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『アンタ。支援士に向いてるんじゃないの?』

 思っても見なかった言葉だった。
 自らの進むべき道。考えた事すら無かった、、、可能性。

『ふむ・・・それで、チカ。お前はどうしたいんだ?』
『父上。私はリア殿の言うように戦いや護衛に向いているのかも知れません。商人殿の馬車を守り、感謝された喜び・・・私の中に残っております』

 ――――支援士。

 だが、支援士とはなんだろうか?
 定義としては、魔物と戦い、人々を救い、上ランクによる絶対的とも思えてしまうような強さ。
 その強さこそが、支援士なのだろうか、、、?





 支援士は誰しもがEランクからその仕事を始め、支援士資格を得てDランク以上の仕事に挑み
 Cランクまでは見習いクラスということもあり、実力さえ整っていればBまでは1年~1年半ほどで行ける。
 そして、Bランクで第一時ステイ期。続くA、Sのランクへの昇格は慎重に慎重を重ねるという。
 よほどの運。よほどの実力。よほどの勤労。それでも、Sまでには10年以上は掛かると算段する。

「、、、という点は、既に理解しているな、智香」
「はい」

 空也を前に座る智香は、基礎の基礎の復習から支援士について説明を受ける。
 この基本はとても重要だ。故に、毎回の講座で開始にはコレから話し始める事がお決まりになっていた。
 ―――支援士ランクを上げる事に急ぐ意味など無い。
 自分が自分の適切なランクに居る事が大切なのであって、20代前半~30代後半にかけてAランクの第二次ステイ時期に居る事も良くある話なのだ。
 急ぐ事も必要も無い。
 急げば、それだけに、力に固執し、力に捕らわれ、力に溺れる。大切なものを失う事だけは絶対にしてほしくない。という空也の心である。

 あとは、主に復習であった。
 支援士の仕事の請け方。対応の柔軟性。支援士のルールなどなど
 それらの説明は、通常の講座の半分以下の時間で終わってしまった。

「さてと。以上だが特に質問は」
「いいえ。大丈夫です」

 智香の理解が素早いのか空也の説明が良いのか。その辺は定かではないが、少なくとも「何を聞いて良いのか判らない」から「質問は無い」という素振りは智香には無かった。
 空也はそれを見て一つ頷き、立ち上がる

「宜しい。では、最終試験として実際に仕事をしてもらうとしようか」
「はい、、、ええ!!?」

 智香は頷いた後、初めて聞いたとばかりに驚く

「く、空也殿、まだ心の準備が、、、」
「なに、大丈夫だ。そう身構える事も無い」

 空也は緊張に俯く智香を安心させるように告げる。
 まあ、どうしても支援士資格を得ていない以上はEランクの依頼しか出来無いわけだ。

「し、しかし、、、」
「ふむ。まあ、初めてとあれば緊張するのも仕方の無い話か」

「、、、若様?」

 ふと、コホンと一つ咳払いをしてお茶を持った青年が居心地が悪そうにして居る事に空也は気付いた

「おお。ヤクモ。居たのか」
「居たのか。って、そりゃないでしょう若様」

 まあ、笑っているあたりは所詮は冗談。本気ではない。
 しかし、続く反撃か、にまーとヤクモは生暖かい笑みを浮かべて空也に言った。

「あまり授業熱心なのは構いませんが。心の準備が出来てないだとか、身構える事も無いだとか、果ては初めてなら緊張するのは仕方がない。ですか? いやいや。羨ま、、ゲフンゲフン。節操はお持ちになってくださいよ。若様」
「・・・・なぁっ!!!」

 数秒考え、ヤクモの言葉の意味を理解し、空也は思わず声をあげた。

「ば、馬鹿を言ってないで稽古に戻らないかっ!」
「あー、ですね。お邪魔なようなので失礼します」
「そして妙な誤解をしたまま行くなー!!!」

 ヤクモならば問題は無い。問題は無いが。
 去っていくヤクモの背を見ながら空也は思った。
 、、、、天宮智香。色々な意味で最後まで油断の出来無い弟子である



-刀堂家-

「空也殿。こちらは、、、刀堂殿のお屋敷では?」
「ああ、そうだ。既に依頼の方は承っているから、サヤ殿から説明を受けるように」

 そう言って、空也は来た道へと踵を返す。

「あ、空也殿!」
「?どうした、智香殿?」
「ここから先は、私一人で、、、?」
「ああ。そうだ」

 一つ頷き、だが次には、空也は気楽な笑みをする。

「なあに。自慢になってしまうが、私の直下で学ばせたんだ。智香殿一人で十分に出来るさ」
「はい!」

 その空也の言葉に智香は笑顔で返し、
 不覚にも、隙だらけな“女の子らしい”笑顔を見せた智香を可愛いな。と、空也は思ってしまった。
 、、、まあ、もちろんホタルに対しての想いとはまた別の意味で。
 言うなれば、娘に対して抱く思いみたいなものなのかもしれないな。と、空也は思った。
 この仕事を通して彼女が“支援士”について理解すれば、彼女が選ぶべき“二つの選択肢が現れる”。
 それでもまあ、今は彼女の為に出来る事をするだけである。
 剣の柄を撫でて、空也は家路についた道とは別に、天乃家へと足を運んだ。





