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 夜・・・その剣戟。
 空也と影の戦い。
「襲破死点突!!!」
 一瞬の隙を突いた空也が入れる連撃。そこから続く技!
「あああ!!」
 辛うじてそれを剣で止めるも、影は反動のままに後ろに吹き飛び、剣は空中で旋回して落下し、
 道場の床を叩いた。
 空也は、「はぁ、はぁ・・・」と息を整えて影を見て言った。
「さて・・・自分の口から説明できるだろう・・・」
 空也は剣を影に突き出し、逃げられぬように相手の動きを封じる。
 影は悔しげに俯き、道場の地面を拳で叩いた。
「・・・天宮智香殿・・・・!」



  継ぐ者、紡ぐ者



 静かな時が流れる。
 しかし、やがて智香が口を開き、返事を返した
「・・・はい。連撃を回避する時、己の力に奢れました。その後に来る攻撃を予測できず体勢を崩し、持ち直す間もつくれなかった・・・油断です」
「宜しい」
 スッと空也は剣を降ろし、息を吐いた。
 緊張した空気が少しほぐれ、両者安息を付く。
 一応、誤解無きように説明するが、これは実演訓練。つまり、本物の戦闘を模した稽古である。
 剣を仕舞い、空也は智香に向き直って告げる。
「その通りだ智香。お前の言ったように、戦ではちょっとした油断、過信、慢心が己の命を奪う。
 いつも自らの思い通りになると思ってはいけない。判るな?」
「はい」
 ふぅ、と一つ息をついて笑い、空也は智香を立たせるために手を差し出した。
(しかし、ブレイザーのランクで私の息を少しとは言え切らせるとは)
 これは稽古の為に、智香の弱点、疎点ばかりを上げたが、そういった評価できる点も空也はしっかり見ている。
(この娘は、良いブレイブマスターになるだろう。真面目で慎ましい、良い弟子を持てて幸せ者だ)
 頷き、そう思う。・・・・と同時に、空也は気付いた。
 ドスっと、なにか塊のような物が落ちる音が・・・

 ・・・・そう、ちょっとした油断、過信、慢心が己の心を奪う。

 この場合は、油断・・・なのだろうか?
 道場の入り口に立つ人物の気配と、現在の自らの状況に気付かなかった事が。
「あ、あ・・・あの、空也さん・・・」
「え、ああ。ホタル殿ではないですか」
 空也は、こんな時間に珍しいと思いつつも、ホタルは薪を切らす時。竜泉の家に来る事もあり
 大して珍しい事ではなかったのだが――――
「わ、わたし・・・お二人がそんな関係だったなんて知らなくて、差し入れも持ってきたんですけど・・・あ、それよりも、わたしお邪魔ですよね。し、失礼します!!」
「え、え!? なぁっ!!??」
 パタパタと顔を真っ赤にして、ホタルが走り去った後。
 空也はホタルの見ていた先を確認してようやく気付いた。
 ホタルの視線は智香だった。
 先ほどの稽古で結構激しく飛ばされたせいか、息切れし、顔を蒸気させ、且つ、袴は乱れ、肩は生肌を覗かせていた。
 その上、空也が手を差し伸べる・・・見方によれば、手を伸ばしているようにも見えるだろう。
「?」
 息切れしながらも、そんな慌てる空也に智香は困惑した表情をした。
 しかし、それに気付くか気付かないか・・・まあ、気付く余裕が少なくともあったとは思い難いが
 慌てて道場の外に走り出て、空也は叫んだ。
「誤解だあぁぁぁぁ!!!ホタル殿ぉぉぉぉぉ!!!!」





