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 風をもとめて —ミナル〜サンドヴィレッジ—


 〈キィィ…カコン キィィ…〉
町の中央を流れる清流から各所へと張り巡らされた運河の上を、人や荷物を載せた小舟が
何艘も行き交っている。
…そう、ここは豊かな水の恵みを受けた河川の町・ミナル。

 〈キィィ…カコン キィィ…〉
「ねぇねぇっ、カネモリ。〈ボソボソ〉」
「何でしょう、ジュリア?〈ボソッ〉」
「さっき酒場で会った竜(ドラゴン)の子、ホント可愛かったなぁ〜。
キミだって、そう思うでしょ?」
「『敵の害意を少しでも削ぐように、あらゆる生き物の幼子は可愛げある姿となるのが
自然の摂理』
とも言われていますが、まさにその通りでしたね?」
「…ハァ。
ボクぅ…、もう竜とは戦えないかもしれないなぁ。
どんな竜にでも、あ〜んなに可愛い頃があったかと思ったら…。」
「それは困ります。
それでは凶暴に育ってしまった竜から身を守れないではありませんか。」
運河に沿って悠々と進む小舟に乗ってミナルの町中を行くは、
黒髪の中年男・錬金術師(アルケミスト)カネモリと
栗色の髪の若き女剣士・支援士(ヘルパー)ジュリア。


 「ありがとうよ。ではな…」
川岸に小さな桟橋を作り付けた船着き場で、運賃を受け取った船頭を見送る。
ふたりが振り返ると、そこには一軒の建物が建っていた。
「ジュリア。
わたくしたちはここで、砂漠に向かうための準備をするのです。」
「えっ!?
ココって…、宿屋だよね? どーやって?」
「…今によく分かりますよ。入りましょう。」

 〈カラン…〉
「いらっしゃいませ。何名様で…」
「またお世話になります、フォンブリューヌ夫人。」
「あらぁっ、カネモリさん! いらっしゃい!
ご一緒しているのは支援士さんかしら? 可愛い娘ね?」
カネモリから「フォンブリューヌ夫人」と呼ばれた宿屋の女将は、その少々太めの
体格から想像できない身軽さでカウンターを抜け出して、ふたりの元にやって来た。
「彼女は、わたくしが長年お世話になっている宿の女将さん・フォンブリューヌ夫人です。
それから、彼女は今回お世話になっている支援士・ブレイブマスターのジュリアですよ。」
「はじめまして、ジュリアさん。わたしのことはジョゼットと呼んでちょうだいな。」
「わかったよ、ジョゼットさん! よろしくねっ☆」
「…ところで夫人、『例の部屋』は?」
「もちろん空けてあるわ、お約束通りにね。
どんなにお客さんが多くても、最後の一部屋になるまで空けておくのよ。
いつカネモリさんがおいでになっても大丈夫なように、ねっ♪」
ジョゼットに案内されてカネモリたちがやって来た『例の部屋』。
ミナルの清流に面した少し広めの部屋であるが、その中央には火炉と大きなガラス器具が
鎮座しており、壁にはなんと、手回し式の水汲みポンプまで設置されているではないか!?
「カネモリ、ココっていったい…」
「わたくしがフォンブリューヌ夫妻のご好意で借り受けている、出張実験室です。」
「えぇ〜〜っ!?!?」

 ミナル河流域に広がる草原地帯には、数多くの薬草が自生している。
それらを採集して回るための拠点として、また、ミナル河の良質な水を活かし実験や製薬を
行うために、カネモリはいつも利用している宿屋の一室に最小限の実験器具を持ち込み、
簡易な実験室に改装しているのだった。
もちろん、ジョゼットや彼女の夫・歴史学者アラン・フォンブリューヌ博士との親交や、
カネモリが通常の倍額の宿賃を心付けとして支払っている事実があればこそであるが…。
「カネモリさん、これから何をするのかしら?」
「えぇ、砂上墓所に所用がありまして…。
水が必要になりますから、ここで『水の元素』を作ろうと思います。」