「ご、ごめんください」

 刀堂家の戸を開けて、チカが声をかける。
 すると、奥の方から「はーい!」という返事が聞こえて、
 その声のした方から女性が現れた。

「こんにちわ。天宮さんの娘さんね」
「は、はひ!! 天宮智香と申します!! よろしくお願いします!!」

 緊張でガチガチになっているチカに、女性――刀堂サヤは、ふふっと柔らかく微笑んで、
 一歩前に出て、チカに言った。

「そう緊張する事はないわ。ところで、一体どんな用件で来たのかしら?」
「あ! はい! 支援士の仕事を承る為に、空也殿の案内でこちらに参りました!!」

 そのサヤの問いにチカは答え、荷物の中から空也の用意した書簡を手渡す。
 それにサヤは目を通し、全てを読み終えてから、

「なるほど・・」

 と、呟いた。

「あの、ところで私は・・・?」
「ああ、ゴメンナサイね。うちが出した依頼を空也さんが取っておいて、あなたにさせるつもりで居たのね」
「あ、はい!」

 チカは内心、来た。と思った。
 ようやく、支援士の初仕事の話である。
 刀堂家から出ている依頼という事は、鉱物の入手だろうか? 或いは、その鉱物の入手の為の護衛?
 いいや、どうもサヤも何か出かける風に見える為、その護衛の可能性もありえる。
 或いは、刀堂家の長男が家を飛び出した事で、その捜索依頼だろうか?
 考えられる仕事をチカは頭に思い浮かべ、サヤの言葉を待った。

「えっと、父が良い鋼鉄を手に入れたくて、出かけているんだけど、私もちょっとクロッセルまで出かける用事があってね」
「はい!」

 チカは、予想が当たった事に意気込んだ。
 ならば、妥当な線でクロッセルまでの護衛依頼だろうか。
 シュヴァルからリックテールまで馬車を護衛した経験もあるし、チカは大丈夫だと気合を入れる。
 だが、次のサヤの言葉はチカの予想のどれにも当てはまらないものであった。

「だから、私が帰ってくるまでチカちゃんには家でお留守番をお願いしたいの」
「・・・・・・・・・はい?」

 パッポー。と、思わず自宅にあるハト時計が時報を知らせる音が、チカの頭に流れる。
 お留守番。主人や家の人が外出をする時にその家を守る事。
 意気込んでいたチカの思いとは大きく違った依頼に、チカは思わず口にだした。

「あの・・留守番が、依頼ですか・・・?」
「ええ、そうよ」

 にこり。と笑い返すサヤだったが、
 チカの頭はすでにぐるぐると回っていた。
 サヤは家の中へと入り、「外は寒いから、入りましょう」と、チカを招き入れた。
 その導かれるままに入って、案内された座敷に座る。
 サヤの方は準備で忙しいのか、「お構い出来なくてごめんねー!」と、チカに声をかけた。
 だが、チカは既に沈んだ気持ちで考え事をしていた。

(私に与える仕事が留守番とは――――空也殿、あなたの弟子の天宮智香は、そんなに不甲斐無いのですか・・!!)

 考えが迷走し、空回る。
 そうしている内に、サヤは準備が整ったのか、玄関から「じゃあ、出かけてくるわね!」と言う声が聞こえた。
 それにハッとチカは気付き、

「はーい!!」

 と、声を返す。
 それを聞いてか、サヤは一拍置いた後に玄関から戸を開け、クロッセルへと向かっていったのが判った。
 ―――静かだ。
 本当にこれから、サヤが帰ってくるまで留守番をするのだ。
 クロッセルまで。と言う事は、どれだけ早くても帰ってくるのは夜だろう。
 気を利かせてくれたか、サヤは出来る限りチカの暇が無いように
 座敷には新聞と首都から来た本―――小説というらしいが。それが置いてあった。
 しかし、チカは“人様の物に手をつける”という事が出来ず、出来ることと言えば、

(・・・黙祷と剣の手入れでもしていよう)

 そう思って、チカは剣を抜いて手入れを始めた。




 ・・・・・が、

(や・・・・やる事が無い)

 それから二時間。黙祷と剣の手入れを行ったが、それで手持ち無沙汰となってしまった。
 ぽふ。と座敷に横になり、チカは天井を見上げる。
 きっと今頃、竜泉道場の先輩の剣士達は、自らの、そして竜泉の剣を極める為に、修練をしているのだろう。
 猛る声。響く足音。それらを、簡単に思い出す事が出来る。
 チカは、キュッと顔を引き締め、腕を上げて構えの体勢を取る。
 ・・・もちろん、寝転んだまま。
 自分は道場に居るワケでもなく、こうして留守番で暇をしているのだ。
 構えた手を広げて、ぽすっと畳に落とす。