 とまあ、智香が竜泉に弟子入りしてからこう言った事は今に始まった事ではない。

 そもそも、天宮智香という少女。彼女の育った環境が特異ともいえるだろう。
 彼女の父、天宮竜三郎。当時、空也の父、竜泉支空と共に竜泉家で剣を学び、良きライバルとして共に過ごした元門下生であり、今では十六夜を警護する職で剣の腕を生かしている人物である。
 彼女は幼少の頃より、そんな父の剣の鍛練していた姿を見て育ち、憧れ、また自分も剣をふるい、父より稽古を受けていた。
 その為に、剣の腕で言えば、空也にははるか及ばずとも、彼と剣を交える事は出来る程の実力を持つ事もまた事実である。
 そんな正義と道徳と礼儀を持ち、活動的な父親に対して、彼女の母親は、実を言うと剣の稽古を反対していた。
 いいや、それだけではなく彼女の母、天宮那由は極度の心配性で、とにかく娘には絶対安全。
 それこそ、智香を箱に入れて大切にしていたほどに育てていて、文字通り彼女は箱入り娘となっていた。
 そんな彼女であるが故に、
「竜泉空也殿! わたくし、天宮智香をどうか御娶り下さい!!」
 弟子入りの時にこんな事を言ってきたのも印象として残っている。
 ・・・どこから間違えて手に入れた情報か、弟子入りとは竜泉家の者になるという事であり、
 それは即ち、養子となるか、嫁となるか。ならば空也と年齢の近い自分は嫁になるしかない。という事情を聞いた時はなんというか・・・微妙な心境であった。
 もちろん、弟子入りで竜泉家の者になる必要も無ければ、特別な事をする必要もない。
 ただ剣を正しく使う意志があり、剣を学ぶ志があれば竜泉はその者に剣を教える。
 まあ、そういうワケで智香に「なんでこんな事を説明する必要があるんだろうなぁ・・・」と思えるトコロまで説明し、彼女の弟子入りを普通の弟子入りの仕方にさせたのである。
 ―――話を戻すが、つまり智香はそういう娘である故に、世間知らずであり
 また、よくよく人に誤解され、誤解させるような立ち居地に居る天然系だったりする。
 しかし空也は、彼女が支援士を志す事は本気であったために、不器用ながらも一生懸命な智香に対してサジを投げるような事だけは決してなかった。

「ま・・・待たせて・・・スマナイ・・・・」
 約三十分ほどした後。空也は外の打ち込み人形で自主稽古を行っていた智香の所に戻ってきた。
「空也殿。何かあったのですか?」
「い、いや。気にしなくとも良い・・・」
 ここまで気付かないというのもある意味天晴れだとは思うが、気付いて無い者にわざわざ説明する内容でも無い。
 コホンっと一つ咳払いをし、空也は話題をさりげなく切り替える。
「ところで智香。自主稽古で何をしていたのだ?」
「あ、はい!新たな技の練習をしていました!」
 さり気なく変えた話題だったが、その智香の返答に「ほう・・」と。空也は感心した。
 剣の道を志す者にとって、ブレイザーの時期は言うなれば修練期。
 剣の基本、扱い方、心構えを身に付け、自分の有り方を知る。
 そして、技などはブレイブマスターになってから修練し、多様に覚えていくもので
 こうしてブレイザーの時期から早期に新たな技を模索し、研究する事は良い心構えだとも言える。
「どれ、悪い癖や短所があれば指摘するから、やってみるか?」
「い、いえ・・・それが。この技は今まで一回しか成功した事が無くて・・・」
 それが恥ずかしいのか、智香は顔を赤らめてもじもじと手をそわそわさせる。
 空也は「ふむ」と声を上げ、智香の頭を撫でる。
「修練を積む事は良い事だ。失敗をめげずに一歩一歩進んでいけば良い」
「あ・・はい!!」
 空也の言葉に顔を明るくし、智香は「では、見ててくださいね!」と、打ち込み人形から大分離れた位置に立つ。
(遠距離・・・斬空斬系の技か)
 構えは抜刀。少なくとも自ら放つという事は止水系の技ではない。
「竜泉流改天宮流秘剣・・・」
 ふっと、智香より風を感じ、その上で剣からメンタルウェポンの流れを掴む。
(ファイアブレード・・・それに、この感じはまさか)
 それは、空也の予想通り・・・
「縮地、」
 縮地法。数十メートルより第一の踏み込みで一気に敵の間合いに入り込む奥義。
 智香のそれは、空也のものと比べはるかに弱く距離は短いが、ブレイブマスターの技である。
 その先に打ち込み人形。その入る直前に感じるメンタルウェポン。属性は火・・・赤系。
「破凰連」
 ・・・が、
 コケッと、智香は足をもつれさせ、
「牙ぁぁぁぁ・・・・・・・!!!!!!!」
 ゴロゴロゴロゴロ!!!と、はるか先へと転がって行った。
 ・・・そして、空也はふと思い出す、
「あ・・・あの先は」
 そう呟いた直後、
 ドポーンと水の跳ね上がる音が鳴り響いたと言う






