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朝でした。
それはもう何処からどう見ても朝でした。
太陽はそこそこの角度まで昇り、夏の大地をそりゃもう暖めています。
鮮やかな緑の森の中に、建物が建っており
建物の中には当然部屋がありました。
お世辞にも決して広くはありませんが、机・ベット・タンスなど
生活に必要なものは全て揃っています。
備え付けの家具が画一的な感な学生寮のある生徒の一室でした。
机の上には筆記用具と共に教科書が散らばった状態でそこにあり、
飲みかけの真っ黒な液体が入ったコップが置いてあります。

年の頃にしては十代半ばくらいでしょうか?
短い黒髪はひっちゃかめっちゃかに炸裂しており、
机に頬杖を付いたまま眠っています。

ベットには毛布に包まって小動物のように丸くなり
薄手の水色のカーテンから降り注ぐ太陽の光を浴びて幸せそうに寝ている
金髪の子供が幸せそうに寝ているのでした。

「ぴぴぴぴぴぴ!ぴぴぴぴ!ぴぴぴぴぴ!」

目覚まし時計があらん限りの音量で鳴り始めます。

「ピピぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴp!」

それでも部屋の主はなかなか起きようとしません。
しかし、それが数十秒ほど続くと流石の少年も寝苦しそうに眉をひそめました。

「ぴぴ、ぴぴぴぴぴぴぴ!」

これほど鳴ってもおきないのか、と目覚ましが講義をしていると
もぞっと手が目覚まし時計に伸びていきます。

(お、やっとおきたか。この寝ぼすけめ。)

目覚まし時計はそう思いました。
が、その瞬間―。
あわれ、目覚まし時計は振り下ろされた拳の直撃を受けて
ブラスティックボディーが軋む音を立てました。

少年の手は元の位置へ戻るとまた平和な寝息です。
しかし目覚まし時計も負けてはいませんでした。
先ほどの一撃でどこかいかれてしまったのか、
止まることを忘れてしまったかのように鳴り始めました。

「う、むぅ…ぅるさい…。」

不機嫌な声が聞こえました。
目覚まし時計は、軽々と持ち上げられ

ガシャンっ

トドメとばかりに壁に投げられ叩きつけられました

「ぴぴぴ、ぴぴぴ…p」

機能停止、再起不能…
現在の時刻だけ表示して、静かになりました。

「うくぁ…。」

ようやく半分よりちょっと少ないくらいに目が開きました。
ゆっくりと上半身をおこして、目覚まし時計を拾い上げます。
眠たげに目を擦り、文字盤へと目を向けました。

8時26分、46秒

液晶はそう告げておりました。
リアルな時間でした。
現実を確認するまで3秒。
眠たげな目がぱちくりと開きました。

「……あぁ、最悪。」

驚くほど速いスピードで着替えをはじめ、鞄に教科書を詰め込み
部屋に鍵をしめてその生徒は必死になって走ります。

「あーマッハだしても間に合わないな。グッドラック。」

親指をビシッと立てて乾いた笑顔で楽しそうに掃除のおじさんがいいました。
生徒の名前はセオ。
エリワー学園高等学部に通う1年生です。

「まだ間に合うかも…」

そう思った瞬間に、無情にも校舎から鐘の音が鳴り響きました。
校舎まではまだたっぷり数百メートルの距離が…
しかも結構きつい上り坂です。
ちなみに、寮から校舎までの距離は寮生からかなりの不評…。
坂を登りきった所に、校舎とその前にある校門が見えてきました。
頑丈な鉄の門扉が閉められていてその脇に歩行者用の扉があるのですが―。

「…まずいな。」

セオが露骨に顔をしかめます。
そこには四人の生徒がいました、“生徒会特務”と書かれた腕章がしてあります。
泣く子も黙る、学園名物。
“妙に元気がよすぎてほとんどの生徒に煙たがられている生徒会”所属の特殊部隊による風紀取締りでした。
決して毎日ではありませんが、今日はありました。

「なんで、今日…。」

昨日は遅刻しなかったセオが嫌な顔で呟きました。
すると、生徒会四人組はまるで飢えた獣が獲物を見つけたかのように目を輝かせます。

「はい、そこの君!生徒手帳をだして!」

開口一番、命令形でほえたのは目つきの悪い高等部2ねんの女子でした。
露骨に嫌そうな顔をして渋々と生徒手帳をセオは渡します。
それを素早く取り上げたまるで蛇のような顔つきの3年は、無愛想な顔をした写真と
本人の顔をジロジロと見比べます。
数分後、押し返された生徒手帳を受け取ると

「1年3組のセオ君ね。―それで君、今期何回目の遅刻かな?言ってもらえる?」

嫌らしそうに聞いてきました。
遅刻回数は先生が記録していますので、毎日チェックしていない彼らが知ったからどうこうというわけでもなく、単なるイヤガラセでした。
生徒が回数をこたえると
『それはちょっと多すぎるね?』とか『本当はもっとじゃない?』と、
答えなければ答えないで、
『忘れるほど多いの?』などと嫌味を言ってきます。
そんな生徒会所属の生徒は、数えると四人ほど…つまり彼らしか居ません。

「正確には覚えていませんけど、二億六千四百回よりは少ないと思いますよ。」

しれっとしてセオが言い返しますから、4対1の緊張状態は増すだけです。

「では、違反物が入っていないか検査します。」

数分間、ガサごそとカバンの中をあさる生徒会。

「特に、ないようですね。」

悔しそうな顔をしていいました。

「もういいですか?」

生徒会委員達はなにも言わなかったので、通り過ぎようとすると

「ちょっとまった!」

蛇のような顔つきの3年が呼び止めます。
が、本人は付き合ってられないと呟くと全力でダッシュし校舎へと入っていきました。




「おはよー、セオ。今日はなかなかの好タイムだね?先月の平均よりは7秒はやいよ。」

苦笑交じりでストップウォッチを片手に気楽にイルがこっそりと告げた。