(・・・何を、やっているんだろう・・・私は)

 ごろりと、横向きになり、チカは考える。
 だけども、まるでその考えを打ち切らせるかのように、
 刀堂家の玄関より、ノックの音が聞こえた。
 そして、

「ごめんくださーい!」

 聞き覚えのある声も。
 それに起き上がり、チカは玄関へと向かう。

「はい!」

 チカの返事に、戸越しに――予想外に、二人居た――その人物は、名乗りをあげた。

「竜泉道場の者でヤクモと申します」
「あ、はい!」

 戸をあけると、そこに居たのは名乗り上げた先輩であるヤクモと、

「チカちゃん。ごくろうさま」
「ほたる殿!」

 その横に居たのは、天乃ほたる。その人だった。
 ほたるとは、初顔合わせこそ(ほたるにとっては)衝撃だったとはいえ、
 空也との修練中に差し入れする時などに話をしたりして、友好関係を作っていた。
 しかしヤクモとほたるとは、各も珍しい組み合わせだが、一体どういう用事なのか
 チカはヤクモの方を見ると、彼は照れたように頭を掻いた後、

「あー。首都の方ではレディファーストと言う言葉があるそうじゃないですか。先にほたる殿の用事からどうぞ」

 と、似合わない言葉を言っていた。
 それはチカもほたるも失礼ながら思ったのか、くすっとお互い笑った後で、ほたるは微笑んで言った

「ありがとうございます。それじゃあお言葉に甘えて・・・チカちゃん、お願いがあるのですけど」
「あ、はい。なんでしょうか?」
「手を、見せてくれませんか?」

 ・・・その奇抜なお願いに、チカは首を傾げた。
 人の手をみて、ほたるは一体どうすると言うのだろうか。と

「はあ・・どうぞ」

 ただ、意味は判らなくとも、ほたるのお願いであるし、
 見られたから減るというワケでも、まして噛み付かれる事なんか絶対無いだろうとチカは思い
 両手をほたるに差し出した。

「・・・・・・・・」

 そんなチカの手を、じっと見つめるほたる。
 それから、3~4分ほど見て、ほたるはようやくチカの手を離した。

「ありがとう。あと良かったらチカちゃんの演舞を見せてくれると嬉しいんだけど」
「あ、それでしたらお安い御用ですよ」

 タンッと、軽い足で外に出て、少し開けた場所に立つ。
 そのまま、剣を抜いて静の構え。そこから、剣閃。そして、ゆっくりと静の構えに戻る。
 そんなチカの演舞を、ほたるは真剣な目で・・・剣舞が終わるまでの五分。じっと見続けた。

「以上です。これで良かったのですか?」
「ええ。ありがとう。わたしの用事は以上です」

 にこりと笑うほたるに対し、ふぅっと一つ息を付いて、チカは一つ頷いた。
 ・・・よく判らないが、彼女が満足したのなら、それで良しとしよう
 その一方で、ゴホン。とわざとらしい咳払いが聞こえた。

「あのー。微妙に忘れられてますか?」
「い、いえ! それよりも、ヤクモ殿の用事とは??」

 ヤクモの言葉に、主に図星という意味でチカは内心ドキッとしたが、
 慌てて言葉を繋いで、先輩剣士の顔を立てた。
 だけども、そんなおふざけとは一変して、ヤクモは真剣にチカへと話し始めた。

「いえ・・・実は、さきほどこの近くで殺しがありまして。近隣の住民に注意を呼びかけているんです」
「な、なんですって!!」

 そのヤクモの言葉に、チカの正義が燃え上がる。
 殺し。それは、人の命の灯火を消し、その人が持っていた可能性も未来も奪い。
 それだけでなく、その殺された人物の家族も悲しませる。・・・犯人は、絶対悪。
 そんなヤツがのうのうと徘徊している事は、チカは何より許せない。

「調査団が今竜泉道場で組まれておりまして、直ぐに犯人を捕らえるつもりです。発令が出るまでは戸締りをきちんとして、外出を控えてください。それでは、失礼します」

 そんなチカの内心を知ってか知らずか、ヤクモはそれだけ告げて、
 ほたるを護衛する形で刀堂家を後にする――――が、

「ま、待って!!」
「お? チカ殿、どうしましたか?」

 チカは、ヤクモを呼び止め言いたかった言葉があった。
 あった、だが・・・・

 ――――私も調査団に入れてくれ!

