!? 店長こんなのから魔法の詠唱法が分かったの?」
「まあ、流石は私が見込んだだけのことはあるって感じよね。」
「って、結局あんたかよ!!」

 セーは「しししっ!!」と笑って再びパタパタと飛び立つと、今度は部屋の窓際で外を眺めている。
でも、セーの語った店長の話を聞いて、もうちょっとだけ頑張ってみようと思うリリーだった。

「・・・ダメだ、やっぱり攻略本読んでると、ゲームの方をやりたくなってくる・・・」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――

――中央都市リエステール――
 ――inセレスティアガーデン・リビングルーム

「店長って、いつも、アタシたちが行った仕事先でどんなことが起こったのか、全部知ってるみたいだけど、一体どうやってうんだろうな~?」

 対面する席に座っているリリー、シルエラちゃんに尋ねるマグノリア。

「う~ん、そういえばそんな感じよね~・・・。」

 リリーは頬杖をついて考えるポーズをとる。
シルエラちゃんはテーブルの上のクッキーを食べながら何か閃いたように発言する。

「(むしゃむしゃ・・・)きっとあれですよ!! 鳩さんが私たちの行動を報告しているんです!!」
「あはははは!! 鳩ねぇ~・・・、でもそれじゃあ、洞窟の中とか行った時は無理だろ!!」
「う~ん、それもそうですね・・・。」

 考える時もクッキーを食べる手を止めないシルエラちゃん。
まあ、確かに鳩では、洞窟の中で起こったことまでは報告できないだろう。
というか伝書鳩は相手側でも手紙を書く人が居ないと成立しない。



「リリーはどう思う?」
「ん~とね・・・。」

 身振り手振りを交えて、説明を始めるリリー。

「ほら、店長愛用の占い道具、『ソーラ・システム』ってあるでしょ。あれで全部お見通しとか!!?」
「でもなぁ・・・、あれ占いの道具だよな~、そんな外出先で起こった出来事を、事細かに知ることまではできないだろう。」

 店長の武器兼占い道具『ソーラ・システム』。
ありえないほど多くの属性を持ち、投げれば星系1個消滅という禁断の威力を誇る魔道具。
占いに用いた場合の精度も百発百中で、結果が気に入らない場合は天体の運行を操作して運命すら変える力を持つという。
けれど・・・。

「確かに、水晶玉みたいに見えるわけじゃないし、「占いは抽象的な暗号を解読して事象を導き出す」って前に店長が言ってたから、シルエラちゃんの寝ていた時間までは割り出せないよね・・・」
「む~!!」

 ぶすっとした顔をして、リリーを睨むシルエラちゃん。
ストローを口にくわえて、オレンジジュースを飲みながら。

 以前店長は、シルエラちゃんが仕事先で居眠りしていた時間まで当てたことがあったから、多分リリーの予想もはずれているのだろう。



「じゃあさ、マグノリアはどう思ってるの?」
「え、アタシ? ああ、アタシはだな・・・」

 話をはじめる前に、キョロキョロと辺りを見渡すマグノリア。
3人以外に誰も居ないことを確認して、

「いいか、これはまだ推測なんだけどな・・・」

 急に真面目な顔をして話はじめるマグノリア。
息を呑むリリー。
再びクッキーに手を伸ばすシルエラちゃん。

「あれだ、セーを通して起こっていることを感知しているんだよ!!」
「えー!?」

 マグノリアの莫大発言。
リリーは戸惑いを隠せない。
シルエラちゃんはさらにクッキーに手を(以下略)

「でも、帰った後、セーと店長が話してる所見てると、そうは思えないんだけど・・・」

 そう、依頼が終わって帰ってきた後、店長とセーが話している所を見る限りでは、
セーが店長に連絡しているとは思えない。

「そこなんだよ!! 店長はかなりの力を持ったクリエイターだろ」
「うんうん」
「だから、セーが知らない間に、セーをこっそり改造とかしたりして・・・」

 話の雲行きが怪しくなってきた。
セーが改造されている?

「そう、実はあのセーの左目には・・・」
「誰の左目が対地殲滅用過粒子光線砲になってるってぇーーー!!?」

 突如乱入してきたのは、青い長髪に、紫色の羽根を羽ばたかせて飛来した妖精セー。
そして、その左目が輝きはじめ・・・。

キュピーーーーーン!!!
ズゴォォォォオオオオオオオオ!!!

