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「ったく、酷い目にあったぜ・・・」

「はい、ごめんなさい・・・」

「理由も分かってないくせに謝るな」

「・・・ごめんなさいぃ・・・」

 

そんな会話をしながら夕方の街をほてほてと歩く2人の男女。ライトとティラ。

 

―――あの騒ぎから約半日。

あの後はもう大変だった。なにしろ自警団だの支援士だのに追っかけ回され、危うくライトが牢屋に放り込まれかけたのだ。その後ティラが「ライトが何かしたのかなぁ・・・?」とそれを本人の前で呟いたら思いっきり拳骨された。

 

「はぁ・・・、まぁいいや。なんか疲れるし。・・・そういえばマキアがなんかホコリ被ってないか?」

もうこういう状況に慣れてしまったのか、さっさと話を切り替え、ライトはティラの持つ杖に視線を向けた。

「うーん・・・。最近全然使ってなかったから・・・」

 

マキア。正式名称ティタノマキア。ティラの持つ機械杖の名前である。

 

「いざって時に何かあったら困るから、今のうちにメンテナンスしとけよ」

「了解です。えーと・・・」

ティラはコホンとひとつ咳ばらいをすると、杖に向かって呟いた。

「ティタノマキア、メンテナンスモード起動!」

すると、その言葉を合図にしたように杖から涼やかな女性の声が響いた。

『OK。メンテナンスモード起動します。メンテナンスの際には扱いに気をつけてください』

 

次の瞬間、ガシャンッ!とティタノマキアの先端部分が変形。次々と形を変え、とある部品が格納されたかと思えば、中心部分が左右に開き、杖の心臓部である中枢コアが露出した。

 

それを見届けるとライトは、さっさと歩きだす。

「ま、とりあえず飯食いに行くか」

その言葉に、ティラのアホ毛(しつこいが本人は寝グセと主張)がピョコンと反応した。

「わぁーーーーい!!ご飯ーーーーーー!!」

ティラは満面の笑顔で街を駆け始める。

「あっ、おい!そんなに慌てるとこけるぞ―――」

 

しかしその時、悲劇が起こった。

ティラは道の小さな起伏に足を引っ掛け―――

「えっ?」

―――ツルッ!ゴンッ!  ガシャーーーン!!!!

 

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?

 

目の前で起こったことに、思わずライトは唖然とした。

ライトの視線の先には、うずくまってデカイたんこぶの出来た頭を抱えながら痛そうに唸るティラと、さらにその先には―――こけて頭をぶつけた拍子に、見事なまでに砕け散った家の窓ガラスが散乱している。気のせいでなければ、ガラスの破片の所々に何か赤いものが付いていた。

 

・・・・・・マジデスカ?

 

束の間の間、呆然としていたライトだったが、そこは流石と言うべきか、すぐに我に返った。

「っ!あのバカ!!」

不味い。この展開はもの凄く不味い。今すぐ他人のフリをしてこの場から逃げ出さなければ。道連れならまだいい。だが、オレの所為にされるのは勘弁してくれ・・!

 

そう思うとライトはくるりと回れ右をして、もの凄い速さで走りだす。しかし、「うぅ・・えぐ・・・」と泣きじゃくり始めたティラの声を聞くなりピタリと動きを止め、そのままくるりと方向転換。いまだ痛そうにうずくまっているティラの手を無言で取ると、そのまま何事も無かったように走りだ―――

「だれだぁ!?ガラス割ったのは!!?」

突然、怒鳴りながら、その家の主人と思われるオヤジが飛び出てきた。

 

走りだせなかった。ちくしょーオレが何をしたー。

 

思わずそんな言葉が脳裏を過ぎるがすでに遅い。オヤジがすごい剣幕でこちらに向かってきた。

「テメェか・・・。まさか、人様の家のガラス破壊しておいて逃げようだなんて思ってたんじゃないだろうなぁ?」

オヤジがライトをジロリと睨みつけた。

「あ・・あのっ!ご・・・ごめんなさ・・・」

そこに、我に返ったティラが涙ぐみながら、土下座せんとばかりの勢いで頭を下げる。さすがに自分が悪いと認識しているようだ。

これで少しは楽になるな・・・。等と思っていたが、どうやらそう甘くはいかないようだ。

「はっはっは。嬢ちゃんがあやまるこたぁねぇよ。・・・なぁ?小僧」

泣きながら謝るティラに優しく笑いかけた後、鬼のような形相でこっちを睨みやがった・・・!

