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「うーん、困ったなぁ・・・」

1人の少女が、なにかを捜すように辺りを見渡しながら、ポツリと呟いた。

その手には、グランドブレイカーで見かける機械のような杖が握られていることから、恐らくは支援士なのだろう。

少女が動く度に、頭から突き出るように立ったアホ毛(本人は寝グセと主張)が、可愛らしくピョコピョコと揺れていた。

「うーん・・・」

相変わらず、あっちをきょろきょろ。こっちをきょろきょろと、まるで小動物を思わせるような素振りで辺りを見渡す。

だが目的のものが見つからなかったのか、「ふぃーっ」と、溜息だか深呼吸だか解らない声を上げて立ち止まり、なにかを考えるように、こめかみに指を当てた。

――――しばし考えること数分。

「・・・もしかして、あそこかなぁ・・?」

それで思い当たる所があったのか、少女はパタパタと、街中を駆けて行った。

 

 

 

―――場所を変えて、ここはリエステールのとある家・・・の屋根の上。

そこに、1人の青年が仰向けになって、ボーー・・っと物思いにふけっていた。・・・いや、さっきまではもう1人いたのだが、用事があるとかで先にどこかに行ってしまったのだ。

「・・・・・・・・・」

青年は無言のまま、まるで死んだ魚のよーな目で青空を見続ける。はたから見たら、少し異様かもしれない。

「・・・ん?」

しかし、何かの気配を感じたのか、面倒そうに起き上がると、ゆっくり屋根の下に顔を向けた。

そこには、・・・正確に言うと、その近くの道端に、白い外套を羽織った少女が、きょろきょろと何かを探すように辺りを見渡している。

 

「ライトー、ライトー?・・うーん、いないなぁ・・・」

しかし見つからないのか、少し疲れた様子でこちらに―――丁度青年の真下の壁に寄りかかり、少し休憩。とばかりに、静かに目を閉じた。

 

―――それをしばらく見た後に、

「・・・何やってんだ?ティラ」

「ふぇえ!!??」

・・・いや、そこまで驚かなくてもよかろうに。

声をかけた途端、愉快な悲鳴をあげて飛び跳ねたお方に、思わずそんな感想がもれた。

「ど、ど・・!どなたデスカ!?」

おまけに声が思いきり裏返っていたりする。だからそんなに驚くなよ。悲しくなってくるだろ・・・。

「落ち着け。オレだ、オレ」

そう言いながら、青年は高さ数Mある屋根から飛び降り、そして音もなく着地した。

対して少女は、しばらくわたわたと慌てていたが、青年の姿を目にした瞬間。

「あー!見つけたーー!」

と、まるで迷子の子供が、親を見つけた時のような笑顔で青年に抱きついた。気のせいか、頭のアホ毛も嬉しそうにピョコピョコと動いている。

「・・16にもなってガキかお前は。というか、あれ位で驚いてどうすんだ」

しかし青年はとくに動じる事もなく、手慣れた様子で少女を体から引き剥がすと、ティラと呼ばれた少女は青年の言葉に「うっ・・・」とたじろぎ、

「あ・・あれはちょっと驚いただけで・・・。じゃなくて、ライト、今まで何してたの?捜したんだよ?」

少しバツの悪そうな顔を浮かべて文句を言った。

「何って・・・ソールと昼寝」

何を今更、とでも言うように、ライトと呼ばれた青年はあっけらかんとした表情で答える。

「えっ?ソールちゃん、いたの?」

「ああ、さっき帰ったけどな」

 

他愛の無い会話だ。だが、不意にティラが不機嫌そうな顔を見せた。

「・・?どうした?愉快な顔して」

「・・・ライト、ソールちゃんとずいぶん仲良いよね」

「まぁ、昼寝仲間だしな」

ぷぅ、と頬を膨らませてみせるティラに、珍しく笑みを浮かべてライトは答えるが、

それが気に食わないのか尚更不機嫌そうな顔で睨んでみる。しかし、はたから見ればその表情はどちらかというと、“不機嫌”というよりも“いじけている”という感じの方が強く、睨んでみてもそれはとことん上目使い。迫力は皆無に等しく、むしろ可愛らしい印象しか与えなかった。

だが、そんなことをいちいち気にしていたらキリがない。

「・・・なんだ?オレが仲良くしちゃ悪いか?」

不機嫌をそのまま表に出して、ティラにそう問いかける。

すると「・・・そうじゃないけど・・・」となにやらボソボソと言い始めた。はっきり言って、なんと言っているのか分らない。こういう時は―――

―――鉄拳制裁!

