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静寂が支配する黒き森、シュヴァルツヴァルト
そのダンジョンは、シュヴァルから少し離れた場所に存在している。
奥へ進めば進むほど、生息する魔物は強くなっていく。
そんなダンジョンの中に、男が一人。
彼の名は、グランツ・ハーミット。
つい先ほどまでは、幼馴染のマージナルとアルケミストと行動していたはずだった。
気が付けば、森の中。
さっきまでは町の中。
適当に歩いていれば戻れるだろうと歩くこと半日。
町に戻れそうな感じも無く、歩き回った努力の甲斐も無しに日は暮れ始めていた。

『グランツ、迷子になったら絶対に動かないでね?』
『ん、まぁ。ちゃんと探しにいくし…
骨が落ちてたら1つだけちゃんと拾ってやるから心配するな。
かえって心配する?いや、心配するな。大丈夫だ。ちゃんと拾う。』

と毎回のように言われているが、自分だって休憩したら町に帰るつもりだった。
道がわかれば、の話しだが…

「オーケーオーケー、今の自分の状況を確認しよう。
俺が思うに此処は、シュヴァルじゃなくシュヴァルツヴァルト。
ていうか、どうやったら迷ったら町から森に入るんだよ。」

謎です。

「…そうだな、謎だな。てか、いい加減、方向音痴を直さないとマズイな。」

大樹に寄りかかり、空に浮かんでいる月を見ながらそんなことを呟く。
結局、出口と幼馴染を求めて歩き回ったものの見つからずに完全に日が暮れてしまった。
この年になって東西南北がわからないのはなんていうか、恥ずかしい…。
そう思って何度かサラバントに聞いたもののどっちがどの方向なのか未だによくわからない。理解不能。
ちなみに、太陽がどっちから昇ってどっちに沈むか。というのも曖昧である。
虫の鳴き声を聞きながら、幼馴染二人をその場で待つが…

「ミイラ取りがミイラになるっていうよな?
じゃあ、探しに行ったほうがいいのか?
…それに、もうこんなに迷ったんだからこれ以上迷うことはない。はず…。」

ま、断定はできないが。と一人呟きグランツは再び森の中を彷徨うこととなった。

「新記録だ。」

月光に照らされ、懐中時計を見ながらアルケミストは呆れたように言った。

「何がかな?」

その言葉に、マージナルが問う。

「グランツ・ハーミットが迷子になってから経った時間。
前回は見つけるまで3時間ちょっとだったんだが…
なんと今回は半日以上。記録大幅更新オメデトウ。」
「賞状ものだね。どうする?」
「説教する。」
「説教か、僕はこれ以上記録が延びることが無いように願うよ。」

ケラケラと笑いながらマージナルが言った。
このマージナルも何度かグランツに東西南北を教えたのだが効果は見られず。
教えて覚えさせるのをもう諦めている。

「サラ、グランツは昔から迷子になりやすいのか?」
「昔からだよ、よく探しに行ったよ。」

幼いころを思い出すように、目を細める。

ガサリ。

奥の茂みで、何かが動いたような。

「レギウス、ちょっと見てきてくれ。」
『その命令には従いかねん。何故なら、……面倒くさいからだ。』
「い・い・か・ら・いってこぉぉぉいっ!!」
『む?ぐおおぉぉぉ?目が、まわ、まわるっ、や…やめんかぁっ』
「るせっ、とりあえず見て来いっ!!」

肩にとまっていたトカゲの尻尾をつかみ、勢いよく回すアルケミスト。

「もう、いいんじゃない?ジャック。」

その様子をただ傍観していたサラバンドが行った瞬間、
トカゲは勢いよく茂みの中へと飛んでいった。

レギウスと呼ばれたトカゲは、クルクルとまわりながら

ペチッ 

と何かにぶつかって地面に落ちた。

「お、おぉぉ…気分が悪い。おのれ、ジャックめ…。
それにしても、先ほどの壁は一体………?」

巨大な毛の生えた足、見上げてみれば凶悪な双眸と目が合った。

『うぅむ、どうやらとんでもない奴にぶつかってしまったらしいなっ!?』

敵、と確認するとレギウスは翼を広げ逃走を開始した。

「お、帰ってきたな。」
「おまけ付き。」

二人は、翼を広げるトカゲの後ろの奴を見た瞬間。

「「逃げるが勝ち。」」

50秒間しか飛んでいられないレギウスを回収せずに逃げ始めた。

『ま、待たんかっ!!』
「自分でつれてきたんだ、自分で始末しろっ」
「何を無茶な、このトカゲサイズで何ができようか。否、何もできまい。」
「だったら元に戻ればいいだろう?!」
「……面倒だ。」
「だったらエサにでもなってろっ!!」
『断固拒否する。』

茂みの中を走り回り、追撃をかわす。
熊…アルクトゥールスと呼ばれている魔物は木々を薙ぎ倒し突き進んでくる。
そんななか、ジャック一行は鼻歌を歌っているグランツを発見した。

「グラァァァンツッ!!てめぇ今の今まで何してやがったっ!!」

逃げ回りながら、見つけた旅の仲間を見つけ茂みから走り出た。

「じゃ、ジャック、なんてもん連れて来やがったっ!!」

ジャックの怒声に振り向き、彼らの後ろから来ている魔物を見て怒鳴り返す。

「目覚めよ、地平を乱す荒ぶる魂―。」

グランツとジャックに注意が向いている熊は、彼女の詠唱に築いていない。

「大地を巡り、虚空に響き、我が武器として疾くと進めっ」

『急げ、サラ。グランツはともかく超インドア生活錬金術師は限界が近い。』
「誰が、超…インドア生活だ。これでも体力はついたぞ!!」

強がって言うジャックだが、体力限界が近いらしい。

「疾風波撃っ」

放たれた疾風の刃が駆け抜ける。
熊の隣にあった岩がパックリと綺麗に切れた。

「………へたくそ。」
「コントロールには自信が無い。」
「練習しろ。」
「箒に乗ったまま、狙うのがどれほど難しいか知らないくせに。」
「じゃ、次は当てろよ。」
「次は無いよ?だってもういないもん。」
『魔物にしてはいい判断だ。』
「んじゃ、帰るか。」
『………。』
「どした?」
『む、グランツは何処だ?』
「は?何言ってんだレギウス、グランツならそこに………。」
『いないではないか。』

沈黙。
サラバンドは苦笑。

「あぁ……胃が、痛くなってきた。」
「胃薬、飲めば?」

グランツ回収作戦は、まだ終わらない。