 ・・・しかし、言えなかった。
 空也から支援士についての修練を行う前の自分なら、間違いなく一直線に調査団に参加していただろう。
 しかし、今は一歩立ち止まり考える事を学んでいる。
 もし調査団に参加をしたら、刀堂家の留守番はどうなる?
 チカは、悩んだ。
 不届き者が徘徊しているというのに、ただ自分はのうのうと刀堂家の留守番をしていればいいのか?
 しかし、調査団に入れば刀堂家は留守になってしまう。
 だが、留守番程度の事で大事件の絶対悪を見逃せと言うのか?
 めぐる考えの中・・・チカは、絞るような声で、ヤクモに言った。

「・・・無理は、なさらぬように」

 そして、ヤクモに伸ばした手を、ゆっくりと下ろした。

「・・・はい。お気使い感謝します」
「あ・・・チカちゃん、またね」

 二人は、微妙な態度でチカを・・刀堂家を、後にした。
 それはそうだろう。
 去り際のチカは、悔しさを堪えるように俯いて歯噛みし、
 溢れる犯人に対しての怒りを押さえつけていたのだから。

「・・・入ろう」

 誰も居ない外は寒いだけで用は何も無く、
 ポツリとチカは呟いて、刀堂家の座敷へと戻った。
 座って、チカは悔しがった。

(もし、もしも私が空也殿みたいな力を持っていれば・・・!!)

 そう。空也程の力があれば、こんな留守番任務ではなく、もっと別の・・・例えば、魔物討伐依頼などを受けているだろう。
 その仕事を手早く片付けて、きっと調査団の方にも行けるだろうと、チカは思っていた。
 しかし、今のチカに与えられたのは、刀堂家の留守番である。
 ただそんな仕事に縛られて悪を滅ぼせぬ自分。それが、堪らなく嫌だったのだ。



「ただいま」
「! おかえりなさい」

 何かあった時、直ぐに起きれるようにチカは仮眠をしていたが、
 外は暗くなり、夜の帳を見せていた。
 そして、玄関からの戸が開く音と、聞こえた声に、チカは挨拶をし返す。

「ご苦労様。ちょっと待ってて頂戴」
「あ、はい」

 座敷に顔を見せたサヤが、荷物を置きに行ったのか、奥に行き、
 そして、座敷の方へと戻ってきた。

「チカちゃん、ごくろうさま」
「い、いえ・・そんな、私は、結局なにもしていません・・」

 俯いて、チカは答える。

(そう・・私は、何もしてない・・・)

 しかし、その言葉にサヤはゆっくりと首を横にふって、チカの俯いた顔を覗き込んで微笑んだ。

「いいえ。チカちゃん。最後までお留守番してくれて、どうもありがとう。とっても助かったわ」

 そして、にこりと心から安心した笑顔を見せるのだった。
 それを見て、チカは「あ・・」と、声を漏らした。
 ――――チカは一つ気付いた。
 それは、今日の朝からつかえていた胸の奥にあった重いものが、軽くなったようで・・・

「じゃあ、留守番の依頼は大丈夫よ。今書簡を渡すからちょっと待ってて」
「は、はい!」

 立ち上がったサヤがそう言って戸棚を開けて一つの封書を手に持つ。
 きっと、あらかじめ用意しておいたものだろう。それを、チカに手渡した。

「これは・・?」

 疑問顔をするチカに、サヤは笑って答える。

「それは、支援士が仕事を無事に成功しました。という事を証明する書簡よ。それを持って酒場に行けば仕事は成功で終わるの」
「あ、はい」
「でも、今は空也さんに報告ね。酒場に持っていくのは次回以後、かしらね」

 ふふ、と笑うサヤにチカは一つ頭を下げて、座敷を後にする。
 サヤも、チカの後について、一緒に玄関まで来た。

「じゃあ、今日は本当にありがとう。また遊びに来てね」
「はい!」

 サヤに見送られて、チカは竜泉へと向かう。
 この初仕事の報告、それを、空也に行う為に。




「ただいま戻りました」
「おお、ご苦労様。チカ」

 夜と言う事もあり、空也の部屋に通されて、
 チカは正座をしながら襖を開けて、そのまま中に入り、一つ礼をした。
 それに空也は苦笑いを浮かべて、困ったような口調でチカに言った。

「毎度毎度だが、別にそこまで堅苦しく居る必要はないだろう?」
「は、はい・・」

 空也の言葉にチカは恐縮する。これもいつもの事なので、空也はもう大して気にしない事にしようとは思った。
 チカは、本題に入ろうとすっと背を伸ばして座り、書簡を前に出す。

「刀堂家の留守番の任務。無事に終わらせました。途中の来訪者は二名。ヤクモ殿とほたる殿です。それ以外は特に何もありませんでした」
「ふむ、そうか」

 証書を開いて、空也は一つ頷き、「留守番の任務は合格だ」とチカに言った。
 その証書を折りたたんで封の中に居れ、机の上にスッと置いた。
 そしてチカのほうに向き直り、空也は「さて」と切り出した。

「チカ、お前はこの依頼で何を感じた? ・・・いや、少なくとも『何も感じなかった』という事は無いはずだ」
「!!」

 まるで見透かされたような言葉に、チカはハッと息を呑んだ、
 そう―――

「例えば、なぜ“留守番などを私にやらせるのか”。違うか?」
「!!」

 これも。
 チカは顔を上げて、空也の顔を見る。
 だけども、空也は穏やかに笑みを浮かべ、相変わらずの優しい口調である事は違いなかった。
 それを見てチカは頭を下げて、空也に白状をした。

