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―6―




「――開け、轟雷宮の門――我が呼びかけに応え、ここに出でよ! 『ライトニングエッジ』!!」

リーゼが高らかにそう宣言した瞬間、その両手を差し出した先……晴天のはずの空に、いくつものの雷光が走るのが見えた。
――セイクリッドが攻撃系の魔法を使うとは思えない……いや、ありえない。
少なくとも、ティール達四人は、そのような話は聞いた事が無かった……が、次の瞬間、四人は更に驚かされることとなる。
上空を走る雷光が一点に集まり、そのまま轟音と共にリーゼの高く掲げたその腕に落ちてきたのだから。
「なっ……!?」
それは、その直後の事……
その場所には落雷の直撃を受けながら、平然とその足で立つリーゼ。
……そして、舞い降りた雷光は掲げたその手に吸い込まれていくかのように一瞬の間に収縮していき、バチバチとうねりを上げながら、一つの形へと変化していた。
「……まさか、メンタルウェポン!?」
メンタルウェポン。
その名の如く、術者のメンタルを物質として具現化して創られた武器の事を差す言葉である。
それは噂こそあれど実際に出来る者はいないとされていが……
――紫電の双剣(ライトニング・エッジ)
そう呼ぶべき二振りの短剣を、目の前のセイクリッドは手にしていた。
紛れも無く、四人の目の前で雷から精製されたシロモノである。
……加えて、主の内からも”轟雷”のメンタルの気配が膨れ上がっていくのも感じられる。
明らかに、先程までとは違う。
「……っぁぁぁああああ!!!」
「ティール!?」
先手必勝。
そう言わんばかりに地を蹴り駆け出すティール。
対して、リーゼとカノンの二人は悠然と構え、その一撃を待つかのようにその場を動こうとしない。
「――ブレイブ・チャリオット!!」
全身を包む魂の炎が膨れあがり、突き出された槍を軸に渦を巻くように展開する。
それはティールの身体そのものを炎の突撃槍(ランス)と変える奥義の一つ……
その火力と速度からくる突撃力は、他の追随を許さない一撃となる。
「――くっ!」
……その一声は、どちらが発したものなのだろうか?
そう考えた者もいたかもしれないが、今この瞬間には、そんな些細な事は関係なかった。
「……ティールのチャリオットまで…!?」
青白い炎のその先には、”アンブレラ”の日傘。
ティールの一撃は、その傘を構成する布の表面で留められていた。
「――はぁああ!!」
直後、そんな一声が頭上から降り落ちる。
見上げると、そこには双剣を構え、カノンの前に立つティールへその一撃を向けるリーゼ。
――双剣の雷は、今にも破裂しそうなほどに強く唸りを上げている。
「雷華・崩閃!!」
そして、その一撃が振り下ろされたその時、双剣を構成していた雷が、大きく解放された。
「くっ……!」
リーゼの腕を中心に、周囲を飲み込むような勢いで展開する雷撃の嵐。
”この一撃は受けずに、避けなければならない”
とっさにそう判断したティールは、紙一重のバックステップで雷が満ちる領域からの脱出に成功していた。
……服の裾が若干焦げていることから、本当に紙一重のタイミングだったのだろう。
「清浄なる青に宿りし水精よ 流るるその身を持って 型無き槍を創り出さん――ウォーティランス」
その直後、追撃を加えるようにカノンが短めの詠唱を完了させ、傘の先から無数の水で構成された槍を撃ち出す。
ティールはバックステップの勢いを止めず、そのまま体勢を変えることなく地面を蹴り、さらに大きく後退した。
放たれた槍は雨のように降り注ぎ、彼女が通り過ぎた地面を次々と突き、穴を開けていく。
「――ぁあ!!」
その時だった。
数秒前までアンブレラの横にはずのリーゼが、再びその剣の唸りを増大させながら、宙に飛び上がったティールに向けて技を放とうとしている姿が目に映った。
「くっのおおおお!!!」