「さて、智香」
「は・・ふぁい」
 寒さに身をぶるると震わせながら空也の呼びに答え、脱衣所で新たな服に着替える。
 空也はため息を一つついて・・・というか、智香が来てから随分とため息が増えた気がするが・・・それはまあ別に良いとして、
 智香に告げた。
「あの技は・・・お前がブレイブマスターになるまで使うのは止めておいた方がいいな・・・」
「は、はい・・・」
「それに、今日はもう遅い。明日は支援士の実演訓練を行うから、早めに寝たほうが良いな」
「わ、わかりました」
 そう告げて空也は脱衣所を後にする。
 その廊下を歩く途中。考えていた。
 彼女の先ほど使おうとした技、「縮地破凰連牙」。縮地で敵の間合いに入り、炎・・・彼女の属性なら、赤をちょっと派生した程度の所だが、
 その属性付きの双葉を浴びせる攻撃だ。
 この技はシンプルに見えて実に効率的である。
 縮地法は文字通り速度からなる技で、距離を一気に詰める。その速さの流れと共に剣を繰り出す事が出きれば、自らの攻撃力以上に運動力が上乗せされて威力が上がるというもの。
 この技の真価が気になり、空也は一人打ち込み人形の元に行き、剣を構えた。
 技の流れは、お粗末な失敗だったとは言え智香の手本を見ていた為に掴んでいるつもりではある。
「縮地・・」
 ここまではいつも通り、その上に自らの炎の能力
 そのまま双葉へと流れ込む!
「破凰連・・っ!!」
 が、打ち込み人形の直前で止まる。
 これは、勘・・・いや、言うなれば危険感知である。
 もしもこのまま双葉を続けて出していれば、空也も先ほどの智香の二の舞になると判断し、縮地法だけに収めたのである。
(やはり初見では難しいか・・・練習すれば私も直ぐにモノに出来るだろう)
 智香は、「一度成功した。」と言っていた。
 だが、たぶんそれまでに智香は何百もの失敗をしているのだろう。
 つまり、それだけ縮地法の反動を受けている。
(私が身に付けてから色々と教えられれば彼女も効率よくこの技を身につけられる)
 そう考え、空也は微笑ましく思い、一つため息をついた。
「ふぅ・・・私もたまには、縮地で転ぶ必要があるのかも知れんな」
 そう呟いて空也は剣を収め、静かに稽古場を後にした。


