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最も早く動き出したのはレイヴン。
ルインへ向けて翔け、ブーメラン状のブレード「銀月牙」の切っ先を彼女に向けてつきを繰り出す。
受け流すべく放たれた槍とブレードがぶつかり合い、響きあう。
「ふぅん。やっと吹っ切れたって訳か?」
「いや…正直、抵抗心はまだある。けれども今は…!」
「お前らしくていいって子とよ! そらよ!」
「くっ…」


ルインとレイヴンが交戦している近くではエミリアとアウルの戦いも始まっていた。
「エミリアさんだったかかな。まずは小手調べで悪いね、詠唱破棄『アイスピラー』」
「ならば此方も詠唱破棄から『アイスピラー』じゃ」
双方が双方の足元へ向けて複数の氷の刃を突き出さす。
そして双方はほぼ同じタイミングで互いの攻撃をかわす。
「続けていくよ。―――我が手に宿りし青の精霊よ、全てを貫く槍となれ―――『アイスニードル』」
「―――我が手に宿りし青の精霊よ、全てを貫く槍となれ―――『アイスニードル』」
双方が放った氷の槍も、互いの氷の槍によって相殺される。
「ふふふ…久々に魔法の対応速度、威力共に高い熟練者にあった気がするな…うれしいぜ」
「…」
「俺の目は狂ってなかったってことだね…次は―――」



場面は再び近くのルインとレイヴンの戦いへ。
二人は魔法の影響を受けにくい所へ移動しながら、今も交戦を続けている。
レイヴンが執拗にヒットアンドアウエイを繰り返し、それに加えて時折強力な一撃を放つ、という戦闘パターンに対して、ルインは的確に回避、受け流し、カウンター、反撃を行っている、と言った形だ。
「こんな戦い…! いつまで続けるつもりなの…!」
先程から幾度と無くぶつかり合い、刃が響きあう中、ルインは聞いた。
「さぁな!」
「さぁな、って…」
「じゃあどちらかが根を上げるまでだ!」
レイヴンは再び槍とブレードを引き離して後ろに跳ぶ。
「流石に…目が慣れてきたわよ。喰らえ!」
彼女は大きく槍に回転を加えながら突きを繰り出す。
レイヴンはかわしきれないと判断し、ブレードで受け止めるが、その槍の威力を抑えきれず後ろに交代しながら威力を落とす、といった格好になる。
彼女は威力が若干下がった所で急に回転を止め、代わりに槍を大きく振り回して追撃に出て、それは彼の体に直撃する。―――加減はしているが。
「うぉっ…」
「もうやめにしない? こんなことをしていても…」
「ん…あぁ、そうだな。おい、相棒」
「なんだ、取り込み中だぞ」
「そろそろ終わりにしようぜ?」
「ああ、もう一撃ぐらいでな」
体勢を立て直し、彼は居合いの構えに似た構えを取り、
「これで終わりにするか! 竜鱗断裁の一閃!」
疾風の如き速さで、迅雷の如き必殺の一閃を彼女に向けて繰り出す。
彼女はかわそうとはせず、それに逆らうかのように短距離の助走より槍を突き出しながら攻撃を放ち、言う。
「ならば此方の最後の一撃は―――陣風―――」
二つの攻撃の威力はそのまま音となって示される。
居合いの一撃を放ったブレードと、突き出された槍の先端が静止している。
「まだよ…このジンプウの攻撃は…『七連続攻撃』なのよ!」
「くっ…なんだと!」
再び槍に力が込められ一撃目よりも威力は下がっているがスピードはさらに上の五連撃が放たれる。
その威力とスピードにブレードは耐えることが出来ず、第三回目の攻撃でブレードは大きく弾き飛ばされる。

―――最初の一撃―――

―――今の五連撃―――

―――残された攻撃の回数は―――

―――後一撃―――

そして彼女は体を大きく捻り、最後の一撃が放たれ―――





―――なかった。
変わりに飛んできたものが彼の額へと飛ぶ。
「うおっ! 痛っ!」
乾いた音が響いた。
彼女は直前に槍を値に突き刺し、その代わりに、
束ねた髪を鞭の如く振ったのだった。
彼女は呆れたような感じで、
「…真剣勝負で命の貸し借りなんかしたくないから、これを肝に銘じなさい」
と、乾いた視線を彼に向けて言った。



近くの戦いは、と言うと。
お互いのメンタルも相当な量が消費されている。
その中でアウルは最後の魔力を解き放つべく詠唱を始めた。
「―――永久表土に眠りし氷の巨竜へ告ぐ
 ―――費用が軒鷲目力を、我が魔力を似て覚醒せよ
 ―――さらに我は告げる
 ―――この声にこたえ、我が魔力による一時の契約を許さんと
 ―――その真の力を解き放ち、我の眼前に立ち塞がりし者に鉄槌を
 ―――そして今、その力、解き放たん
 ―――我は氷竜の力を代替とする者なり。」
先程言ったとおり、こちらも次の一撃で最後の一撃にするようであった。
そして、その詠唱を終えて言う。
しかし、対照的にエミリアの方はと言うと、全身全霊を込めて魔力を練り上げているだけだ。
「これで最後にしようか」
「うむ。そろそろ決着をつけようぞ」
「『フロストグランダードラグーン』」
その言葉と共に放たれた物は、巨大な氷の竜。
そして竜は彼女を襲うべく向かっていく。
「―――青の精霊よ―――ここに集いて型を成せ。『アイスコフィン』」
彼女が短く唱えたその魔法は、アイスニードルと同じく青色の基本中の基本の魔法。
但し、魔力の練り方が普通の詠唱とは大きく違い、ほぼ極限のレベルの物だ。
アイスコフィンは氷の礫か像を精製する魔法。
今放たれたのは―――と言うと、像―――というよりも柱状にして―――氷の竜の口の中へとねじ込む。
竜の口よりねじ込まれた柱が、その竜と相殺していく。
そして、内部より破壊され、柱と共に氷塊となりて彼女の前に降り注ぐ。

「勝負…ありじゃな」
「ああ…認めたくないものだけどね…」

アウルの魔力は今のでほぼ使い切った。―――対するエミリアは彼よりも多く残っている。とはいっても若干だが。
つまり、まだ彼女には魔法を出す余力が僅かながら残っている、と言うことだ。



「二戦二敗の負け越しだったな」
「だが面白かったじゃねぇか、相棒よ」
「だな」
「じゃあな! だが一つ言っておいてやる! あくまでこれは『余興』の一つなんだよ!」
「ちょっと…また早いわね…」
彼女の言葉はまたも聞くこともせず、彼らは走り去っていった。
「いつもあんな感じなのか、あの二人は…」
「…似たり寄ったりね。それもシャッターのスイッチは…っと、あったわ」
彼女はスイッチのある場所を発見し、そして歩いて行きスイッチを切り替える。
閉ざされていたシヤッターは開き、二人の無事な姿も確認することは出来た。
「さて、これからじゃが…」
「ええ、そのことなんだけど。折角下りてきたついでに会って話したい人がいるから…だから、もう少し協力して欲しいんだけど…」
その言葉に三人は同意し、彼女を先頭にこの部屋を抜けて、光の少ない地下の道を進んで行くのであった。

―――戦利品、スイッチ近くにあったγ薬二本