――しかし、決死の後退が功を奏したのか、そこは味方の間合いの内だった。
リーゼのその軌道上に剣による一撃を振り入れるディン。
剣で叩き落とすにも、セイクリッドとパラディンナイトでは確実に力負けし、逆に弾かれて直撃を受けるだろう――
そう判断したらしく、リーゼは大きく跳びあがり、その一撃を回避していた。
ティールとディンは空中に逃げたその身体に追撃を加えるべく構え、イリスとエミリアも詠唱の体制に入ろうとした。
「万物を包む大気 風精の契約の下に命ず 万象を絡めとる輪舞曲(ロンド)を奏で――」
しかし、それと同時に聞こえるカノンの詠唱。
一撃を放った直後に、また新たな詠唱に入り……その二つの魔法の間の隙を、リーゼが埋める。
しかも、穴埋めのために撃つその一撃も生半可なものではない。
……この二人の強さの真骨頂は、やはり互いの隙を文字通り隙間無く埋めてしまう、このチームワークなのだろう。
「――避けただけだと思うな?」
そう脳裏に浮かんだその時、空中のリーゼがにやりとあやしく笑みを浮かべる。
……その直後、両手に握られていた紫電の短剣に、異変が起こっていた。
「雷華・轟双刃!!」
突如として、双剣から2M超の刃を構成するかのような形状に雷が展開し――先程までは、跳び上がって射程外だったはずの位置から、強引に斬りかかる。
「――ここに舞い踊れ サイクロンウェイブ」
そして、同時に完成するカノンの魔法。
上からは雷撃の剣、横からは烈風の渦……
ここでリーゼに反撃しようとすれば、確実に魔法の直撃を受ける。
一同は瞬時にそう察し、転げるようにしてその場から散開した。
「エミィ!」
だが、速さに欠ける面があるディンとエミリアでは、両方を避けようとするなら行動が一歩間にあわない。
そんな中で、ディンは、一つの行動に出ていた
「なっ――」
それは、得意である『力』でパートナーを突き飛ばすことで、確かにとっさの距離ならば、下手に走るよりも稼げるだろう。
……しかし、それは自らの行動をより遅らせる行為でもあり……
「――ぐああっっ!!」
「ディン!?」
そのままリーゼの一撃を受け、カノンの暴風に大きく吹き飛ばされるディン。
――いくら元が頑丈とはいえ、メンタルを伴う攻撃への耐性はパラディンナイトは備えていない。
死に至るダメージというのも早々ありえないが、確実に身動きは怪しいレベルのダメージは受けているだろう。
「そんなっ……ディン……私……」
”物語の中のお姫様”……ふと、そんなフレーズが思い出された。
小さい頃に憧れた、童話の中の存在。
それは、王子様や騎士に守られ、何不自由なく暮らす優美なもの。
……けれど、それは守られて、ただ守られるだけで、自分では何も出来ないお姫様……
「……私は……そんなの、望んで……」
「戦を司りし神 我 契約の元に汝の力を求む 天空を駆けるは紫電の威光 汝の怒りは万物を穿つ―――来たれ、雷帝」
「――っ!!?」
そして、その直後から傘を空へと向け、詠唱を開始するカノン。
……記憶の中にあるものとは一部違いは見られるが、エミリアはその詠唱がなにを意味しているのか瞬時に理解した。
――それは、轟雷系の高位呪文。  全てを穿つ、雷帝の大槌――
「散れぇぇえ!!!」
「――トール・ハンマー」
エミリアの叫びと、カノンのキーワードを表す声が重なった。
遥か天空に、先程リーゼが呼び込んだものより遥かに大きな雷撃の球体が現れ、それは勢いよくエミリア達のいる領域を狙って落ちてくる。
イリスは、とっさに飛び込んだティールによってその場から退避したが……
―しまっ……!?―
呼びかけたはずのエミリア自身が、足をもつれさせ、その場に倒れかけていた。
その瞬間、倒れ混んでいくはずの視線が……落ちてくる雷球が……周囲のすべてが、その目にはスローモーションに映っていた。

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