「お・・・オイ、おっさん。なにか勘違いしてねえか?」

「ああ?何がだ?言っとくが言い訳は聞かねえぞ?」

間違いない。このオヤジ、オレがやったと勘違いしてやがる!

「オイコラおっさん。何勘違いしてんだ?オレは無実だ。そして―――」

ライトはおもむろに、頭を下げているティラを指差した。

「やったのはコイツだ」

周囲から非情だのなんだの言われようと知ったことか。オレは嘘ついてないぞ?

 

オレの言葉にオヤジは驚いたような顔をしている。ようやく誤解が解け―――

 

「こんないたいけな嬢ちゃんに罪を擦り付けるたぁ、いい度胸してるじゃねぇか・・・。その腐った根性、俺が叩き直してやる!!」

 

―――・・・はい??

 

・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!

 

現状を頭が理解するまでの時間、約30秒。

 

「おいっ!ちょっとまて!なんでそうなるんだ!?」

「問答無用!!オラさっさとこっちにこいや!!」

オヤジは叫ぶライトの首根っこを掴み家の中に連行して行き、やがて見えなくなってしまった。

 

「だからオレは無実だぁーー!!」

家の奥から響くライトの叫び声。しかし、その叫びは家の前でおろおろしているティラ以外には聞こえていなかった。

 

南無。

 

 

―――そして数時間後。

体力や精神力、そして先立つものなど色んな物をすり減らして半ば廃人と化したライトが、まるで敗戦兵のように、またはゾンビのようにヨロヨロと家から出てきた。

虚ろな目はあらぬ方向を見ていて、はたから見たらもの凄く怖い、というか不気味だ。

 

そんな死にかけのライトが、ふと足元を見ると、ティラがドアの目の前で正座をしていた。

「・・・なにしてるんだ?」

そう力無く声を掛けると、ティラはハッと顔を上げて、次の瞬間、地面に額が付くかと思うほどもの凄い勢いで頭を下げた。いわゆる土下座というやつだ。どうでもいいが街中ではしないで欲しい。

 

「ご・・ごめんなさい私が悪かったですーー!!」

「ほう、そうかそうか。わかってるじゃないか」

ものすごい勢いで頭を下げるティラに、オレは

「罪の自覚があるというのはなかなか良い事だ」

慈悲を

「だが、それでオレの気が晴れるとでも思ったのか?」

 

与 え な い !!

 

ニッコリと笑みを浮かべて指をバキバキと軽快に鳴らしながら、怯えて涙目になっているティラに歩み寄る。

その額にはステキな青筋がはっきりと浮かんでいた。

「ふ、ふえぇ・・・、ご、ごめんなさい許してくださいもうしませ―――」

「あっはっは。その言葉はもう聞き飽きたし、オレガ怒ッテルワケ、ナイジャナイカ?」

にっこりと拳を握りしめて、―――表ですると何かと面倒な事になるので、おもむろにティラの服の襟元を引っ掴むと、ズルズルと人気の無い路地裏に引きずり始めた。

「い・・・いやぁーーーーー!!??」

ズルズルと引きずられながら、ティラは泣きながらジタバタと手足をバタつかせる。

だが、いくら叫べど周りに人は無く、許しを乞うても相手は無言。少女は涙を流して抵抗するが、その抵抗も空しく少女の姿は路地裏の暗がりへと消えていった。

 

―――そして少女の姿が完全に路地裏へと消えた直後、そこから鈍い音と、少女の短い悲鳴が響き渡ったのだった。