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プロローグ





――夢の中

今自分は、自分が夢の中にいるという事をはっきりと認識していた。
足を進めると、コツンと床と靴が鳴り、その音は廊下全体に響くかのように広がっていく。
まるで水晶のような輝きを放つ床と、同じ素材で作られた壁、天井……
さらに周囲をよく見渡してみれば、時計などと言った調度品もすべて、同じ水晶のような素材で作り出されているように見える。
「……水晶の館……?」
それは、自分が子どもの頃から夢見ていた場所。
なにもかもが水晶で作られ、見る者の目を……そして心を奪うような美しい輝きを放つ幻想の館。
現実に、とある書物にその場所の記述がなされていたのは知っているが、実際にそこに辿りつけた者はいないという。
そこにたどり着くためには、その者自信が氷雪系の能力の極みに近付かなければならないとも言われているが、実際どうなのかまでは定かでは無い。
……そんな伝説でしか伝えられていない世界が、今、自分の目の前に広がっていた。
「……」
ふと、すぐ横の壁に手を当ててみる。
すると、ひやりと氷のような冷たさが伝わってくるが……その壁は、触れたところから溶け出す様子は無い。
氷であるならば、人の体温に触れると、ほんの表面だけでも溶け、手の平に水滴がつくはずだが……
「……ちがう、氷の館……か」
それでも、”氷牙”を操るマージナルとして、館全体から発せられる氷雪系メンタルの気配は強く感じられる。
ここが夢の中であるせいか、この場所の気温を感じる事はできないのだが……もし今自分が感じた通りに、この館が氷だけで構成されているとしたら、ここは恐らく氷点下の世界なのだろう。
もしくは、この館を構成する氷そのものに、簡単に溶け出さないようなんらかの力が働いているとも考えられる。
……どうせ来るなら、夢の中などではなく現実に辿り付きたかったが……
「あら、こんなところで迷子?」
そんな事を考え始めたその時、背後から一人の女性の声が聞こえてきた。
この館の主だろうか?
しかし、自分の夢の中であるはずなのに、都合よくそんな存在まで再現されているのも考えづらい。
……などと思いつつも、自分は反射的にその声が聞こえた方へと身体を向けていた。
「私はアウドムラ。 かわいいお嬢さん、私の館になにかご用かしら?」

……それが、世の人に”氷昌姫”と称される女性との出会いだった。