ゴンッ!という鈍い音とともに、「痛っ!?」と短い悲鳴が聞こえた気がするが、この際無視だ。

「『そうじゃないけど』なんだ?はっきり言わねえと解らないだろ」

腕を組んでそう言い放つ。対してティラは今のが余程痛かったのか、「は、はいぃ・・・」

と零れんばかりに目を潤ませながら返事をした。・・・少しやりすぎたか。

すこし反省する。だが後悔はしない。

「え・・ええとですね?・・・怒らない?」

「さぁ?内容によるな。それとも、そんなにオレが怒りそうな事考えてたのか?お前」

ジロリ、と睨んだら、ティラは『とんでもない!』と言わんばかりに首をブンブンと横に振った。

 

「え、えーと・・・そのー・・・」

しかし、やはり言いにくい事なのか、視線を左右に泳がせてなにやらモジモジと言いよどむ。確かに他人から見たら可愛らしい仕草かもしれないが、残念。そろそろオレは限界だ。

「・・あと10秒以内に言わないと、もう一回殴る」

「ふぇえ!?ちょっ・・ちょっと待っ―――!」

「・・・10・・・9・・・」

なにやら切羽詰まった声が聞こえる気がするが、問答無用だ。10秒たったら殴る。この決定に変更はない。

「8・・・7・・・6・・・」

「わ、わかった!言います!言いますから殴らないでーーー!!」

少女の悲痛な叫びが辺りに響き渡る。ちなみに言っておくと、ここは街中。それも往来のド真ん中だ。そんな場所で悲鳴じみた声を上げるものだから、当然といえば当然、周りにいた通行人から視線の集中砲火を受ける羽目になった。

(・・・まずい)

確かに何も知らない人間から見たら“男が少女に暴行を働いている”ように見えるのかもしれない。・・・否、そう見えるのだろう。なにせ耳を澄ませば「あの女の子かわいそう」だの「あいつロクな死に方しねーぜ」はまだいいとしても、挙げ句の果てには「おい、だれか自警団呼んでこい!」と洒落にならない事を叫ぶ奴まで現れる始末だ。

 

とてもではないが相方から話を聞ける状況じゃない。

いや、下手をしたら今後の生活に支障がでるどころか牢屋行きだ。それだけは勘弁してほしい。

「・・・チッ!行くぞティラ!」

舌打ちをしながら「ふえ?」と間の抜けた声を上げる相方を担ぎあげて、―――そのまま近くにいた奴を踏み台に、家の屋根へと着地。そのまま逃げ―――、

『なっ!?ひ・・人さらいだー!自警団はまだなのか!?』

『クソッ!どこまで性根の腐った野郎だ・・・!』

『どなたかーー!支援士の方はいませんかーー!』

 

―――ああそうか。まぁ確かに流れではそういうことになるな・・・。

どこか感傷に浸ったような顔で遠くを見つめる。肩に担いでいる相方がようやく放心状態から覚めたのか「え・・?や、ちょ、ちょっとライト!?なにしてるの・・・ていうか降ろしてくださいごめんなさい私なにかしましたかっていうか降ろしてーーー!!??」と赤面しながら何事か叫んでいるが、私は人さらいですから何も聞こえません。ええ、人さらいですともコンチクショー。

 

そして無実の人さらい、もとい本日1番の被害者は、今回の騒動の原因である少女を担いだまま、もの凄い速さでその場から姿を消した。

 

・・・・そんな微笑ましい昼下がり。(本人にとっちゃ微笑ましいも何もないのは秘密)