「はい・・仰る通り、私は、どうして留守番などという大した用事でも無い事を私にさせたのか。
 そして、在ろう事か“空也殿にとって私というのはそこまで不甲斐無い存在であったのか”とも思いました。申し訳ありません」
「・・・」

 チカの言葉を汲み取るように、空也は目を閉じて言葉を良く聞き、
 そして、そのチカの言葉に、空也はゆっくりと首を振って言葉を返した。

「いいや、ある意味。私とて、チカがそう思うように仕向けた事は否定出来ぬ。それほどに簡単な依頼を私は今回の為に探して選んでいたからな」
「はい」
「そして、チカがそんな大した依頼ではないと思う中、私は一つお前を試したのだ」
「え・・試す? まさか―――」

 そう、空也の言葉。“試す”という事。
 それは、間違いなくあの事だろうと、チカは一つ思い当たった。
 そのチカに応えるように、空也は一つ頷いて、チカの言葉に答えた。

「そうだ。街中で殺しがあった。というもの。お前ほどの正義感の強い娘ならば、ひょっとしたら調査隊へ入ると言い出すのではないかと思っていたが、どうやら杞憂だったようだ。
 もしも調査隊へ入る事を希望すると言う事は、刀堂家の留守番の依頼を放棄した。という事になるからな。
 ・・・支援士にとって、依頼の放棄というのは、依頼を失敗する以上に重い。仕事をする際にも、今後その背中には“依頼を放棄する支援士”というレッテルが貼られ、
 その汚名を返上するには並大抵の努力ではない。或いは、そんな経歴の傷を好んで中傷する不届き者が支援士の中に居る事も事実だ。
 ――――私の友人であるブレイブマスターは、嘗て『アリスキュア殺しの』という汚名を背負った支援士だった。
 今でこそ彼は『聖女の守』『冥氷剣』と讃えられる有名支援士であるが、
 そんな彼の話から私は良く察している――――支援士にとっての汚名とは、それだけ重く辛い物なのだ」
「あ・・・・」

 そう。チカは殺しを行った不届き者を追うことと刀堂家の留守番を預かる依頼の二択を究極の選択としていた。
 だが、冷静に考えれば選択肢など“刀堂家の留守番”しか無かったのである。
 チカの何か理解した顔に空也は一つ頷いて、再び口を開く。

「仮に本当に殺しがあったとして、調査隊が編成されるとしよう。
 しかし、その調査隊にチカ。お前が入ったところで調査員が一人増えただけでしかない。
 それは何も、絶対にお前でなければならない。という必要性はどこにも無いんだ。
 だが、刀堂家の留守番はどうだ? その依頼をサヤ殿から頼まれ、遂行するのは
 ヤクモでも無ければ私でも無い。他ならぬ“天宮智香”でなければならないのだ。判るな?」
「・・・はい」

 チカは、空也の言葉をかみ締めるように心に刻み、その一言一言を汲み取る。
 或いはサヤならば、そんな事情があったなら。とチカの気持ちを汲み取ってくれるだろう。
 しかし、世の中良い人だらけではない。
 如何なる事情があったとしても、頼んだ相手が“最後まで責任を持って仕事を行う”事が礼儀であろう。
 その事を、一時的とは言え失念していた事を、チカは恥ずかしんだ。

「まあ、ひとまずその事は深く理解したようだな」
「はい」

 空也は、チカの真っ直ぐな言葉に満足そうに頷いて返し、
 そして、まだ真面目に話を続ける。

「だが、チカ。私はまだお前から“この仕事についてどう思ったか”。それをまた聞いていない。
 初めに報告したように、“どうして留守番などという大した用事でも無い事を私にさせたのか。”だけで考えが終わったワケではあるまい?」
「はい」

 続くチカの言葉に、空也は耳を傾ける。

「まだまだ未熟ではありますが、私は最後の最後まで空也殿がこんな依頼をさせた真意が判りませんでした。
 空也殿の私への信頼はこの程度でしかないのか。そう最後まで思い、自己嫌悪をしておりました。
 ですが、サヤ殿が帰宅し、依頼の達成を果たす間際、ようやく私は気付くことが出来ました。
 サヤ殿の安心した笑顔。感謝の言葉―――それを見た瞬間。私がどれほど未熟か、思い知らされました」
「ほう・・・」
「そもそも、“たかだか留守番程度の依頼”。という考えこそが、私の驕りだったのです。
 そんな価値観は、私の主観でしかありませんでした。
 ――――考えてみれば、刀堂家は片刃剣を打つ鍛冶師でも著名を持つ家。
 その刀の一本でも盗まれてしまえば、その損失は計り知れず。
 また不届き者の鍛冶師が、嫉妬で留守を狙い刀堂家を放火する可能性も捨て切れません。
 “家を空にする。”という事が、サヤ殿にとってどれだけ心の重荷になる事だったか。
 私にとっては下らないと思っていた留守番も、サヤ殿にとってはそれだけ重要な意味を持っていたのです」
「・・・・」

