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―EX―






「あら、トゥール。 そっちから出向いて来るなんて、珍しいわね」
――氷昌宮。
アウドムラは大きな氷の鏡の前で、その中に映る光景を眺めながら、背後に現れた来客に言葉を向けた。
……鏡の中には、つい先程自らの力を分け与えたエミリアとその仲間達。 そして、『轟雷宮』の加護を受けた少女、リーゼとその姉の姿。
さっきまで正面からぶつかり合うように戦っていた二組が、のんびりと支援士向けの衣装店で服を見繕っている姿は、妙に微笑ましかった。
まぁ、その中で唯一の男性である一人は、満身創痍だったこともあり、先に家に戻っていってしまっているのだが。
「謀らずも我々の加護を受けた者同士の戦いになったわけだが、挨拶にと思ってな」
来訪した男性の名は、トゥール。
世の人に”雷帝”と称される、轟雷宮(ライトニングパレス)のパレスキーパー。
……そう、リーゼに力を与えた者であり、属性こそ違えどアウドムラと同等の存在である一人である。
「戦いね……まぁ、見た限りじゃ今回は引き分けってところかしら? でも一対一だとエミィちゃん負けてたわね」
「ほう? また弱気な発言だな」
「……普通に考えて、マージナルとセイクリッドじゃセイクリッドに分があるに決まってるでしょ? 確かに多少は対応していたみたいだけど、そのくらいはわかるわよ」
やれやれ、とばかりに溜息をつきながらそう答えるアウドムラ。
トゥールは”ふむ”と一声出すと、腕を組んで目の前の大鏡へと目を向けた。
その向こうでは、何着か服を押し付けられて困惑するリーゼの姿。
……正直、自分の関係者とはいえ女性のこういった面には、男としても、自分の性格的にも踏み込む事は出来ない。
直ぐに目をそらし、再び口を開く。
「アウドムラ、こうして我々が人に力を与える事……どう思う」
「そうね。 私達は、本来この世界全体に宿るメンタルバランスを管理する存在。 来訪者に上位能力を与える権限は、おまけみたいなものなのよね」
「ああ、確かにそうも考えられるな」
「……でも、無駄だとは思わないわ。 力は、得る人によっては、その一人だけで多くの者の力になる事もある」
「だが、逆もまた然りだ。 悪しき心を持つ者が力を得れば、それは多くの者から全てを奪うだろう」
「だからこそ、私達は”選別”する必要があるんじゃない。 ……たとえ精霊宮にたどり着こうと、その人の本質が悪であれば、私達は力を与える事はない」
「そうだな。 だがたとえ善であろうと、その者の精神がその力を支えるに値しないならば、それもまた否だ」
「……ま、つまりはそういうことでしょ? 世界にプラスの影響を与えられる者と、マイナスの影響をもつ者……力を持つに値する者を見分け、力を貸し、界の安定を導く歯車となる」
「……なるほど。 考えれば、なかなか深い役割だな」
「それだけに責任も重いけどねー……可愛い子だからって力を貸せないのが悔しいわ」
「…………そんな事を言っていては、またエルナンの奴に皮肉を言われるぞ」
「いいのよ。 それも私達の付き合いの一つじゃない」
クスクスと笑いながら、そんな事を言うアウドムラ。
トゥールもまた、”それもそうだな!”と言って笑い出していた。