   一方、モレク

「困ったわ・・・」
 あの後、偶然居合わせた支援士の人に協力をしてもらい、モレクまで帰還する事が出来たリア。
 しかし、あの少年の安静は出来る限り必須であり、拾って帰った手前、捨て置くなど出来はしなかった。
 それだけならまだ良いが、リアは結構その日暮らしな金額程度しか持ち合わせず、少々の依頼を適度にこなす程度にしか仕事をしていない。
 言うなれば、宿代をもう一人持たなければならないのである。
「あーもー!! せっかく南に来たって言うのに、クリスの情報収集ここ数日まともに出来てないわよ!!」
 とんだお荷物に当り散らすも、リアは叫んだ後でため息をついて虚しい事に自覚し、
 兎にも角にも仕事をしなければどうしようもない為に、廊下へと出る。
「まあ・・・どうしようもなかったら、エンリケさんに頼るしか無いわよね・・・」
 気が進まない。という感じでため息をつき、リアは宿のロビーへと向かう。
 気が進まないとは、悪い意味ではない。リアと支援士が衰弱した少年を一人抱えて帰ってきた事を確認し、まっさきに飛び出して山の男達に的確な指示をしたのがエンリケ・エルナンデス。彼であり
 その上、宿場の提供など面倒見の良い誘いをしてくれたが、リアは現在のモレクの情勢を理解していない程愚かではない。
 鉱山が魔物の巣と繋がって以後、まともに鉱石を掘るためには、まず魔物との戦闘を出来るだけの戦闘能力を持たなければならない。
 且つ、発掘中に魔物の襲撃も在る為に効率は低下。それにより、稼ぎは他に乗り換えたりする事がある。
 そんなモレクの苦しい状況の上で、彼の好意に甘えるなど出来はしなかった。
「あ、お客様・・・」
 そんな中、カウンターの従業員が非常に申し訳なさそうな顔でリアに告げる。
「お客様の状況は存じております故に、お連れ様の賃金は半分こちらで見ますけれども・・・これ以上の賃貸はこちらも難しくなりまして・・・」
「なっ・・まあ、確かに三日目だものね」
 これは、あの少年・・・目が覚めたら一発魔法を見舞ってもバチは当たらないんじゃないかと思えてくる。
 が、起きぬ人物に当たってもしかたがない。
 正直、泣きたい気分ではあった。
 早くリエステールに戻ってクリスの情報を集めたいものだし、酒場に報告すら行けない。
 ただただ、特例としてモレクでその日中に終わりそうな仕事を掛け持ちさせて貰い、足踏みをするしかなかったのだ。
 ただ、その日中に終わりそうな仕事。なんていうのは大人気である為に、そうそう手に入る依頼でも無いのだ。
 カウンターの前で「うーん・・」と唸っていると、横からチャリっと部屋のキーを置く人影。
「ちょっと立て込んでいる所悪いんだけど、私、チェックアウトだから手続きお願い出来無い?」
「あ、かしこまりました」
 従業員はそのキーを受け取って、書類にチェックアウトのサインをしている。
 その最中、その女の人・・・いや、少女?が、リアへと声を掛けてきた
「困ってるみたいだね」
「え、ええ。まあ、でも貴女には関係の無い事でしょう」
 ぷいっとその少女から顔を背け、いつもの態度を取ってしまう。
 そうしてから、後で頼れる時に頼っておけば良かったと後悔するのが常だ。
 しかし、少女はそれでもリアに声をかけてきた。
「確かに関係無いね。だけども、私は少なくともリエステールで貴女も、貴女のお連れの人?なんだかワケありみたいだけど、二人に宿場を提供するだけのスペースはあるよ
 まあ、だけども貴女は頼ったり甘えたりする事が苦手みたいだし、宿代を払ってもらえれば私としても万歳々だけどね。どう?」
「っ・・」
 悔しいが、リアは思った。この娘、何者?
 こうも的確にリアの人物像と考え、事情を把握出来る能力・・・只者とは思えない。
 怪しいとは思ったが、次の事象を見て、リアはため息をついて認めた。
「わかった、わかったわよ。そこまで言うならあなたに着いて行くわ。そう悪い人でも無さそうだしね」
「意外だね。こんな誘いを言う人物だから裏があるとか考える用心深い性格かなっと思ったけど」
 もちろん、この少女の指摘も間違っては居ない。
 だけど、
「貴女の肩。ピピがくつろいでいるわ。もし悪人ならピピが近付く事すら無いもの」
「あ、この子あなたの鳥だったんだね」
 少女はピピを人差し指に乗せ、そっとリアに差し出す。
 すると自然にピピは一つ跳ねて、リアの肩に飛び乗り毛繕いを始めた。
「じゃあ、一先ず賃貸していたお金は私が払っておくよ。リエステールに行けば仕事も有るだろうし、余裕がある時にでも返してくれればいいよ」
「あ、その・・・」
 そう言うと少女はパパッと手続きを行ってしまい、出かける準備が出来た頃にリアの方へ振り返った
「あ・・あり・・がと・・・・」
 しかし、はっきりとでもなくそう大きい声でもなかった為に、少女は首をかしげた。
「ん?どうしたの?」
「な、なんでもないわよっ! ほら、アイツを運んで馬車捕まえるわよ!!」
 そんな一人相撲にリアは顔を赤くさせてさっさと少年の寝ている部屋へと向かう。
 そして、少女はやれやれ。とゆっくり首を振ってリアに言った。
「私はティール・エインフィード。リア・・だったね。これから宜しく」
「あ、リア・スティレットよ。宜しく、ティール」


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   ※どうでもいいこと

 こんなに長く寝込んでいる宮守誠司君は相当ヤバイ状態じゃないのかと時々思ってしまうorz