 チカの熱い言葉と、真っ直ぐに空也を見る迷い無き瞳。
 少なくとも、その思いに嘘や陰りは映っていなかった。それほどまでに澄んだ瞳。
 空也はしばし沈黙を守り、チカを真っ直ぐに見つめ返した。
 ・・・空也は、内心で微笑んだ。
 それは、空也の予想を遥かに超えたチカの成長ぶり。それが、空也にとって何よりも嬉しい事だった。

「宜しい。その通りだ。
 風の短剣が見つかり、支援士という職業がメジャーになった頃。同じくしてそれに従うよう・・・チカ、お前と同じように“支援士”という職業に“憧れる”者達が現れ始めた。
 高みを目指し、ランクを上げ、力を身につけて、
 また、その力を証明するかのように華麗に魔物を倒し、人々を守護する正義
 そして、数々の伝説を作り上げる屈強の支援士。
 ・・・しかし、それは大きな間違いだ。
 我々支援士という職業は名の通り、依頼主を支え、援護する者の事を言う。
 勿論、依頼が魔物退治や護衛というのもある。それこそ、難題の依頼を解決すれば名も広まろう。
 しかし、留守番や店番。ネズミ退治など、“憧れの支援士”からかけ離れた地味な仕事の方が圧倒的に多い。
 そういった仕事ばかりをやる事で、支援士を志した心との違いに夢見ていた者達はそれを止めてしまう。
 チカ。依頼の中には必ず、お前が“何でこんな依頼を・・”と、思うような事も多くやる事となる。
 それこそ、依頼主とお前の正義が食い違う事も多い。
 支援士とは、綺麗事だけで勤まる仕事ではないのだ。
 チカ・・・お前には、支援士になる前に“支援士とは何か”という事を正しく知って欲しかったのだ。
 最後の最後に、お前の憧れを壊すような真似をしてすまなかった」

 そこまで空也が語って一つ頭を下げた後、
 チカは慌てて恐縮し、空也へと頭を下げる。

「そ、そんな勿体無いお言葉!! 空也殿、顔を上げてください!!」
「ああ・・すまないな」

 そんな慌てるチカに、空也は一つ微笑んだかのように息をついて、
 優しく言葉を続けた。

「ならば、チカ。お前に一つ問いたい。
 支援士になる。という理由で確かにお前は私の元で修行をし、学んだ。
 しかし、だからと言って道は一つとは限らぬ。
 “絶対に支援士になれ”。とは、誰も強制しない。
 私の話から、支援士というのが、魔物を蹴散らし、民を守る華々しい絶対正義の存在。というお前の憧れとは離れていた事が判ったハズだ。
 ・・・貴族の出す依頼の中には、自らの旅路を絶対安全とする為に、街道に居る魔物の殲滅を依頼してくる事もよくある話だ。
 そんな外道な依頼も、依頼主の意向とあれば放棄出来ず、例え自らの正義に反しようとも遂行する事も常と言えるだろう。
 それでも、支援士を目指すのか?
 再度言うが―――道は決して支援士だけではない。私の家で剣の道を進み、お前の父と同じく警護団に所属するのもまた一手だろう」
「いえ」

 チカは、空也の言葉を切るように、短くハッキリと告げた。
 その言葉は、何も判っていない箱入り娘の無謀などではない。
 “天宮智香”の意思。言葉。それが、ハッキリと備わっていた。

「ご助言は感謝いたします。しかし、私は支援士の道を選びます」
「ほう・・その心は」

 空也は、興味深そうにチカの言葉に
 その判断に、聞き返した。
 空也の問いに、チカは一つ頷いてハッキリと答える。

「確かに空也殿の―――先輩である支援士の方が、そう言っているのであれば、間違いないでしょう。
 これから、留守番や店番、ネズミ退治のような地味な仕事も行う事になりましょう。
 しかし――――」

 言葉を切って、にこりと。
 チカは、剣士の顔ではなく、少女の顔で笑顔を向けて。

「例え、どんな依頼であったとしても、サヤ殿の心の支えになれたように、
 私が依頼を果たす事で、依頼主の心が支えられるのであれば
 私は、支援士を続けていようと、そう思ったのです
 ・・・無くした財布を見つけてくださったリア殿の行動が、私の心を支えてくれたように、
 私も、支援士の依頼を通して、支えて行きたいのです」
「・・・・」

 不覚にも、空也はそのチカの表情に、惹かれた。
 本当に、空也が抱えるのも難しい程に、弟子は大きくなったのだ。
 ・・・或いは、チカにとっては、竜泉道場すらも狭いのかも知れぬな。と、空也は一人思った。
 それが、不思議と悔しくなく。思わず笑みが零れるほどに嬉しかったのである。
 ならば、空也がこれ以上何かを問いたてるのは無粋と言うもの。
 彼は力強く一つ頷いて、ハッキリと告げた。