 マグノリアの頬をかすめ、リリーとシルエラちゃんの間を通り抜けた光線は、セレスティアガーデンの壁に大穴を開け、
光が晴れると同時に穴から見えた光景は、辺り一面廃墟と化し、あちこちで火の手が上がり、黒い煙が幾筋も立ち昇るリエステールの町並み。

「なんちゃって♪」

 というのは、ほんの5秒間程度の出来事で、正気に戻ったリリーたちが次に見たのは、窓の外に広がる、いつものリエステールの姿。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「全く、私が改造されてることにされたんじゃ、かなわないわ!!!」
「ゴメンゴメン、マグノリアの話し方があまりにも真面目だったもんで・・・。」
「リリー!! 全部アタシのせいか!!?」

 リリーも聞き入ってただろと言わんばかりのマグノリアの反論。
それ以前にこの話題振ったの自体マグノリアだけど。

 そうこうしている内に、一同がセーに案内されるままにたどり着いたのは・・・。

「ここよ。」
「これって・・・」
「セーがいつもゲームとかやってるパソコンだよな?」

 そう、それはセレスティアガーデン店舗部分のディスプレイ用に陳列された、パソコンとかいう異界の道具。
というか、セーはいつも店の商品でゲームやってるけど、これはいいのか?

「まさか、あなたたち、これがただ単にゲームするだけの道具だと思ってるんじゃないでしょうね?」

 セーがそう言うが、

「でもなぁ・・・」
「いつもこれ、セーがゲームするのに使ってる所しか見たことないし・・・、時々私もセーに誘われてやるけど、対戦相手がいるとかって。」
「あはははは・・・」

 苦笑するセー。
これをただゲームするためだけのものだと思わせていた原因は、セーがゲームにしか使っていないことにあったようだ。



「で、この『Internet Explorer』ってとこクリックして、お気に入りのここを選べば・・・」
「選べば?」
「あーら、不思議!! この世界が外側から見えちゃいました~♪」

 楽しそうに解説するセーだが、

「外側からって・・・」
「セー、ただの文章しか見えないんだけど・・・」

 画面に映るのは、リリーの言うように、ただの文字列。
とても、「この世界が外側から見」ているとは思えない。

「そもそも、文章っていうのがなー。」
「書いてあることも、全部過去の出来事だし、セーか店長が後からこっそり書いたんじゃないの?」
「うぅ~~・・・」

 その世界の中しか見たことのない者に、世界を外から見た見え方を説明するのに苦戦するセー。
そして遂に!!!

「分かったわよ!! そこまで言うなら・・・、いくらあなた達でも、ここに今から私が書き込んだ事象がこっちで起これば信じるでしょ!!」
「あ、ああ・・・、まあ・・・。」
「セー? 怒ってるの?」
「怒ってない!! ちょっとまどろっこしく思っただけよ!!」

 そう言うと、セーは指を動かし・・・。

「・・・キーボードがないんだけど?」
「キーボード? あ、あのボタンがいっぱいついたのなら、前に店長が、「危ないから隠しておく」って言ってたよ。何で危ないのかは分からないけど。」

 沈黙。
セーはリリーの方を向いたまま黙り込んでしまった。
どうしたらいいのか分からずにセーの方を見るリリーとマグノリア。
持ってきていたクッキーを食べ続けるシルエラちゃん。

「あんの、店長め、誰が危ないってーーーっ!!?」
「いや、多分セーのことじゃないと思うけど・・・」

 そう言ってセーは猛スピードで店長の自室に向かって飛んでいく。
リリーのフォローも聞く耳持たず。

「あーあ、また始まったな・・・」

 マグノリアが、やれやれといった感じで言う。
セーと店長の喧嘩はいつものことだから、大して気にすることではない。

 そこへセーがまた戻ってきて、

「リリー、そのパソコン、見る分には問題ないから、テキトーに使っていいよ。 下手な新聞よりは有意義なことが書いてあるし。」
「ちょ、ちょっと、セー!! アタシは!!?」
「マグノリアはダメー!! 壊すから!!! あとシルエラちゃんも前にジュースこぼしたからダメ!!!」
「なんだとーー!!!」
「ひどいですーー!!」

 それだけ言って、セーはまたこの部屋を後にした。

「でも・・・。」

 リリーがふとつぶやく。

「コレ、一応、お店の商品なんだよね。」



  • 陳列ディスプレイ用パソコン
商品なのにセーや店長の私物と化している謎の一品。
陳列されているものなので、来店したお客さんも自由に触れるが、
セーが常にゲームを起動させていたりするので、みんなあまり寄り付かない。
エリアルワールドを『外側』から見れる(インターネットに接続してある)らしいが、
キーボードを店長が隠しているため、書き込みはできない。(つか、検索もできないじゃん!!)
ちなみに、インターネットは、特殊な通信技術を使っているわけではなく、
セーがゲート(閉じる時、間に物があると完全には閉じられないタイプ。
閉じた後にロープ一本ぐらいまだ間を通っていて、完全に閉じていなくても、本人のメンタル消費はない。)で
どっかの異世界にケーブル接続しているだけだったりする。
なので、お買い上げの際は、インターネット環境は各自ご用意下さい。
(つか、電源も各自ご用意ください。キーボードはついてきますけど。)