大広間にアインを除く六人が集まる前に、
『交戦中で、合流できそうもない』と言う趣の連絡が来た。
予想できることの一つだ、と事前に彼が言っていたので然程支障は無かった。
暫くし、大広間にルイン、レイヴン、アウル、シータが来て、最後に機械馬に乗ったルインが駆け込んできて六人が揃った。
その馬の首には、行きには無かった小さな籠が掛けられていた。
彼女は馬から飛び降り、馬の首に掛けてあったその籠を取り、アリスのほうへ歩いて行き、
「はい。ラビを取り返してきたわ」
と、その籠をアリスに手渡した。
アリスはすぐにその籠を開けると、その中からは彼女のクロックラビが飛び出てきて、彼女の胸元に納まった。
まずはひと段落ついたと言うことで、各々から安堵の声が出てきた。が、そうも言っている時間は彼らには無い。
「ところで」
と、ルインが話を切り出し始めた。
「簡単に言うけど、二人はこれからどうするの?」
数秒の静寂、そしてアルがそれに答える。
「私たちはあなた方と共に行きます。これは…この話がきた時から決めていました」
「そう…なら、決まりね」
と、アルの方へと向かいルインは行き、そして、背負っていたある物をアルに手渡す。
「これは…?」
「アインからよ。これを渡しておけ、って言ってたわね」
それは大剣であった。
彼女が鞘から引き抜いたがその剣には刃は無かった。

―――刃のなき剣。
彼女に手渡されたその剣はこの船の略奪の中で手に入れた一品。
誰も価値が無いだろう、そう思っていた。
しかし、アインには見覚えがあった。
『無刃剣』
この時代には無いはずの剣のことを。
彼はそれをこっそりと引き取り、今日まで確保していた。
その剣の名は『ジェノヴァ』
戦うべきものだけに力を発揮すると呼ばれる剣であった―――

アルは鞘に剣をしまい、
「アルちゃん。行こうか」
「ええ」
その直後に言われたアリスの言葉を聞き、皆と共に、艦の奥へと歩みを進めていった。
最終更新:2008年03月11日 16:58