「よし。チカ・・・お前の想い。しかと受け止めた。ならば本日の依頼に対する報酬と共に、“正規支援士認定推薦状”を渡そう。
 それを持って、近い内に支援士認定登録を行うんだ」
「!! く、空也殿!! ありがとうございます!!」

 そこでチカは顔を輝かせ、空也に抱きついた。
 思わぬ行動に空也は驚き、目を白黒させたが、ふと思い出す。
 天宮竜三郎と酌を交わした時の話だ。

『アレはまだまだ甘えん坊だ。普段は堅い・・・そうだな、書物にあるような“サムライ”を気取っているが、まだまだ子供だ』

(ああ。嬉しさの余り理性が飛んで素が出たか)

 ふぅ。と一つ息を付いて、甘えてくるチカの頭をそっと撫でる。

 しかし・・・・そう、ちょっとした油断、過信、慢心が己の命を奪う。

 部屋の入り口に立つ気配が、手に持っていたモノを取り落とし、それがガシャンと音を立てる。

「あ、あ・・・あの、空也さん・・・」
「な!? え、あ、ほたる殿!!??」
「・・・若様。例の件が完成したということでほたる殿をお連れしたのですが・・・」

 そのほたるの後ろからは、ヤクモが。
 その二人が部屋の中を覗き込んで、とたんに硬直する。
 何も硬直していたのは二人だけでなく、
 当人である空也が一番固まったのではないだろうか。
 ただこの空間で唯一平常に居たのは、原因である天宮智香のみだった

「あ、あの・・・わ、わたし・・・空也さんに頼まれていた片刃剣をお持ちしたんですけど・・・やっぱり二人がそんな関係だったなんて知らなくて・・・あ、それよりも、わたし再びお邪魔ですよね。し、失礼します!!」

 そうして、顔を真っ赤にして走り去るほたるに、

「・・・若様。お邪魔いたしました。どうぞごゆるりと・・・」

 すすす。と襖を閉め、その場を後にするヤクモ。
 そして、パタンと襖が閉じた音で、空也は硬直の呪縛から解かれ
 空也は、夜に向かい叫んだ。

「だから誤解だああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」




「それでは、父上。母上。行って参ります」
「チカ・・無茶しちゃダメよ」
「はい。生まれてこれより。母上に愛されたこの身。粗末には致しません」

 旅立ちの朝。
 天宮家の前で、チカは両親に挨拶を交わしていた。
 ・・・何も、誰かが死ぬから、最後の挨拶というワケではない。
 それでも、しばらくは支援士の旅に家を開けるのだ。
 母を寂しがらせ、心配させる事を申し訳なく思うも、
 それでも、何も言わず見送ってくれる母の気持ちを無駄にしたくはない。と、チカは明るい顔を見せた。
 その一方、父が一歩前に出てチカに言葉を向ける。

「チカ。この旅はきっとお前を大きく成長させるだろう。
 辛いこと。苦しいこと。それこそ嫌になるほど、その身に降りかかる事になるだろう。
 だが、お前が強い事は誰よりも私たちが知っている。信じている。
 だから、思い切りお前のしたいように旅をして来い!
 そして、どうしても寂しくて辛くなったら、いつでも迎えられるよう準備をしておくさ」
「・・はい!」

 この言葉に、チカは思わず涙を流しそうになった。
 だが、涙など旅立ちに相応しくない。
 チカは力強く一つ頷いて、

「それでは、行って参ります」
「ああ。頑張って来い」

 両親に背を向けた。
 その先に居るのは、

「チカ。これから支援士として歩む道。しっかりと踏みしめて歩くと良い」
「はい。ありがとうございます、空也殿。・・・いや、師匠」

 そう切り出す空也。ヤクモ。ほたる
 そして、お世話になった道場の先輩達。

「チカちゃん。これを持って行って」
「これは・・・!!」
「私の打った剣。“天宮羽(テングウ)”」

 そして、ほたるが一歩前に出て来て、チカにその手の物を渡した。
 それは、一振りの片刃剣。その片刃剣を握った瞬間、その驚くほど手に馴染む感覚に、チカは驚いていた。
 それこそ、自分が自信を持って“天宮智香の剣である”と言える程に
 驚くチカに、もう一人ほたるの隣に立って、激励を送る人物・・・空也が、語りかけた。

「しかし、片刃剣は剣の修練を十分に行わぬ内に使うのは危険だろう。しばらくは前から持っていた剣を使い、剣を学べ。
 そしてチカ。お前がその天宮羽を振るった時、立派なブレイブマスターと言える」
「空也殿・・・」
「そして、私からはこれだ」

 そして、空也が手渡したのは一つの巻物・・・

「これは・・・?」
「その巻物には、奥義が記されている」
「!? お、奥義書・・!!」

 その巻物・・奥義書をもう一度見て、チカは息を呑む。
 竜泉の奥義書。それがこの手にある事。
 しかし、驚くチカに空也は「あー・・」という少し困ったかのような声を出して、

「と言っても、そこに記されている奥義は竜泉の物ではない」
「は、はぁ・・・?」
「そこに記されているのは“縮地破凰連牙”。竜泉改天宮流奥義だな。
 その効率の良い攻撃の流れ、コツや気をつけるべき点、気付いた所を幾つも記した」
「あ・・・」

 そう。それは一度だけ空也に見せて失敗したあの技。
 あの技を見せた翌日から、空也は良く十六夜のアルティア教会に足を運んでいたのを思い出した。
 縮地とは、風の力を用いて一度に距離を詰める竜泉の技である一方、
 その縮地の鋭さが増せば増すほど、それを失敗した時の反動は恐ろしいものである。
 きっと、この奥義書を作る・・・即ち、チカの為に、空也は弟子を心配させぬよう人目に着かぬ所で何度も縮地破凰連牙を完成させようとその身に縮地の反動を受けていたのだろう。
 そうまでして空也が自分の事を見てくれていた事に、チカは感極まった。

「空也殿・・ありがとうございます! 必ず、この縮地破凰連牙。天宮智香の物としてみせましょう!」
「うむ。精進することだ。
 今後の事だが・・・まずはシュヴァルを目指してみてはどうだ?
 そこに私の知り合いが居る。
 私の名を出せば、快く協力してくれるだろう
 或いは、一気に首都まで行くのも良いだろう」
「はい!」

 そうした挨拶を、先輩の剣士達とも交わし、やがて馬車の方から声が掛かった。
 出発の時。チカは振り返り手を振って、

「それでは!! 達者で!!」
「チカちゃん! 元気でね!!」
「チカ! ブレイブマスターになり、奥義を身につけた時。その姿をまた見せに来てくれ!」
「はい!! 必ずや!」

 そうして馬車に飛び乗り、クロッセルを経由してまずはシュヴァル。
 前に軽い旅行をしたのとはまた違う、
 天宮智香の支援士の道が始まる。




-闇-

「・・・ゲイズ殿」
「むふふふ。よく帰ってきました。して、成果の程は?」

 暗い闇。あまりに暗く、どこか判らぬ所
 そこに、二つの声が聞こえた。

「・・・それが、支援士達は壊滅。“姫”は行方をつかめなくなりました」
「なんですと!? 屈強な支援士を雇ったと言うに・・・それほどの部隊を“姫”が持って居るとは思いがたいのですが」
「それが、辛うじて逃亡出来た支援士の報告によれば、黒髪の女ただ一人との事で・・・なんでも、丸腰が剣を振るうかのような動作をするだけで支援士が瞬く間に消滅してしまったそうで」
「なっ・・・!」

 ゲイズ。と呼ばれた男が、初めて動揺を見せる。
 揃えたのはB級支援士だらけとはいえ、数が居た為Sランク支援士も余裕で潰せる勢力だったはずだ。
 それを潰す力と“消去する力”。それを事前の知識として警戒していないゲイズではなかった。

「待て・・黒いコートを着た白い刃の黒い剣を持った男は居たか?」
「は・・・? それは、伝記のセイジ・T・フォースの事で・・・?」
「良いから居たのか!?」

 ゲイズの叫ぶような声に、もう一人は慌て、報告をする。

「はっ!! 報告には無かった為、目撃した者は居ないかと!!」
「ふむ・・・」

 その報告に満足したのか、ゲイズは荒げていた態度を一変させた。

「なにやら、“セイジ”を“姫”が呼び出した報告も受けましたが
 それと同時にオースで小僧が一人か・・・」
「はい。それを連れたのはリア・スティレットというC級支援士。
 手助けを演じ情報を入手した為間違いありません。
 また、あの小僧も目覚めるまでは荷物でしょうから押し付けてきたようですね」
「ふん・・・小物ですか。ならば心配ないでしょうな」

 吐き捨てるようにゲイズは言って、
 再び悦の入った声でもう一人の人物に命じた。

「小僧の事は後回しで構いません。まずは“姫”を探りなさい。場合によっては支援士を捉まえて依頼なさい」
「はっ!!」

 そうして立ち去る人物と入れ替わりに、別の人物がゲイズの前に来る。

「報告します。小僧を連れたC級支援士リア・スティレットは・・・A級支援士ティール・エインフィードと接触。共に行動をし始めました」

 或いは、それが最悪な報告である事をその人物は理解できていたのだろう。
 ティール・エインフィードといえば、支援士の中でも有名な方に入るハルバードを使う少女。
 それと共に“現れた小僧”が居るのでは、小僧と接触する事が困難になる。と
 しかし、その思惑とは逆に、ゲイズは「むふふふふ」と愉快そうな声を上げていた。

「なるほど。ティール・エインフィードですか。どちらにせよ、私にとっては小物。小物も良い所です。
 A級支援士ですか・・・確かにお強いです。きっと“普通に相手にするならば”彼女専用の対抗部隊を組まなければなりません。
 しかし・・・・」

 だが。「しかし、」の後をゲイズは口にする事無く
 ただ延々と

「むふふふふふふふ!!!!」

 と、笑い続けるのであった。


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